Chapter 4
チッチッチッチ…
時計の音が嫌に大きく聞こえる。
風斗様が帰ってくるまでの間、私はすごく落ち着きが無かった。
だって想いを伝えたところで上手くいくかの保証も無い、いや、上手くいかない可能性の
方が高い。
最悪の場合風斗様と縁を切ることになるのだから。
電話を切った後は、掃除とか、買い物とかをしていたが気がつくと
風斗様が帰ってきたときのシュミレーションを頭でしているのだった。
「風斗様…頼みますから早く帰ってきて…いや、やっぱり帰って来ないほうが…いやいや…」
そんなことを今日何回呟いたか。
そして夕食を並べている今も繰り返している。
すると、玄関の方からガチャッと扉が開く音がした。
(帰ってきた…っ)
「八重、ちゃんといるかー?」
「はい、ここに。お帰りなさいませ…」
玄関まで迎えに行くと、部活の帰りなのであろう、Tシャツにハーフズボンというラフな
格好をしていた。
本人を確認したと同時に一気に緊張してしまった。
(私、風斗様に変に映ってないでしょうか…)
うっすら汗をかいている顔を伺うように見るとパチッと目が合う。
「ん?なんだよ。もしかしてもうしたいのか?」
「い、いえ…っそういうわけでは…」
慌てて下を向くも、靴を脱いで上がってきた風斗様は私の肩を掴んで壁に押し付ける。
そして長い指が顎に触れ、上を無理矢理向かせられると唇を重ねてきた。
「ぁ…かざ…っんぅ」
言わなくちゃ…そう心が叫ぶ。
唇を話した風斗様はにやっと笑う。
…やっぱり私の反応を見て楽しんでいる。
でもなかなか言えない。
だって。
(もし言わなければ、心は通じなくても体は繋がっていられる…)
また口づけ。
深くキスまでされて、零れた液体が顎に流れた。
「ったく、いやらしい顔しやがって…」
舌が抜けて、呼吸を整えてると耳の中を舐められながらそう言葉を投げかけられる。
否定は出来ない。自分でもわかっている…。
「さーて…夕飯の前にすっきりしとくか。なぁ、八重?」
そう囁きながらを鎖骨の辺りを撫でられれば、意思とは関係なく頷いてしまった。
背中をぐいぐい押されて、風斗様の寝室に入るように促される。
そして入ったの同時にベッドに倒された。
「ぁ…っ」
「さぁてと…」
意地悪な笑みをこっちに向けると、すぐさまYシャツのボタンを外される。
しかし、1つ、また1つ外されていくのを見ている内に、あの悪夢が鮮明に蘇ってきた。
また、遊ばれるという悪夢。
(私は何を考えていたのでしょうか…!)
もう嫌なのに、なんでさっき身体が繋がってれば、なんて考えてしまったのだろう。
ダメ、やめて、言わなくちゃ…。
もう今言うしかない……!
「風斗…様…!」
「ぁ?」
一旦ボタンを外すを手が止まる。
「あ、の…お話が、あるんですが…」
「話?」
風斗様の瞳が私を見た。
口内に溜まった唾を飲み込む。
震える身体を押さえ込みながらコクリと頷いた。
すぅ…と息を吸い込む。
そして、最初の一言目を言おうとしたその時。
「でもさぁ、こんな時に話すんのあれじゃねぇか?」
「え?」
「安心しろ、ちゃんと後で夕飯のときにでも聞いてやるから。
ってお前が起きてればの話だけどな!」
はははっと笑って最後のボタンを外し終える。
そして私の肌をさらけ出すと、胸の飾りを舌でそっと舐めてきた。
「そんな…。ダメなんです、今お話させてください、じゃないと…あぁっ!」
突然訪れる快感。
背中が思わず仰け反った。
もう1つの方も指で摘まれ、どうかなりそうになる。
「こんな感じておいてまだ今話したいか?」
「あん…はっ…」
ぷっくりと立っているそれを弾いている風斗様はとても楽しそうだ。
(嫌…)
その時、カチャカチャという音が耳に響く。
それは私のベルトが外される音で、ズルリと下着ごとおろされる。
そこにはすっかり反応してしまったアレがあった。
「へぇー…ずいぶんと素直なことで。そこは八重と同じだなぁ?」
「ぅ…」
(嫌…)
風斗様の温かい手がソレに絡みつく。
そしてゆっくりと上下に動かし始めた。
ぐちゅぐちゅという音が脳を犯す。
「あっあっはぁ…ッ」
目に涙が浮かびだんだん視界がぼやけていく。
だんだん身体が熱くなっていき、中心も張り詰めていた。
「イきたそうだな…」
「ぁ…かざ…とさまぁ…」
「ちゃんとお願いできたらイかせてやるぞ」
耳元で囁かれ、頬にキスをされる。
悔しいけれど、もうこの苦しさから解放されたい…っ!
