プロローグ
ーーー人間が最も恐れることは何だ?
ーーー死を迎えること、と考える者が多いようですね。
ーーーならば不老不死になった人間は一体どのような行動を取るのだ?
ーーーそれは…意に沿う答えが出来ないかもしれません。
ーーーこれは驚いた。お前にも知らないことはあるとはな。
ーーー私は事実しかお伝えできません。そのため過去に生まれた者も含んだ
全人類の死生観についてお伝えし、そこから推測していただくしかないの
ですが、いかんせん時間がかかります。
ーーー…それを全人類分するためにはどのくらいかかるのだ?
ーーー人類が滅ぶのがいつになるかによりますが、おおよそ528兆7213億…
ーーー長い。人類の感情の難解さは分かったつもりでいたがそれほどまでなのか?
ーーー私が正確に知り得ないことの多くは彼らと貴方に関連しています。
ーーーふっ、なるほどな。だがその難解さや良し。暇つぶしに最適というもの。
ーーー暇つぶし…ですか?
ーーーああ、いい加減ただ漠然と種全体を眺めているのも退屈になってきた。
故に人間が最も忌避することと渇望することを同時に与えるとどうなるか。
俄然興味が湧いてきた。
ーーー…貴方の為されることには理解が及びません。
ーーー我の楽しみの追求として試行するだけだ。貴様が分かる必要もない。
ーーー…。
ーーーこれから行われる宣告は人間であれば逃れられない生死という概念からの
一時的な解脱、そして逃れられない絶対的な死の宣告でもある。
名付けるとすれば…そうだな。
『絶対余命宣告』とでも言おうか。
さあ、人間よ。面白い見世物を期待しているぞ。