57.第7話「美女誘拐事件」(5/9)
穴の奥を目指す二つのチーム。
ドウジたちのチームとガイたちのチームだ。
ドウジたちは最初の分かれ道まで戻り、もう片方の道を進んでいる。
つまりガイたちの後を追っているカタチとなった。
ドウジたちは足早に進み、ガイたちが既に探索していた場所も隈無く確認した。
途中でガイが倒したイタチの獣人たちを発見するが、それがガイたちの仕業だと察して放置した。
そしてドウジたちは徐々にガイたちと距離を縮めてきた。
やがてドウジたちはガイたちを発見する。
「いたいた。」
イェルコインがガイたちを見つけて思わず声を出す。
それを聞いてガイたちは後ろを振り向いた。
「おっと、これはまた大所帯で。」
侵入当初は四人だったドウジたちだったが、現在は合計で九人と多くなった。
「とりあえず紹介は後にしよう。 ガイたちはなにをしていたんだ?」
ドウジは先に現状確認をする。
ガイは曲がり角を覗くような行為をしていた。
ギルダーとスリズムも同様に。
「まだ探っていないのはこの先だけなんだけど、なんか雰囲気がね・・・。」
ガイが曲がり角の先に籠手の人差し指を向ける。
ドウジもガイが指している方向を覗いた。
奥の方に大部屋らしき場所があり、そこで数人の人たちが「ナニカ」をしていた。
その中には縄で縛られている女性たちもいた。
どうやら彼女たちが攫われた女性たちのようだ。
「メイラ・・・!」
すると、同行者の一人が静かに声を上げた。
ドウジたちに先程"タルティス・カーメル"と名乗っていた男性だった。
「あんたの娘がいたのか?」
「はい・・・!」
ドウジは一応確認した。
そしてタルティスの娘がいることが確定した。
タルティスは今にも飛び出していきそうな雰囲気を出しているが、なんとか自制心を働かせて思いとどまっている。
「アタシが話を聞いてみるわ。」
するとイェルコインが間に入ってきた。
タルティスよりも身長が小さく、二人は見下ろして彼女を見る。
「アタシはイヌの獣耳族。 遠くの音を聞くのは得意だ。」
イェルコインはそう言うと、曲がり角に顔を出して耳をすませた。
その際にガイが場所を譲った。
奥の部屋では誘拐犯らしき者たちが、囚われた女性たちを確認していた。
「6、7、8・・・、8人全員いるぞぉ〜。」
大柄のカメの獣人が、のほほんとした口調で囚われの女性たちの数を数えていた。
「8人数えるのに何分かかっているのよ!」
カメの獣人の近くにいた黒装束の女性が怒鳴る。
黒装束の女性はカメ獣人の腕を叩くが、いい音が鳴っただけでカメ獣人は無反応だった。
「でも、どうしてわざわざ数える必要があるのよ?」
「全員アントレーガ氏の女性になるだけだよぉ〜?」
黒装束の女性とカメ獣人は、少し高い位置にいる男に話しかけた。
フルフェイスの鉄仮面を被った謎の男だった。
「数を数えるように、アントレーガ様に依頼されてましたのですよ。」
鉄仮面の男は丁寧な口調で説明した。
すると黒装束の女性とカメ獣人は互いに顔を見合わせる。
そして「そうなのか。」と納得した。
以上の会話がイェルコインの耳に入ってきた。
そしてイェルコインは会話内容を同行者たちに説明する。
「アントレーガの仲間で間違いないんだな。」
先程ドウジたちに"ジョン・ドワイフ"と名乗っていた同行者の男が確認する。
悪人たちの会話内容を脳内で再確認したイェルコインは、自信はあまりなさそうだが頷いた。
「今すぐ突撃するのもいいが、女性たちに被害が出たら危険だな。」
ドウジは奥の部屋を眺めながら話す。
「ならば、どうする?」
リクターが聞く。
するとドウジはガイの方を向いて言う。
「ガイ、なんとかして敵を一箇所に集められないか?」
そう頼んだ。
どうやら一箇所に敵を集めて、一気に全員を倒そうという作戦のようだ。
ガイは「やってみる。」と一言述べて、甲冑から目の光が消える。
霊体化したようだ。
奥の部屋は特に変わった様子を見せていない。
今、ガイが一生懸命考えているのだろう。
部屋の中では囚われた女性たちを隅に移動させていた。
女性たちは酷く怯えた様子を見せており、そんな女性たちをカメ獣人が見張っていた。
「そんなに怯えないでよぉ〜。 アントレーガ氏は最高の男だから気にいると思うよぉ〜?」
カメ獣人は無邪気に笑っている。
とてものんびりした態度で、おそらく悪意を持っていないのだろう。
しかし女性たちは怯えたままだった。
「い、家に帰してっ・・・!!」
囚われている女性たちの一人である少女がカメ獣人に言い放つ。
目から涙を流しているが、目つきが反抗的だった。
そんな女性を見て、カメ獣人は困ったような表情をしている。
「う〜ん・・・。」
カメの獣人は上を向きながら頬を人差し指でかく。
しばらくして鉄仮面の男の方を向いた。
「ねえ、ギルファーさん。 なんか可哀想だし、家に帰してあげるぅ〜?」
カメの獣人は困った表情をしながら、"ギルファー"と呼んだ鉄仮面の男に聞く。
すると、ギルファーはゆっくりとカメ獣人を見る。
「なりません。 アントレーガ様を困らせるつもりですか?」
丁寧な口調でカメ獣人注意した。
