39.第5話「悪の基地」(4/7)
村へ謎の二人が近付いてきた。
どうやらマルクスたちの仲間のようだ。
片方はパンダとピエロを合体させたような顔をしている大型の肥満体型の男。
もう一人は緑色の髪の小柄な少年だった。
彼らは村付近でボロボロになって文句を垂れている残っていたチンピラたちを見つけると、彼らの近付く。
「おいおいキミたち、こんなところでなにをやっているんだい?」
パンダピエロ風の男がどこか不気味さを感じる優しい口調でチンピラたちに話しかける。
二人に気付いたチンピラたちは一斉に、静まり返る。
「あんたらは、ヴィレンビーとチャック・・・!?」
「なぜここに・・・!?」
チンピラたちが不思議そうに二人に尋ねる。
するとチャックと呼ばれた少年が近くにいたチンピラの顎を蹴飛ばした。
「てめえらの尻拭いだよ! この役立たず共が!!」
チャックはイラついた言い方でそう言い放つ。
蹴飛ばされたチンピラは後方に飛んだ。
「おいおいチャック。 その元気は『敵』を倒すためにとっておけよ。」
ヴィレンビーと呼ばれた男がチャックを注意する。
するとヴィレンビーはマルクスの建物がある方向を指して話し始めた。
「すぐに基地に戻るんだ。 侵入者が出たらしい。」
「・・・奴らか。」
ヴィレンビーの報告を聞いて、チンピラたちが侵入者の正体を察する。
そして使い物にならなくなったバイクを放置して、徒歩で基地まで戻り始めた。
「チッ、数だけ多いゴミどもが! せめて奴らの頭の半分くらいは戦力になれよな。」
チャックは相変わらず文句を言う。
とてつもなく口が悪い子供だった。
「さて、俺たちは俺たちの任務をするぞ。」
ヴィレンビーは静かにそう言うと、村の入り口を通って村へ入って行った。
チャックも彼について行くように村へ入って行った。
村の中ではザイルダイトとイェルコインがチンピラ相手に戦っていた。
報告に戻るチンピラもいれば、復讐をしてくるチンピラもいるだろうという予想もあったため何人かは残っていた。
ザイルダイトもチンピラ相手なら「気」を使わなくても十分戦える。
彼はチンピラを殴り倒したり、投げ飛ばしてイェルコインが作った透明の壁にぶつけて跳ね返したりして処理をしていた。
すると村の入り口から先ほどの二人組がやってきた。
「おうおう、ハデにやってるじゃねえか。」
ヴィレンビーはチンピラたちを相手にするザイルダイトたちを見て一言。
そしてそれによって彼らの存在に気付くザイルダイトとイェルコイン。
ちょうど最後のチンピラを倒した直後だった。
「あんたたちは新しい用心棒か?」
ヴィレンビーがザイルダイトとイェルコインに聞いてきた。
イェルコインはザイルダイトを見る。
するとザイルダイトは腕を頭の後ろで組みながら答える。
「いんや、ちょっと寄っただけだ。」
相変わらず軽い口調で話すザイルダイト。
それを聞いて敵意を向けるチャックと、不気味に笑うヴィレンビーだった。
「そうか、寄っただけか。」
ヴィレンビーは笑いながら腕の骨を鳴らし始めた。
そして不気味な笑顔を見せながらザイルダイトに言い放つ。
「なら、始末してもこの村にはなにも問題は無いということだな。」
そう言い放つと、二人はザイルダイトに向かって走り出した。
特にチャックは背が小さいせいかとても動きが速く、間を詰めるのに三秒もかからなかった。
ザイルダイトに急接近したチャックは右ストレートを放つ。
しかしザイルダイトは華麗に避けた上、チャックの突き出された右腕を掴み、投げ飛ばした。
身体が軽かったせいか、かなり遠くまで飛んで行った。
だが、そうしている間に今度はヴィレンビーが接近してきた。
彼は勢いよく腕を振り下ろした。
しかし動作が遅いためザイルダイトは余裕で避けた。
すると次の瞬間、振り下ろされた腕が地面を叩くと砂塵が舞った。
腕力はドウジ並みにありそうに思える。
復帰したチャックがザイルダイトに攻撃を繰り出す。
今度は蹴りを放つ。
そして同じくヴィレンビーが再び腕を振り下ろす。
速いチャックと力強いヴィレンビーのタッグは、中々にバランスが取れていた。
