7.第2話「洞窟の戦い」(2/6)
地面に突き刺さった二本の剣は僅かに動いている。
「操っている奴、というのは?」
「それは分からん。」
ドウジは周りを見回している。
なにかを探しているようだ。
しばらくして、ドウジはゆっくりと前進し始めた。
まるでなにかを試すように。
キョウカとイェルコインはついて行かず、ただ見ていた。
すると、ドウジの右後ろの方向から剣が飛んできた。
それを察知したドウジはしゃがんで避ける。
するとドウジの上を剣が通過したかと思えば、そのまま方向を変えてドウジに接近する。
剣先がドウジの方に向いており、完全に刺すつもりだ。
しかし今度は視界に入っていたため、ドウジは器用に握りを掴んで剣を止めた。
そして掴んだ剣を振り回した。
しばらく剣を振り回していたドウジの動きはやがて止まり、周りを見回し始めた。
そして先程剣が飛んできた方向を向いて、その方向に持っている剣を飛ばした。
剣が飛んでいった方向には飾ってある甲冑の一つが置いてあり、その甲冑の鎧に剣が突き刺さった。
その衝動で鎧は後ろに飛んで壁にぶつかり、反動で前に飛ぶ。
当然他の甲冑も崩れ、共に地面に落ちる。
・・・と誰もが思っただろう。
なんと甲冑の鎧だけでなく、兜や籠手などの防具も空中に浮いているのである。
「え・・・、ええ!?」
キョウカはその奇妙な光景を見て驚愕する。
イェルコインも口を開けて驚いている。
「・・・どうやら、"そこ"にいたようだ。」
ドウジは浮いている甲冑を指す。
すると甲冑は兜、鎧、籠手、靴の順番で動き出し宙を飛ぶ。
そしてドウジの方へ向かって行ったかと思ったら、横を通り過ぎていった。
するとドウジの後ろに見える扉の前で、靴、鎧、籠手、兜の順番で着地し、一つの甲冑が出来上がった。
そして兜の奥から黄色く光る目が現れた。
「ククク・・・、バレちゃったか。」
甲冑の中から声が響く。
その声は甲冑のマッシブな見た目に反して陽気な感じだった。
「お前は誰だ。」
ドウジは甲冑を睨みながら聞く。
やや離れた場所にいるキョウカとイェルコインも、同じく甲冑を見る。
「さあね。 自分の名前を知らないから自己紹介はできないよ。」
甲冑は肩をすくめながら言う。
すると籠手が鎧から離れて、まるで腕だけが宙を浮いているような状態になった。
そしてそれぞれの籠手が両脇に置いてある別の甲冑に向かって飛んでいき、甲冑が持っていた剣を奪った。
その後すぐに本体目掛けて飛んでいき、再び鎧の両側にくっついた。
「あんたらには恨みはないが、ここから出て行ってもらうよ。」
そう言って二本の剣を構え、剣先を目の前のドウジに向ける。
ドウジは一切油断などはせず、目の前で動く甲冑を警戒している。
すると突然甲冑が宙に浮いたかと思うと、空中で甲冑がバラバラになった。
兜、鎧、籠手、靴がそれぞれ離れている。
「覚悟!」
宙に浮いたバラバラの甲冑が行動を開始する。
まずは右手の籠手がドウジに接近し、握っている剣を振り下ろす。
ドウジは籠手を掴んで受け止める。
すると横から左手の籠手が握っている剣の先をドウジに向けながら接近する。
片目がないドウジの死角をついていたが、ドウジは察知能力で難なくそれを回避する。
籠手がドウジの上を通過するが、なんと籠手から剣が離れて、剣自体がドウジを狙ってきた。
ドウジは予想外のことにやや遅れてしまい、再び刃を掴んでしまった。
当然手から血が流れ出る。
それだけでは終わらず、剣を離した籠手自体もドウジ目掛けて飛んできて、頭部に強烈なパンチを放った。
ドウジはやや押されるが、気合いでカバーした。
「ド、ドウジさん・・・!」
キョウカがドウジのもとへ近付こうとした。
しかしキョウカの元に兜が飛んできた。
兜はキョウカの腹部に激突する。
「うっ!」
痛々しい声をあげて後方に倒れる。
幸い装飾品がある部分ではなかったが、それでも鉄でできた兜が勢いよく腹部に当たったのだ。
結構なダメージだろう。
「キョウカ・・・!」
イェルコインがキョウカのもとへ近付こうとするが、当然イェルコインのもとにも甲冑の一部がやってきた。
近付いてきたのは靴だった。
イェルコインの背後に靴が飛んでくる。
そしてイェルコインの尻に蹴りを放った。
「痛ぁ!?」
イェルコインは思わず飛び上がる。
だが靴の攻撃は終わらない。
再びイェルコインの尻を蹴飛ばした。
「痛い、痛ぁい!!」
イェルコインは痛みのあまり逃げ出した。
しかし靴はイェルコインを追い続ける。
ドウジは捨て身の戦法に出た。
なんとさらに力を入れて剣の刃を深く握りしめたのだ。
ドウジの手からどんどん血が流れ出てくる。
