41.第5話「悪の基地」(6/7)
一方、ギルダーとフブキの二人は二体の「敵」たちと戦っていた。
剣闘士のような格好の長剣二刀流使い。
野球のユニフォームを着て白衣を羽織った魔術師。
どちらもかなりの強敵のようだった。
ギルダーは炎を纏わせた剣で剣闘士の二刀流に立ち向かう。
剣闘士は一本の剣で攻撃をした後に、もう一方の剣でも攻撃を行う。
シンプルながら強力な戦術であることは間違いない。
ギルダーは一本目の剣を弾いた後に、二本目の剣を弾くという戦い方で応戦している。
もちろん二本目が弾かれたらまた一本目が襲いかかってくるので油断はできない。
剣と剣の戦いは地味ながらも激しい戦いだった。
剣闘士は上半身が裸なのにも関わらず、ギルダーの剣に纏っている炎を恐れはしない。
火の粉が身体に触れても熱がらない。
「お前は今、火の粉が身体に当たっても平気なことを不思議がっているだろう。」
「!?」
ギルダーの心を読むかのように話しかける剣闘士。
剣と剣が触れ合い、互いに手が震えている状況で呑気に話しかけてきた。
「理由は単純。 我が『戦士』だからだ。」
剣闘士の顔は兜によって隠れて全く見えない。
しかし声の感じからしてドヤ顔をしているだろう。
それを察してギルダーの機嫌が明らかに悪くなった。
その証拠に剣撃がさらに激しくなっている。
「ハッハッハッ、盛り上がってきたようだなぁ!!」
剣闘士は嬉しそうな声で叫びながら二刀流の剣撃を放つ。
素早い剣の戦いによって次々に金属がぶつかり合う音が発生しまくっている。
まさに「真剣勝負」が繰り広げられている。
一方、フブキの方も激しい戦いを繰り広げられていた。
炎や雷の球体を弾丸のように飛ばしてくる魔術師の攻撃をフブキは氷の翼を使って空中で回避しまくる。
球体の弾幕は意外と濃く、まるでシューティングゲームのようだった。
この事態を止めるには「本体」を叩くのが一番有効である。
しかしフブキは魔術師に追いつけない。
なぜなら魔術師はそこそこ体力があり、フブキが接近してきたら全力で逃げ、炎や雷の球体を飛ばして攻撃してくる。
故に、フブキは魔術師に攻撃ができない。
だからと言ってなにもしないフブキではなかった。
フブキは氷の剣を雷の球体に飛ばした。
そしてその衝撃で爆発する雷の球体。
その隙にフブキは氷で"新たな武器"を作り出した。
それは正しく「氷の銃」だった。
フブキは氷の銃から発射される氷の弾丸を使って、飛んでくる炎や雷の球体を打ち落とす。
ただし炎の球体だけは直接打ち落とすことはできず、雷の球体の爆発に巻き込んで排除していた。
そして当然、魔術師本体も狙う。
魔術師は逃げるが、さすがに弾丸ともなると逃げることは難しく、次々に弾丸が命中した。
命中すると氷が砕け散るため、身体の中に入り込むことはなかったが、それでも大ダメージを受けたことであろう。
魔術師は氷の弾丸によって倒されたのだった。
残るはギルダーと剣闘士の戦いのみだった。
お互いに剣を激しく振り、剣と剣がぶつかり合う。
金属音が凄い速さで響き合う。
いつの間にかギルダーは剣に纏わせていた炎を解除していた。
おそらく無駄な魔力消費を抑えるためであろう。
「チッ・・・。」
ギルダーは舌打ちをした。
すると彼は剣を勢いよく振って相手の剣を弾くと、すぐに距離をとった。
ギルダーは「フー・・・。」と息を吐くと、手に持っていた盾をその場に捨てた。
そして剣を両手で持ち「霞の構え」をとった。
ギルダーは瞳の赤い黒白目をさらに鋭くさせて、相手を睨む。
戦い好きな剣闘士もそんなギルダーを見て ワクワク している。
剣闘士は走りながら二本の剣を交差させたかと思うと、次の瞬間跳び上がった。
そして体をのけぞらせ、二本の剣を勢いよく振り下ろした。
するとギルダーは冷静に後方に跳んだ。
剣闘士はギルダーの目の前で剣を振り下ろし、地面に剣が刺さる。
それが最大の隙となった。
ギルダーは前方に移動しながら瞬時に剣に炎を纏わせる。
そして左に避けながら、右側にいる剣闘士を斬った。
そのまま前方へ抜け、剣先を前方に向けながら止まった。
次の瞬間、剣闘士の体から血が飛び散って地面にうつ伏せに倒れた。
剣闘士は倒れる瞬間、笑い声のようなモノを上げていた。
相手が倒れたことを察して、ギルダーは剣の炎を消す。
そして地面に捨てた盾を回収するために移動する。
盾を拾い、縦に刺してある鞘に剣を収めた。
そしてそれを持ちながら倒れた剣闘士を見る。
剣闘士は流血はしているが、気絶しているだけで生きているようだった。
すると後ろからフブキがギルダーに抱きついてきた。
氷の装備は既に溶かしている。
「やったねぇ、ギルダー!」
ギザギザの歯を見せているが、目を瞑りながら笑っているため普段より不気味さは下がっている。
しかしギルダーにとっては鬱陶しいことに変わりなかった。
「離れろ!」
ギルダーはフブキに向かって疲れている声で怒鳴る。
しかしフブキは全く離そうとはせず、頬擦りまでしている。
ギルダーは「はぁ・・・。」と深いため息を吐いた。
そしてフブキの顔を手で掴んだ。
「あたたたたぁ・・・。」
ギルダーが手に力を入れると、フブキは痛がって思わずギルダーから離れた。
