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魔王軍立志伝―仕事を辞めたら魔物になりました―  作者: ヨシMAX
第1章 新米ゴブリンの挑戦
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第45話 オーク、ウェルニーへ

見に来てくださり有難うございます。

PVの伸びが凄くモチベに繋がります。



 俺達はウェルニー撤退の最中に強襲してきたニルスの追撃隊を完膚なきまで叩きのめした、それはもう完全にだ。


 ……とは言えリーザ隊にも100名強の死傷者を出してしまったのは痛恨の極みだ。

 皆は彼我の戦力差を見た時にこれ位の犠牲で済んだのだから寧ろ誇れと言ってくれるが、俺は元々が平和ボケの日本人なのだ。

 気にするなと言うのは少々酷な話である。


 俺の作戦に従い命を失った勇者達を俺達は草を乗せて魔法で焼いた。


 敵も味方も区別なく作業の様に次々に焼いていった。

 お墓の一つも作ってやる事も出来ず装備品以外の遺品は何もない。

 この世に生きた最後の証は生き残った者達の記憶以外に……何もないのだ。


 俺がそんな事をウジウジと考えていたら誰かから声をかけられた。



 「イナバ様、如何されましたか?」


 「ああ、セレル様。……いや先ほどの戦闘の反省会をしておりました」



 微笑みながら言ったつもりだったが、きっとこの時の俺は力なくヘラッとした頼りない笑顔をしていた事だろう。

 だからセレル様にも気持ちを読まれてしまう。



 「イナバ様、確かに先の戦闘で少なくはない犠牲が出た事は間違い様の無い事実でございます。中には私やリーザの顔なじみも混じっていたとの事です」


 「う……」



 セレル様の言葉が俺の心にズシリと重く伸し掛かる。



 「ですがイナバ様、思い違いをされてはいけません。彼女達はあなたの指示に盲目的に従い傷つき死んでいった訳ではありません。あなたの人となりを知り、あなたの作戦に納得し、戦場での勇姿に安心し、例え自分の命運が尽き、ここで死ぬ事になろうとも、この国はイナバ様に任せておけば大丈夫だ。そう確信して未来への礎となったのでございます」



 俺は顔を上げて静かにセレル様の言葉に聞き入る。

 この顔もさぞかし不安に溢れた顔であろう。

 


 「敢えて言葉を選ばずに申し上げます。そんな彼女達の死に、もしも申し訳ないと感じているのなら……それはイナバ様、烏滸おこがましいという事です」



 俺は驚いて目を見開いた。

 烏滸がましい……俺が?



 「イナバ様は人を率いるには優しいお方……この後も様々な戦地に赴き傷ついて倒れる仲間を目にしてはお心を痛められる事でしょう。その事自体は私は非難いたしません。私も可能であるならば当然、犠牲者は出したくありません。ただ火の粉が周囲から降りかかってくるのなら誰かが振り払わなければいけない」



 強いな。

 やはりセレル様の方が指揮官に向いているのでは……。



 「そんな理不尽な中、共に死んでくれと言える人物と言うのは仲間が倒れる度に悩み、涙して苦悩する。そんな人物だと私は思うのです。私やリーザはここがダメなのです。私は王家、リーザは騎士なので悲しい事に慣れてしまっているのです」



 慣れる?!

 人の死に慣れてしまっている?



 「引かれましたか? ……ふふ、当然ですね。でも事実なのですよ。私達の様な人種は仲間の死に慣れてしまい、下手をすれば共に……ではなく率先して先に死んでくれと言っているのと同じ意味の采配を取り始めます。もちろん私もリーザも戦地に行くからには自らも死ぬ覚悟はできていますが、時に王族やリーザの様な人種は死んではならない、死ねない状況と言うのも出てくるのです」



 ……。

 王族と言うのも大変なのだな、当然だけど……。



 「依然も話したかもしれませんが、そんな時に戦場で真っ先に一騎駆けをし敵陣に突っ込んでいきメチャクチャをして勝って帰ってきて……仲間の死に悩み泣いている大将がいたら……私は何としても守ろうと思います。次の世を呼び込むにはこの様な人が必要だと思うから。私達の子供達が安心して生きていける世の中をこの人なら作ってくれると思えるから……。だから騎士は死地に向かえるのですよ」


 「そうですのよ、イナバ様。騎士達の事を想ってくださるのはとても有難いですが度を過ぎるとそれは過保護と言えますわ」



 声のする方を見るとリーザがこちらに歩いて来ていた。



 「ご無礼をお許しくださるかしら。イナバ様、……悩むなとは申しませんわ、ただどうしようもなく感情が溢れてきてしまったら……周りを見てくださいまし」


 「私やリーザ、リリアさんやゴブリンさん。みんなあなたを慕って信頼しております。きっと喜んで共に悩み、涙する事でしょう」



 セレル様は両手を開いて俺の頭を抱きかかえる様に優しく包む。

 セレル様の心音が聞こえてきて、とても安心する。

 図体のでかい決して美しいとは言えないオークが小柄で可憐な少女に抱きしめられている図はちょっと恥ずかしくもあるけどな。


 いつの間にか俺は泣いていたらしい。

 セレル様は丁寧に俺を膝枕に寝かせてくれ、頬をハンカチで拭いてくれた。

 

