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Chapter 2

「ただいま…って、あ、風斗様」

「『あ、風斗様』じゃねーよ。お帰りは?」

「申し訳ございません。お帰りなさいませ」


重い買い物カバンを持って、くたくたになりながら家に着く。

スーパーだけで済めばいいのに、そこだけで買い物が済まないために、車で東へ西へ走り回ったのだ。


さらに、風斗様の部活が急遽なくなり、早く帰ってきたことも私を慌てさせる一つの

原因だった。


風斗様は私の帰りが遅くなるのが嫌いだ。

命令したいときは常にいろ!とのことだ。


だからなのか、


(あぁー…風斗様の機嫌が一段と悪い。…ような気がする。)



「そういえば風斗様に頼まれていた物を買ってきました」


そう言うと、椅子にだらしなく座って漫画を読んでいる風斗様に大きな袋を渡した。


「はあ?俺何も頼んで…」

「部屋を掃除した時にメモを見つけましたので」

「ふーん。まだ書き途中だったけど…」

(あれでまだ書き途中だったのか…)


ははは…と乾いた笑いをする私をよそに、ガサゴソと中を漁る。


「おー!これモン●ンじゃん!!マジ嬉しい!!ずっとやりたかったんだよ!!

サンキュー八重!!」


ゲームを発見した途端、パァ…っと風斗様の表情が輝いた。

そして、お礼。


「………いえっ」


クルっと後ろを向いて、手を口に当てる。



(…可愛い……!可愛すぎるー!!)


しかも最後の


「サンキュ(ハート)」

(恋してる影響で都合よく補正している)


もう幸せだ、これだけで私は明日も生きていける!!



はぁ〜と余韻に浸っていたが。


「ん、なんだこの藁人形。…あぁ、クソ松原を呪おうと思って書いたんだった(ボソッ)」


…今さらっと怖いこと言わなかった?

言ってないよね?

私の耳がおかしいだけですよね?!




ぶつくさ言う風斗様を無視して、気を取り直して、料理を作り始める。


「夕食はステーキとパスタ、どちらがよろしいでしょうか」


エプロンの紐を結びながら風斗様にそう聞く。


「あー…どっちでもいい」

「どっちでもいいなんて…」


困り顔でそう口に出した瞬間。

風斗様がいつの間にか目の前に立っていた。


「…!」


背が高い彼を目の前にしてほほが熱くなる。


近い。

距離が、近い。


心臓がバクバクとなった。

この音聞こえてないですよね…?


そんな心配をしている私をよそに、風斗様はにこっと



「やっぱステーキにするわ。そのほうが精が付くよな」

「そ、そうですよね。成長期ですし、しっかり召し上がったほうが…」

「というかお前がしっかり食べとけよ」

「…え?」


私ですか?そう思う。


いつも食べてますが…と言おうとして風斗様の方を向くと、


み、見てる。

見てる見てる見てる!


私の事凄く見てるよー!!


「な?た、べ、ろ、よ?」


にこっと笑った目にさらに赤くなる。


「は、はい…っ急いで作りますね!」


あぁ…たとえ嫌われてるとしてもやはり風斗様が好きだ…

幸せ〜♪





「…………クス」


マガジンの下で黒い笑みを浮かべているのを知らなかったから。なんですが、ね……。





―――――――――――――――――――――……





カチャカチャ…



それからはいつもと同じような静かな夕食。

食器が出す音だけが聞こえる。


(前は沢山学校の事話して下さったのに…。)


もちろんずっと無言ではありませんよ?

ただたまに会話すると、


「風呂沸いてる?」

「明日〇〇買ってこい」

「…しょっぱ」


etc...だったりするのですが。


いわゆる反抗期なのでしょうか。

なんだか親になった気分です…。


(い、いえ、私は親じゃなくて恋人になりたいのですが…!)


