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異世界介護  作者: デグ
1章 異世界へ
5/7

オレンジと龍の国

柔らかな絹のような光の感覚を感じて、目を開ける。


「よっ、起きたかの?思ってたより早かったの。」


目を開けるとそこには、思わずどきっとしてしまうほどの綺麗な女性がいた。

金色のさらりとした髪は後ろでバレッタで留められている。前髪は左右で振り分けられており

耳の横をすらりと猫じゃらしのようにふわりと垂れている。


すらりとした体形だ。

身長はおおよそ160㎝ほどだろうか。

ゆったりとした白いリネンの服に紫のガウンを着ている。


椅子に座り、ベッドに横になっている自分をそっと見守ってくれていた。


「なにをじっと見つめて?気恥ずかしいのお。」

と照れたように髪を撫でつけている。


「あらためて聞くが、ぬし。名前は何と言ったかの?」

と聞かれるが、むしろこちらがいろいろ聞きたい。

老婆は? メアは、話せて?それに、両親がどうとか、、、。

ぐるぐると考えが浮かび、急な思考の多さに頭がぐるぐるして、気持ち悪くなる。


「のお、話したくないのか。」

きょとんとした顔でこちらを見てくる。

純粋な疑問の表情だ。


それから、老婆あらためオレンジに自己紹介と、これまで自分が体験したことを話をした。

オレンジは、ふむふむと時折あいづちを打ちながら長い話を聞いてくれた。


「なるほどの。主、ヒトじゃな。ヒトが現れたのはいつぶりなんじゃろうな。ワシが知ってるのは、昔申の国で悪さをしていたと聞いていたくらいなんじゃが。ん?不思議な顔をしているの。それもそうじゃな。いろいろと説明したいのぉ。長い話になるからの。じゃから、、、。」


ここできゅるきゅるると水が排水溝に吸い込まれる音が聞こえる。


「ごはん、食べながらにしてくれりゃ?」


夕食を作ることとする。いろいろと試行錯誤して調理をしていたため、調味料がどんな味で

どれがしょぱくて、どれが甘いのかおおざっぱにわかっていた。今回作るのは、魚の簡単なムニエルだ。


老婆の時と違って彼女は自身で食事を食べた。食事の介助をしなくていいのはずいぶんと気が楽だった。


「こりゃ、うんまいのお!主、料理も上手なのか~。いつも味が薄いし、どろどろだし、てっきり下手なのかと思っていたぞ。」


とぺろりと食べ、おかわりまでしたオレンジが、、、ん、なんだって?

まさか、、、記憶は、、、?


「いまさら、なーにを、顔を赤くしておる。そか、主覚えてないと思っていたか。いやー残念。ぜんぶ覚えておる。ので、なんにもいまさら恥ずかしいことはないわい。」


「え、、、でも、認知症の症状があって、、、なんで覚えているんですか?」

そう、認知症は治るものもあるけれど、基本的には治らない。もし頭部のなにかしらの病気だったとしても

後遺症がでる。身体の麻痺とか、なにかしらの障害が。メアがそれらも直してくれたのだろうか。そしたらすごいことなんだけれど。


オレンジがはて?という顔をしていたので、説明する。得心いったような顔をしてから

「おそらくワシが、老婆となっていたり、ニンチショーという症状がでていたのは、頭部にかけられた律法、トーラのせいじゃな。これが悪さをしていたのを、解いてくれたんじゃろう、あのキツネのような罪落ちが。」


まてまて、トーラ?罪落ち?

新しい単語が多くてわからない、そもそも、オレンジの言葉が自分にわかるのはなんなんだ。

疑問が多くなりすぎて、頭が疲れてきていた。


「ごめんなさい、オレンジさん、、。話の途中なんですけど、、、わからない単語が多すぎてオレンジさんの説明も正直内容が入ってこないんです。トーラ?罪落ち?それって?」


また、あーーという顔をして


「そうじゃの。いろいろと話がこんがらがったの。トーラとは、主の世界でいう魔法。罪落ちは魔物。と置き換えてもらったらわかりやすいの。すまんの。わかりづらくて。空気の魔法を使って、主の世界の言葉とワシの世界の言葉をつなげているんじゃが、どうも翻訳しきらない単語もあるようじゃ。つどつどきいてくりゃね。」


トーラが魔法、罪落ちは魔物、、、少しわかりやすくなった。

メアが魔物で、魔法でオレンジの頭部を治してくれた。それで症状が落ち着いたのか。

でもどうして、若い姿に?


