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異世界介護  作者: デグ
1章 異世界へ
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龍の国の内地への旅の準備

夜勤明けでそのまま日勤、少し寝て夜勤を繰り返す。

そんなこともしていたからか、徹夜は得意だった。

ただ、脳の細胞がひとつひとつ消えていくのを夜が明けて朝日を浴びるたびに感じていた。


けど、そんな風に暗い夜が次第に白んでいく姿も嫌いじゃなかった。

そのたびに自分が浄化されていくような、新しいなにかに切り替わっていくような気がした。


いや、きっと疲れなんだろう。

缶コーヒーを飲んで、カフェインが効いていたのもあるのかもしれない。

それでも、嫌いじゃなかった。

限界はあるが。


この世界に来てからのこと、メアの言葉、両親のこと、自分の過去、オレンジの話などなど

頭の中でシーンが現れては消えてを繰り返し、寝付けずにソファから立ち上がり、樹の外にでる。


明るい中のろうそくは、ただの火だが、暗闇の中のろうそくの火は小さな太陽に感じるように

遠くの白い光が冷たいくらやみの霧を払いゆっくりと広がり、大地を温めていくのを感じた。


ゆっくりと久しぶりに考えたからか、やや身体が重い。


この世界は何なのだろう。

夜はあり、太陽は昇る。時間経過はある。自分がいた世界と同じように。

けれども違うところはたくさんある。自分がヒトと呼ばれる存在であること。

魔法のようなもの、律法というもの。罪落ちという魔物のような存在。

神の実在、、これはまだわからないけれど。創世をした神がいるのなら。

この世界が、地球がもつ役割に似すぎていることの説明もしてくれるのだろうか。


頭が混乱している。正直、思考がまとまっていない。

でも、前を向いて進むだけだ。そして、メアに合う。

そのためにも、この世界のことを知る。

この世界のことを、よく知っていそうなオレンジに教えてもらう。

龍の国の住居地まで行く道中で。


さて、身体を伸ばしておこうかな。


腰痛予防のため、身体を伸ばし、ほぐす。

そして、スクワットや、腕立てなど、筋肉を鍛える。

眠気を飛ばせるし、身体も鍛えられ体力を増やせる。一石二鳥で夜勤中はよくトレーニングをしている。

体力は筋肉だ。筋肉でなんとかなることも多い。介護はそういう場面が多い。

人間関係でドロドロになりやすい介護業界。勝手に気に入られて、勝手に嫉妬され、勝手に失望される。

自分の筋肉を信じることで、精神の柱を立て、日々、高齢者の方に、仕事にちゃんと向きあえる。


と、ぼやけた思考で筋トレを行いながら夜が明けるのを待っていた。


「おはよー、レイって、な、なにをしてるんじゃ?」


ふぁあと眠そうな顔でオレンジがドアを開けた時、自分は腕立て伏せに勤しんでいた。


「おはようございます。オレンジさん。夜いろいろ考えていたら、眠れなくなって。それで、筋トレをしながら、オレンジさんが起きるのを待っていたんです。」


「えっと、、、、まあ、いいわい。レイはレイじゃからの。あ、敬語は肩が凝るんじゃ、ワシと主の仲じゃ。やめよ、やめやめ。」


オレンジがやれやれといった様子で、首を振りながら話しかけてくる。

「レイって、クールで穏やかな好青年と思っていたのじゃが、案外、少し、、、変わっているところもあるんじゃな。なんだか、少し安心したわい。安心したとともに、ワシの中の一部に少し不安を与えたがの。さて、準備をして、出発するのじゃ。おおよそ1週間はかかる。食料さえあれば何とかなるじゃろ。いま、家にある食料はどのくらいあるじゃろうか。あ、水は大丈夫じゃ。あと、肉なんかは現地調達でよいじゃろう。野菜や穀物類が必要数あればよい。」


棚や食物庫をあらためて確認する。


「そうで、、そうだね、、たぶん3日分ほどはあると思う。でも、メアと一緒に食物を採取するために狩りをしていたりしたから、食べれるもの、食べれないものはわかるよ。だから、もてる分だけ持って、進みながら食べれるものを収集していくのはどうかな。」


