58.第7話「美女誘拐事件」(6/9)
囚われの女性たちを救出するために行動したドウジとガイ。
ギルファーとリーリンと呼ばれた悪党たちをドウジがぶっ飛ばしたが、なんとギルファーは気絶してはいなかったのだ。
「ただの小悪党ではないようだね・・・。」
ガイがギルファーを見ながら言う。
大型の魔獣を吹っ飛ばすほどの威力があるドウジの攻撃を受けて気絶しないのは、かなりの実力者である証拠であろう。
ギルファーは武器の鉤爪を腕に付けて、ドウジとガイを警戒している。
ドウジはギルファーから目を離さず、ガイも後ろにいる女性たちを守るように警戒する。
女性たちは目の前の状況が理解できず困惑している。
そしてロドルドも混乱して固まっていた。
「ガイ、ここは任せろ。」
ドウジはガイにそう一言述べた後、ギルファー目掛けてもう一度飛んで行った。
すると今度は勢いよく右ストレートをギルファーに放つ。
拳はギルファーの鉄仮面をぶん殴り、衝撃で後方に吹っ飛ばされるギルファー。
しかしギルファーは空中で一回転をして容易に着地する。
両手を地面につけながら着地したその姿はまるで「着地したカエル」のようだった。
ギルファーの鉄仮面に殴られた跡が付いていたが、凹み具合が軽めだった。
当然、気絶もしていない。
それどころか、着地と同時にすぐさまドウジの方へ向かって跳び、腕にはめている鉤爪で斬り裂こうとする。
「ヒャアアアァー!!!」
変な奇声を上げながら飛びかかるギルファー。
次の瞬間、思いっきり飛び上がってドウジに向かって爪を振り下ろした。
ギルファーの爪はドウジに命中した。
命中はしたのだが、正確にはドウジに爪を掴まれていた。
鉤爪には片方四本ずつ爪が付けられており、その内の一本をドウジに掴まれたのだ。
ドウジの手から少しだけだが血が流れ出ている。
ガイの剣ほどではないが、刃物には違いないので手を切ってしまっていた。
だがそれと同時に、ドウジは最大のチャンスを掴んだのだ。
「フンッ!」
ドウジは気合いの一言を出しながら掴んでいた爪をへし折った。
そしてへし折った爪の一つをギルファーの両肩に勢いよく突き刺した。
当然ギルファーの両肩から血が吹き出し、ギルファーは痛そうな叫びを上げる。
だがドウジは容赦なくギルファーの腹を何度もぶん殴る。
一撃で吹っ飛ぶほどの攻撃力を持つドウジが、吹っ飛ぶ前に何度もパンチを叩き込む技だ。
当然かなりのダメージを与えたことであろう。
ギルファーはそのまま壁に向かって吹っ飛んでいき、壁にめり込んだ。
やがて壁から剥がれて地面に落下する。
ギルファーが倒されたことを確認して、ガイがドウジに近づく。
「少しだけ押されてたようにも見えたけど、大丈夫か?」
ガイの言葉を聞きながらドウジは手を払う。
手から赤い液体飛び散るが、ドウジは気にしてはいない。
「どうやらヤツは、衝撃を逃すことを得意とする戦士だったようだ。」
ドウジは冷静に、敵の情報を説明した。
ドウジが殴ってもギルファーが全く気絶をしなかったのは、ドウジの攻撃をくらった際に前もって後ろに飛んだりして衝撃を逃していたからのようだ。
打たれ強いワケではなかったのだ。
なので、敵の攻撃をあえて避けずに捕まえることで攻撃を思いっきり当てられたのだ。
ガイは納得した後、再び女性たちのもとへ近づく。
「時間がないから説明できないけど、早く逃げよう!」
ガイは女性たちにそう言う。
当然女性たちは戸惑っていた。
しかしその中にいた一人の女性が後ろから前に出てきた。
「よくは分かりませんが、貴方たちを信じましょう。」
女性は優しい声でガイに言う。
女性は「占い師」のような服装をしていた。
ローブのようなモノを羽織り、口元が布で隠れている。
「も、もしかして・・・。」
ガイが占い師のような女性を見て、何かしらの予想を立てた。
そんなガイを不思議そうに見る占い師。
そんなことをしていると、穴道の方から誰かが出てきた。
「大変だ!」
その者はアークと名乗った同行者の一人だった。
アークは口元を鉄のマスクで隠していたが、目元だけでも慌てている表情が分かった。
「大勢の敵たちがこの部屋に向かって来ているぞ!」
「なんだって!?」
アークの報告を聞いて驚愕するガイ。
すると同行者たちが次々に部屋の中に入ってきた。
最後にイェルコインも入ってきて全員が部屋の中に避難してきた。
「アタシに任せろ!」
イェルコインはそう言うと、ボソボソと呪文を唱え始める。
やがて穴の入り口に透明な壁を張った。
「これで時間は稼げるわ。」
イェルコインは集中しながらも皆に聞こえるように言った。
部屋の中にはドウジたちと同行者たち、そして囚われの女性たちと悪党たちがいる。
悪党三人の内二人は気絶しており、一人は混乱している。
「おい、とりあえずお前は隅に移動して背を向けていてくれ。」
するとアークが混乱しているロドルドに指示を出した。
普通なら敵の指示を素直に受け取るマヌケはいないだろう。
