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43.第6話「巨大兵器」(1/10)


 マルクスの基地内で戦っているドウジたち。

 その一方、村に残った者たちもいた。


 二体の「敵」を撃破したザイルダイト。

 しかし彼は戦いのダメージで気を失っていた。


「・・・。」


 だが、そんな彼もついに目を覚ます。

 するとザイルダイトの目に映ったのは、涙目のイェルコインだった。


「よ、ようやく目を覚ましたわね・・・!」


 正座の状態でローブの袖で涙を()きとるイェルコイン。

 ザイルダイトは上半身を起こして、近くにいる彼女をボケーっと見る。


「はっはっはっ・・・。 女の子に心配されるとは、俺は幸せ者だ。」


 こんな時でも軽口をたたくザイルダイト。

 するとイェルコインは涙目の状態でザイルダイトを殴る。

 しかし痛くはなく、ザイルダイトの体は全く動かなかった。


 疲れたイェルコインはザイルダイトの胸に倒れるように寄りかかる。

 そしてザイルダイトの服を掴みながら静かに震えていた。

 その際にイェルコインのイヌの耳が ペタン となる。


 ザイルダイトはそんなイェルコインを見て軽く笑うと、そのままなにも言わずに彼女の頭を撫でるのだった。

 イヌの耳に触れないように後頭部辺りを撫でるのだった。




 そこへ誰かがやってきた。


「あー、えっとナニが起きたのかなぁ・・・?」


 その人物は二日酔いに苦しんでいたシグだった。

 どうやら少し睡眠をとったおかげでやや元気になったようだ。

 だが彼女は今の今まで家内で眠っていたため、外の状況が把握できていなかった。


 シグが来たことで慌ててザイルダイトを突き飛ばし、杖を使って立ち上がるイェルコイン。

 ザイルダイトはそのまま再び地面に倒れるのだった。


「気分は大丈夫なの?」


 イェルコインは「なにごともなかった」かのようにシグに話しかける。

 しかしシグには先程の状況を見られていた。


「・・・お邪魔みたいね。」


 シグはそう言って再び家に戻ろうとするが、それを慌ててイェルコインが止める。


「違う、アイツとはなにもない!!」


 イェルコインは必死に(うった)える。

 思わず飛び跳ねながら言うほどだった。


「わ、分かったわよ・・・。」


 あまりの勢いにシグも若干驚いてしまい、苦笑いをする。


 シグは再びイェルコインの方を向いて、目線を合わせるために地面に座る。

 するとイェルコインも地面に座った。

 どうやらシグが座ったのは「疲れているから」と勘違いしたようだ。

 しかしシグは少しだけ口元を(ゆる)めただけで、なにも言わなかった。


「えっと、どこから話せば・・・。」


 それからイェルコインはシグにこれまでのことを話し始める。

 所々はシグも聞いていたようで、意外とすんなり話は進んだ。


 ちなみにその間、ザイルダイトは立ち上がって周りの見張りをしていた。




 数分後、イェルコインは現状の説明まで話し終える。

 シグも理解してくれたようだった。


「じゃあ、二人に村を任しちゃったってこと?」

「まあね・・・。」


 イェルコインが肩の力を落としながらそう言う。

 実際二人は結構苦労していたと思われる。


 するとシグはイェルコインににじり寄ると、そのままイェルコインの小さな体を抱きしめた。

 いきなりのことで驚くイェルコイン。


「ごめんね、肝心な時にいなくて・・・。」


 シグは優しい声でそう言う。

 おそらく心からの謝罪だっただろう。


「い、いや・・・、大丈夫だったから・・・。」


 イェルコインは抱きしめられながらそう答える。

 しかしシグからは返答が返って来ず、そのまま黙って抱きしめられるのだった。



 しばらくしてイェルコインを解放するシグ。

 するとやや遠くでザイルダイトが「ナニカ」をしているのを見つける。


 彼は倒れている二体の「敵」を縄を使って縛り上げていた。

 片方は緑髪の少年、もう片方はパンダのようなピエロメイクの大男。

 どちらも先程までザイルダイトと戦った「強敵」だった。


 イェルコインとシグはそんなザイルダイトのもとへ近付く。


「説明は終わったかな?」


 ザイルダイトは背を向けていたが、二人が近付いてきたことに気付いていた。


 シグは「ええ。」と答えると、ザイルダイトは「そっか。」と返事をする。


「コイツらをどうする気?」

「さあね。 遠くにでも捨ててくるか?」


 イェルコインの質問に対して、ザイルダイトは軽い口調で答える。


「『遠く』ってどこ?」

「そうだなぁ〜、『ピラード』の外とか?」


 再びイェルコインの質問に答えるザイルダイト。

 しかし彼の話の内容から、それが「冗談」であることに気付いたイェルコインはため息を吐いた。

 そしてザイルダイトはケラケラ笑う。


 「ピラード」の外、つまり"国外"まで徒歩で運ぶのには数十日もかかることであろう。

 あまりにもバカげた話だった。


「目が覚めたら再び気絶させればいい。」


 ザイルダイトは「チョップ」のジェスチャーをしながら話す。

 そして今現在気絶して縄で縛られている二人見張るのだった。


 イェルコインとシグは互いに顔を見合わせるが、特になにも話さずにザイルダイト同様、目の前で気絶している「敵」たちを見るのだった。




 すると、突然のことだった。


「あ、そうだ。」


 そう一言声に出すと、ザイルダイトはシグの方を向く。

 そして両腕を広げた。


「・・・なに?」


