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   第四章 闘い

 ついにこの日が来た。

 イラフはもはや何も見えず聴こえず、ただメタルハートに向かって、ゆっくりと雪に足を沈めて歩む。興奮が全身を静かに包んでいた。ジンと初めて対峙する。自分よりも強い敵に向かうときの昂ぶりは快感ですらあった。


 チヒラが三叉戟『天真義』を念じ出だしつつ、

「待て、ぼくも行く」


 イラフは振り返らず、

「我らの使命はレオン殿をお守りすること。君たちは馬車を離れるな。

 わたしが行く」 


 緑の髪なびかせるハラヒも進み出て、

「あなただけではみすみす死に赴くようなものです。わたくしも行きます。

 メタルハートはハン・グアリス平原での大虐殺に加担していました。あの女は父母の仇です」

 そう言って、眼尻を上げ、双眸を白き炎に怒らせ、イラフとならぶ。


 海軍特殊部隊の巨漢、少尉シルス(支陋栖)がチヒラを制した。

「イラフ殿は『非』の戦士です。ハラヒも我らが特殊部隊の精鋭で、しかも元『屍の軍団』であった達人です。

 彼女とイラフ殿にお任せして我々は任務を果たすべきです」

 ストランドも同意した。

「少尉の言うとおりでしょう。チヒラ殿とユーカレ殿はここをお願います。イラフ殿は俺がサポートします」

 そう言って剣を構えて馬を進める。


 陸軍特殊部隊の少尉ジイク(斎粥)は身の丈が2m50㎝もあり、筋肉の盛り上がった胸と上腕、さらに肩幅も2m近くあって、全身が四角く見える魁偉の巨漢だったが、

「我らが猛者も向かわせましょう。軍曹オゾン、アガグ、ウソゴ、行くんだ。配下を連れてイラフ殿をお助けしろ。

 さあ、いずれも我が隊の名立たる猛者の軍曹です。彼らに配下を添えて行かせました。チヒラ殿、ユーカレ殿、ご両方はレオン猊下をお守りください。あなた方はここにいるべきです」

「仕方ない。承知した」

「ふ」


 かくして猛吹雪の中、立ち塞がるメタルハートに向かって、数人の戦士たちが歩を進める。

 数十mまで来た。

 ジンの両眼は爛々と燃え、すべてが吹雪に塗りつぶされる中でも、明瞭に見える。その威圧感は凄まじいものだった。実際、オーラを風圧のように感じる。吹雪とは明らかに異なるのでわかるのだ。

 虎のように低く凄まじい声色で、

「貴様がイラフか」

 メタルハートが睥睨し、そう尋ねた。

「なぜわたしを知っているのか」

「このジンを殺そうとする者の名を知っていてもおかしくはあるまい。どのような者か、この眼で見ておきたかったのだ。ふふふ」

「どうやら情報がリークしているらしい」

「つまらぬことよ。

 さあ、かかって来い、どこからでも来るがよい」

 イラフは眼を瞑った。

 心の声を静かに聴く。

 隙がない。

 それを覚知した。

 ジン・メタルハートはその膂力やスピード、巨体だけではない。明らかに武人として達人の領域に達している。深い奥義を極めている。

「これほどの者がなぜ悪なのか」

 イラフはそうつぶやかずにいられなかった。

 ある程度以上の高みに達しようとすればおのずから精神的な高みが要求される。それが必要となる。

 精神的高みとは自己超越であり、自己への執著を捨て去る清廉な精神だ。私心や私利私欲を棄てる精神がなくば技に迷いが出る。命を惜しんではキレが喪われる。

 これは自己保存を旨とする生物の原理に(たが)うようだが、これによって生存率が高まるならば、一様にそうとは言い切れない。

 むしろイラフは命を捨てる精神こそ生命であると感じている。生命は日々新しく生まれ変わる存在である、と。


 じりじりと間合いを詰める。


 メタルハートは余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)で、仁王立ちのままだ。剣を構えてもいない。

 あと20mというところまでイラフはにじり寄った。


 まずは低く攻める。

 短い助走で地を蹴って十数㎝の高さを燕のようなスピードで地上と平行して飛び、ジンの足下で再び地面を蹴り、地面と直角に上がって、下から上へ縦裂きに両断しようと試みた。〝韋屰天亢龍〟だ。


 ジンが消える。

 唖然とする間もなく、敵は背後に回っていて、大剣の腹でイラフを殴打しようとしていた。咄嗟に空宙で身を振り返らせて、剣で受けていなければ、背骨がへし折られていたに相違ない。

 イラフはすっ飛ばされた。


 受け身を取って(まろ)び、すぐに立ち上がり、体勢を立て直す。

 何が起こったかすらよくわからなかった。凄まじいスピードだ。


 オゾン、アガグ、ウソゴが(とき)の声を上げて立ち向かうが、一振りで三人とも薙ぎ倒された。配下までもがその風圧で尻を突いてしまう。風の摩擦で雪さえも一瞬、燃え上がった。


 ジンがにらむ。兵士らは震え上がった。

 全身からはオーラの炎が眼に見えて立ち昇っている。


 イラフは構えながらもふしぎに思った。すぐにメタルハートが襲って来ると思ったのに、まったくイラフの方に向かってくる気配がなく、その場所を動かないからだ。イラフは疑わざるを得ない。闘う気があるのか?


