47.第6話「巨大兵器」(5/10)
場面は皆と別行動をとった後のドウジとギルダー。
二人はマルクスを探し出すために基地の中を走り回っていた。
「止めなくてよかったのか?」
すると突然ギルダーが走りながらドウジに聞いてくる。
どうやらドウジがギルダーと共に戦いに行く選択をしたことに対してのことであろう。
「止めたら、大人しく言うことを聞いたか?」
ドウジは走りながら無表情でそう答える。
それを聞いたギルダーはなにも答えず、ただ黙って走るだけだった。
ドウジは言葉を続ける。
「それにさっきも言っただろ。 『追い詰める必要もある』と。」
そう言い終えると、それから二人は再び黙って走り続けた。
やがてとても大きな部屋へと着いた。
その部屋は三階分はある縦の大きさで、横幅も横幅も当然大きい。
しかし部屋の中には重機のような巨大な「物体」が置かれており、せっかくの広さも埋め尽くされそうになっている。
というより、この物体を入れるための大きさなのかもしれない。
「・・・なにか臭いな。」
ドウジの鼻の中に変な匂いが入り込んできた。
嗅ぎ慣れた匂いだが、パッとは出てこない。
だが、そう長くはなかった。
「これは・・・、ガソリン・・・?」
ドウジが嗅いだ匂いは「ガソリン」のようだった。
ギルダーも既に匂いを嗅いでいる。
二人は辺りを見回す。
そして近場をウロウロしている。
次の瞬間だった・・・。
部屋の電気が全部ついたかと思うと、ドウジたちの頭上にある「物体」から激しい音が聞こえてきた。
まるで機械が動き出したかのような。
ドウジたちはそれぞれ「物体」から距離を離す。
すると、その「物体」から声が響いてきた。
「ホウホホーウ、ようこそ侵入者どもよ!」
おっさんの声が部屋に響く。
どうやら「物体」の中に「ヤツ」が入っているようだ。
「これはほんの気持ちだ!」
「ヤツ」・・・、つまりマルクスの声が響く。
次の瞬間、「物体」の足らしきモノが動き出した。
そしてその足はドウジたちの上に移動してきた。
当然マルクスのやろうとしていることは、ドウジたちには分かっていた。
ドウジはギルダーがいる方向へ一目散に跳んで行った。
跳躍力が高いので、一瞬で近付く。
そしてギルダーを片腕で捕まえ、そのまま遠くへ跳んで行く。
マルクスが搭乗している「物体」の足が地面に勢いよく着いた頃には、ドウジとギルダーは無事に避難できていた。
回避したことを確認すると、ドウジはギルダーを解放する。
ギルダーはドウジの顔を見るが、特になにも言わず無言だった。
しかし一瞬だが頷いたのを確認した。
そんなギルダーを見た後、ドウジも彼の性格を理解しているため余計なことは言わず、「敵」への警戒に集中する。
ギルダーも盾に付いている鞘から剣を引き抜き、「敵」に集中する。
マルクスは攻撃を止めない。
再び「物体」を使ってドウジたちを踏み潰そうとする。
しかし攻撃速度はかなり遅いため、ドウジたちは余裕で回避する。
動作が遅く隙は大きい。
だが、攻撃範囲も大きい。
油断をすれば一発で重傷だ。
「物体」は所謂"四足歩行"であり、前足に当たる部分を交互に使い襲ってくる。
それを次々に避けるドウジとギルダー。
その光景はまるで「虫を踏み潰そうとする人間」のようだった。
「・・・っ!」
次の攻撃を回避した瞬間、ドウジは勢いよく上空に跳んだ。
そして「物体」の脚に乗り、素早く上へ駆け上がっていく。
目指すは当然マルクスのいるコクピット付近。
しかしそう簡単に登らせてくれるマルクスではなかった。
「物体」の側面から銃らしきモノが現れ、ドウジを狙う。
そして当然ながら銃撃を開始した。
ドウジはこの事を予想はしていなかったが、「なにかしらの攻撃はしてくるであろう」と考えて警戒していたため、銃が現れた瞬間にもう片方の前足に向かって跳んだ。
そして脚を盾にするように隠れる。
だが、当然ながら反対側にも銃はあった。
もちろんドウジも予想していた。
銃撃を回避しながらコクピットを目指すドウジ。
そしてそれらしき場所を発見すると、一気にそちらへ向かって跳んでいった。
一瞬でコクピットの高さまで浮上したドウジ。
コクピットの中では白髪で白く立派な髭を生やしたオヤジが操縦していた。
それが"マルクス・スノーモービル"だった。
コクピットの窓ガラスを割るために殴りかかるドウジ。
しかし拳が窓ガラスに当たる前にコクピットの窓ガラスがコンクリートのようなモノで覆われた。
ドウジはコンクリートを殴る。
するとコンクリートの一部分は砕け、その後ろのガラスも貫通して割ることはできた。
しかし割れたのは「一部分」なので、窓からの侵入はできなかった。
さすがのドウジも腕の痛みを感じ、そのまま空中から地面へ落下し始める。
その際に、ドウジの腕から流れ出た血が宙を舞う。