 急がなければいけないにも関わらず……不覚にも俺は少し眠ってしまったらしい。

 一人で背負いすぎていた……と言う事なのかな。

 反省だ。



☆★☆★☆★



 少しの小休憩をはさんで俺達は再びウェルニーに向けてを出発した。

 全体の1割未満ではあるがケガ人がいる為、騎馬隊の後ろに乗せての行軍である。 


 進みは遅くは無いが早くもない。

 戦闘が数時間で勝利を納められた事は幸運であるが日も間もなく沈んでしまう。

 1,000名に満たない人数とは言え受け入れられるとすればウェルニー位しか思いつかないので気が急いてしまう。


 やがて地平線に数日前に見た堅牢な城壁が確認できた時はホッとしたもんだ。

 どうやら遠くから見た限りであるが、戦乱にまだ巻き込まれていない様子が見て取れ更に安心できた。


 先発隊を出して事の経緯をウェルニーの魔王軍ギルドに伝える。

 話が通しやすい様に先発隊にはリリアにも同行してもらった。


 そういえば俺の種族進化の際にエルンヘイムを紹介してくれた巨乳のアリアは無事であろうか。

 数日前の事なのに物凄く昔の事の様に感じられる。



 『回想中に申し訳ないですが巨乳は重要ですか?』


 (重要だろうがよー、こっちとらーずっと戦争やら襲撃やらでピリピリしてたんだよ。これ位の事は見逃せやー)


 『はいはい、巨乳も良いのでしょうけど慎ましい良さもある事をお忘れなく』


 (……。やっぱりシャルル、お前って女性人格なの?)


 『なにを今更……。私が男なら可愛すぎるインテリジェンスウェポンでしょうか』


 (ふーん、……シャルルは擬人化とかなれないの?)


 『な、何を考えてるんですか! ナンパですか?! 私を口説くんですか?!』


 (落ち着けってw 悪かったよ。知的好奇心が抑えられなかっただけだ)


 『全く……』



 俺がシャルルと会話をしているとリリア達がギルド長らしき人物とアリア達何人かの受付嬢を連れて戻ってきた。



 「待たせてすまない。私がウェルニーのギルド長代理のバルトロメオだ」


 「暫定的に部隊長を務めさせてもらってますイナバです」


 「イナバ君か、よろしく頼む」



 俺はギルド長代理と握手を交わした。

 体格は良いが筋骨隆々と言う訳ではないが元々戦士と言われても不思議ではない立派な身体をしている。



 「……で、君達の部隊の受け入れと補給についてだが……まずは受け入れは難しい、と言うのも現状、既にエルンヘイムを始めとする旧魔王領とサンダルファン王国、そしてベルリーザ皇国は戦闘状態と認定されている。中立を公示しているウェルニーは大っぴらに君達を支援出来ないと言う訳だ」



 まあ、そうだろうな。

 俺でもそう答える……が、そうなると少々困った事になるな。



 「……が、イナバ君。君は以前このウェルニーが所属不明の軍に襲撃された際に命を懸けて解放に努めてくれた。その恩に報いなければ私もギルド長としてのメンツが立たない。街に収容は難しいが門前に駐留する事には異議の申し立てはしない。また食料と飲料水についての協力はしよう。またケガ人についても特別処置として収容し治療が終了し次第、任意の都市に送り届けると約束する」



 え、何、その大盤振る舞い。

 そこまでしてくれるなんて全くの想定外だ。



 「意外そうな顔をされるなんて正直心外ではあるが……まあ仕方ないだろう。だけどなイナバ君、マルファス王が騙し討ち同然に討ち取られて黙っていられる程に俺も大人ではないという事だ」



 ギルド長代理は日に焼けた男らしい顔を少年の様にニッと笑って崩して見せた。

 この人達は信用できる。

 ウェルニーに住む人達の為にも、なめた真似をした2国に分からせる為にも、エルンヘイムに急がなければならない。



 「ギルド長、素直に力を貸したくて仕方なかったと仰ればいいのに。支援否定派の町長派を一喝した様子をイナバさんにも見せたかったわ」


 「アリアっ! お前、俺の見せ場に水差すんじゃねぇよ!」


 「ギルド長代理、アリアさん、本当に有難う」



 久しぶりに帰ったウェルニーは俺達の味方だった。

 ここで体制を立て直して反撃開始だ。





ここまで読んでくださり有難うございます。

部隊の損害って誰が担保するんですかね?

イナバは背負いすぎなんでしょうか。。。


よろしければ評価いただけると中の人が喜びます(^ ^)/

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