 ハラヒがじりじりジンの背後に迫っていた。イラフとは眼を合わせない。もし眼が合えば意思の疎通が起こる。それをジンに読まれてしまうことを危惧するからだ。


「心得ているな・・・・」

 イラフはハラヒに感心する。会ったばかりなのに、これほど阿吽の呼吸なのだ。チヒラ以上かもしれない。


 前後から同時にジンに襲いかかる。

 イラフは45度の角度で頭上を狙い、ハラヒは「父母の仇っ!」と叫んで片刃の『きよかみ』でくるぶしを狙う。まったくの同時だった。呼吸を読み合っていたのだ。二人とも世界が情報生命体であり、我々の認知する世界は解釈であることを体で理解しているとも言える。


 しかしメタルハートは同ずることもなく、後ろ手に剣でハラヒを払い、イラフの剣を籠手で受けて弾き返す。

「笑止千万とは、貴様らのことよ。

 蚊蜻蛉に等しい。まるで相手にならん。出直して来い」


「何だって!」

 イラフが叫んだ。ハラヒも怪訝な顔をする。


「さらばだ」

 去ろうとする。

「待て!」

 イラフが追いすがろうとする。

「無駄だ」

 振り向かずに歩み続けてメタルハートが言う。


「なぜだ。なぜ闘わぬ」

「弱過ぎる。強くなってから来い」

 イラフもハラヒもともに完全武装した百人の兵と対峙しても負けることのない強者である。それがこうも簡単に敗れ、それどころかまったく歯が立たないとは。


 圧倒的な力の差であった。どうしてこの化け物にイースは勝つことができたのか、イラフには見当もつかなかった。思わずおのれをののしり、

「くそっ!」 


 対照的に白き眼を凍らせてハラヒは静かに訊いた。

「ジン・メタルハート。おまえの狙いは何だ。

 おまえはシルヴィエの側にいると聞く。しかしおまえの配下はシルヴィエのある方の命を狙った。なぜだ。

そしてさらにふしぎなのは、おまえはおまえの指示でおまえの部下が狙ったその方に今、眼もくれず、闘いの決着も附けず、ただ去ろうとする。まったく理屈が合わない。

なぜだ」

「ふ。ふふ。

 貴様らに語る必要などない。先も言ったとおりだ。イラフという者がどれほどの者か見ておきたかっただけだ。期待外れであったがな」

 無防備に背を向けて吹雪の中を歩き去った。幻影のごとく消える。


「無念っ!」

 イラフが雪を叩く。緑の髪のハラヒが彼女の肩に手を置き、

「完敗ですね。でも命が助かったのです。ふしぎですが。殺されてもおかしくなかった」

「その方がましだ」

「そんなことを言うべきではありません。あなたには任務があります」

 イラフは応えなかった。

 馬車に戻るしかない。車内に上がって円陣を組むように坐り、イラフとハラヒが二人の戦士とレオンへ事情を説明する。話を聞いてユーカレもいぶかしげに眉を寄せた。

 チヒラが言う、

「てっきりレオン殿の命を狙ってきたのだと思ったよ、ぼくは」

「そう。わたしもそう思っていた。現にアグールがレオン殿を襲ったこともあったし」

 イラフもそう言ってうなずく。ユーカレがレオンに尋ねた。

「レオン殿はどう思うのか」


 漆黒の髪の若き貴人は思案した。

「ジン・メタルハートがなぜイラフと闘っただけで、しかもとどめも刺さずに去ったのか、という問いであれば、私にもわからない。何らかの一時的な事情ではないだろうか。

いずれにせよ、彼女が私を殺そうとしている、ということには変わりないと思う。なぜならば、(イラフ殿の言うとおり)アグールが私を襲ったのは、ジンの命令以外ではあり得ないからだ。

 私は神聖皇帝ジニイ・ムイからも、大枢機卿イヴィルからも命を狙われる可能性を持っている。理由がある」


 金の双眸のユーカレがノーズティカの鎖を揺らしながらうなずき、

「ふ。

 なぜ皇帝が?