ドウジはコンクリートくらい容易に破壊できるので、おそらく普通のコンクリートではなかったのであろう。
地面に激突はしたドウジだったが、バウンドを利用して態勢を整える。
そして自身を狙う「物体」の足を回避し、逃れた。
「簡単にはいかねえか。」
ドウジは怪我をした手をブラブラさせながら「物体」を見上げる。
相変わらずドウジたちを狙っており、止まっている暇はなかった。
おまけに銃による攻撃も追加された。
ドウジとは別にギルダーも行動し始めた。
「ちっ・・・。」
ギルダーは舌打ちをする。
お察しの通り、それはギルダーが「ナニカ」をする前兆だ。
そしてそれは的中する。
ギルダーは空のない上空に向かって盾を投げた。
次にギルダーはフィンガースナップをする。
すると地面に落下しそうになっていた盾が宙に浮く。
なぜなら盾の下に小型竜巻が現れたからだ。
盾は竜巻によって宙に浮かんでいる。
するとギルダーは宙に浮かんでいる盾に飛び乗った。
次の瞬間、ギルダーは竜巻を操作して宙を待った。
その光景はまるで「波に乗るサーファー」のようだった。
ギルダーは宙に浮く盾の上に立ちながら、「物体」の足を避けて銃撃をも回避する。
銃撃を避けながら、撃ってきている銃に近付く。
そして持っている剣を使って銃を斬り裂いた。
銃は「物体」の側面から切り離され、そのまま地面に落下した。
それでもギルダーは止まらない。
すぐに反対方向へ飛んで行こうとする。
マルクスは「物体」の足を操作して妨害しようとするが、動作が遅いため間に合わなかった。
ならばと思い、残っている方の銃で攻撃しようとするが、風に乗って宙を舞うギルダーには当たらず余裕で近寄らせてしまった。
そしてギルダーはすぐに剣で銃を斬り落とした。
こうして両側面に付いていた銃はギルダーによって斬られたのだった。
側面の銃が無くなった「物体」。
これで武器は「物体の足」以外無くなった。
・・・と思われていたが、マルクスは次の武器を出した。
銃が付けられていた場所からさらに後ろの方が開く。
しかもその開き口はさらに四倍くらいの大きさだった。
さすがにドウジとギルダーは一瞬だが驚いた。
「物体」の側面から新たに現れたのは「大きな腕」のようなものだった。
というより「筋肉質な人間の腕」そのもののようだった。
ただし鉄や鋼で出来ており、当然本物の腕ではなかった。
「お遊びはここまでだ!」
マルクスはそう言葉を室内に響かせると、その腕を動かし始めた。
ハエを叩き落とすかのようにギルダーを叩こうとする。
そしてそれをギルダーは必死に避けていた。
するとマルクスはイラついたのか、攻撃方法を変えてきた。
「物体」の手を「パー」から「グー」に変える。
つまり殴ってきたのだった。
だがやはりギルダーは攻撃を避け続ける。
するとギルダーを狙った拳はそのまま床や壁に激突してしまっていた。
その度にマルクスの基地が地響きなどの悲鳴を上げる。
実際、殴った場所には大きな凹みができていた。
しかし気にせずマルクスは攻撃を続ける。
すると、ついに壁に穴が開いたのだった。
穴からは外が見え、綺麗な青空が映る。
すると「物体」が次の攻撃を繰り出した途端、急に前方に倒れだした。
「物体」は前方にあった壁に倒れ掛かる。
幸い壁に穴は開かなかったので、壁に寄りかかる形で止まった。
マルクスは勿論、ギルダーにもなにが起きたのか分かっていなかった。
「物体」の近くには、なんと「物体」の脚が落ちていた。
よく見れば「物体」の四本の脚の内の一本が無くなっていた。
実はこれはマルクスがギルダーに夢中になっている隙を見て、ドウジが殴り折った脚だった。
折れて倒れた「物体」の脚の陰からドウジが跳び出してくる。
そして壁に寄りかかっている「物体」に近付く。
一度「物体」を踏みつけるように着地し、そのまま再び上空へ向かって跳ぶ。
上へ跳んだドウジは天井に付きそうになった瞬間、体を縦に回転させた。
そして天井に着地するように足を着ける。
そのまま天井を蹴って勢いよく真下に落下する。
目標は当然マルクスが乗っている「物体」だ。
ドウジは両腕を真上に上げて拳を突き出す。
いわゆるダブルパンチのように。
ドウジが「物体」へ激突すると、「物体」は地面に完全に倒れる。
床が凹んでめり込んだ。
そして大型の砂埃が舞い上がる。
「物体」が地面に倒れて動かなくなった。
ドウジは今のうちに内部に侵入してマルクスを引きずり出そうと行動しようとする。
しかしドウジが動いたと同時に「物体」は動き出した。
巨大な腕を使って立ち上がろうとする。
するとドウジは「物体」から離れ、穴が開いた壁の場所に向かって跳んだ。
つまり外へ出て行った。
風魔法によって宙に浮く盾に乗ったギルダーも同じく外へ脱出した。
「物体」を戦いやすい"外"へおびき寄せるために・・・。