「あ〜・・・、わかったぁ〜・・・。」
だが、なぜかロドルドは素直に指示に従ってしまった。
ノシノシとゆっくり隅っこを目指して歩き出し、やがて隅っこを眺めながら停止した。
ロドルドはとてつもないアホだった。
敵の増援が向かってくるまで少しの時間がある。
その間の出来事だった。
「お父さん!」
一人の女性が同行者のタルティスに近づき、彼に抱きついた。
先程言っていたタルティスの娘であろう。
「メイラ、怪我はないか?」
タルティスは優しく娘を心配する。
体から離れた娘の両肩に両手を置き、片膝をついて娘の顔の高さに合わせながら話す。
すると娘のメイラは「平気。」と一言だけ述べた。
そんなやりとりをリクターは仮面の奥から優しそうな目で見ていた。
タルティスたちとは別に、他でも会話が行われていた。
「シルディーナ、ご無事ですか?」
自警団の貴族スリズムが、占い師に駆け寄った。
どうやらスリズムが言っていた「想い人」とは"占い師"のことだった。
「貴方、どうしてここに・・・!?」
シルディーナと呼ばれた占い師は驚いた表情をしている。
するとスリズムはシルディーナの右手を両手で包みながら掴む。
「私はあなたを愛している。 助けに来た理由なんぞ、それだけで十分以上です。」
スリズムはシルディーナの目を見つける。
すると照れたのか、シルディーナは目を逸らした。
「そ、それは、ありがとうございます・・・。」
シルディーナは照れながらスリズムに言った。
そんな二人を周りは微笑みながら見ていた。
あまり感情を顔に出さないドウジと、興味がなさそうなギルダーと、魔法に集中していて若干イラついているイェルコインを除けば。
ドウジや同行者たちは女性たちを拘束していた縄を解いた。
女性たちは拘束が解けて、喜びを分かち合っていた。
そして危険なので女性たちを隅に移動させた。
すると、ドウジとリクターは女性たちを一人ずつ見る。
「キョウカが、いない・・・?」
「ナズもいないよ。」
攫われた女性たちの中にキョウカとナズはいなかった。
「えっ、じゃあキョウカはどこに・・・?」
イェルコインは魔法に集中しながら聞く。
だがドウジたちが知るわけがない。
するとドウジとリクターは隅で壁を向いているロドルドに近づいた。
「黒い衣服に身を包んだ魔女を知らないか?」
「ダークエルフの女の子は?」
ドウジとリクターはロドルドに詰め寄る。
ロドルドはしばらく考えていたが、やがて口を開く。
「あ〜、そういう人は見なかったと思うなぁ〜・・・?」
ロドルドは壁の方を向きながら答える。
普通なら嘘の可能性もあるだろうが、今までのロドルドの行動から推測するに、これは本当のことであろう。
ドウジとリクターは納得できない感じで元の場所に戻る。
「ここ以外に基地があるということか?」
リクターが仮説を立てた。
しかし逆に悩んでしまうだけだった。
やがてついに敵の増援たちがやってきた。
だが次々にイェルコインの透明な壁にぶつかり、後方に吹っ飛んでいた。
「ずっとこうしているワケにもいかないでしょ! なにか考えてよ!」
イェルコインが若干イラつきながら言い放つ。
現状、行き止まりで敵の進行を抑えているだけなので、このままだと永遠に出ることはできないのである。
なので、なにかしらの行動を起こさないといけないのである。
「とにかく、この人たちを出してあげないと。」
リクターは女性たちを見ながら言う。
するとドウジがリクターの肩に手を置く。
「俺に考えがある。」
ドウジはリクターを見下ろしながら言った。
そしてリクターに小声で作戦を伝えた。
作戦を聞いたリクターは早速行動に出た。
魔法に集中しているイェルコイン以外の同行者たちに作戦を伝え、それぞれの持ち場に移動する。
結果、ドウジを先頭に縦に並び、女性たちを中央に入れてその周りを同行者たちが包む陣形となった。
イェルコインはガイが抱えている。
「よし、じゃあ壁を解除してくれ!」
ドウジはイェルコインに言う。
作戦を一切聞いていないイェルコインは若干「え?」と言うが、やがて言われるがまま透明な壁の魔法を解除した。
これによって敵の増援は部屋の中に侵入できるようになる。
だが、敵が部屋に侵入してくる前にドウジが勢いよく前方に跳んだ。
両腕を穴の大きさより小さく広げながら、その超人的な跳躍力で勢いよく飛んでいく。
前方にいた敵の増援たちは次々にドウジの腕に捕まって、強力なラリアットを受けてしまった。
そしてドウジは前方の壁に自分ごと勢いよく突撃してぶつかった。
壁は凹んで砂埃が舞う。
砂埃が収まると、そこにはドウジ自身とドウジによってダウンさせられた敵たちが倒れていた。
その光景を見たリクターが叫ぶ。
「今だ!」
その言葉と共に仲間や同行者や女性たちは一斉に脱出経路を走り出した。
「『作戦』と呼ぶほどのこと・・・?」
ガイに抱えられて移動しているイェルコインが、そう独り言を呟いた。




