ダメえもん ~未来からの刺客~
「そう言えばさ。ダメえもんって家族とかいるの?」
「急にどうしたんだい、にょび太くん? そりゃあ、僕にも家族はいるよ~。みんな僕と同じ高性能のスパロボシリーズさ」
会話をしているのは、眼鏡を掛けた小学四年生のにょび太と自称・スーパーロボットのダメえもんだ。
「へ~、ロボットにも家族がいるんだね~」
きっとこいつと同じく、ポンコツだらけなんだろうと心の中で毒づいていると、急に変なメロディが部屋中に鳴り響いた。
デデンデンデデン
まるでター〇ネーターのような重苦しい音が響き渡ると、ダメえもんの顔色が蒼白になった。
「こ・・・このメロディは!」
「な、なにこれ・・・?」
にょび太も不思議がっていると、またも同じメロディが流れる。
デデンデンデデン
それと同時に別の音も響いた。
バキューーン!
「危ない! にょび太くん!」
ダメえもんが叫ぶと同時ににょび太に強烈なドロップキックをかますと、にょび太は吹っ飛んだ。
「いきなりなにすんのさ! ダメえもん!」
「シッ! あそこを見てみなよ。にょび太くん」
ダメえもんが指さした先を見ると、そこには小さな穴が開いていた。
「え・・・何これ? そういえばさっき、バキューンて聞こえたような・・・」
にょび太が戸惑っていると、どこからか声が聞こえてきた。
「ちっ! 相変わらず勘だけはいいようね」
声がした方向を見るとダメえもんに似た物体が机の引き出しから体半分を覗かせ、球にしか見えない手には銃が握られていた。
「デ・・・デキ美!!」
「探し回ったわよ、型式DAME-3150。まさか、こんな時代に逃げていたとはね」
そんな事を言い、デキ美と呼ばれたロボットは、引き出しからジャンプして綺麗に着地する。
「まだ、僕を追ってるというのかい!」
「え・・・? デキ美?」
ダメえもんとダメえもんに似た物体が勝手に話を進め、にょび太はちんぷんかんぷんだ。
「にょび太くん。こいつはデキ美と言って、僕の妹なんだよ」
「い、妹!?」
思わずにょび太は両者を見比べる。細部は異なるものの基本的には寸胴体型であるところがダメえもんに似通っていた。
違いはダメえもんは青色基調に対し、デキ美は黄色基調でリボンを頭に付け、更にサングラスを掛けているぐらいだ。
「あなたに妹と呼ばれる筋合いは無いわ!」
ズキューーン!
ここでデキ美がもう一発発射すると、にょび太の顔のすぐ脇をかすめていく。
「相変わらずキレッキレだね、デキ美は」
「ちょっと~~。僕は無関係でしょ~! さっきといい何で僕に向かって撃つのさ~! それにダメえもん! 僕の後ろにこそこそ隠れないでよ~~!」
にょび太が抗議するが、両者は全く聞く耳を持とうとしない。
「型式DAME-3150。家族会議の結果、あなたはスクラップ処分するということに決まったわ! それで私があなたを殺しに来たのよ」
「な・・・ 僕が一体何をしたって言うんだい?」
「あなたは我が栄光あるDシリーズの欠陥品だからよ! ロボット学校ではろくに勉強もせずに女性ロボットのスカートめくりばっかり。他には隣の飼い犬のお尻に唐辛子を突っ込んで入院させたりと・・・ 数えきれない悪事に覚えがあるでしょう!」
「そんな・・・ あれは知的好奇心を追い求めた結果であって・・・」
「ダメえもん。君、そんなしょうもない事してたんだね・・・」
何度もダメえもんにひどい目に遭わされているにょび太は、デキ美に少し同情する。
「え~~い、問答無用! 大人しくスクラップにされなさい!」
ここでデキ美が銃を乱射し始めた為、ダメえもんとにょび太は逃げ回る羽目になった。
「な、なんで僕まで~~~!(泣)」
「ええい、相変わらず頭が固い妹だ。こうなったら!」
ここでダメえもんがポケットに手を突っ込み、取り出したものをデキ美に投げつける。すると、
「キ、キャア~~~!!」
デキ美は顔を真っ赤にして後ずさりをした。
ポトリと落ちたものをにょび太が覗くと、そこには女性の裸体が載ってあった。
「・・・・・・」
「ははは~~~。相変わらずその手のものは苦手みたいだねデキ美。兄の威厳、思い知ったか~!」
(エッチな本見せつけるのが、兄の威厳なのかよ・・・)
にょび太は呆れていたが、デキ美には効果てき面だったようだ。
「ハ、ハレンチよ、兄さん! なんてハレンチなの! 恥を知りなさい!」
「ほうら、まだまだあるぞ~~」
「キャア~~~~!!」
ダメえもんはここぞとばかりに色々な大人雑誌を取り出しては、デキ美に見せつけていく。
端から見ると完全なセクハラ行為であった。
「ハァハァ・・・ なんて卑怯なの! こうなったら!」
ここでデキ美はにょび太を睨みつける。
「そこのダメそうな少年! 私に協力しなさい!」
「だ、ダメそうななんて失礼な~~」
