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魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました―  作者: ヨシMAX
第5章 オークと最後の四天王
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第63話 オークと最後の四天王④

魔王立志伝ワールドにようこそ(`・ω・´)



 さて……現状の確認と行こうか。

 俺の周りからアルシーが居なくなりグリッシュが帰ってきた。

 いや、これは語弊があるか、アルシーは居るがいない。


 あー、もうこれはいいや。

 話せば長くなるから割愛しよう。


 俺達の戦力は俺、グリッシュ、セレル様、ヒルベルダ様、リリア、リーザ、ガンダルフと1,000名ほどの戦士たち。

 ……クラインとクラリスは今は別行動だが、いずれ合流する予定だ。

 あとはギルドのフェルンデルとレインと数名であるが洗脳を逃れた職員が数名いると聞いた。

 彼等も色々あったであろうが、みんな地下水路のアジトまで無事に撤退してくれていると思いたい。


 グリッシュがロマリアスを戦場から撤退に追い込んでくれはしたが、依然としてエルンヘイムは魔王城含めて占領されている状態だ。

 潜入当時は街を占拠している勢力は分からなかったがわざわざ奴が戦場までノコノコ出てきてくれたお陰で黒幕は今やはっきりと判明している。

 現状の戦力で奴等を倒せるかは正直微妙であるが……。


 そんな感じでグリッシュ加入後に街から一度脱出し近くの森に潜伏している。



 「兄様……。大丈夫です、私が居るのです。もう2度と兄様は戦場で負ける事はありませんよ」



 俺が今後の戦略を考えているとグリッシュが俺の側に来て声をかけた。

 こいつ、皆の前では「イナバ様」と呼ぶが2人になると「兄様」と呼ぶ。

 ゲームの頃と同じだけど実際に声で呼んでくれるのはグッと来るものがある。

 ……いや、俺が現実の世界で一人っ子だったのは関係ないぞ。

 俺は断じてシスコンではない。



 「んっ? どうかされましたか? 兄様」


 「いや、なんでもないぞ! お前に兄様と呼ばれるのが嬉しいとか思ってないからな、俺は全然シスコンではない!」


 「……私は兄様が好きですよ。兄として、一人の魔王として」


 「あ、ああ、そうか。……あ、有難うな」



 急に好きとか言うなよ。

 恥ずかしいやんか。

 

 グリッシュはいつもの冷静な表情は崩してはいないが俺の方に顔を近づけズズィと寄ってきた。

 近い、近い、恥ずかしい。



 「私と兄様に血の繋がりはないので私は兄様の生涯の伴侶となる事が可能です。ついでに子を成し出産する事も可能です……私はアンデットなので多少の儀式は必要ですが……なので兄様、結婚しましょう!」



 この子は一体何を言っているのだろう。

 よく見るとグリッシュの頬が少し紅潮しているのが分かる。

 うむむ……。


 ……、……、……。


 ……そう言えばそうだった。

 グリッシュはゲーム内で終始冷静沈着で有能なNPCであったが、ゲーマー仲間の間で密かに噂されてた裏設定が有った。


 グリッシュは主人公である魔王が大好きで――それは義兄妹の枠組みをはるかに超える……と言っていいだろう――好感度は何をしても上昇していき魔界統一までもっていくとそれはMAXにいたり求婚してくると言う。

 そう、例え戦争で敗れたとしても好感度は上がるのだ。

 もともと魔王立志伝には婚姻イベントが実装されており、その後のどこかのアップデートでグリッシュにもそのイベントが適用されたと聞く。


 今考えるとアルシーの好感度が最初から高かったのはこれの所為かもしれない。

 そして今はグリッシュの好感度が結婚を申し出てくる程にバグっている。

 グリッシュと結婚して魔王になる未来か……。


 それはそれで……ぐふふ、ぐふふ。

 グリッシュはアンデットとは言え腐ってないし身体が少々冷たくて肌が真っ白でたまに精気を吸わせてやる事以外は地球に居た頃の女の子と同じだ。

 長身でスタイルも良く顔も美人さんで性格は言うまでもなく俺と合う事は分かっている。


 ん、俺の女子に対するハードルが低いって?

 いいだろ、ここは異世界なんだから価値観も変わっていくってもんだ。



 「価値観がどうしましたか?」



 うわっ?!

 俺とグリッシュが怪しげな会話を交わしている間にいつの間にかセレル様が近くに来ていた。



 「イナバ様、グリッシュ様ととても仲がよろしい様で」


 「はい、それはもちろん。イナバ様も私との婚姻生活を妄想する程に愛してくださってますので子を成すのも時間の問題です」


 「「はっ?」」



 俺とセレル様は同時に間の抜けた声を上げた。

 だからグリッシュは俺の思考を正確に読み取るのはやめろください。


 こわいよ、こわいよ。

 セレル様からのプレッシャーが魔王並みにこわいよ。



 「イナバ様、それにセレル様にグリッシュ様、こんな所で何をされてますの?」


 「エルンヘイムギルドから使い、来た」



 おーっ!

 地獄の様な状況に援軍がやって来た。

 いや、ちがう、ギルドからの使いか。

 向こうも無事にアジトに帰り着いて反撃の準備が出来上がったか。

 俺はセレル様とグリッシュを連れリーザ達と使いの元に向かった。

 

 セレル様からは微量なプレッシャーが漏れ続けていたのでリーザとガンダルフの2人は終始怪訝な顔をしていたが世の中には知らない事も有っていいのだよ。



 ギルドからの使いは何とレニーだった。

 強力な戦力の彼女がこちらに来てしまってギルド側の方は大丈夫なのだろうか。

 そう思って尋ねてみると緒戦でこそ遅れをとったがギルドマスターのフェルンデルは相当に強いらしい。

 彼女一人がこちらに来たとてもう二度と負ける事は無い。

 端正な顔立ちのレニーが珍しく鼻息荒く自分の事の様に自慢してきた。



 「深夜も過ぎてまもなく陽が上がる時間になります。ギルドマスターフェルンデルよりイナバ様にお願いが。ギルド側で魔王城に奇襲をかける手筈なのでその際に陽動攻撃をお願いしたいのです」


 「魔王城に!? 大丈夫なのか?」


 「陽動がある程度成功したらイナバ様と皆様から何人かにギルド側に加勢してもらいたいと思います」


 「なるほどね。……貧乏暇無しとはこの事だ」


 「……何ですか?」


 「なんでもない、古い教訓だよ」



 どうやら俺は人間でも魔物でものんびりは出来ない様だ。






グリッシュ加入編はこれでおしまいです。

四天王全員がイナバの仲間になりました。

次からはエルンヘイムの本格的な解放を目指します。


ご評価頂けたらとても有難いです。

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