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プロローグ

こんにちは ヨシMAXです。


こちらカクヨムさんに投稿している作品で

当初は投稿しない予定でしたがなろうさんの

PVの伸びがいいので調子に乗って投稿する事

にしましたw


1話の長さなど再編集するかもですが話の内容

はそのまま行こうと思います。


気に入っていただけたら幸いです。




 どうしてこんな事に……


 俺は今自分で作った魔王城最深部謁見の間で俺史上最大のピンチに見舞われていた。


 巨大な黒い石柱で支えられた広間の中央には真紅の絨毯が敷かれ数段上がった先に魔王の椅子が備え付けられている。

 薄暗い光源にゆらゆらと幾つかの人影が床に浮かび上げられていた。

 

 肩で息をしている俺と少し離れて伝説の剣を構えた勇者がおり更にその後ろに奴の仲間達がいる。

 

 俺の方はたった一人。

 既に癒しきれぬ疲労感と覆せない絶望感に襲われ手に持つ剣も身体も重たい。

 後方にいる仲間達に殺気は感じられない、正々堂々の一騎打ち……と言うよりは単に舐められているのだろう。

 

 ただ、その勇者一人だけでも凄まじい圧力で俺は完全に押されきっている。

 今回の勇者は伝説級というだけあって理不尽な程に強く俺の実力ではとてもじゃないが勝てない、いや絶対に。

 

 奴らは無人の野を行くが如くここまでたどり着いた。

 そして数回剣を合わせただけで想定以上の実力乖離を俺は思い知った。

 正直、実力の半分も出していないであろう勇者と初撃から全力の俺とでは端から勝負にはならない。

 繰り出す剣は悉く防がれ逸らされ繰り出す魔法は悉く弾き返され無効化された。

 

 俺はこれでも数多の魔物や悪魔を統べる者、いわゆる魔王だ。

 大切な戦友であり可愛い配下でもある精強な魔王軍を指揮していた。

 

 だが、自慢の軍団も慈悲の欠片もない勇者とその仲間達に倒されてしまった。

 不細工だが可愛げのあるゴブリン軍団、無骨なアンデット軍団、忠実なオークとウルフの精鋭戦士団……。

 

 そして魔王軍四天王。

 

 魔王軍最強の剣士リーザロッテが率いる悪魔剣士団。

 団長のリーザロッテは剣の腕前だけなら俺を軽く凌駕し試合では結局一度も勝てなかった。

 悪魔剣士団の団員も皆、一流の剣士であり皆の名誉の為に言わせてもらえば今回の勇者戦以前は戦後の事後報告を聞くだけで良かった。

 

 魔王軍最高の防御力を誇る戦士ガンダルフ率いる竜人重装歩兵団。

 魔王軍の壁である団長のガンダルフは何しろ硬く俺と他の四天王が一斉に攻撃を撃ち込んでも彼の防御は破れなかった。

 命知らずな団員達は戦争になれば最前線にいち早く陣取り他の魔王軍を命懸けで護ってくれるので我々は落ち着いて決められた作戦を遂行するだけで良かった。

 

 魔王軍最高の殲滅力を誇るアーチャー、クライン率いるダークエルフ弓兵団。

 団長のクラインは森の中に潜み全力の不可視呪文を行使した俺の眉間に弓矢を正確に放ってみせた。

 今でもあれは本気で俺を殺すつもりだったのだと思っている。

 やはり奴の妹に手を出したのが悪かっ……、げふんげふん。

 も、もちろん団員も個々が精強なアーチャーで敵軍の司令官を正確に撃ち抜く事は当然の如く、弓矢にエンチャントを付与して範囲爆撃さながらの殲滅力を誇り彼らの通り過ぎた跡はペンペン草も生えない。

 

 そして俺の親友であり軍師であり魔王軍最高司令官でもあるグリッシュ率いる妖魔魔術師兵団。

 リーザロッテが剣ならばノーライフキングであるグリッシュは魔法で魔王軍随一の実力を持っていた。

 禁呪魔法の破壊力、最大魔力量なら俺の方が上だが豊富な魔法知識を応用した戦略や戦術の質の高さと言ったら見事としか思えないレベルであり戦時でも俺は本陣で何もする必要がなかった。

 

 いや、こうして上げていくと戦争の前準備、作戦立案、作戦実行、実戦、後始末、全てを四天王が滞りなく進めてくれて魔王である俺がする事といえば結果報告を聞くだけ……なのだが……まあ、実際にそうか。

 最後に剣を持って戦場に立ったのはいつだったかなあ……、うん、それだけ優秀なんだよ、四天王は。

 

 だが、そんな彼等全員、勇者と、その仲間達に倒されてしまった……らしい。

 兵士はもちろん彼らが守ろうとした非戦闘員まで殺し尽くされ、焼き尽くされてしまった……らしい。

 らしい、と言うのは報告する人材が一人もおらず勇者達が世間話の様に俺に向かって話したから知っているだけで俺自身の目では確認していないからだ。

 

 でも、何となくその言葉が真実だと俺には分かってしまっていた。

 俺達だって懸命に魔生をもがいているのに、どうして、そこまで容赦なく討ち尽くせるのか問いただしてみたい。

 俺の全てを費やして作り上げ育て上げてきた魔王軍をいとも簡単に壊滅させた勇者とその仲間達。

 