ザイルダイトは避けるので必死だった。
するとチャックがザイルダイトの背中辺りにある服の装飾品である紐のようなものを掴んだ。
当然ザイルダイトは引っ張られその場で転倒してしまう。
それをチャンスに思ったヴィレンビーは思いっきりザイルダイトに向かって腕を振り下ろしてきた。
なんとか横に転がることによって回避するザイルダイト。
しかし巻き起こった砂塵と風圧によって吹っ飛ばされた。
立ち上がったザイルダイトは近くにイェルコインがいることに気付いた。
「手伝おうか?」
イェルコインが半目でザイルダイトに話しかける。
「いんや、イェルちゃんは家を守っててちょうだい。」
だがザイルダイトはそう言って再び戦いに戻った。
そしてイェルコインは、先程のザイルダイトの発言で気になった部分があった。
「イェルちゃん・・・!?」
どうやら「イェルちゃん」という呼び方も気に入らなかったようだ。
ザイルダイトは肩を回しながら戦場へ戻る。
「さっきから避けてばかりで全然攻撃をしてこないな。」
ヴィレンビーは指摘をしてきた。
チャックもザイルダイトを睨んでいる。
「攻撃したら負けかなと思ってる。」
ザイルダイトはふざけたような言い方でそう発言した。
するとそれがウケたのか、ヴィレンビーは大きく笑った。
反面、チャックはイラついているようだった。
「ふざけやがって・・・。」
チャックは思わずザイルダイトに飛びかかった。
するとザイルダイトはチャックから繰り出される連続攻撃次々に回避していた。
攻撃が回避される度にチャックの機嫌は悪くなって行った。
するとザイルダイトは隙を見てチャックの脚を蹴飛ばす。
それによってチャックはすっ転んだ。
「分かった分かった。 ご要望にお応えしてちょっと攻撃をしてやるさ。」
ザイルダイトはそういうと懐から「ナニカ」を取り出した。
それはなんと「拳銃」だった。
「これぞ凶悪な武器『拳銃』。 これに撃たれたら一溜まりもないぜ!」
ザイルダイトは拳銃をクルクルと回しながら見せびらかす。
そして銃口をチャックに向けた。
遠くから見ているイェルコインも予想外の武器が出てきたので口を開けながら驚いていた。
「さあ、命乞いをしな。 そして神に祈りながら舌で床を清めるんだな!」
長ったらしい台詞を吐きながらチャックを脅すザイルダイト。
するとチャックは、拳銃を握っていたザイルダイトの腕を蹴った。
当然ザイルダイトは拳銃を手から落としてしまった。
地面に落ちた拳銃をチャックは奪い、逆にザイルダイトに向けて銃口を向けた。
「おっと。」
ザイルダイトは思わずそう言葉を漏らした。
「床を舐めるのはお前のようだな!」
そう言ってチャックはすぐに拳銃の引き金を引いた。
カチッ。
・・・。
・・・・・・。
「あ?」
拳銃の引き金を引いても弾が発射されなかった。
おそらく弾が入ってなかったのだろう。
しかし次の瞬間・・・。
「バーン!!」
そう口で言い放ちながらザイルダイトは「気」を纏った腕でチャックを殴った。
殴られたチャックは勢いよく後方へ飛んでいき、数メートル先の家の壁に激突した。
レンガが崩れて上半身が埋まったチャックは、ピクピクと小刻みに痙攣していた。
「『撃つ資格があるのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ。』ってな。」
なんかの名言のような言葉を言いながら、チャックが落とした拳銃を拾った。
そしてその拳銃を再び懐に仕舞った。
ザイルダイトは後ろを振り向く。
するとヴィレンビーが拍手をしていた。
「なかなかに面白い見せ物を見させてもらったぜ。」
どうやらヴィレンビーはあえて手を出さないでいたらしい。
実際不気味な笑顔で笑っていた。
「これはこれは、どうもありがとうございました。」
ザイルダイトは紳士風のお辞儀をする。
遠くから眺めているイェルコインは半目で眺めていた。
「コイツら頭おかしい。」という言葉を脳裏に浮かべていた。
ヴィレンビーは腕の骨を鳴らしながら、ザイルダイトに近付く。
そしてザイルダイトも肩を回しながら距離を縮める。
