今夜は飲み会
綺麗に石畳が敷かれた道路。西洋風の建物が並ぶ街。
その街の中央には噴水がある。
その広場からは、遠目に白亜の王城が見え、夕焼けに染る城の美麗さは絶景で、夜を共に過ごすカップル達の、定番の待ち合わせスポットになっていた。
――ゴゴゴゴゴゴゴゴ
「まだか、ジーニスのやつは……」
無数のカップルがイチャつく噴水前広場に、場違いな男が一人。
よせばいいのに、一番目立つ噴水正面に座っている、盗賊か山賊かというダッサイ服を着た、モッサいアラサー男は、落ち着き無くそわそわとしていた。
貧乏揺すりが酷過ぎて、膝は残像が出来ている。
その全く余裕の無い姿は、誰が見ても救世の勇者とは思わない。
タダの怪しいオッサンである。
「おー!アレクー!待たせたなー!」
そこに、一人のチャラついた男が現れた。
街で流行りのブランド服で、そのスラッとした身体を包み、派手なアクセサリーを、周囲に見せ付けるかのように煌めかせているその男は、何を隠そう勇者アレクの元パーティメンバー、賢者ジーニスその人である。
――ゴゴゴゴゴゴゴゴ
「……遅いぞジーニス!」
「すまんすまん!昨日捕まえた娘が中々離してくれなくってよ……っておい!?おま、それ……」
賢者ジーニスは、その整った顔を青く染めながら、勇者アレクの足元を指差した。
その指先は、プルプルと震えている。
――ゴボォゴパァゴボボォ
「……え?
……あ!やば!」
勇者アレクの【貧乏揺すり】
辺り一面の地面はマグマ化した!
いつの間にか、噴水前はキラウエア火山の溶岩流のようになっていた。
「ちょ……くっ……!アイスワールド!」
賢者ジーニスの【アイスワールド】
――ブシュウー!!!
強制冷却!
辺りにはとんでもない量の水蒸気がたちこめた!
「「「きゃあああ!!!」」」「「「うわあああ!!」」」
「「「な、なんだ?!魔王軍か?!」」」
広場はパニック!阿鼻叫喚だ!
「アレク!逃げるぞ!」
「お、おう!」
勇者達は逃げ出した!
「誰だァ?騒ぎを起こしてんのはァ?!」
しかし回り込まれてしまった!
「「マッソー!?」」
王国警備隊隊長マッソーが現れた!
マッソーの口撃!
「お前達かァ?!なにしてんだ!」
アレク&ジーニスの合体口撃!
【言い訳】
「「え、待ち合わせだけど……。」」
マッソーには効果が無かった!
「それがなんだってこんな事に?!とりあえず来い!!」
勇者アレクと賢者ジーニスは捕獲された!
広場の石畳は、マグマ化した後、賢者ジーニスの広範囲氷魔法で冷やされた事で、ガッタガタになっていた。
だが、幸いな事に、怪我人は無かった。