第67話 オークのエルンヘイム解放戦④
魔王軍立志伝ワールドにようこそ(`・ω・´)
俺とグリッシュ、そしてギルドから来たレニーはエルンヘイム東門を強行突破し街の中に潜入する事に成功した。
後方でセレル様が率いるイナバ隊が東門を引き続き攻撃している音が聞こえた。
それにしても……。
本人が居ないのにイナバ隊と呼ぶのは少しムズ痒い気がするが仕方ない。
あの隊は俺が責任をもってエルンヘイムに全員入らせるつもりだ。
その為にも俺達はギルド部隊と合流しなければいけない。
俺達はある場所に辿り着いた。
ここは……。
「本当に……操られていたとは言え暴れたものです」
「グリッシュ、あの時は仕方なかった。気にするなとは言えないが先を急ごう」
「……そうですね。グリッシュ様、先を急ぎましょう」
「分かりました。お気遣い有難うございます」
俺達はアルシーと戦った広場の近くにある地下水路の入り口から地下に降りた。
☆★☆★☆★
薄暗い。
全く、いつまでこの地下施設に押し込まれていないといけないのでしょう。
私は今、数少ないギルドの仲間達と共に魔王城裏門近くの地下水路に居ます。
先程別れたイナバ君がそろそろ東門を強襲する頃でしょうか。
それに呼応して私達も魔王城を攻撃する算段の予定です。
レニーを彼等の元に送り出したので部隊の指揮をとれるのは数人のギルド幹部を私だけの状況です。
ですが、これを失敗する事は出来ません。
最初の一撃を成功させた後、少しの間持ちこたえればイナバ君とグリッシュさんが救援に来てくれるはずです。
グリッシュさん、無事に復活できましたか。
イナバ君には過酷な経験になってしまいましたが戦力的には申し分ない増援です。
実の所、魔王マルファス様より彼とアルシーさん、そしてイナバ君の秘密は私には事前に明かされていました。
驚愕しましたね。
マルファス様は異世界人でイナバ君は次期魔王、そしてアルシーさんはイナバ君の宰相グリッシュさんの器だという話はにわかには信じられませんでした。
ですが次々と起こる歴史的なイベントをマルファス様は全て言い当てた。
惜しむらくは彼は自分が死ぬタイミングまで分かっていたという事。
それまでに自分の出来る事を全てやっておく等という驚異的な精神力をもっていた魔王を我々は絶対的に失ってしまうという事。
幸いだった事は彼と入れ替わるかの様に魔王候補のイナバ君とこの世界最強の魔導士グリッシュさんが私達の元に現れるという事。
事実、イナバ君は話を聞く限り何度も命の危険を潜り抜けてここまで辿り着いてくれました。
本当に……呆れる程に悪運が強いというか神に守られていると言うか……。
「マスター、約束の時刻まで間もなくです」
「分かりました。全員、攻撃準備してください」
私の指示の数秒後に東門の方角から恐らく魔法による攻撃と思われる轟音が聞こえました。
さすがあのお二人の率いる部隊ですね。
私達とイナバ隊はほぼ同時刻に2つの奇襲を開始しました。
☆★☆★☆★
暗くて異臭のする地下水路をひたすら魔王城の方角に走る。
俺はゲーム時代に、グリッシュは未来から来たとは言え元々この国の宰相だ。
道順は互いに頭の中に叩き込まれていたので魔王城に辿り着くのは容易な仕事だと思えた。
そんな油断が俺にあったのかもしれない。
「兄様! 危ないです!」
「イナバ様!」
突然、地下水路から豪快な水飛沫が上がり巨大ワニが俺に襲い掛かってきた。
やばっ! 油断してた!
俺はシャルルの代わりに装備していたメイスを構えたが間に合わない!
その瞬間、巨大ワニは細切れになった。
そして散弾の様な水の弾丸が残骸を消しとばした。
先の細切れはグリッシュの風魔法、後者の水の弾丸はレニーの水魔法だ。
どうでも良いけど2人とも魔法の撃ち出しが速すぎやしませんか。
「兄様、危なかったですね、さあ、参りましょう」
「あ、ああ」
何事も無かったかの様にグリッシュが話しレニーが続く。
あっさりと消し飛ばしたけどあれ、レベル150オーバーのエビルアリゲーターじゃなかったか。
俺一人なら間違いなくあいつの胃袋の中だったな。
レニーも大概だけどグリッシュ凄い!
不意にグリッシュがこちらを向いてにっこりと笑った。
普段、表情の乏しい彼女の笑顔は貴重だし破壊力が凄まじい。
思わず惚れてしまいそうに……、ってこの前からおかしいな。
如何にグリッシュが有能でも俺がここまで魅了されてしまうと言うのは……。
「なあ、グリッシュ! お前、もしかして……」
「……」
あ、顔を逸らしてスピードを上げた。
ギルティだ、ギルティ!
あいつ、やはりチャームの魔法を俺にかけていたんだ。
俺は実は耐性が強いので何度も同じ魔法を受けると段々効力が下がっていくんだ。
これは新たにこの世界に来た時に得たスキル【回復】の複合効果だ。
……と、そんな事は今は良いか。
「おい、グリッシュ! もう俺に魔法をかけるなよ」
レニーは俺達のやり取りを生暖かい瞳で見ていた。
やめて、そんな優しい目で見ないで!
☆★☆★☆★
「せいっ!」
うむむ、魔王城の裏門は内通者の手際も有ってすぐに突破できたのですが第2門で躓いてしまいました。
マズいですね……、思ったよりも対応が早すぎます。
私がいる所は良いのですが城攻めと言う事で隊列が少々伸びてしまいました。
お陰で私が居ない隊列の伸びた部分を攻められて一進一退の攻防となり奇襲の効果は消え失せてしまいました。
エルンヘイムでの戦闘が開始してからというもの、私はミスばかりしてしまう。
私もまたマルファス様に頼り切ってしまっていたのでしょうか。
「マスター! 第2部隊と第3部隊の間に敵です!」
「マスター! 後方から敵です!」
「マスター! 魔力探知に反応! 下がりましょう!」
ダメだ……、部隊は混乱状態だ。
くっ、フェルンデル、痛恨の極みです。
イナバ君達が来るまでもたせる事も出来ないとは……。
「全軍撤退っ!! 速やかに……」
私が今回の奇襲を諦め退却を決断しようとした瞬間の事だった。
ギルドの部隊全体を巨大なオレンジ色の障壁が包み込んだ。
「まだだっ! みんな回復させる! 諦めるなよ!」
イナバ君! 速いですね。
光に包まれたギルド隊は体力もスタミナさえも回復している様に見えます。
これ程の巨大な魔法を複数人同時に展開できるのはあの人しかいない。
「私が魔法で部隊を支えます。未来は勝ちしかありませんよ、頑張りましょう」
グリッシュ様の静かだけど心強い声が辺りに響く。
「マスター、遅くなりました。レニー、帰還しました」
さて、諦める寸前でしたがこうなれば負ける気はしないですね。
反撃に出るとしますか!
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