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62.第8話「剛強な一撃」(1/7)


 場面はとある建物へと移る。

 その建物は大きさで言うなら四階建てくらい。

 それくらい大きな建物だった。


 何のために作られた建物なのかは不明だが、ここに住人はおらず、いるのは浮浪者か旅人、または悪党。

 もしくは無断でイベントなどを開こうとする自分勝手な輩だろうか。


 いずれにせよ、厄介な輩には変わりない。




 建物を高い場所から遠目に見る連中がいた。

 大切な人を救うために現れたドウジたちだ。


 鉄マスクの男・ガルクが()れの狼にキョウカの居場所を探させたことで、ついに発見したのだった。


「あそこに奴らはいるのか?」

「ええ、間違いないわ。」


 灰色の狼・クオンタムが、白い狼と人語で話している。

 声や喋り方から白い狼はメスのようだ。

 黒い狼・トライアルもおり、計3体の狼がこの場にいる。


「狼ばっかりね。」


 イェルコインが目の前の光景を見てボソッと呟く。



 ガルクは先程「付いて来たい奴は勝手に来い。」と言った。

 なので、ドウジたちは二手に分かれることになった。


 ドウジ、イェルコイン、ギルダー、リクターはガルクに付いて行くことにして、一方でガイとスリズムも含めたその他全員は攫われてた女性たちを護衛しながら町へ帰しに行った。

