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Chapter 1 ~風斗様side~



「ただいまー、八重」


夕方。高校から帰宅。

今日は珍しく部活がない日で(俺の中では学校は部活がメイン)くそつまんなくて早く帰ってきたのに、



シーン…



返事が返ってこなかった。


「?あいつ出かけてんのか」


スマホを確認しても外出通知は来てなかった。

ま、八重の事だから忘れてたんだろうが。


執事の八重は黒髪で男のくせに後ろで一つに結わえている細身の男だ。

なんか弱気で、俺に口答えもできないやつ。まぁ、お坊ちゃまの俺に口答えなんて許さねーけどな。

そして、今朝みたいに寝坊したり、連絡を忘れたり、ちょいちょい抜けているところがあるのだ。

優しいっちゃ優しいんだけどな。でも、優しいって一歩間違えれば都合のいい人にもなるし。



「…部屋にでもいるのか?」


もしかしてまた寝てるのか?

そう思い、八重の部屋に向かう。

そしてドアを開けるとそこには…






「…いねーじゃん」


やっぱり八重の姿はなくて。

ポリポリと頭を掻く。



「そういえば俺、八重の部屋ってあまり覗いたことないな」



一人暮らしをし始めて1年弱。

ふと、八重の部屋がどんなのか知らないなって思った。

だって、掃除は全部あいつがするから入る機会なんてほぼ無いし。

今日はたまたま八重が起きるのが遅かったから入ったけど、その後すぐ学校行ったし。




…。


その時、俺の中に黒い感情が芽生えた。


「うしし、色々見てやるか!お宝見つけちゃうぞー」




まずはタンス。

でも、スーツが何着か入っているだけだった。


「ちぇっつまんねー。大人のおもちゃとか隠しとけっつーの」


舌打ちをして移動する。


次にベッド付近。

朝、俺がめくった布団は綺麗に整えられていた。


几帳面なやつ。俺なんて直したことねーよ。



「よいしょっと。ベッドの下になんか置いてねーのか?

あいつも男なら本とか一冊くらい…」


かがんて懐中電灯で照らしてみる。

ベッドの下。ベタだが何かある可能性は高い。

その時ベッドの中心当たりに何かがあるのを見つけた。


「へへへ、みーっけ♪」


よーし、これを使ってあいつを苛めてやるか。

なんてことを考えながら俺は手を伸ばしてそれを引き寄せた。


そして見たが…。




「……なんだコレ」


古ぼけた一枚の写真だった。


ところどころ黒ずんでたが、誰が写ってるのかすぐわかった。

だって、この人…


「昔の俺だし」


そこに写っている子供の俺は、肌が白く、頬は紅色で睫毛は女の子並みに長かった。

はっきりいって今の俺とは全然違ってかわいい(いや、まじで)。


「あ?これ八重か?まだ若けぇなぁ」



一方八重は今よりずっと血色がよく、穏やかに微笑んで俺と写っていた。

まだスーツに着られている雰囲気がある。執事になったばかりの頃だ。

俺を抱っこして仲良さそうにほほを寄せ合っていた。



「ああ、こんな時代もあったなー」


もう遠い昔のように感じる。

写真をひらひらさせて思い出に浸る。


「………ん?」



てか、



なんで俺の写真ーーーー!?





ばっともう一度写真を見る。

なんであいつはこんな写真を持っている!しかもベッドの下にまで隠して!



「なんであんだよ!?昔の写真は全部家(実家)に封印してあるはずなのに…!」


うろうろして理由を考える。


ハッ


あいつ勝手に持ち出した…のか…?


家を出るとき、何を持っていくか全部確認したのに、この写真は見た覚えがない!

つまり、あいつはこっそり持ってきたのだ。



「けっ!ご主人に隠して持ってきた罰だ」


ビリリリッ


なんとなくむしゃくしゃしたから写真ビリビリに破いて捨てた。

そして窓の外から風に乗せてひらひらと舞散らした。


「さようなら〜昔の俺たち〜」


ばいばいと手を振って勢いよく窓を閉めた。

でも、落ち着かなくて頭をかきむしる。


「あ゛ーもう次次!!えーどうしよっかなー…お」


あいつの化粧品でも見ちゃおうかな。

なんの香水を使ってるのだろうか。

いつも側寄るとあいつ、いい香りするし。

それがちょっとむかつく。


「そうと決まったら早速探索するか」




ウキウキと台の前へ。

が、ひじょーに残念なことに、


やっぱり化粧台も綺麗だった。


鏡はちょうピッカピカ。


姑みたいにつーーーーっと指を滑らせても。


「…ちっ」


ホコリひとつついてなかった。


「しゃーねー。じゃ、引き出しの中を拝見しますか」



左にある引き出しを開けようとする。

が、


「あれ、なんか引っかかってんのか?この、この!」


力任せに引いてもなかなか開かない。

ちょっとイライラしながらも、ガコガコ何回か開け閉めして、ようやく開いた。


「ったく、直しとけよ…」



改めて、引き出しの中を覗く。


そこには…


「なんじゃこりゃ」


入っていたのは少しの香水と、



「…本?」


ご手寧にカバーまでかけてある。


「なんでこんなとこに入れてんだ?本棚はあっちに…」


なんて呟きながら何気なくカバーを取って表紙を確認する。


その時俺は目を疑った。

なぜかって?


だって本のタイトルが、



『ご主人様と執事の禁断の恋♡〜僕だけを愛してが命令!!〜』



「………ハァ!?」




何このセンスの欠片もないタイトルは!

絵だってショタ系のご主人様を執事が後ろから抱きしめ、服の下から手を入れている構図で、なんだか安っぽい。


いや、内容は凄いとか?


そう思い大雑把に読んでみた。


『執事、ご主人様に惚れる

→ご主人様、執事の気持ちに気が付かない

→無理矢理抱く

→執事責任をとって出ていこうとする

→ご主人様、本当の気持ちに気付く

→執事を引き止め告白する

→めでたしめでたし♡♡♡』


ありきたりの王道じゃねーか。

てかこれBLだよな?


つまり男同士のラブだ。

クラスの腐女子が周りも気にせずキャーキャー読んで薄い本を描くあれだ。


「八重なんでこんなん読んで…」


そこでピーンとくる。

もしかしてあいつ、そっちの道行っちゃった系ですか?


なーるほどねぇ。

それならこんな本を持っているのも納得がいく。

八重がBLに興味もつなんて思ってもなかったぜ。


パタンと本を閉じる。

そして不敵な笑みがこぼれた。


「ふふ、ふふふ…!」


面白いじゃねぇか。

ちょうど俺も男とヤるの興味があったんだよ。


「ご主人様が遊んでやるよ、八重」



そう妖しい笑みを浮かべると、本を持って部屋を出た。



読んでいただきありがとうございます!




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