64.第8話「剛強な一撃」(3/7)
スーツの男・イビルは骨の怪物を召喚して去って行った。
骨の怪物は部屋の中にいるドウジたちを眺めている。
「お前はなんだ?」
ドウジが骨の怪物に問う。
骨の怪物は鼻の辺りを人差し指でかいている。
「オレサマ? オレサマは "ガルネイド" ってナマエだぞ。」
骨の怪物・ガルネイドは軽い口調で答える。
「違う、貴様はどういう存在か聞いているのだ。」
やや後ろにいたギルダーが片手で剣を構えて、剣先をガルネイドに向けながら前に出てきた。
ギルダーからの問いを聞いて若干悩んでいる様子を見せるガルネイドだったが、やがて質問の意味を理解した仕草を見せる。
「オレサマは『アクマ』だぞ。」
ガルネイドは自身に親指を向けながら言い放つ。
だが、ドウジたちはイマイチ理解できなかった。
「そのヨウスだと、アクマをシらないようだな。」
ガルネイドは周りの様子で察する。
頭を人差し指でかく仕草を見せた後、ため息を吐くような動きを見せる。
「まあ、いいか。 んじゃ、サッソクやっちまうぞぉ!!」
そう言うとガルネイドは勢いよく前進し始めた。
歩く度に ドスドス と音を立てて移動している。
向かってくる怪物にドウジたちは後方の女性たちを庇うようにガルネイドを迎え撃とうとする。
するとガルクが腰に下げていた剣を鞘から引き抜きながら、ガルネイドの前に立ち塞がった。
ガルクは剣をガルネイド目掛けて振り下ろすが、ガルネイドは自身の硬い骨の腕で防いだ。
そして逆にガルクを襲おうとするが、今度は逆にガルネイドの攻撃を剣で防ぐガルクだった。
「最高だ。 久しぶりに手応えがありそうな奴に出会えたぜ・・・!」
ガルクは嬉しそうな声を出しながらガルネイドを剣で攻撃する。
振り下ろされた剣をガルネイドは骨の腕で剣を防ぐが、剣が骨の腕に当たった瞬間にガルクは剣を骨の腕の上で走らせるように横に振った。
標的はガルネイドの頭だった。
ガルネイドは少し体をのけ反らせて攻撃を回避する。
そしてそのまま後方へ跳んだ。
「ヤるキがあるのなら、ついてキな!」
ガルネイドはそう言うとイビルと同じように後方にある壁の穴の外へ跳んで出て行った。
それを見たガルクは「待て!」と言いながら走り出し、同様に壁の穴から外へ跳んで出て行った。
「我らも行くぞ。」
ガルクの仲間である三匹の狼の内の一体である黒い狼・トライアルが他の二体にそう告げて、ガルクの後を追うために走り出す。
少し遅れて他の二体も走り出し、やがて三体の狼も外へと飛び出して行った。
「今、狼が喋っていませんでした・・・?」
三体の狼たちが喋れることを知らないキョウカが驚きの表情を見せる。
しかし今はそれどころではない。
「説明は後でする。 皆は女性たちを連れて行って離れてくれ。」
ドウジはそう言うと壁の穴を目指して歩み始める。
「ドウジさん・・・?」
歩んでいるドウジに対してキョウカが声をかける。
するとドウジは一度歩みを止めてキョウカの方を見た。
「頼んだぞ。」
そう一言だけ告げると、壁の穴から外へ飛び降りた。
あっという間にドウジの姿もなくなった。
場面は変わって建物の外にある森の中。
その中でガルクとガルネイドが激しく戦っていた。
ガルクは剣を振ったり、拳で殴ろうとしたりしてガルネイドに立ち向かっていた。
だがガルネイドの骨の体はとても硬く、傷も満足に付けられない状況だった。
するとガルクのもとに三匹の狼たちがやってきて、勢いよくガルネイドに飛びかかった。
三匹共にガルネイドの腕や胴体部分の骨などに噛みつく。
だがガルネイドは全くダメージを受けていない様子で、普通にガルクに襲いかかった。
ガルクはガルネイドの引っ掻き攻撃を避けたり、剣で受け止めたりして防ぐ。
だが激しい動きによって噛みついていた灰色の狼・クオンタムと白い狼・テスタメントは振り放されてしまった。
唯一、黒い狼・トライアルだけが剥がされなかった。
「コイツ、すっげえ硬いぞ・・・。」
「予想してたけど、やはりアタクシたちでは文字通り"歯が立たない"みたい・・・。」
悔しがるクオンタムと悲観的になるテスタメント。
両者はガルクを見つめる。
だがガルクはなにも返答はせず、目の前の大きな敵に立ち向かうだけだった。
「いつまでオレサマのナイスなボディに喰らい付いてやがる!」
ガルネイドは胴体部分の骨に喰らい付いているトライアルに、鋭い骨の指先で刺そうとする。
すると刺される直前でトライアルは瞬時に口を離して、地面に落ちたと同時に後方へ跳んで距離をとった。
ガルネイドの骨の指はなにも刺せなかった。
そしてその隙をガルクは逃さず、持っていた剣を勢いよく振り下ろした。
狙ったのは手首辺りだった。
振り下ろされた刃はガルネイドの手首部分に命中する。
するとガルネイドの手首部分に僅かだがヒビが入った。
ついにダメージを与えることに成功したのだった。
ガルネイドは「おわっと!?」という声を上げて急いで距離を空ける。
