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5.第1話「敗北と始まり」(5/5)


 数時間後、次の町を発見した。

 そこは町というより、小さな「村」だった。


「とりあえず、あの村に入りましょう。」


 ドウジとイェルコインも同意して、村に向かって歩き出す三人。

 長々と歩き続けるわけにもいかないので、村で少し休むことにしたのだ。



 村は自然豊かで、建物も木でできている。

 村人たちは不満なく元気に村で暮らしている。


「村は村で、魅力的よね。」


 キョウカはニコニコしながら呑気(のんき)(つぶや)く。

 そんな自分を二人が見ていることに気付き、やや照れてしまった。


「しっかし、やっぱり身長が高すぎると目立つなぁ・・・。」


 イェルコインはドウジを見上げながら言う。

 身長差がありすぎてほぼ真上を見ている。


「そ、それより早くどこか休める場所へ移動しましょう。」


 イェルコインのやや無礼な言動をフォローするかのように、キョウカは話を進めた。




 村には民宿があり、そこで休むことにした三人。

 部屋に案内され、イェルコインはすぐに敷物がひかれた床に寝っ転がった。


「あー、足が疲れた〜・・・。」


 イェルコインは床に倒れた状態で、体を伸ばしてリラックスしている。


「ちょっとイェル、はしたないわよ。」


 そして、まるでお母さんのように注意するキョウカだった。

 しかしイェルコインは聞こえないフリをして仰向けからうつ伏せになった。


「・・・ドウジさんも遠慮無く休んでください。」


 イェルコインのことは諦め、ドウジに喋りかけるキョウカ。


「いや、俺は他にやりたいことがある。」


 そう言ってドウジは一度部屋から出て行こうとした。

 すると慌ててキョウカはドウジに向かって声をかける。


「あっ、後で私もそちらへ向かいます!」


 その言葉だけをドウジに向かって言い放ち、キョウカは床で寝っ転がっているイェルコインのために、押入れから布団を出そうとしていた。

 そうしている間にドウジは部屋から姿を消した。






 現在村の中でちょっとした出来事が起こっている。


「少し聞きたいことがある・・・!」


 村の中で、次々に村人に話しかける大男が出没していた。

 その大男は怖い顔をしながら村人を見つめる。

 当然、そんな彼に怯えて逃げてしまう。


「・・・。」


 お察しの通り、その大男は ドウジ だ。

 彼はただ単に村人にあることを聞こうとしているだけだが、ドウジのその顔は一般人には怖いのだ。

 今でこそ普通に接しているキョウカも、初めて会った時は恐怖心を抱いていた。

 当然のことなのだ。


 諦めずに周りの村人を見るが、いずれもドウジと目が合わないようにしている。

 ドウジも鈍感ではないので、自分が怖がられていることには既に気付いている。


「どうやら苦戦されているようですね。」


 そこへキョウカが微笑みながらやって来た。


「昔から初対面の人と話すときは苦労させられる・・・。」


 ドウジは肩を落としながらそう言う。

 するとキョウカは「フフッ」と笑った。


「す、すみません。 ドウジさんもそのようなことを言うのですね。」


 やや顔を赤くして笑っているキョウカ。

 そのキョウカの顔を見るドウジ。


「俺を怪獣かなにかと勘違いしてないか?」

「い、いえ、ごめんなさい。」


 キョウカは謝りながら笑い終わる。

 そして正常に戻ったことで再びドウジに話しかける。


「ここは私に任せてください。」


 キョウカはそう言って近くの村人を発見すると、その村人を呼び止めた。

 村人はドウジのときとは違って、すんなりとキョウカの話を聞こうとしていた。

 そしてキョウカは話し始めようとするが、なにか困った様子を見せた。

 キョウカは村人に謝る仕草を見せ、ドウジのもとまで戻ってきた。


「あの、ドウジさん。 ところで「ナニ」を聞こうとしたのですか?」


 キョウカはうっかり、ドウジがナニについて聞こうとしていたのかを聞き忘れていた。




 ドウジは村人から「強い人物」の情報を聞こうとしていた。

 顔が怖いドウジに代わって、顔が綺麗なキョウカが村人から情報を聞き出そうとした。

 そして五人目の村人からついに情報を聞き出すことができた。


「この村の近くに遺跡のような洞窟があるのじゃが、その中を探索する戦士や旅人たちがよく村に泊まるのじゃ。」


 老いた村人は洞窟があるであろう方向を指しながら喋る。

 当然今いる場所からは見えないが、指した方向へ進めばその洞窟とやらがあることだろう。


「では、その洞窟に向かえば強い方たちがいるのですか?」


 キョウカは聞いてみた。

 聞かなくてもいつもいるわけではなさそうなのは分かりきっていたが、念のため。

 しかし、老いた村人は意外な言葉を吐いた。


「いや、その洞窟から帰ってきた者たちはなぜかボロボロになって帰ってくるんじゃ。」

「え!?」


 予想外の言葉に驚くキョウカ。

 やや後ろで聞いていたドウジも、興味深そうな顔をしていた。


「洞窟から帰ってきた者たちは、いつも似たようなことを言うんじゃ。 『オバケが出た』だの、『亡霊の呪い』だの言って怯えてたのじゃ。」