「ぃ…きたいで…す、ぁっ」
「んー…声が少し小せぇけど…まぁいいか」
扱いていた手がスピードを上げる。
「あっだめ、かざ…っ!は、あぁ…!!」
勢いよく飛び出した白い液は、自分の腹にかかった。
その光景を見て、風斗様はとても嬉しそうだった…。
息があがって、呼吸をするのにも一苦労だ。
はぁはぁと頑張って肺に空気を送ろうとする。
「さてと!今度は俺の番だな」
まだ息が落ち着かなくて弾ませてる体をぐいっと風斗様の方へ引き寄せられる。
「……ぇ…?」
その言葉と行為の意味がわからずにいると、いきなり尻を触られる。
「!?かざ…ッふぁ…」
「やっぱり八重は変態だな。これでも感じるのか?」
「ち、がぁ…っ」
突然の感覚に思わず風斗様に抱き着く。
細い指がゆっくりと滑らせた場所が敏感に反応する。
やがてその手は穴へと向かっていった。
指がその場所に触れて、中に入ろうと力が入る。
しかし、私もその指を拒む様に力を入れてしまった。
無意識だったけど、これくらいした私の意思表示はできないから…。
いい加減、気持ちに気が付いてください…。
「おい、力抜けよ、はいんねぇだろ?」
「…だって……んッ」
一気に侵入しようと、風斗様の指がさらにそこを押す。
「だって?その後はなんだよ。こんなに早くしてって顔してんのにさ!」
「………いや…」
「は?」
「…もう、もう止めてください……ッ!」
突然叫んだ私に風斗様は驚く。
私自身、ついに本心が言葉になってしまったとこにハッとした。
でも、一度出たらもう止められなくて…。
「もう、嫌、なんです…。風斗様にこんなことされるのは…」
「お前、意味わかんねぇぞ。いきなりなんだよ」
「私、わ、たし……」
涙が再び溢れ出す。
その後に言葉が続かない。
そんな様子を見てか、風斗様はチッと舌打ちをする。
「言いたいことはそれだけか?じゃあ続きするぞ」
乱暴に私の頭をベッドに押さえつける。
そしてまた後ろのほうに手の感触を感じた。
「やだッ!」
「うるせぇ!ちょっとくらい我慢しろ!」
「私、風斗様のことが好きなんです!!」
ぴたりと時間が途切れたように風斗様の手が止まった。
おそるおそる顔を伺うと、相手は思いっきり目を見開いていた。
あぁ…言ってしまった…。
いや、言うつもりではいたけれども、こんなタイミングで伝えてしまうとは…。
そんな気まずい空気が流れる中、風斗様の唇がそっと開いた。
「…お、おま…それ本気、か……?」
「……はい…。ずっと前から…好きでした…」
不安と緊張で身体が震える。
これから、返事が返ってくるのだ。
キュッと目を瞑ると言葉を待った。
心臓の音がうるさい。
今までで一番。
本当に止めてしまいたいと思った。
しかし、次に待っていた言葉は…
「俺は…お前の事はなんとも思ってない…」
そう、静かに、ご主人様は言い放った。
すー…と頭の中が真っ白になっていく。
(あぁ…そんな…そんな………)
一番聞きたくない言葉だった。
一番最悪な展開だった。
゛お前のことはなんとも思ってない゛
わかっていたはずなのに、覚悟はしていたのに。
「………ぅっ」
もう…駄目…っ
バッと近くに置いてあったバスローブを掴むと、私は羽織りながら風斗様の寝室を出て自分の部屋へ駆け込んだ。
「お、おい八重…ッ」
部屋を出る時にかけられた声も全く耳に入らなかった。
――――――――――――――――――――――……
「うぅっ…っえっく…」
部屋に閉じこもって数時間。
日はもう暮れてもう明るさはない。
そんな真っ暗な部屋で、私は1人泣いていた。
勇気を出して告白しても、風斗様には届かなかった。
ほんの少しの希望も打ち砕かれてしまった。
ふと泣き腫らした顔を、机の上にあるBL本を見る。
朝起きたにはすでに置いてあった。
きっと風斗様が律儀に返して下さったのでしょうが…。
「……もう要りませんね」
これはあくまでお話なのだ。
夢物語なのだ。
現実じゃない。こうはならない。
なのに、ずっと私は、それを信じて……
震える手でそっと持ち上げるとごみ箱へと移した。
ずっと支えになっていたその本を暫くの間見つめる。
それから、机に向かうと紙とペンを用意した。
風斗様への最後の手紙。
さすがに何も残していかないのは悪いですから。
面と向かって言えない弱い私からの最後の言葉。
いろいろ支度をしなくてはいけないからあまり長くは書けないけれど。
もうあの人の側にはいられないのですね…。
「さようなら…風斗様…」
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