「はははは、デキ美。僕とにょび太くんの間には海よりも深い友情があるのさ! だからにょび太くんが協力するなんてことは・・・ えぇ! にょ、にょび太くん!?」
にょび太はあっさりと、デキ美側についた。
「ひ、ひどいよ! にょび太くん!」
「いや、どう考えてもこっちに味方するでしょ」
にょび太は冷静に答える。
「よし、感謝するわ、冴えない少年。それでは命令よ。兄さんの強制リセットボタンを押すのよ!」
「え? 強制リセット・・・? それはどこに?」
すると、デキ美はダメえもんのある所を恥ずかしそうに指さした。
「股間のところに二つ金色のボタンがあるから。それを同時に蹴り上げるのよ!」
「ええ! いや、さすがにそれは男として・・・」
戸惑っていると、デキ美はポケットから手の平サイズの球体を取り出した。
「やらないのなら、この『家屋破壊ばくだん』でこの家を木っ端みじんこにするわよ!」
「ええ“! こ、木っ端みじんこだってえ!?」
「大丈夫よ、このばくだんは空き屋問題で開発された、人体には影響を及ぼさずに家屋だけ破壊する爆弾だから」
「い、いや。そういう事じゃなくて・・・」
「別に起動させても私は構わないんだけどね。これでローンが残った家が吹き飛んでいくのを見るのは、爽快だからね。ふふふ・・・」
怖い顔をして語るデキ美。それを見て彼女は本気だとにょび太は悟る。
「ご、ごめんよ、ダメえもん」
にょび太は辛そうな顔をして、ダメえもんへにじり寄っていく。
「にょ・・・にょび太くん、本気かい?」
「このままだと僕の家が破壊されちゃうんだ。僕は、家を守らなくちゃいけないんだ・・・」
悲しそうな顔で見つめてくるダメえもんの両肩を掴み、にょび太は右足を後ろに振り上げる。
「そうよ! そのまま容赦なく、無慈悲に蹴り上げるのよ! ・・・兄のせいでわたし達家族はいつも肩身の狭い思いをしてきたわ! 腐ったリンゴは切り捨てる、それが家族で出した結論よ!」
後ろではデキ実が容赦のない罵声を浴びせていた。
『腐ったリンゴは切り捨てる』
この言葉がにょび太の心の深いところに刺さった。
目をウルウルさせているダメえもんが何故か自分と重なる。
「で・・・出来ない」
「え?」
「僕には出来ないよ! 僕とダメえもんは似た者同士なんだ! 腐ったら切り捨てるって、切り捨てられる側の気持ちがわかる僕には出来ないよ!」
そう言って振り上げた足を戻すと、その場に泣き崩れた。
「にょ、にょび太く~ん! 君なら、わかってくれると思ってたよ! 同じ底辺として! 同じ出来損ないとして~!」
「ダメえも~ん!」
にょび太はダメえもんを抱きしめ、そのまま二人は抱き合いながら泣き続けた。
その様子を見ていたデキ美は先程までの険しい表情をふとゆるめた。
「そう・・・ 兄さんにも親友が出来たのね。あの、いつも独りぼっちでいた兄さんに・・・。心が通じ合う、どん底仲間が」
褒めているのかけなしているのかわからない事を言うと、デキ実は後ろを向いて机の引き出しを開ける。
「今日のところは見逃してあげるわ、兄さん」
「デ、デキ美!」
「その代わり、次に変な事したらその時は強制スクラップだからね。じゃあね、兄さん。アイルビーバァック!」
球の手をかざしながら言うと、デキ実は引き出しの中へと消えていった。
嵐が過ぎた後のように、暫し静寂の時間が流れる。
「い・・・ 行っちゃったね」
「うん。これも全部にょび太くんのお陰だよ~」
そう言ってダメえもんが抱きついてきたのだが、ダメえもんはかなり重い。
にょび太が支えきれずに床に倒れ込むと、その拍子に『ポチッ』と何かのスイッチを押したような感触があった。
「「?」」
見ると、そこにはデキ美が置いていった『家屋破壊ばくだん』が起動したのか、チカチカと光を点滅させていた。
「「あ・・・ あ“・・・(汗)」」
ドゴーーーーーン!!
もの凄い轟音とともに、まだ10年以上ローンが残っているにょび家は木っ端みじんに吹き飛ばされた。にょび太とダメえもんは無事だったものの、暫くは放心状態であった。だが、徐々に起こった事実を認識し始める。
「う、うわ~~~~ん、どうするのさ、これ~~~」
「ま、まあまあ。ガタがきてたし、建て直すのに丁度よかったんじゃないかな」
「そんなこt聞いてるんじゃないよ~。ダメえもんの、ばか~~~~!(泣)」
先程の友情はどこへやら。暫くは口汚くののしり合う、にょび太とダメえもんであった。
おわり
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現在、連載小説「隻眼浪人と茶髪娘、江戸を翔ける!」も手掛けています。
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