 本来はガイも連れて行きたいところだったが、非戦闘員である彼女たちの護衛は大切なので彼も付いて行ってもらっている。

 だが、念のため予備のガイの兜をイェルコインが持ち歩いていた。

 これにより、ガイがここを発見次第すぐにこちらへやって来れるわけだ。

 頭だけになってしまうが。



「ここで時間を潰してる場合じゃない。 さっさと中に入るぞ。」


 片膝を地面につけていたガルクはそう言うと立ち上がり、今にも下に落ちようとする。

 だがイェルコインが慌てて寄って来た。


「ちょっと待って、中にはアタシの親友もいるのよ! 変に刺激させてキョウカに『ナニカ』あったらどうするんだ!?」


 イェルコインはガルクの顔を見上げながら言い放つ。

 そんなイェルコインをガルクは見下ろす。

 マスクの目元から見える赤い瞳がイェルコインを見ており、威圧感を感じたイェルコインは思わず目を離しそうになる。


「だったら、良い案でもあるのか?」


 ガルクは冷たくイェルコインに聞く。

 だがその言葉に対してイェルコインは特になにも言い返せなかった。


 すると少々離れてたドウジが近づいてきた。


「待て、どうせ突入するならわざわざ下からではなくて良いだろう?」


 ドウジはガルクを見ながら提案する。

 するとガルクはしばらく黙っていた後に、言葉の意味を理解したのか「フンッ」と鼻で笑った。



 すると、ガルクの三匹の狼が「ナニカ」に反応し始めた。

 少し遅れてイェルコインも自身の犬の耳を揺らしながら「ナニカ」を聞き取る。


「ねえ、何か変な声が聞こえない・・・?」


 イェルコインは耳を()ませながら皆に聞く。

 その言葉を聞いた皆は不思議がりながらも黙ってその「声」を聞くために耳を澄まし始めた。






 少しだけ時を(さかのぼ)る。


 建物の上から二つ目の大部屋。

 ここには大勢の人々がいた。

 多くの人々は大部屋の装飾などをしており、これから「ナニカ」が始まろうとしていることは誰にでも察せられる。


 一方で建物の最上階にも多くの人々がいた。

 こちらにいる人々は全員女性で、体を鎖で縛られており動けない状態となっていた。

 そしてその中には見覚えのある人物もいる。

 全体的に黒い衣装で身を包んでいる魔女・キョウカだ。


 彼女は武器である杖を取り上げられており、抵抗ができなくなっている。

 いや、杖があったとしても敵の数の多さから必ず勝てるとは限らないであろう。

 キョウカ自身もそれは理解していた。



 キョウカの他にも囚われている女性たちがおり、エルフや獣人(ビースト)などもいる。

 彼女たちは不安を感じつつも、誘拐犯たちを刺激しないように大人しくしていた。

 この中にはキョウカと同じく戦うことができる人もいるのだろうが、おそらく彼女たちもキョウカと同じか近い考えを持っているのだろう。


 ただ、この中で一際目立つ女性がいた。

 その女性は肌が青白く、髪の長い妖艶な女性だった。

 特に怯えた様子を見せず落ち着いている。


 さすがにキョウカも既に気づいていたが、理由を聞き出す勇気はなかった。




 そんなこんなで、数十分ほど経った。

 下の階からは大勢の歓声が聞こえてきており、どうやら装飾が終わったようだ。

 そして、おそらくこれからイベントが始まるのだろう。


 やがて下の階からスーツ姿の男性が姿を現した。

 男は細い目で部屋にいる囚われの女性たちを見渡しながら笑みを浮かべる。


「お待たせしましたね。 では、皆様を案内させていただきます。」


 男は丁寧な感じに喋る。

 しかし女性たちは当然ながら恐怖と不安で一杯だった。

 だが、一部を除いて無力な女性たちは言われるがまま連れて行かれたのだった。

 キョウカたちもとりあえず素直について行くことにした。



 下の階の大部屋に連れて行かれた女性たちは地面に敷かれたカーペットの上に座らされる。

 大部屋には沢山の人々がおり「ざわざわ」している。

 女性たちをチラチラ見ている者もいた。


 外の景色が見える壁にあった穴がカーテンで隠されていて、部屋の中は上映中の映画館のように暗くなっていた。

 その代わりに部屋の中に吊るされているランタンが(あか)りとなっている。




 謎の集団が全員席に着くと、彼らの前方に置かれている台の上に先ほどのスーツの男性が現れる。

 手にはマイクと紙を持っており、「ナニカ」を言おうとしている。


「えー、本日はお集まりいただきありがとうございます。」


 スーツの男の声はマイクを通じてスピーカーで部屋の中に響き渡る。


「では、これよりアントレーガ・ジュリオ様の登場となります。 最後までどうぞ、お楽しみください。」


 スーツの男はそう言い終えると台の上から降りる。

 人々は拍手をし始め、それに続くようにランタンの火が次々に消されていく。

 部屋の中は完全に暗くなった。



 それから数十秒後、二台のスポットライトのようなモノで台の上が照らされた。

 台の上はとても明るく照らされており、くっきりと分かる。

 いつの間にか台の上に乗っていた「謎の男」の姿もバッチリ。


 背を向けていた謎の男は少しだけ跳びながら勢いよく後ろを向いた。

 つまり人々の方を。


「ハッハー!! お前ら元気かぁー!!!」


 謎の男はマイクを持って笑いながら大声で人々にお礼を言う。

 それを聞いた人々は盛大な拍手を送った。

 指笛を吹く者もいた。


今日(こんにち)は俺様にとって最高の日となる日だ! 絶好調にやってやるぜぇー!!」


 謎の男は腕を振り上げながら宣言し、人々も歓声を上げる。

 その光景はまるでライブ会場の(よう)だった。



 すると、会場内に突然音楽が流れ出してきた。

 音楽はスピーカーのようなモノから出てきており、その音楽に合わせて謎の男は踊り出し始めた。

 そして、謎の男は歌い出す。



「俺様が〜 この世界(なか)で〜 最高最強最大限!

 俺様は〜 この世の中(そと)で〜 偉大高大最大限!

 西へ東へ広がるオーラ! 完全無欠の究極男!

 その名は〜


 ア・ン・ト、レ〜ガ、ジュリオ!(ジュリオ!)

 ア・ン・ト、レ〜ガ、ジュリオ!(ジュリオ!)

 ア・ン・ト、レ〜ガ、ジュリオ!(ジュリオ!)

 ア・ン・ト、レ〜ガ、ジュリオ!(ジュリオ!)」



 自尊心の塊のような歌詞を踊りながら歌う謎の男。

 そう、彼こそが"アントレーガ・ジュリオ"。

 この事件の黒幕なのだ。




 しばらくして歌が終わると、歓声が()き始める。

 完全にライブ会場そのものだった。


 やがて歓声が静まると、アントレーガが喋り始める。


「告知の通り、俺様のハーレムに加わる記念すべき最初の女性たちを紹介しよう!」


 アントレーガがそう言うと、片方のスポットライトが拘束された女性たちを照らす。

 その直後、女性たちが「えー!?」という声を上げた。


「なにそれ、どういうことなの!?」


 女性たちの中の一人が思わず言い放った。

 するとアントレーガは腰に手を当てながら言う。


「あんたらは俺様の女となるのだよ!」


 アントレーガは簡単に言ってくれた。


 当然女性たちは反発する。

 「冗談じゃない!」や「そんなのイヤ!」などの言葉を発する。


 だがアントレーガは全く気にせず次の話を始めてしまう。


「それじゃあ、次の曲へと移ろうか!」


 アントレーガの言葉に歓声が上がる。

 もはや聞く耳を持とうとしない連中だった。


 楽しそうな集まりの一方で、絶望的な状況に思わず涙を流したり怒りの表情を見せたりする女性たち。

 キョウカも困惑しており、どうするべきか必死に考えていた。



 だが、考える必要は無くなった。

 なぜなら救いの手が向こうからやって来たからだ。


「あん?」


 歌おうとするアントレーガだったが、歓声を上げる人々の向こう側に大きな影があることに気づく。

 大部屋の中は暗くなってはいたが、その影はあまりにも目立っていた。


 アントレーガはスーツの男にアイコンタクトを送る。

 するとスーツの男はアントレーガが伝えたいことを理解したのか、すぐにマイクを持って話し始めた。


「ご着席の皆様、諸事情により少々カーテンを開けさせて頂きます。 眩しさにご注意してください。」


 スーツの男はゆっくりと歩き出す。

 その間に聞き分けの良い人は眩しさに備え始める。

 やがてカーテンを開くと、外の明るい光が暗い部屋の中を照らし始めた。


 アントレーガは明かりによって正体を現した大きな影を見る。

 筋肉質の大柄の大男が立っており、その横にも見知らぬ人物たちが並んでいた。

 もっとも、それはアントレーガにとってだが。


 沢山の女性たちと共に囚われているキョウカは、アントレーガの視線の先を見る。

 するとキョウカの表情は「不安」から「喜び」に変わるのだった。



「誰だ、あんたらは?」


 アントレーガはマイクを使って大男たちに話しかける。

 その言葉を聞いた人々はアントレーガの視線の先を見るために後ろを見出した。


 やがて大男は喋り出す。


「解放してもらうぞ、俺たちの大切な仲間と女性たちを・・・!」


 大男・ドウジはアントレーガに言い放った。






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