「オレンジさん、すみません、質問いいですか?どうして、老婆の姿に、、いや、いまの姿に?もともとはどっちが本当の、、、?」


「ふむ、いまがワシの本当の姿じゃ。かわいいじゃろ?赤くなって、、、照れるわのぉ。ごほん、おそらくトーラの呪いじゃろうて。トーラの力の基、この世界を包む力の源の因子ペカタム因子、それを限度量以上に注がれたのじゃ。正しい量で、正しく使用できていれば都合の良い力じゃ。しかし、、、、。身に余る力を使おうとしたら、罪落ちという魔物になる。ワシは歴史研究家であり、あわせて律法研究家でもある。ある程度の技術はあるから抵抗があるのじゃが、罪落ちにはならなくとも、大幅に老化してしもうた。たぶん、死んでいたじゃろう、主が来なければ。本当に、ありがとの。」


ぺこりと頭を下げ、そのままずっと頭をさげている。


「あ、あの、オレンジさん、、、。自分も、オレンジさんに助けられたので、こちらこそ、本当にありがとうございます。」


と感謝の気持ちを込めて、頭を深くさげる。


「そうじゃったぁ。ワシ、主を助けてたんじゃ。なにをしてたんじゃ、あんな焦げた服を着て。ワシの家の前で寝っ転がっているのを見つけた時、ひさしぶりに死んだ者を見たと思ってびっくりしたわい。」


「はい、本当に助かりました。狼に襲われて、、、。身体を燃やしたので助かりました。」


「へっ?は、はぁ?身体を燃やした?駄目じゃぞ。命を試そうとするのは。まあ、今回は服だけ燃えただけで無事でなによりじゃったの。運がよいぞ、やつらに襲われて無事で。追い払うだけで精一杯じゃった。もしかするとその時に呪いをもらったのかもしらんの。」


ん?服だけ?いいや、自分はあの時、覚悟して燃やした。自らを。

それこそ、命を燃やす覚悟で。オレンジの家の前までも来ていない。

その場で倒れて意識はなくなっていた。身体を治して、ここまで連れてきたものに心当たりはひとつ。

たぶん、メアだ。なにものなんだ。口を開いてメアについて聞こうとしたが、その前にオレンジが言葉を出していた。


「主、これまでの経緯は聞いた。これからはどうするんじゃ?」


妹のシヅルが心配だ。元の世界に戻りたい。でも、メアの言っていた両親についてのことも気になっている。まずは、いなくなったメアを探したい。”もう一方のほうにいる”と言っていた気がする。

もう一方の心あたりはない、、、。いや、まさか、、。


「シヅルがこの世界に、、、?」

シヅルがこの世界に来ているなら、一刻も早く助け出す必要がある。それこそ、なんにかえても。


「オレンジさん、、、。メアって何者なんです?」

メア、、、事情を聴かなければならない。場合によっては許さない。


「メア、、、主とともにいた青いキツネ族の女性じゃな?ワシも主の横になにかを待つように座っていて、家まで一緒についてきたのを覚えとるよ。それ以外は全く知らんの。しいていえば。同じ名前は多いが、海の神と同じ名前。というくらいじゃの。ワシの呪いを解くくらいじゃ。まさか。もありうるが、それにしてもなぜ。とは思うの。ほかの神と違って、なにせ伝聞だけで、実際に姿をみたという記録は、とんとない。伝聞も数えるほどしかない。噂レベルに近い。ほんとに海の神じゃったらすごいことじゃ。興奮するのぉ。いろいろ教えてもらいたいものじゃあ。協会の伝えている歴史にある穴について、律法について、ペカタム因子を使うことで罪落ちが生まれるのか、ここまで生活に密接し、体系を整えているものが、魔物化を止められないのか。この世界はわからんことが多すぎる。そして、それをわかるための知識が、なぜか足りぬ。長く生きたワシもわからぬ。知りたいのじゃ、知りたい。それこそ、すべてをかけてもいい。知りたいのじゃ。わかるか、レイ。このもどかしさが。わかりたい。この世界を知り、このなぜを解決して、初めてワシはこの世界に生まるような気がするんじゃ。」


オレンジが普段から温めている願いを流れ星にお願いするときのように熱を込めた口調でペラペラと早口で話す。その目はきらきらと輝き、頬は紅潮している。オレンジにとって、その願いはまるで好きな有名人を見るときと同じ興奮をもたらすようだ。