 大枢機卿ならわかる。あなたもやがて大枢機卿になって次々期の皇帝の座をイヴィルと争うこととなるからだ。イヴィルは既に大枢機卿だが、まだ若くて次期候補には選ばれない。次々期の互選が勝負となる。

 ところが、次々期の互選となれば、あなたも大枢機卿となっていて、家柄の良いあなたがそのときの最も有力な候補として浮上することは疑う余地なく、明らかだ。

 イヴィルがあなたを競争相手としてにらんでいる、というのは帝国内ではかなり知られた話と聞く」

 縮れた髪を傾けて蒼白いレオンが冷笑を浮かべる。

「そのとおり。国内では公然と知られた事実だ」

「だが皇帝はなぜ」

「それはまだ言えない」

「秘密だらけですね。

 そう言えば、命を狙われることが帝都を離れた理由ではない、あなたはそう言っていましたが・・・」

 チヒラが腕組みし、薄紫の双眸の色を濃く深め、そう言うと、レオンは、

「そうだ。私はそう言った」

「しかしその理由は言いたくはない、と。我々にとっては謎だらけだ」

 イラフが少しむっとした言い方をする。ハラヒが問い、

「いずれは話していただけるのですか」

 レオンは鼻梁を高くし、言う、

「アクアティアに行けばわかる。少なくとも私のしようとすることは。そこまで行って隠すことはもはやない。

 高貴なる祖先の名誉と魂とに賭けて」

 四人は同時につぶやいた。

「アクアティア・・・・」


 そこにストランドが入って来た。

「早く行きましょう。獰猛な冬山のワーグが迫って来ています。

視界の悪いこの吹雪では龍速を出すのは危険です。ワーグを振り切れるようなスピードは出せません。

 この山岳地の足場に慣れて土地勘のある奴らの方が圧倒的に有利です。追撃する側に利があり過ぎます」


 一行は先を急いだ。

 イラフはずっとジン・メタルハートとの闘いを脳裏で反芻していた。どうしたら勝てるのか、イースに逢って得たものは、今のところは何も活かせてはいない。何が足りないのか。

 だが彼女には薄々わかっていた。大義だ。わたしには大義がない。世界が情報生命であるとすれば、そういう精神の力こそ大きく物事を動かすのではないか。そう悩み、考え続けた。

 ジンが悪である、だから闘う。そのような抽象的な一般論ではだめだ。もっと実存的な理由がなければ勝てない。つまり「いったい、なぜ正義が守られなくてはならないか」に応えられなくてはならない。


 傾斜はますますきつくなる。雪を冠して切り立つ岩を聳え上げさせる山々。

 深い亀裂を避けて遠回りしたり、足場の狭い道を踏んで深い峡谷を下ったり、大磐の間をくぐり抜けたり、断崖の壁にへばりつくようにして細い道や桟道を突風に吹き飛ばされそうになりながら進んだり、絶壁を登攀したりして進む。垂直の壁を登る狭隘なつづら折りの道で叫ぶ、

「おい、気をつけろよ、飛ばされるな。バランスを崩したら真っ逆さまだ」

 ガリア・コマータたちが突風にかき消されそうになりながらも声を張り上げ、注意を喚起する。寒さも凄まじい。

「こんな状況で襲われたら堪らないな」

 チヒラが外を見ながらつぶやく。

「激しい風、この寒さ。騎乗の者たちはほんとうに大変だ」

 イラフも言う。

 

 彼女らは風の当たらない幌の中で防寒具にくるまっていた。内側が鉄製で外側が木製の籠に熱した石が入っていて、暖房になっている。 

「また聞こえたな」

 ユーカレがワーグの遠吠えを風音の狭間に聞いてそう言った。その言い方は無関心で、何の感情も入っていない。


 日が沈んでも進み続けた。

 ワーグの遠吠えはますます近く、頻繁になって来る。ストランドが止まれの合図をし、

「戦闘の陣形を取りましょう。

 大華厳龍國の特殊部隊と傭兵部隊と我らガリア・コマータとで円陣を作って周囲を護ります。交替で不寝番をします。走っているときに襲われるよりはましかと。空腹で疲れ切っています。体も凍えて硬い。闘う前に休憩や食事が必要です。野営の支度もしましょう。

 ともかく、そこの大きな岩の陰で、石で風除けの囲いと、かまどを作って、食事の支度をするのでしばらくお待ちください」

 野戦慣れした戦士たちによって、準備は手際よく進んだ。


 肉のスープを啜り、碗の熱さで手を暖めながらチヒラが言う、

「山越えにはあと数日はかかるな。吹雪も止みそうにない」

 翌日も進行は捗らなかった。

 ところどころ絶壁に当たる。迂回もかなわず、羚羊のように、わずかな足場から足場へと飛んでジグザグにじわじわと登るしかなかった。

 そのようなときには馬車を(ヨウクに牽かせるだけではなく)数頭の龍馬にも繋いで、引っ張り上げるようにしなくてはならない。ほとんど宙吊りのような状態であった。わずかしか進めない。時間ばかりが過ぎると感じた。