恋人というワードが頭に浮かんでかぁ…とまた顔が熱くなった。


「ごちそうさん」


風戸様が食べ終わる。

そして読みかけのマガジンを手に取ると、


「もう7:00じゃん。俺テレビ見に部屋戻る」


欠伸をひとつして自室に行った。


「はい、ごゆっくりお休みくださいませ」


そしてバタンと扉が閉まった。



あ、勉強するよう言うのを忘れた。

…まぁいっか。



「さて、私も食器を洗ったら休みますか」


ようやく今日も終わりだ。

一日の大半をショッピングで過ごした気もしますが…そこは気にしないことにしましょう。

他ではない風斗様のためです。




自室に戻り椅子に座る。

仕事が終わった後はどうしてもぼーっとしてしまう。

きっとこの時間が私には必要なのだろう。



「…風斗様…」


ふと、好きな人の名前を口に出してみた。


好きな人はずっと目の前にいる。

でも、何も伝えられない。当然相手にも伝わらない。


だから、最近、BL小説では足りなくなってきてしまった。


いくら想像しても、登場人物は自分じゃない。

だから、一層風斗様を求めて身体が疼く。


「風斗様…っ」


いけないことなのはわかっている。

でも、彼の事を思うと胸が高ぶって、落ち着かなくなる。


引き出しに手を伸ばす。


例の本を出すために。

癒してくれるのはあの小説だけだから、毎晩毎晩読む。

そして今日も…




「……………え…」













読むはずだった。






「な…い…」


いつもの場所に、いつもの物がない。


「え、無い、だって、ここに入れておいたはずなのに!?」


引き出しをまんべんなく捜す。

引き出しに他のものは入れていない。

それに、ガイドブックみたいに小さい本じゃないから、そう簡単に紛失するなんて有り得ない…!



その時、





「探し物はこれか?八重」



自分以外誰もいないはずの部屋に、そう声が響いた。


はっと振り向けば、風斗様の姿。

その手には…BL小説。


な、なんで、風斗様が…それを…


そして気が付いたら叫んでいた。


「ど、どうして貴方がそれを…ッ!」

「ん?お前が出かけてる間にちょっと探索させてもらったんだよ。

そしたらこーんなモン出てきちゃってさぁ」



意地悪っぽく笑ってぱらぱらとページを捲っていく。


サァー…と血の気が引く音がした。

知られたくなかった。


風斗様には、知られたくなかったのに…!




「か、返せ!!」


とにかく取り返そう。

そう思って風斗様に駆け寄って本に手を伸ばした。が、


ガッ!!

あっさりとその腕をつかまれてしまった。

きつくきつく握られて振りほどけない。



「今朝も言ったんだけどさぁ、ご主人様には敬語使え、このわんこが」


目を細め、冷たい声でそう言った。


そして体が後ろに傾き、


「うわっ」



ドサッ!!



気が付いたらベッドに押し倒されていた。

恐る恐る目を開けると、


「!!」


私の上に乗っている風斗様。


女の子のように押し倒され、両手首を押さえつけられる。

う、動けない…っ


「え?あれ?…風斗様??」



「ちょ、風斗様、重……んンッ」


突然口が塞がれた。

え?何この柔らかいモノは…?


本当に若い頃からずっと風斗様に付きっきりだった私にとって、

誰かと恋愛関係になるなんてことはなく、


「これがお望みなんだろ?」


当然キスなんてした事ないからしばらく何が起きたかわからなかった。


ちゅっと音を出して、唇は離れて行った。

そこ何をされたのに気が付く。


顔が、体が、私のすべてが一気に燃えたように熱くなった。


「か、ざと…様……!」


ケホケホと咳き込む。

初めての経験で、離れるまで息を止めていた。


そんな俺を見て相手はくすりと妖艶に笑う。

でもそんなのお構い無しみたいで再びキスをしてきた。



今度は舌付きで。




ヌルリとしたものが口に入ってきて思わず背中がゾクッとした。


「ふぅ…んッあぁ…」


歯列をなぞられ、舌が触れ合う。

最初はびくびくしたけど、風斗様は上手で、舌も噛まずに済んだ。


(風斗様…こんなに近い…)


