第68話 オークのエルンヘイム解放戦⑤
魔王軍立志伝ワールドにようこそ(`・ω・´)
俺とグリッシュはギルドマスターと合流し魔王城の攻撃を継続した。
マスターのフェルンデルはよくもまあこんな少人数で俺達が合流するまで戦線をもたせたものだと思う。
城攻めという事を抜きにしても部隊は長く伸びきっており元々少ない人員が更に手薄になっている。
この一点だけを見てもギルド部隊は個々は優秀でも戦争には適した人材ではなかった事が分かった。
言葉は悪いがその烏合の衆を上手く率い、押したり引いたりして上手く操った。
レニーが彼の事を有能だと言っていたがその通りだと分かった。
何しろ門を潜った途端に俺達自身も四方八方から魔法攻撃に晒されたのだ。
いや、知ってたよ、知ってた。
エルンヘイムの魔王城は魔王マルファスが技術と知恵の全てつぎ込んで作り上げた名城なのだ。
簡単に攻め落とせるなんて事は無い訳でこれが平常運転なのだ。
それにしても……グリッシュが加わったお陰で戦線が非常に安定した。
四方八方、死角と言う死角から放たれる攻撃魔法を完全魔法防御でシャットアウトしたのだ、しかも歩きながら。
通常、強力な防御魔法は展開すると動けなくなる。
これだけを話してもグリッシュの凄さが分かるだろう。
実際に敵兵はグリッシュの姿を認めるなり恐慌状態になり騒いでいる。
「なんだっ! あれは?!」
「魔法がっ、防がれてる?!」
「撃て、撃て――っ、あんなもの長くもつものか!!」
「ダメだ、逃げろぉ――っ!!」
そうだよね。
難攻不落と思っていた魔王城がたった一人の魔導士になす術もなく落とされようとしているのだから。
「あなた方は良く戦いました。もう休みなさい。この城は兄様の物……」
グリッシュがそう言って両手から光を放つと一瞬の後に城中が沈黙した。
恐らく彼女の魔法で俺達を捕捉している敵兵を全員眠らせたのだろう。
今回の彼女の魔法は加減が上手くいったのか、もしくは城の警備兵なのでレベルが高かったのか永眠する敵兵は少なかった。
それにしてもとてつもない数の敵に対しての攻撃だが彼女にとって殺意を向ける相手を逆探知しマルチロックするなんてのは朝飯前だ。
「敵に回したら手の打ちようが無いですね」
「想像したくもないです」
ギルマスの思わず出た独り言に俺も同意した。
そう言う俺自身も1度その身に受けた魔法なら同じものを再度受けてもすぐに耐性が出来るんだけど……俺も割と人外だよね。
ああ、そうだ、俺も魔王候補だったっけ、人外に強い敵が多すぎて忘れてたよ。
「ギルマス、後は俺達がやるので少し休んでいてください」
「なにを言うのです。私はまだ……」
そう言うとギルマスのフェルンデルは後方によろけた。
後ろにいたレニーがそれを支えると彼に拘束魔法をかけて自由を奪った。
「むっ?! 何ですか、この魔法は!? これしきの魔法で私を止めようとしても無駄ですよ! 無駄無駄無駄ぁ――っ!!」
変なスイッチの入ったフェルンデルは全身に魔力を循環させ魔法に打ち勝とうとしたが哀れ更に強力な魔法をグリッシュからかけられ指一本動かせなくなった。
それにしても俺の仲間の女性陣は全く容赦がない。
「誰か! この社畜を後方に下がらせなさい!!」
「直ちに!!」
ナイスな連携でレニーとその部下達は物凄い速さでギルマスを運んで行った。
やはり彼には相当な負担がかかっていた様だ。
現状、城の中以外に敵が見当たらないのでフェルンデルが居なくなりレニーがそれに付き添ってもハッキリ言って大勢に影響はない。
正直な話、俺とグリッシュが居ればこの城は落とせる。
弱点や落とし方を知っていればどんなに難攻不落な城でも結果的に関係ない。
「イナバ様、私達だけで充分です。私達だけで行きましょう。その方が良い」
なんとまあ、グリッシュは瞬間的に俺の思考を読んだのか、はたまた俺と同じ考えに至ったのか、大したものだ。
「……同感だ。頼む」
「わかりました。いきますよ」
グリッシュは俺の右手を握り空間転移魔法をかけた。
目の前が一瞬暗くなり再び明るくなると魔王城が目の前に現れた。
いや、正確に言うと俺達が現れたのか。
「それにしても……こんなに精度の高い魔法が使えるのなら最初から使えば良かったんじゃないか」
「いくら私でも入った事ない魔王城に城壁外から潜入できませんよ。マルファス様の魔王城を知っているイナバ様がいて、それでも敷地内から城にいく程度ですよ」
……ああ、そうか。
グリッシュが守ったのは俺の魔王城だったか。
マルファスの魔王城にグリッシュは入った事はなかった。
なるほど、だから俺と一緒なら城内を転移できたわけか。
「でもイナバ様は魔王城正門しかご存じない様子。だから正門に来ました」
グリッシュは正門を押し開きながら言った。
「へっ? ああ、本当だ。ここは正門だな」
「なので、かなり派手に目立ちました。だから目的は果たせそうですよ」
「つまりは?」
「あいつが近くに居ます。……近くに……居ます」
「分かった」
さっきからビンビンに感じる凶悪なプレッシャーはあいつのものに違いない。
「グリッシュ……と言ったか。今度はこの前の様にはいかんぞ」
あいつは扉の奥に立っていた。
長身の魔導士風の姿は絶対に忘れない、忘れてはならない。
魔王候補のロマリアスの姿だった。
「オークよ。そのノーライフキングを退けたら次は貴様の番だ」
普段、物静かな佇まいで無表情のロマリアスが口元に笑みを浮かべて喜びを浮かべている。
うーん、気持ち悪いね。嫌悪感が凄い。
主のいない魔王城で俺達とロマリアスの激戦が始まろうとしていた。
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