 天が厚い雪雲に蔽われて日射をさえぎっている上に、吹雪で空間も閉ざされているので、日が暮れるとたちまち闇になる。岩棚で休憩中に、すぐ傍でワーグの吠え声が聞こえた。


「数百mというところだな。とうとう追い附かれたか。まあ、よく持った方だ」

 ユーカレは相変わらず冷ややかな金の双眸であった。

 イラフが立ち上がる。

「わたしに龍馬を貸してくれ。騎乗して防御に当たろう」

「パウルの龍馬があるのでそれはできますが、どうして・・・」

「昨日の闘いでは不完全燃焼だった。憂さ晴らしと言うわけではないが、ワーグを叩き斬って、少しは仕事をしたい」

 ハラヒも立ち上がった。

「そういうことなら、わたくしにも権利がありそうですね。どなたかガリア・コマータの方に休んではいただけないか」

「いや。もう少し進もう。闘わずには済まないだろうが、もっとよい場所に移動した方がいい。こんな断崖では不利だ」

 チヒラがそう言って、ストランドを促す。


 往く手の見えない猛吹雪の中で、絶壁を超え、山岳路を登攀する。尖った岩だらけの過酷な急斜面であった。

「足下に気を附けろ、慌てず、確実に進め!」

 油をたっぷり浸み込ませた松明をいくつか灯す。荒々しい岩の形相がちらちらと見え隠れした。先頭を行く特殊部隊少尉のジイクとガリア・コマータのストランドは全身隙なく、周囲すべてに均等に注意を払い、殺戮の闘気を(みなぎ)らせて進む。

「清々しい気分だ」

 龍馬を借りたイラフは顔面に当たる氷の飛礫のような雪の弾丸を受けながら昂揚していた。ハラヒも同様に騎乗で、

「ワーグの咆哮が間近です。もう襲撃して来るでしょう。わたくしには飢え切った奴らの荒い息遣いすら感じられます」

 闇の中、松明に照らされてホワイト・アウトした暴風雪の向こうを見通そうと、眼を凝らしても、何も見えない。風が耳をつんざく。

「感じる・・・・」

 イラフがそう言った。深夜に近い時刻である。一匹が岩の上から飛び降りて襲って来た。

「来たぞ!」

 ジイク少尉の上に覆いかぶさる。将校は剣で払うが、自らも重さで落馬してしまう。ワーグの体の大きさは2m50㎝、少尉と同じくらいだ。

「おのれ!」

 牙を剥くワーグの喉笛をつかみ、殴打して殺す。立ち上がった。

 次々とワーグが落下し、身を低くしてうなる。ストランドの龍馬が爛々たる眼でにらみ、逆に威嚇する。

「さあ、来い!」

 オゾンは大薙刀を振るい、斬り捨てる。イラフは走り寄って、闇の中であるにもかかわらず、二匹を一振りで斬る。その神技にアガグがうなった。

「凄え」

 ハラヒは龍馬の上からジャンプして一匹のワーグの背に乗る。乗られたワーグは振り落とそうと暴れるが、巧みにその動きを利用し、その背の上から次々と他のワーグを斬殺した。

 乗っているワーグが暴れ疲れて斃れそうになると、刺し殺してまた次のワーグに飛び移り、同じことを繰り返す。


 ガリア・コマータたちは息の合った連携で、瞬く間に数十匹を屠った。ウソゴは無駄のない動きで大きな斧を流麗に振るい、ワーグを次々と斬首する。

「あはははっ!」

 笑いながら龍馬を操って舞うようにイラフは大剣を振るい、疲れも知らず斬り続けている。ワーグの動きを読み切って、一振りするだけで数匹のワーグを同時に、真っ二つに断つことができるようになっていた。

「さあ、今のうちに!」

 ストランドが促すも、特殊部隊の兵士たちの何人かは龍馬から引きずり降ろされ、去れない状況であった。イラフが駈け寄る。あっという間に数人を助けた。

 チヒラは馬車の馭者席の脇に立って三叉戟『天真義』を振るい、気を発して近附くワーグを撃退する。


 ユーカレは物憂げに立膝してそれを眺めていた。自分が手伝うほどのことはないと言わんばかりの態度だ。ワーグの群れは数百匹近くを斃されてようやく退却する。

「夜が明けるぞ」

 チヒラがイラフを呼び戻す。微かに明るさが空気の色を変えていた。

「あゝ、さっぱりした」

 水色の髪を振って清々しい顔でイラフが戻って来る。

「返り血を拭いてください」

 ハラヒが布をイラフに渡した。同時に馬車の前に着いたのだ。

「すまない。

 君も疲れ知らずだな」

 そう言われて彼女は少し笑った。

 血で濡れた布はすぐに凍った。


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