「じゃあ、今度は俺と踊るか?」
「悪いが、男と踊る趣味がないんでな。」
互いに変な会話をしながらニヤついている。
そして次の瞬間、突然ヴィレンビーはザイルダイトに殴りかかった。
さらにザイルダイトも予期していたのか、軽やかに攻撃を避けた。
連続で殴りかかってくるヴィレンビー。
先程の攻撃動作より明らかに速く、集中していないと避けられないだろう。
しかしザイルダイトは全部回避している。
するとヴィレンビーは若干動作を遅らせたり、速くさせたりし始めた。
さすがのザイルダイトも若干キツくなってきたのか、結構ギリギリで避け始めていた。
やがてザイルダイトの顔にヴィレンビーの拳が激突した。
顔を殴られた後に腹部を数回殴られ、トドメはアッパー決められた。
ザイルダイトは宙を舞い、そのまま地面に落下し始めた。
しかしそれを見逃すヴィレンビーではなかった。
彼は強烈な回し蹴りを放ち、イェルコインがいる方向に蹴り飛ばした。
勢いよくイェルコインの方向に飛ばされるザイルダイト。
あまりの速さにイェルコインが能力を切ろうとする前に激突してしまい、そのまま跳ね返って吹っ飛んでいった。
「ちょ、ちょっと!?」
イェルコインは慌てて能力を切り、ザイルダイトのもとに駆け寄ろうとする。
地面で伸びているザイルダイトをゆすったりするが、全く反応がなかった。
「そ、そんな・・・。」
イェルコインは思わず泣きそうな表情をしていた。
しかしそこへヴィレンビーが近付いてきた。
イェルコインが見上げると、ヴィレンビーが不気味な笑顔をしながらイェルコインを見下ろしていた。
イェルコインは思わずザイルダイトを守るように両腕を横に広げながら立ち塞がった。
「おいおい、そんな華奢な体で俺に立ち向かうというのか?」
ヴィレンビーは腕を組んで余裕の表情をしていた。
そんなヴィレンビーの顔を睨みつけるイェルコイン。
目から涙を流しながら立ち塞がっている。
「俺は優しいから、キミのことは殴らないさ。」
ヴィレンビーはそういうとイェルコインの左腕を掴んで持ち上げた。
左腕を掴まれた状態で宙ぶらりんの状態になるイェルコイン。
必死に蹴りを放とうとするが、武闘派ではないイェルコインの攻撃ではヴィレンビーに痛みも与えられずにいた。
「悪いが退いてくれ。」
そう言うとヴィレンビーはイェルコインを横に向かって投げ飛ばした。
そのまま地面に転げ落ちるイェルコイン。
武闘派ではない彼女にはそれだけでかなりのダメージを受けてしまう。
痛みによって咳き込んでしまうイェルコイン。
そして無力な自分の姿に思わず涙を流してしまうのだった。
「やれやれ、あの程度で泣いてしまうとはなんとも情けない。」
ヴィレンビーはイェルコインを嘲笑った。
その時だった。
ヴィレンビーは足に違和感を感じた。
慌てて足を見ると、左脚にナイフが貫通して突き刺さっていた。
よく見るとうつ伏せの状態のザイルダイトが右手でナイフを握っている。
「き、貴様・・・!?」
すると次の瞬間、ザイルダイトの体全体が輝き始めた。
しかしその輝きは普段の金色っぽさではなく、不気味な漆黒の色だった。
ナイフから手を離すと両手を地面に置き、そのまま地面を蹴って倒立の体勢になる。
するとザイルダイトに生えているサルの尻尾がヴィレンビーの首に巻きつき、そしてそれに引っ張られるようにザイルダイトの両脚がヴィレンビーの頭を固める。
そして最後に思いっきり体を戻すように曲げて、ヴィレンビーの頭を地面に打ちつけた。
ヴィレンビーの頭から脚と尻尾を離し、立ち上がるザイルダイト。
そして先程の自分のように地面にうつ伏せで倒れているヴィレンビーの頭を手で掴む。
そして上に引っ張り現れた顔面に重い一撃を放った。
ヴィレンビーはチャックほどではないが、そのまま遠くに吹っ飛んでいった。
やがてザイルダイトの身体から漆黒の輝きがなくなり、文字通り「気」が抜けたザイルダイトは再び地面に倒れた。
イェルコインは涙目になりながらもその光景を見ていた。
一体なにが起こったのか、彼女には一切理解できなかったが・・・。




