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53.第7話「美女誘拐事件」(1/9)


 キョウカと共に占い師がいる町へ向かっていたガイが、キョウカが大変な目にあっているという情報を持ってきた。


「キョウカがどうしたんだ!?」


 ドウジがガイに詰め寄る。

 持っていた角材を落として、ガイの鎧の両肩を掴む。

 迫力によって思わずガイは後退(あとずさ)るが、すぐに説明をし出した。


「なんかよく分からない男がキョウカに絡んできてさ。 最初はただのナンパかと思ったんだが、突然キョウカを(さら)って行ったんだ・・・。」


 ガイは申し訳なさそうに話した。

 とても責任を感じているようだった。


 だがドウジは責めたりはせず、ただ一言だけ言い放った。


「案内してくれ。」


 ドウジはキョウカを助けに行くつもりのようだった。

 ガイも当然「ああ、任せて。」と答える。



 すると後ろからギルダーがやってきた。


「俺も行く。 村にいるよりマシだ。」


 どうやら彼もついて行くつもりのようだ。

 ギルダーは二人に近付く。


「じゃあ、私も行くぅ〜。」


 するとギルダーの後ろからピョコっとフブキも出てきた。

 突然現れたため三人は少しだけだが驚く。


「いつの間に・・・。」

「ついさっき起きたぁ〜。」


 フブキが呑気な感じに答える。


「遊びに行くんじゃねえぞ。」


 ギルダーはフブキに言い放つ。

 しかしフブキはニヤニヤしていた。



「とりあえず、四人でキョウカを助けに行こう!」


 面倒事になる前にガイがそう(まと)めて宣言した。

 それを聞いてドウジも「ああ!」という。


「アタシも行くわ!」


 しかしまた違うところから声が聞こえてきた。

 声の主はイェルコインだった。


 イェルコインはドウジたちに近付いてきて、四人を順番に見た。


「悪いけど、村にも何人か残らなきゃ・・・。 シグたちがいるし・・・。」


 ガイが困ったような感じで説明する。

 だがイェルコインは「ムッ」とした。


「キョウカはアタシの親友。 だからアタシも行く!!」


 まるで子供のような雰囲気で反論するイェルコイン。

 ガイも流石になにも言えなくなってしまった。



 すると、動き出したのは意外にもフブキだった。


「じゃあ、私が代わりに残るよぉ。」


 フブキは手を上げながらそう言った。

 袖が腕より長いため、袖の途中が折れるような絵面になった。


 その発言にはイェルコインはもちろん、意外に思ったのかギルダーまでもが反応した。


「いいの?」


 イェルコインがフブキに聞く。

 しかしフブキは相変わらずニヤニヤしている。


「親友は大切な存在。 私も凄く分かるよぉ。」


 フブキは袖に隠れた両手でイェルコインの両頬を()でる。

 イェルコインは両頬に気持ちの良い冷たさを感じた。


 そしてフブキは揺れながらどこかへ向かおうと歩き出す。


「んじゃ、私は病院で待機してるねぇ〜。」


 フブキは歩きながら袖に隠れた手を振った。

 イェルコインたちを見送るように。


 そしてそのまま病院の方へと向かって行った。



 残された四人はフブキの背中を眺めていた。


「意外だな・・・。」


 思わずギルダーがそう(つぶや)いた。

 その言葉を聞いて他三人が一斉にギルダー見る。

 ギルダーはそれに気付くと、誤魔化すように喋り出した。


「こんなことしてる場合じゃねえだろ。 早くその場所まで案内しろ。」


 ガイにそう命令しながら歩き出すギルダー。

 ガイも「ああ、分かった!」と答えて動き出す。



 こうして、キョウカ救出の旅が始まった。






 町へ移動中の一行。

 ガイ含めて三体の甲冑を使ってドウジたち三人を運んでいた。

 飛行能力を駆使(くし)して町へ向かっている。


 ドウジは甲冑に腕を持ってもらい、ぶら下がっている。

 ギルダーは甲冑の背中の上で片膝をつかせて座っている。

 そしてイェルコインはガイの背中の上で座っていた。


 空気抵抗の関係上、ガイ以外の三人は喋ろうとはしなかった。




 そして数十分後、二つ目の町へと到着した。


「ここでキョウカは攫われたのか?」

「ああ。」


 ドウジがガイに確認をとった。

 そして、間違いはないと判明する。


「で、どんな奴だったの?」


 今度はイェルコインがガイに聞いてきた。

 ガイが「え?」と答えると、イェルコインは「攫った奴のこと!」と言い放つ。

 攫った人物の特徴を聞いているのだ。


 ガイは「えーと・・・」と言いながら考え込む。

 どうやら思い出そうとしているようだ。


「確か髪は金髪で、マッチョで、赤いタンクトップを身に付けてたな。」


 ガイが一生懸命思い出そうと頑張っていた。

 すると突然「ナニカ」を思い出し、すぐに三人に言った。


「あと名前は確か、『アントレーガ・ジュリオ』とか名乗ってた!」


 ガイは三人をそれぞれ見ながら話した。

 それを聞き、ドウジは片腕でガッツポーズをとりながら話す。


「よし、手分けして情報を集めよう。」


 そう言ってドウジは真っ先に動き出した。