 右手には並居る魔王軍の精鋭部隊を紙切れの様に切り捨ててきた白光を纏う聖剣。

 左手には禁呪系の大魔法も剣による渾身の一撃も全て無力化する聖なる盾。

 身にまとうのは悪魔剣士団の猛者達が傷一つ付ける事が叶わなかった聖なる鎧。

 

 そして正に神レベルである剣術の腕前と勇者特有の魔法を使いこなす魔王軍全てを上回る存在、それが勇者だ。

 見てくれは黒髪、黒目のごく普通な優男なのだから力が抜けてしまう。

 こんなのに負けるのかと。

 

 勇者を補佐する仲間達も冗談みたいな実力の持ち主だ。

 馬鹿デカイ斧を振り回して我が軍団をゴミの様に吹き飛ばした、ごつい男戦士。

 神々しい神官服を身にまとい虫も殺さない顔をして妖魔軍を一瞬にして消し去った女僧侶。

 表情一つ変えず面倒くさそうに非戦闘員を焼き尽くした女魔法使い。

 

 ――全員、血も涙もない連中だ。

 まあ、目の前にいる勇者一行に手心を加える優しさなんてない事は分かりきっていた……そうさ、分かっていた。

 

 しかし、破壊し尽くされた城下を見て、言いようのない無力感に苛まれても仕方ないだろう。

 惨状に呆然としていたら勇者一行が俺の目の前に現れてしまったのだ。

 

 悲しいとか、悔しいとか……そんな感情もわかないんだよ。

 もう、ただ、ただ、馬鹿馬鹿しい。

 こんな連中を相手にする事自体がナンセンスなのだと思ってしまうのだよ。

 

 

 ――と、突然、勇者が俺に対し掌をかざす。

 瞬間、巨大な火の玉が俺目掛けて物凄いスピードで迫ってくる。

 

 何とかギリギリで避ける事が出来た。

 熱い!! 殺気もなくこの速さかよ!

 回避が間に合わずマントの一部が焦げた。

 

 一旦、斜め後方に跳んで距離をとり、着地と同時に軸足で回転し前を向くが既に勇者の姿は目前に迫っている。

 まずいと思う間もなく、反射的に左手に篭められるだけの魔力を流し込み勇者へ向け、魔弾を撃ちだす。

 この距離なら避けられまい、爆発しろ!

 そう思った瞬間、魔弾は弾き返され、明後日の方向に跳んでいってしまった。



 「嘘だろ!!」

 


 急いで剣を抜くが勇者に後ろを取られ強烈な一撃が俺を襲う。

 


 「ぐはぁ!!」

 


 振り向き様に勇者の追撃を防ごうと防御姿勢に入ったのだが吹き飛ばされる。

 僅かに反応が遅れたようだ。

 くそったれ! 全然、見えなかった!

 

 精魂込めて作り上げた美しい魔王城の柱を、俺自身が次々と砕き壁にめり込んで床にうつ伏せに落ちた。

 全身の骨が砕けたかと錯覚する様な激痛を堪えなんとか身を捩り天井を向く。

 

 俺が身につけている鎧は非常に強固な代物だが胴体の部分が砕け散っており、腹も大きく裂けていた。

 自分のものと分かっていながらも夥しい出血を見るのは非常に気分が悪く流れ出る血と共に体温も失われていく。

 たった一撃でこのザマかよ、どんな破壊力してるんだよ。

 

 やはり……、やはりダメか……。

 くそ! この勇者、強すぎだろ!

 どうやったら勝てるんだよ。

 満身創痍の俺が内心で悪態をついていると勇者が側に近づいてきて剣を逆手に持ち狙いを付ける。



 グサッ!!



 「ぐふっ」



 勇者の剣は俺の心臓を簡単に貫き、床に刺さった。

 鼻と口から血が溢れ、喉に溜まる自分の血で溺れる。

 呼吸が……出来ない。

 

 薄れゆく視界に勇者をとらえると奴は笑っていた。

 俺の身体を剣でザクザクしながら。

 魔王以上の悪魔だよ、お前。

 

 人間達にとってヒーローでも我々からすれば災いでしかない狂った殺戮者だ。

 

 遠くで耳障りなキンキンした音が聞こえる。

 大方、魔法使いの女が終わったのなら早く帰ろうとでも言っているのだろうか。

 クソ女、俺の死にざま位、目に焼き付けていきやがれ!

 最強の魔王であるはずの俺の目から溢れ出す悔し涙。

 

 立ち去る勇者の後姿も徐々にブラックアウトしていき見えなくなってしまった。

 手足から体温と血の気が急速に引いていき俺の命の炎は急激にかき消されていく。

 

 ああ、ここまでか……。

 みんな……、俺、頑張ったけど……ダメだったよ。

 ……すまない。

 



 ――こうして俺は死んだ。


こうして比べてみると【元魔王~】の導入にそっくりですね。

好きなんですよね、こういう導入w


でも、こちらの話はのんびり系ではなく波乱万丈なので

違った形で楽しんでもらえたら嬉しいです。

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