「オバケ・・・。」


 老いた村人はやや呆れた感じで話をしていた。

 しかし次の瞬間、今度は真面目なトーンで話し始めた。


「じゃがな、帰ってこなかった者たちもおるのじゃ。 じゃからもし行くのなら気を付けたほうがええぞ。」

「あ、ありがとうございました。」


 キョウカが一礼をすると、老いた村人はキョウカから離れて近くの建物に向かって歩み始めた。

 キョウカもその場から動き出しドウジのもとへ戻った。


「全て聞いた。」


 キョウカが聞く前にドウジが答える。


「どうしますか?」

「興味があるから、少し調べてみようかとは思う。」


 ドウジは顎を親指でいじりながら言う。

 キョウカもおそらくそう言うと思ったのか、発言の後に速やかに(うなず)いた。


「とりあえず、民宿で一休みしましょう。」


 そう言ってキョウカは民宿へ向かう。

 キョウカの背中を追って、ドウジも歩み始めた。



 民宿へ戻り、部屋に帰る二人。

 部屋の中では床に敷いた布団で寝ているイェルコインがいる。

 すっかり グーグー と寝ていた。


「イェルが起きるまで待っててください。」


 キョウカはそう言うとイェルコインの近くへ行き、床に座った。

 ドウジも部屋の隅で座る。


「ドウジさん。」


 するとキョウカが急に声をかけてきた。

 ドウジは声がした方、すなわちキョウカの方に顔を向けた。


「ドウジさんは、元の世界ではどのような暮らしをしておられたのですか?」


 キョウカが聞こうとするのはドウジの過去の話だった。


「・・・、修行と闘いばかりの毎日だった。 それ以外は特にない。」


 ドウジは顔が向いている方向を前に戻して、そう言った。


「・・・他にしたかったこととかは無かったのですか?」

「無いな。」


 キョウカの質問に即答するドウジ。

 彼は強くなることにのみにしか興味がないのだろう。




 数十分後が経った。


「ふわぁ~・・・。」


 イェルコインが目を覚ました。

 イヌ耳をピクピクさせながら腕で目を(こす)る。


「ん・・・、あれ、なに・・・?」


 イェルコインは半目でキョウカとドウジを交互に見た。

 そんなイェルコインは見て微笑むキョウカ。


「おはよう、イェル。」


 イェルコインの肩に手を乗せて、目覚めの挨拶をするキョウカ。

 イェルコインはまだ寝起きでボーっとしている。



 しばらくして、調子を取り戻してきたイェルコインに、先ほどまで聞いた洞窟の話をするキョウカ。

 イェルコインも静かに聞いていた。


「まぁ、確かに気になるから調べておいた方がいいかもね。」


 イェルコインも賛同してくれた。


 イェルコインは伸びをした後に立ち上がる。

 腰を振ったりして体を動かし、完全に目覚める。


「んじゃまぁ、行きますかね。」


 なぜかイェルコインが仕切(しき)っているが、それに関しては触れずに二人も準備をし始める。






 村を出て、目的の洞窟の入口前で並んで立っている三人。


「ここですね。」


 外からはただの洞窟にしか見えないが、中はまるで遺跡のような壁や床をしている。

 先程の老人の言う通りだった。


「これは(おそ)らく、遺跡の入口辺りがなにかしらの理由で無くなった結果、洞窟っぽくなった感じね。」


 イェルコインはそう推測した。

 たしかによく見れば、手前の床や壁の先がギザギザしているなど、それらしい跡が残されている。

 あくまでイェルコインの推測だから、真相は不明だが。



 ドウジが前に出て中を覗く。

 奥の方は暗い暗黒と化している。


「では、行くか。」


 ドウジが中に入ろうとする。

 だが、それをキョウカが止めた。


「待ってください!」


 キョウカの声で止まったドウジは、キョウカの方を向く。

 するとキョウカは持っている杖を(かか)げると、呪文を唱え始める。

 次の瞬間、キョウカの目の前に光の玉のようなモノが現れ、キョウカの近くで浮かび始めた。


「これなら暗闇でも大丈夫です。」


 光の玉は一足先に洞窟の中に入り、先を照らした。

 黒かった洞窟の奥が光によって姿を現す。


「行く。」


 今度こそドウジは中へ入る。

 裸足であるドウジの足裏に冷たい遺跡の床がくっつく。

 それに続きキョウカ、イェルコインも中に入る。


 光の玉が先導し、三人は洞窟の中を進む。







【登場キャラクター】

●「黄金龍討伐メンバー」

天津道志アマヅ ドウジ

挿絵(By みてみん)

主人公(異世界転移者)。

身長約3メートルで筋骨隆々の男。

元の世界では修行や戦いの毎日だったらしい。


・キョウカ・アキノ

挿絵(By みてみん)

メインヒロイン。

人間の魔法使い。

イェルコインとは同年代だが、彼女の世話などもしていた。


・イェルコイン・アレクサンドラ

挿絵(By みてみん)

獣耳族(ビーシアン)と呼ばれる種族の聖魔導師。

犬の耳が生えている。

キョウカの親友で、愛称は「イェル」。

あまり体力には自信がない。


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