こんな状況なのに、そう思うだけでどんどん体が熱くなっていく。

本当に…ヤバイかもしれない。


「…なに?キスだけで感じてんの?」


ようやく離れたかと思うと、頬を撫でられながらそう聞かれる。


「あっ…そん、なことは…」


するすると首筋に降りていく指がくすぐったい。


「ふぅん…ここ、こんなことになってるのに?」


えっ?っと風斗様の視線をたどってみると…


布ごしからでもわかるほど勃ってしまったアレがあった。



「あ、やぁ…これ、は…」

「まぁ、お前変態だからなんとなくはわかっていたけど、ここまで淫乱とは…」


そう呟きながらカチャカチャとベルトを外し始めた。


「あ…やめ………!」

「いいじゃん、お前童貞だろ?俺がありがたくもらってやるから感謝しな」

「そ、そんなぁ…風斗様…っあ、あれ?」



その時、あることに気が付いた。

風斗様がおっしゃったセリフがどこかで聞いたことあったからだ。


「あの…風斗様…これってもしかして……」


恐る恐る聞いてみる。

するとようやく気が付いたか。とでも言いたげな悪笑みを浮かべた。



そうキスされてから今までされたことは、

全部、あのBL本と、同じ…内容……。



私が気づいて、風斗様はさらに楽しそうに笑みが増えた。

くっくっく…と声がこぼれる。


と、小説を俺に見せつけてきた。


「俺の特技は速読。つまり全て把握済み。そこで質問だ。次に俺は何をするでしょうか」


え、っと、この次は、この次は………


「わ、私のベルトで手を縛る……?」

「……正解」


その言葉と同時にシュッとベルトを抜き去った。




そして手首をベッドの柱に縛りつけられ、いよいよ動かせなくなってしまった。

次にワイシャツのボタンを丁寧に外していき、左右に開けば肌が露になる。


「やっ風斗様ぁ…!」

「凄くいい眺めだな。なぁ八重?」


恥ずかしくて体をよじる私を面白そうに眺めながらまた私の唇を優しく噛んだ。


それだけで胸の突起はぷっくりと膨れ上がった。


(…や)


ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!


ちょっとこれ本当に小説通りなんですけど!!

いつ読まれたか知らないけど流石毎日漫画を読んでいるだけありますね…(うっとり中)。


というか私の髪を触ってクスリと笑うなんて、

萌殺される!!


なんて、こんな状況にも関わらず悶える私はどうかしている。

股間のふくらみも増す一方で、目の前の男はそっと撫でて反応を楽しんでいた。


「あぁ…風斗様ぁ…」


でもひとつだけ気に食わないところが…





私は風斗様を攻めるのが長年の夢でした。

小説だって抱くのは執事です。

だから私も同じようにこのご主人様を抱きたかった。



が、今私は下にいます。

しかも手首縛られてます。肌露出してます。


………これって…


「私が、風斗様に処女をあげるということですか…?」

「は、お前今頃なに言ってんの?当たり前じゃん」


ガーンΣ( ̄□ ̄;)

あまりにあっさりそう言うから一瞬固まってしまった。


「え、やです!だって長年のゆ…小説ではご主人受けじゃないですかぁ!」

「だから?」

「え、だからって言われても…ッ」


その時ビクンと跳ねる身体。

風斗様が胸の飾りをつまんだのだった。


「こんな感じてる奴がキャンキャン言うんじゃねぇよ。

てめぇはこうされるほうが好きなんだろ?あぁ?」

「あぁ!!だ、だめ、ご主人様ぁ…っ!」


ぐりぐりと足で大事なところを刺激され、おもわず声を上げてしまう。


そのうちに、風斗様が私の意見を聞いてくれないのだとはっきり悟った。

涙が出てくる。


でも、快感にはあらがえなくて…。



(風斗様はいつから、こんなドSキャラに…?)

(私の知っている好きな風戸様は一体どこへ…?)



「さあて、夜は長いぜ。そろそろ本番と行こうじゃん」






それからも忠実に風斗様は小説の一部を再現し続ける。



ズボンを下着ごと脱がされ、

1回イかされ、遂に体まで繋がってしまった。


始めは痛かったけど、痛みと快楽は紙一重とはよく言ったもの。

ピストンされるうちにもっと突いてほしいと無意識におねだりをしてしまう。


でも…


(風斗様からこんなことをしてくれるなんて、嬉しいはずなのに………)


胸が苦しくて、何かが足りなくて……。


彼は、私の反応を見て遊んでいるだけ…。

そこに小説のように愛は無く、ただただ相手も快楽を求めるだけだった。



グチュグチュと私の奥で音がする度に風斗様は息が荒くなる。


「はぁっきつ…おま、やばいって…」

「あっあぁ、か、ざとさ…まあぁっうぁ…」


突き上げられると嫌でも高い声が出てしまい、それを聞かれてると思うと

恥ずかしくて仕方がない。

そのとき風斗様が体勢を整えたかといきなり動きが早くなった。


「あ、あ、あっあ、あ、ああっかざっとさま、かざと、さ、まぁ…!」

「あぁ、もう、がまんできねえ…っ」


もう私はおかしくなりそうで、ただただ愛しい人の名前を呼ぶことしか出来なくて…。


「…っ出すぞ…!」

「え、かざ…やっぁああぁぁぁっ…!!」







…それから後の記憶はありません。



だけど小説にはないのに、意識の置く不覚に届いた声。







風斗様は笑っていました。




読んでいただきありがとうございます!




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