だがドウジは力を弱めようとはせず、さらに力を入れる。
すると、剣の刃にヒビが入り始め、やがて砕け散ったのだった。
「な、なに・・・!?」
どこからかは分からないが、甲冑の驚愕する声が響いた。
ドウジは血まみれになった手で残った剣の握り部分を掴んで地面に勢いよく叩きつけた。
そして次に、頭にめり込もうとしている籠手を掴んで地面に勢いよく叩きつけた。
最後にもう片方の手で受け止めていた籠手を両手で掴んだ。
そして剣先が下になるようにした後に刃を地面に突き刺した。
地面に叩きつけた方の籠手が再び浮かび上がり、ドウジにパンチを放とうとする。
それに気付いたドウジは、その籠手に対してパンチで迎え撃つ。
籠手は力負けし、壁に向かって飛んでいき、激突する。
壁にはヒビが入り、籠手は半分めり込んだ。
ついでにもう一つの籠手も壁に向かって投げ飛ばした。
そして壁にめり込んだ。
「マジかよ・・・。」
甲冑の声が響く。
全部片付けたドウジは周りを見る。
倒れているキョウカと逃げ回っているイェルコインがそこにいた。
ドウジはまずキョウカのもとへ行き、キョウカの腹にめり込もうとしている兜を引き剥がした。
そしてドウジは兜を壁に向かってボールのように蹴飛ばして、壁にめり込ませる。
それを確認すると、倒れているキョウカの安否を確認する。
「ケホッ、ケホッ!」
キョウカは咳き込んだ。
どうやら無事のようだ。
「大丈夫か?」
ドウジは表情では分からないが、心配する言葉を吐く。
キョウカはしばらく咳き込んだ後に、ドウジの方を向く。
「は、はい・・・。」
キョウカは心配させまいと笑みを浮かべている。
キョウカの無事を確認すると、今度はイェルコインの方を見ようとする。
しかし後頭部に衝撃が走った。
ドウジは思わず「ブッ!」という言葉と共に唾を吐いた。
「ド、ドウジ、さん・・・!」
キョウカが弱々しくドウジに向かって叫ぶ。
ドウジの後頭部には籠手がめり込もうとしていた。
どうやら別の甲冑の籠手のようだ。
ドウジは後頭部の籠手を掴もうとするが、それを察したのか籠手はすぐにドウジの頭から離れた。
そしてドウジを翻弄しようとするためか、ドウジの周りを回っている。
ドウジも捕まえようと籠手を追う。
ドウジが籠手と戦っている最中、キョウカは周りを見渡す。
すると、扉付近に甲冑の鎧がフワフワと浮かんでいた。
先程から鎧だけは動いてなかったようだ。
「もしかして・・・。」と脳内で思ったキョウカは静かに呪文を唱え始めた。
すると遠くにある鎧に鋭い氷の塊を飛ばした。
鎧は氷の塊に貫かれる。
しかしそれだけだった。
「あれ・・・?」
氷の塊が刺さった鎧はそのままフワフワと浮いている。
特に変わったことはない。
「残念だが、鎧が本体というわけではないんだよね。」
甲冑の声が響いた。
キョウカは読みが外れて「そんなぁ・・・。」と呟いてガッカリする。
しかし次の瞬間、鎧が前方に吹っ飛ばされた。
後ろの扉が開いたのだ。
そしてすぐに閉じた。
「な、なんだ!?」
甲冑はそう言葉を漏らすと、ドウジの周りを飛んでいた籠手の動きを止めた。
そしてドウジに捕まり、籠手はドウジに両手で握りつぶされた。
籠手との闘いが終わったドウジは次の戦いに備えるが、不思議なことに次の攻撃が全く来ないのだった。
すると、先程までフワフワと宙に浮いていた鎧が突然地面に落ちた。
そして今度は部屋の隅の方のあった甲冑が宙に浮いて移動し始める。
攻撃が来るとドウジは再び警戒するが、甲冑はドウジを素通りして、扉の前に降りる。
そして甲冑は黄色く光る目で辺りを見回した。
「なぁ、あんたらと一緒にいたフードの女は?」
甲冑は聞いてきた。
その言葉を聞いてイェルコインを探すドウジとキョウカ。
しかし周りにはイェルコインの姿はない。
あるのは、先程までイェルコインを追っかけていたハズの靴が落ちているだけだった。
「・・・マズい。」
甲冑は一言そう呟くと、慌てて扉の方を向いて勢いよく開けた。
そして大急ぎで部屋の中へ入っていった。
ドウジとキョウカは甲冑の行動が読めず、互いに顔を見合う。
そして二人は甲冑が入っていった扉の中へ入った。
扉の奥は小さな部屋であり、続く道はどこにもなかった。
どうやら行き止まりのようだ。
だが、そんなことより気になるのは目の前の床にある "魔法陣" である。
魔法陣からは青白い光が発せられており、機能しているようだ。
「こ、これは・・・。」
魔法陣を見て驚くキョウカ。
「お、遅かったか・・・。」
そして二人の前にいたのは先に部屋に入った甲冑だった。
甲冑は魔法陣を見下ろしながら、どこか焦っているようだった。