メアは、めったに姿を現さない。それは分かった。

「オレンジさん」


まだ意気揚々と自分の知りたいことについて話を続けているオレンジをさえぎるように声をかける。


「メアのことをもっと知りたいんです。どうしたらいいでしょうか」


「そうじゃのう」


顎に指を置き、少し考えてから

「偶然、また会うというのは期待できないじゃろう。確実に知る。となれば同じ神に聞くのがいいじゃろう。

救世協会の創立者にして、現在も協会の代表である、空の神であるといわれるロカス様に。」


神という創成を行う存在が、確かに存在することへの違和感を感じた。

が、この世界について、自身が歴史探求をしていると話すオレンジが、自身よりも知識をしっているだろうと

いう人物だ。あって聞いてみる価値は十分にある。


「じゃが、もちろん、一般人が気軽にあうことはできないのじゃ。もし会えるとしてもこの世界のリーダーである12支臣たちくらいじゃろうて。」


「その、12支臣について、教えていただいてもいいですか?もし、ロカス様にお会いできるのであれば

12支臣の方々にお願いをしたいのです。簡単なことでないのは、わかっているつもりです。会うために必要なことがあればなんでもします。」


そう、なんでもする。必要なら。


「そう、、、じゃのう。ワシの目的と一緒じゃし、もちろんよろこんで手伝いたい。むしろ手伝ってほしいのじゃ。

主、ここが龍の国ということは知っているじゃろうか、、、ないの。12支臣はそれぞれ国をもっとる。国に入ること事自体がたいへんにめんどくさい。それぞれに入国基準があるからの。ここ龍の国が一番めんどくさく、最も入国できないのじゃ。ワシも大変な苦労と時間をかけていま龍の国の領地にいる。数十年経っても

まだ龍の国の領地に入れただけで彼らにあうことはできていないのじゃ。しかし、そのめんどくささに見合う様々な利点がある。それに、今回は、、。」


ちらりと自分を見て、こほりと咳払いをする。

「主がいる。なにせヒトじゃ。彼らも相当にきになるじゃろうて。どんな意味であってもな。」


なら、それでいい。


「覚悟、、、しています。会いにいきましょう。ひとまずの予定は龍の方たちに会うことですね。あと、、、

すみません、龍?という方々がどんな方たちなのか、12支臣というのがどういうものなのかは

あとで教えてもらってもいいでしょうか。」


龍がなんなのかはわからない。言葉の示すそのものなのかもしれないし

たとえとしてのグループの名前なのかもしれない。

言葉の通りだとしたら、、、。と想像すると少し怖いが、会うことで前に進むなら、会いたい。


「ふむ、もちろんじゃ。教えてあげよう。じゃが、今日はもう夜も深い。それに龍の国の居住地に行くまでの旅路も長い。道中おいおいと話すことにしようかの。」


ふああとあくびをし、背伸びをしてオレンジが話す。

先ほどから目をこすっていたが、眠たかったからだろう。


ベッドは一つしかないため、もちろんベッドはオレンジのものだ。

自分は樹の中のソファで寝ることにした。


食器を片付け、ドアを開け家をでる。

魔法なのだろう、いや律法、トーラ?か。ろうそくの明かりほどの、橙色の淡い光が

ウッドデッキや、樹までの道中に上下に揺れフワフワと浮いている。


「それでは、おやすみなさい。オレンジさん。また明日、よろしくお願いします。」

と扉を閉めて、歩き出し、少ししてから、レイー。と自分を呼ぶ声がして後ろを振り向く。


いつの間にかに着替えたのか白色の絹のようなさらりとしたワンピースのようなネグリジェに着替えたオレンジが扉から少し身を出していた。家の中からの明かりで表情はよくわからない。


「敬語はやめるのじゃ。ワシと主の仲じゃ。それこそ裸を見られた、仲じゃ。」


くつくつと笑ったように話しかけてくる。


んん?それは、、、。

「して、話を戻すが、ワシは覚えておる。主との生活のぜんぶじゃ。」


いや、それは、老婆の時に手伝いが必要だったからで。

まさか若い女性になるなんて思いもしない。


なんとも思わない。必要なことだったから。


「いろいろと本位でないこともあった、、、。その、、、仲のよい、男女の、それ以上に。じゃ。まあ、なんじゃ。だから何ということもない。だから、これまでは水に流して、これから、土台から仲良くなっていこうの。レイ。まあ、必要だったら、裸くらいは見せちゃるからの。もう見てるしの。恥ずかしさもないわい。」


じゃあ、おやすみー。

とばたんと扉を閉められる。


暗い夜道、早くなる鼓動と並行し、足も速く、いつの間にかソファで横になっている。


何言ってんだ。

勘弁してくれよ。

そんな、癖はない。ない。ないけれど、、、。


柔らかな女性の匂いとふんわりとした身体を思い出す。

いやいや、、、勘弁してくれよ。


おれは女性の経験はない。

女性との交際に到達したことはない。そんな余裕はなかったし考えたこともなかった。


枕が合わないのか、その夜は、様々な考えが浮かんでは消え、浮かび。

眠れずに、夜が明けていた。


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