カメ獣人は引き続き困った顔をし、今度は女性たちの方を見た。
「えっとぉ〜・・・、アントレーガ氏に会ったら考えが変わると思うよぉ〜?」
カメ獣人はそういう結論を言い放った。
それを聞いた少女は小声で「いやぁ・・・。」と呟きながら俯く。
「ロドルド! 余計なことを考えず、あんたは大人しくしていな。」
黒装束の女性がカメ獣人に言い放つ。
それに対して "ロドルド" と呼ばれたカメ獣人は黙って頷くのだった。
そして黒装束の女性はギルファーに近づく。
すると、その瞬間ガイが甲冑に戻ってきた。
「今がチャンスだ。」
ガイはすぐにドウジに言う。
しかしドウジには気になることがあった。
「あのカメがいないが・・・?」
集まっているのはギルファーと黒装束の女性のみ。
カメ獣人のロドルドは少し離れた場所にいる。
「あっちはボクに任せて。」
ガイはそう言う。
なにを考えているかはドウジには理解できていない。
しかしドウジの返事は決まっていた。
「分かった、任せる。」
ドウジはそう一言述べると、数秒後には奥の部屋に向かって飛んでいっていた。
部屋の中にいる二人の「敵」に向かって勢いよく飛んでいくドウジ。
「敵」たちが気付いた頃には既に攻撃を受けていた。
両腕を横に広げて二人にラリアットをするかのように捕まえて、そのまま前方の壁に激突した。
衝撃によって砂煙が舞い上がり、三人の姿は見えなくなった。
当然ながらそれに驚くロドルドと囚われた女性たち。
ロドルドは ポカーン と口を開けていた。
やがて煙が消えて三人の姿が見え始める。
ドウジはその前に後方へ飛んだ後、ロドルドの方を向いた。
煙が無くなり、壁際で倒れているギルファーと黒装束の女性の姿が見えてきた。
「あ〜・・・、あんた誰ぇ〜?」
ロドルドは呑気に首を傾げる。
すると今度はガイが甲冑をバラバラにしながら部屋の中に入ってきた。
そしてロドルドの目の前で合体する。
「女性たちをアントレーガ様に渡すために、受け取りに来ました。」
ガイがロドルドに対して言い放つ。
知っての通り、当然「嘘」である。
ドウジは表情を変えなかったが、ガイのやろうとしていることを瞬時に理解した。
「えぇ? じゃあ、なんでリーリンたちを攻撃したのぉ〜?」
ロドルドは倒れているギルファーたちを見ながら聞く。
"リーリン" とは、黒装束の女性のことであろう。
「勢いが強すぎて止まれなかっただけです。」
ガイはすぐにバレそうな嘘を吐いた。
だがロドルドは首を傾げたまま、特になにも言わなかった。
彼の知能の低さをガイは見破っていたのだ。
「それより、アントレーガ様のもとへ連れて行くから女性たちを渡してくれ。」
ガイがロドルドに言う。
それによってロドルドはさらに悩ましい様子を見せる。
やがて首をまっすぐ立てる。
「分かったぁ〜、連れて行っていいよぉ〜。」
ロドルドはガイに言った。
上手く騙せたようだ。
ガイは頷き、女性たちに近づく。
ドウジも同様に。
「よし、じゃあ皆さん立ち上がってください。」
ガイの言葉に女性たちはザワつく。
彼女たちも困惑しているようだ。
先程までロドルドに反抗的だった少女も涙目になりながら警戒している。
本当のことを言えば簡単だが、ロドルドを騙し通すためにガイたちは本当のことは言えない。
厄介なことになっていた。
「立ってよ。」
するとガイは、腰の鞘から剣を抜き出した。
そして剣を女性たちに見せながら、静かに命令する。
その気は全くないが、女性たちを脅す芝居をした。
数秒後、女性たちはゆっくりと立ち上がった。
さすがに恐怖を抱いたようだ。
女性たちは立ち上がるとガイを見る。
そしてガイは女性たちを連れて行こうと行動に移る。
だが、そう上手くはいかなかった。
ドウジは気配を察知する。
そしてすぐに気配がした方を向いた。
ドウジの目に入ったのは、今にもドウジに襲い掛かろうとするギルファーの姿だった。
ギルファーは腕に付けた鉤爪のような武器でドウジを刺そうとする。
それに対し、ドウジはギルファーの腕を掴んで攻撃を止めた。
だがギルファーは封じられていない脚を使ってドウジの両腕を蹴り上げた。
ドウジは腕を蹴り上げられたことで手を離しそうになるが、その前にギルファーを地面に向かって勢いよく叩き付けるために投げた。
ギルファーは勢いよく地面に叩きつけられるが、一度バウンドすると次には軽やかに地面に着地する。
この一連の流れをガイと女性たち、そしてロドルドも見ていた。
「ちょっとぉ、なにしてんのぉ〜?」
ロドルドは不思議そうにしている。
それもそのハズ。
ロドルドからは内輪揉めをしているように見えるからだ。
するとギルファーはロドルドの方を向く。
「あなたはバカですか、アホですか、コチですか! 敵ですよ、彼らは!!」
ギルファーは丁寧な口調ながら、敵味方を区別できないロドルドを罵倒した。
そして同時にドウジとガイが敵であることを教えた。
ロドルドはギルファーとドウジたちを交互に見る。
するとロドルドは表情を変えず、黙ったまま凄い汗をかき始めた。
それを見てギルファーはため息を吐く。