そう、この一年間。家庭のことをして、ただ過ごしていたわけではない。

狼たちに襲われた経験もあるため、あまり必要以上に外には出ないようにしていたのだが

食物がどうしても足りなくなったとき、意を決して採取をしに外に出かけた。


片っ端から採取していった。

知らない土地で、よくわからない植物、食べれるのか食べれないのか、わからないものばかりだったが

メアがいつの間にかそばにいて、食べれるもの、食べれないものを分けてくれていた。

思えばあの時、お互い言葉がわかって、話せたんだよな、、、。身振り手振りでメアに食べれるものか食べれないものなのか、わかってもらおうとしていた過去の自分に呆れる。


それから、狩りを学んだり、罠を学んだり、毒のあるなし、危険度が高い動物、いや、今思うと罪落ちっていう魔物についても学ぶことができた。家事やオレンジの身の回りのことが終わった後は、樹の中の図書庫でこの世界の文字についてなんとか読もうとしたが、どう発音していいのかわからないし、どういう文章の形態なのか、わからないため本は頼りにならなかった。頼りになるのは、メアだけだった。だから、メアが話せるとわかった時には驚きもあったが、悲しみもあった。話せたなら、、もっと早く言葉を交わしたかった。感謝もまだ言えていないのだ。


「ほお、それはすごいのお。それもそうじゃの、食糧庫にある食物や畑の作物だけでは長い期間暮らすことは難しかっただろうしの。さすがじゃな、レイ。」


オレンジが近くに寄ってきて、手をぐっと上にあげ、自分の頭をなでようとする。すっとよける。


「そしたら、いまある食料と調理道具や野宿用の道具をまとめて出発できるよう準備しますね。」


オレンジは頬を膨らませむくれていたが、うんうんとうなずき、肯定していた。


屈強な男性一人がすっぽりと入るような大きなザックに荷物を詰めていく。

背負うとずしっと重みを感じるが、人間のように暴れないだけましだ。

訳80㎏もある認知症の男性を、持ち上げてはケガをしないようにベッドに移乗したり、寝相がそのままだと、血流が回らなくなり、褥瘡という床ずれを生じるので、夜に2時間ごとに体の向きを変えたり、家族の要望だからと、自分の足で立つことのできない方をトイレに誘導して立ってもらうが、急に暴れて座り込んだりして、それを支えたりする。


そんな毎日だったから、静かな荷物はとてもありがたい。


オレンジにも簡単な荷物を持ってもらう。

太ももが出ているオーバーオールの上にオレンジのローブ、キャメルのキャスケットを被り、荷物を入れたメッセンジャーバックのようなものを後ろで背負いそわそわとしている。旅行に行く前日の子供のようだ。


こんな服装でよいのだろうか。旅行ではないと思うのだけれども。

これから入国審査のような、厳しいところにいくのではないのか。

といぶかしげに見てしまったのを気づいたのだろうか。


「大丈夫なのじゃ。正式な服は、空間を拡張するトーラを使ったこのカバンの中に入っとる。なんじゃ、その目は。残念じゃが、主のカバンのように大きなものには使えぬ。ワシの力で維持できるのは、ワシのこのカバンの大きさくらいまでじゃ。それに大切なものだけをしまっておる。いざというときの品も、じゃ。じゃから、仕方ない。仕方ないのじゃ、レイ。太古にあった、トーラ。物自体にトーラを循環させ、永続的にその効果をもたらす、そんなものを知っていれば話は違うがのぉ。眉唾ものじゃ。そんな便利なものがほいほいあるものか。それでは行くかの。」


鼻歌のようなものをふんふんと鳴らしながら歩き始める。


やれやれ、、、。


そうして、準備を整え、龍の国の居住区へ向かうのだった。



別章 佐守三奈


ここは、、、?

頬に感じる砂の感触、濡れた服の不快感とともに目が覚める。

目が覚める、、、?私は、、、仕事中だったような、、、。


「ミナ、ようやく起きたんだ!よかったぁ~、うまく起きなかったらどうしようかと思っていたんだよ。」


目を開けると、自然界ではありえない色のキツネ、青色のキタキツネが目の前にいた。


えっと、、これはなんの冗談なのだろう。


「ミナ、ワタシの名前はメア。覚えてる?って正しく覚えてるはずないよね。ここは地球とは別な世界。その名も」


「そういうのは、ちょっと置いといて。この世界にレイ君は来てるの?来てないの?」


そう、それを確認しないと。私がこれからどうすべきかが決まらない。


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