 しかしシグは「それ」が一体なんなのか分かっていなかった。


「俺も頑張ったからハグしてくれ。」


 ザイルダイトはカッコつけた声でそのような発言をする。

 どうやら先程シグがイェルコインを抱きしめていたのを見ていたようだった。


「え、えっと・・・。」


 シグは困っていた。

 同性ならともかく異性の相手をハグすることに抵抗(ていこう)があるからだ。

 ましてや、女好きのザイルダイトが相手なら尚更だろう。


 ザイルダイトは両腕を広げながら黙って待機している。



 すると二人の視線は、その光景を横で眺めていたイェルコインに向く。

 ザイルダイトは腕を元に戻し、イェルコインの前でしゃがんで目線を合わせる。


「いつもなら杖が飛んでくるハズだけど。」


 ザイルダイトはイェルコインがツッコんでくると思っていたらしい。

 しかしイェルコインはなにもしようとしない。


 彼女はザイルダイトと目を合わせようとせず、そっぽを向きながら喋り出す。


「実際、あんたは頑張ってくれてたし・・・。」


 イェルコインはやや小声でそう言う。

 彼女もザイルダイトをちゃんと評価していたのだ。


 イェルコインの言葉を聞くとザイルダイトはニヤッと笑う。


「よし、じゃあイェルちゃんが抱きしめてくれよ。」


 そう言いながらザイルダイトはイェルコインを見ながら腕を横に広げる。

 それを見て驚愕するイェルコイン。


「ははっ、やっぱりイェルちゃんは可愛いな!」


 ケラケラ笑いながらイェルコインの頭を撫でるザイルダイト。

 少し遅れて今のが冗談だったということに気付き、顔を真っ赤にしてむくれるイェルコイン。

 ザイルダイトの手を払いのけると彼から離れるためにどこかへ歩き去った。


「ちょっとやり過ぎたかなぁ?」


 笑いながら言うザイルダイト。

 そんな彼を斜め後ろから眺めるシグ。


「あなた、本当にイェルコインのことが好きだね。」


 ふと、シグはそういうことをザイルダイトに聞く。

 するとザイルダイトは膝に手を当て、屈伸をするかのように立ち上がった。


「シグさんのことも好きですよ?」


 ザイルダイトは背を向けながらカッコつけた声でシグに言う。

 それを聞いたシグは腰に手を当てながら鼻息を フッ と一回出した。



 すると突然、シグは背を向けているザイルダイトに近付く。

 そして体を密着させると、後ろから抱きしめた。


「あ、え、はいっ? あー、ちょっと、シグさん・・・?」


 さすがのザイルダイトも予測できなかったのか、突然のことに慌てていた。


 しばらく互いに黙ったままだったが、やがてシグはザイルダイトを解放する。

 そしてザイルダイトは慌ててシグの方を見た。


「あー、どういうこと?」


 ザイルダイトがそう聞くと、シグは微笑みながら答える。


「貴方がしてほしかったことでしょ?」


 シグはニヤけながら人差し指でザイルダイトの頬をつっつく。

 そしてシグは、遠くに離れようとしているイェルコインを追いかけるように移動する。

 彼女の後ろ姿をザイルダイトは見送った。



 すると残されたザイルダイトはやがて笑い出した。


「ははっ、冗談半分で言った甲斐(かい)があったな。」


 笑いながら後頭部をかくザイルダイト。

 しかし内心ではシグの予想外の行動に若干驚いており、その言葉の半分は強がりからだったりする。


 彼は先程まで背中で感じた感触を思い出しながら再び敵を見張る仕事に戻るのだった。






 ザイルダイトにからかわれたイェルコインは、村の奥に置いてあった木でできた箱の上に座っていた。

 そこに彼女を追ってきたシグがやってきた。


「ご気分はどうかね?」


 ややふざけてイェルコインに話しかけるシグ。

 イェルコインも彼女に気付き、目を向ける。


「別に悪くはないよ。」


 イェルコインは素っ気ない感じで返答する。

 するとシグはイェルコインの目の前でしゃがみ、目線を合わせた。


「イェルコインはザイルダイトのこと、どう思ってるの?」


 シグは優しく聞いた。

 それはまるで「お母さんが娘に同級生の男の子の話をする」かのように。


「嫌い・・・、ではないよ。」


 一瞬「嫌い」と言いそうになったが、そのまま言葉を続けて本音を言うイェルコイン。

 そしてさらに言葉を続けた。


「でもウザい。」


 バッサリと言った。

 予想通りの答えが聞けて苦笑いをするシグ。


 イェルコインはシグから目線を外す。

 そして今度はイェルコインがシグに聞いた。


「シグはどう思ってるんだ?」


 イェルコインの質問を答えるために考え出すシグ。

 しゃがんだ姿勢で膝の上で腕を組み、その上に側頭部をつけて考え込むシグ。


 しばらくして寝かしていた頭を元に戻し、イェルコインの方を見た。


「正直まだそんなに親しくないし、分からないわね。」


 シグは微笑みながら答えた。

 望んでいた答えとは違っていたのか、イェルコインはため息を吐いた。


 しかしシグは言葉を続ける。


「だから、『彼』のことをもっとよく知ることができれば、もしかしたらウザくなくなるかもよ?」


 シグはイェルコインの頬を撫でながら言った。

 笑顔を見せるシグとは反対に、イェルコインは半目で無愛想だった。


 この時にイェルコインはどういう心情だったかは分からない。

 犬耳がペタンと下がっているが、それはおそらくシグに頬を撫でられているからだろう。






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