「おっとっと、オレサマともあろうモノがうっかりヒビをハイらせてしまった。」
ガルネイドは特に痛みなどは感じてはいないようで、今まで通りのテンションだった。
どうやら痛覚というモノは無いらしい。
しかしガルクは特に問題には思わなかった。
なぜなら痛みを与えることは出来ずとも、ダメージは与えられたからだ。
ガルクは突然持っていた剣を鞘に収めた。
そして今度はガルネイドに殴りかかった。
ガルネイドは全く避けようとはせず、むしろ攻撃をあえて受けるような仕草を見せる。
ガルクの拳はヒビの入ったガルネイドの骨に命中する。
だが、それだけだった。
「ふむ、このテイドか。」
攻撃を受けたガルネイドは特にダメージを受けている様子は見せなかった。
攻撃を終えて距離をとったガルクも流石にやや動揺している。
「んじゃ、オレサマもスコしホンキをミせるか。」
ガルネイドはそう言うと身体を丸めるように蹲る。
すると身体の周りに紫色のオーラのようなモノが見え始めた。
「まずい、離れろ!」
トライアルがガルクに向かって叫ぶ。
言葉を聞いたガルクは「チッ」と言いながらも言葉に従って後方へ思いっきり跳ぶ。
クオンタムとテスタメントも距離をとるために走り出す。
ガルネイドの身体の周りには紫色のオーラだけではなく、電気のようなモノまで流れ始めた。
そして電気が二回ほど音を発した後に、ガルネイドの体を中心に強い衝撃波が発生した。
衝撃波はかなり強力で周りの木々や岩などはもちろん、10メートル近く離れていたガルクたちをも吹き飛ばした。
今まで木々で囲まれていた場所があっという間に広々とした場所へと変わり果ててしまった。
「やれやれ、ちょっとやりすぎたかな?」
ガルネイドは笑いながらそう言った。
その笑いは明らかに馬鹿にしている感じだった。
ガルクたちを倒したと思ったガルネイドは、次の仕事へと行こうとする。
それは現在、女性たちを逃がしている連中の相手だ。
ガルネイドは余裕を持って行動しており、ゆっくりと歩き始める。
すると遠くの木々に中から一人の男が現れた。
その気配を感じ取ったのか、ガルネイドも歩みを止めて男の方を振り向く。
ガルネイドの視界に入ったのは、3メートル近くの巨体を持つ大男・ドウジだった。
「あんたは・・・。」
建物内で見覚えがあった男の姿を見たガルネイドは、歩く方向を変える。
ドウジも歩みを止めようとはせず、ガルネイドに近づいていく。
両者とも徐々に足を早めていき、数秒後には衝突するであろう。
・・・と、思われたが。
ドウジは途中で一瞬だけ立ち止まった。
そして勢いよく地面を蹴って、ガルネイド目掛けて超スピードで跳んで行った。
その姿は大砲の球のようで、一瞬にしてガルネイドへ接近して衝突した。
「!?」
ガルネイドも予想していなかったようで、驚愕した様子を見せながらドウジのラリアットをくらった。
首部分の骨にドウジの逞しい太い腕が激突する。
そしてそのままドウジの攻撃を諸にくらった。
だが、ドウジはあまりダメージを与えたと感じなかった。
それを察してすぐにガルネイドから距離を取り始める。
やや遠くへ跳んで距離を空け、ガルネイドの方を向く。
地面に倒れていたガルネイドは余裕な様子でゆっくりと立ち上がった。
そしてドウジに背を向けた状態で首を横に回し、横目でドウジを睨む。
「スコしだけオドロいたが、このテイドか。」
「なんだと・・・?」
ガルネイドの言葉にドウジは反応する。
ドウジがとても聞きたくない言葉であったからだ。
ガルネイドが振り返り、体をドウジの方に向ける。
それを見たドウジは再び地面を強く蹴った。
そして勢いよくガルネイドに向かって跳んで行き、ガルネイドの頭蓋骨目掛けて右の拳をぶち当てた。
ガルネイドの頭に強い衝撃が起こった。
しかしガルネイドの頭には傷一つ付いていなかった。
「キかねえぜ・・・!」
次の瞬間、ガルネイドは拳を作った両腕を勢いよく前方へと伸ばした。
拳はドウジの胴体に命中し、ドウジは吹っ飛ばされる。
だがドウジは上手く地面に着地をした。
そのドウジの横を速い「ナニカ」が通り過ぎて行った。
方向はガルネイドの方だった。
「どるぁ!!」
その「ナニカ」は吹き飛ばされたハズのガルクだった。
彼はガルネイドに急接近してドウジのように奴の胴体目掛けて拳をくらわせる。
ガルネイドの胴体である細い骨に衝撃が走る。
・・・だが、やはりダメージを与えた感じではなかった。
「コりないヤツだ。」
そう言うとガルネイドはガルクの胸ぐらを掴む。
そしてそのまま持ち上げると腕をピッチングマシンのように回し、その勢いを利用してガルクを遠くへ投げ飛ばした。
ガルクは地面に生えていた岩に激突し、砂塵が舞い上がる。
岩にかなりの凹みが出来ており、強い力で投げられたことが分かる。
そんなガルクをドウジは見ていたが、助ける余裕はないため視線をガルネイドへ戻す。
「イっただろ、キかねえとな!」
ガルネイドは得意げにそう言い放つ。
そんな骨の悪魔をドウジは警戒するのだった。