フブキが離れるとギルダーは再び基地内を探索するために歩み出す。
それに気付いてフブキもギルダーについて行こうとする。
しばらく基地内を探索していると、突然ギルダーが足を止めてフブキの方を向く。
それを見たフブキはキョトンとする。
「お前、今回はともかくどうしていつも俺にくっついてくるんだ・・・?」
ギルダーは不機嫌そうな顔でフブキを見る。
するとフブキは不気味な笑みを浮かべている。
「う〜ん・・・、『一目惚れ』ってヤツかにゃ?」
ふざけた言い方で答えるフブキ。
それを聞いたギルダーはため息を吐いた後に舌打ちをする。
そしてこれから歩む方向を向いた。
「俺が『ゴブリン』だからだろ。」
ギルダーが背を向けながら言う。
するとフブキは再びキョトンとした。
「ゴブリンと同様に『雪女』も嫌われている。 だからお前は俺に引っ付いているんだろう?」
ギルダーは目線のみをフブキに向ける。
するとフブキは目をパチクリさせた。
「同情をしているというのなら、二度と俺にくっつこうとするな!」
ギルダーはそう怒鳴ると、再び歩み始めた。
しかし数秒後、後ろからフブキが抱きついてきた。
袖が長い腕で。
フブキが密着してきたため、ギルダーは体温が若干下がった感じがした。
ギルダーが横に見えるフブキの顔を睨むが、フブキは不気味な笑みでニヤニヤしている。
「勘違いなんかして悪い子。 同情なんかしてないよぉー?」
フブキは頬ずりをしながら話し続ける。
「世間から嫌われているからって、性格悪く振る舞わなくていいのに。」
フブキは頬ずりをやめると、普段と比べて真面目な感じの喋り方で言った。
そしてそれを聞いたギルダーは睨むのをやめて、無言で聞き続ける。
「素直になっていいんだよぉ〜? キミは立派な戦士なのだからぁ。」
フブキはギルダーの耳元で囁く。
しかしギルダーは無反応だった。
フブキは黙ってギルダーに抱きついたままだった。
雪女が密着しているため、ギルダーの背中は冷たくなっている。
ギルダーは無言だったが、フブキが喋らなくなったことを確認すると、彼女を引き離した。
そしてギルダーはなにも言わず歩き出す。
それを見てフブキはつまんなそうな顔をするが、彼女もなにも言わずついていくのだった。
「ゴブリン」は狡猾で最悪な種族と言われている。
暴行や略奪、誘拐などを平気で行い、裏切りや掌返しをする。
そのため当然ながら他種族から嫌われ、差別されるのだ。
「ホブゴブリン」になれば実力がつくため、性格面がややマトモに成長する。
しかしギルダーのような捻くれ者になる場合の方が多い。
「雪女」はゴブリンほどではないが、習性のせいで他種族を襲ってしまうことが多い。
だからやや嫌われている。
他種族を襲う種族はゴブリンと雪女以外にもいる。
しかし今は説明する必要はないだろう。
ギルダーとフブキは大広間のような場所に来た。
すると、遠くの方にいるモノを見つける。
ギルダーは盾から剣を引き抜く。
目の前にいるのが「敵」であることを理解したからだ。
遠くにいるモノは、顔に包帯を巻いている。
ザイルダイトと違って目元と鼻を隠しており、口元しか見えない。
しかしその口元もギザギザしたような歯が生えており不気味だった。
フブキとは違って「牙」と呼んだ方がそれらしいほど尖っている。
胴体はやや細い。
しかし腕と脚は途中から太くなっており、とてもアンバランスな体型だった。
上半身は裸で包帯を巻いており、下半身にはジーンズを履いている。
また、腕にも包帯が巻かれている。
見た目は一言で表すなら、まさに「モンスター」であろう。
「モンスター」は一歩一歩近寄ってくる。
足音が重く響く。
大広間は遠いため、ギルダーまではあと数十歩くらい歩かなければ近寄れないだろう。
ギルダーも恐る恐る近付く。
剣と盾を構えて警戒している。
フブキも氷の装備を見に纏い、いつでも戦える準備を整えた。
すると「モンスター」は突然走り出した。
一目散にギルダーに迫る。
それを見たギルダーは若干驚きながらも瞬時に剣に炎を纏わせる。
そしてコチラも走り出した。
やがて距離はすぐに縮まり、互いに攻撃できる範囲となった。
先に攻撃をしたのはギルダーだった。
彼はすぐに剣を「モンスター」目掛けて振り下ろす。
剣は「モンスター」を斬り裂いた。
しかし「モンスター」は、斬られてはいたが軽い切り傷程度の怪我しか負っていなかった。
思わずギルダーも驚愕の表情を見せていた。
そして今度は「モンスター」のターンだった。
「モンスター」は片手でギルダーの頭を鷲掴みにし、持ち上げた。
「モンスター」の方が背が高いので、ギルダーの脚は空中に浮かんでいる。
そして次の瞬間、「モンスター」は野球のピッチャーの如くギルダーを投げ飛ばした。
当然壁に向かってだ。
ギルダー凄い勢いで壁に衝突し、砂埃が舞う。
フブキは一瞬の出来事に理解が追いついていなかった。
すると「モンスター」の口が動き始めた。
「俺を誰だと思っている。」
次に体が動き、右手でサムズアップを作ったかと思うと、親指の先を自分に向ける。
そしてハッキリと叫んだ。
「"ジャンボ・ハムサンド"様だぞ!」
「モンスター」は自身の名を叫ぶ。
その叫びは大広間に響いていた。