 イェルコインも同じく大急ぎで町の中へ入って行った。




 情報収集は意外にも早く終わった。

 理由は簡単。


「どうやら、キョウカが攫われるところを見た人が沢山いたようだ。」

「犯人はかなり目立つ奴だったらしいね。」

「『アントレーガ・ジュリオ』という名前も大声で名乗っていたから覚えている人も多いらしい。」


 町には「アントレーガ・ジュリオ」という人物に対しての情報で(あふ)れていた。

 かなりの目立ちたがり屋だったらしく、見た目も濃いため覚えていた人が多いようだ。


「まあ、逆に手間が(はぶ)けて良かったと思うべきだね。」


 ガイが嬉しそうに言う。


 すると、イェルコインが周りを見回し出した。

 そしてドウジとガイを交互に見ながら聞いた。


「そういえば、ギルダーは?」


 イェルコインの質問を聞いてドウジとガイも辺りを見渡す。

 すると建物の(かげ)からギルダーが現れた。


「なにか情報は手に入ったの?」


 情報は結構揃っていたが、一応イェルコインは聞いてみた。


「ゴブリンである俺に人が話をしてくれるかよ。」


 ギルダーは無表情でそう言う。

 悲しいことだが、ギルダーにはそれが普通のことのようだ。


「占い師のところに行ってきた。」


 ギルダーは来た道を指しながら言う。


「だが、どうやら占い師は留守のようだ。」


 ギルダーの言葉を聞いてガイとイェルコインは「えぇ!?」と声を出す。

 ギルダーのことだから直接会いに行って目で見たことだろう。


「で、そっちはどうだった?」


 今度はギルダーが無表情で質問をした。

 ドウジたちは「アントレーガ・ジュリオ」の情報をギルダーに話す。

 それに対してギルダーは特に反応を示さなかった。


「逃げた方向も聞いたから、早速追いかけるぞ。」


 ドウジはそう言うと、言葉通り早速行動を始めた。

 他の三人もドウジに続く。






 ドウジたちは町を出て、誘拐犯が逃げた方向へと走り続けた。

 しかし当然そのまま真っ直ぐなわけがないため、途中で分からなくなってしまった。


「見えるのは森と岩山だけか・・・。」


 ガイが(つぶや)く。

 近くには森、遠くには岩山。

 果たしてどこへ逃げたのだろうか・・・?


「手分けして探すしかない?」


 イェルコインはドウジたちに聞く。

 しかしすぐにガイが返答する。


「いや、人探しならボクの得意分野さ。」


 ガイはそう言うと動かなくなった。

 よく見ると甲冑から目の光が無くなっていた。


 どうやら霊体化したのだろう。


「探すって、どうやって・・・。」

「おそらく、霊体化することであらゆるモノをすり抜けながら探し回っているのだろう。」


 イェルコインの問いに、ドウジが予想を言った。

 だが、その予想は正解だった。


 ガイのような幽霊(ゴースト)は憑依することによって「生の世界」に干渉(かんしょう)できるのだ。

 逆に霊体の状態だと、あらゆるモノがすり抜けてしまう。

 「ナニカ」に触れようとするなら憑依する必要があるが、捜索などをする時は霊体化する方が都合がいい。



 数分後、ガイの甲冑が動き出した。


「見つけた!」


 ガイはそう言うと、待機させていた甲冑たちも操りながらドウジたちを運び出す。

 目指すはもちろん、キョウカの居場所までだ。




 目的地は森の中の岩山の(ふもと)だった。

 炭鉱などのように木材で周りを支えている大きな横穴を発見する。

 どうやら、そこが基地の入口にしているようだ。



 ドウジたちは森の木々に隠れながら入口付近を眺めている。

 入口には見張のような二人組がいた。

 どちらも似たような格好をしているが、顔を隠しているターバンの色が赤と青で違った。


 二人は猟銃のようなモノを持っており、迂闊(うかつ)に近付いたら身体に風穴が開けられることになるだろう。

 しかたなく木々に隠れながら聞き耳を立てた。


「兄者、次の交代っていつだっけ?」

「あと五分ほどだったハズ。」


 青いターバン男が聞き、赤いターバン男が答えた。

 どうやら二人は兄弟で、赤い方が兄のようだ。


「だが、次は俺の番だぞ。」

「あ、そうだった・・・。」


 青いターバン男がガックリと肩を落とす。

 すると数秒後、再び青いターバン男が話しかける。


「なあ、兄者・・・。」

「譲らねえよ。」


 赤いターバン男はなにを言われるか察したのか、そう言い放つ。

 そして再び青いターバン男は肩を落とした。



 その光景を見て、ドウジたちは小声で話し合い始める。


「ねえ、どうする気?」


 イェルコインが聞いてくる。

 三人は考え出すが、やがてドウジが案を出した。


「兄の方が交代したら、突入しよう。」


 謎の案だった。

 当然イェルコインは「なんで?」と疑問をぶつけた。

 するとドウジはすぐに答える。


「合図にちょうどいいだろ。」


 そんなことを真顔で言うドウジだった。

 イェルコインは目が点になった。

 ガイは思わず笑いそうになり、ギルダーは呆れたのか目を(つぶ)った。


 だが、他に案がなかったため、それが採用された。






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