37.第5話「悪の基地」(2/7)
村の中に蔓延っていたチンピラ連中は、ドウジたちの手によって全滅した。
全員を村の外へ追い出し、一箇所にまとめて放置した。
バイクも同様にである。
キョウカは怪我をしていた女性住民を治療していた。
「本当にありがとうございました。」
女性住民はドウジたちに感謝の言葉を送った。
するとドウジは膝をついてなるべく目線を合わせようとする。
「ここで、なにがあった?」
早速女性に話を聞こうとするドウジ。
しかし横からザイルダイトが入ってきた。
「待て待て、とりあえず今は少し彼女を落ち着かせよう。」
ザイルダイトは女性住民のことを思ってドウジを止めた。
ドウジはしばらく黙っていたが、やがて「分かった。」と一言述べてその辺を歩き出した。
「す、すみません・・・。」
「いえいえ、当然のことです。」
ザイルダイトは良い声で調子のいい感じの言葉を発する。
おそらく女性住民が結構美人だからだろう。
ドウジのもとへガイがやってきた。
「村の中を探し回ったが、ここにいるのはあの女性だけみたいだ。」
ガイ、ギルダー、フブキはそれぞれ村の中を探索していた。
チンピラたちが居座っていた理由を探すために。
ドウジも彼らと同じく「ナニカ」がないか探し回ろうとする。
すると、とある家の中からギルダーが現れた。
しかしギルダーは後ろ向きに出てきていた。
なぜなら、彼は「ナニカ」を引っ張ってきていたからだ。
ドウジとガイは気になって近付くと、その「ナニカ」の正体がすぐに分かった。
「村の人・・・?」
「にしては、変な格好をしている。」
ギルダーが運んできたモノは「人」だった。
しかしその「人」は一見奇妙な格好をしていた。
顔を赤い布で覆い、目と眉毛と前髪の半分が露わになっている。
首元に赤いボロボロの布を巻いており、体には鉄でできた鎧を身に纏っていた。
そして、とんがった耳が生えている。
「エルフか・・・?」
ガイがドウジとギルダーを見て言う。
しかし詳しくないドウジはただ肩をすくめるだけだった。
ギルダーはなにも言わず、ただ「その人物」を見ているだけだった。
「エイジさん・・・!」
ふと後ろから声がした。
振り返ると、キョウカに支えられながら女性住民が歩いてきていた。
「この人を知っているの?」
ガイが倒れている人物を指して聞く。
すると女性住民は頷いた後に話し始めた。
「"エイジ・ヒュウガ"さん です。 この村の用心棒をしてくれていた方です。」
女性住民は地面に正座をして座り、エイジと呼ばれた人物の頭を膝の上に乗せる。
そして優しく頬を撫でた。
「用心棒がいて、この有様か?」
ギルダーが容赦ない一言を言い放つ。
それを聞いてザイルダイトが掴み掛かろうとするが、その前に女性住民が話し始めた。
「私は数週間ほど別の町に遠出をしてまして、今日この村に戻って来たばかりで・・・。」
そこまで言って女性住民は黙ってしまった。
しかしこの場にいた全員が理解した。
彼女は「なにも知らない」ということを。
すると女性住民は無理に笑顔を作ると喋り出した。
「と、とにかく、ここじゃなんですし、私の家に来てください。」
女性住民は立ち上がろうとするが、怪我をしているため足元がフラフラしていた。
そして見るからに華奢なのにエイジを運ぼうとするため、前屈の体勢でプルプルとしながら止まっていた。
そこへドウジがエイジをか持ち上げて抱えた。
そして女性住民はキョウカに支えられながら歩き出す。
シグは代わりにガイが抱えて移動し始めた。
女性住民の家と思われる場所に移動した。
中はチンピラたちによって荒らされてはいたが、最低限人が住めるようにはなっていた。
「そちらに寝室がありますので、エイジさんを寝かせておいてください。」
女性住民が奥の扉を指す。
ドウジがそこへ向かい、扉を開けて中に入る。
しかしやはり寝室も荒らされていたが、幸いベッドは無事だった。
ドウジはそっとエイジをベッドの上に寝かせると、そのまま寝室を出て行った。
各々が家のあちこちで立っている。
ただ二日酔いのシグはソファで寝ていた。
また、女性住民は真ん中にあるテーブルの席に座っており、キョウカとイェルコインも席に座っていた。
「改めて、ありがとうございました。」
女性住民は再び感謝の言葉を送る。
すると顔を上げたと同時に、自身の胸に手を当てた。
「私の名前は"アーリル"と申します。」
アーリルと名乗った女性は周りにいる戦士たちを見渡す。
そしてそのまま喋り続けた。
「実は私たちの村は「ある人物」によって支配されていたのです。 もしかしたら、彼が関係しているかもしれません。」
彼女はどこか不安を感じているような表情をする。
「ある人物?」
キョウカは真っ先に気になるであろう部分をすぐに聞いた。
すると、アーリルは少し間を置いた後に静かに話し始めた。
「・・・ "マルクス・スノーモービル" 。 それが彼の名前です。」
この事件の黒幕であろう人物の名前が出た。
そしてその名前を、この場にいるほぼ全員が頭に入れた。
「彼はこの村の近くにある建物に住んでおり、この村を邪魔に思っていました。 しかし『月々の納金さえすれば見逃してやる』と言われ、無力な私たちはそれに従うしかございませんでした。」
アーリルは若干辛そうな表情で話していた。
しかし話を聞かなければならないため、誰も彼女を止めようとはしなかった。
「するとそれから度々謎の人物たちが村に現れて、迷惑行為をし出すようになったのです。 村の人々は『それ』がマルクス氏の仕業だと分かってはいました。 しかし無力な私たちにはどうすることもできませんでした。」
彼女は思わず泣きそうな表情をする。
しかしすぐに表情に明るさが戻った。
「その数日後、行き倒れていたエイジさんを村の人々が助けたのです。 それ以降、エイジさんが恩返しとして村に迷惑行為をしてくる謎の人物たちを追っ払ってくれていたのです。」
彼女の話を聞いてドウジは寝室がある扉の方を向いた。
しかしまだ彼が出てくることはなさそうだった。
「マルクス氏は納金を受け取る以外は特になにも申しませんでしたし、謎の人物たちを追い払っても特になにも騒いだりしませんでした。」
彼女はそう言うと、急に考え込んだ。
彼女が言っていることが正しければ、マルクスと呼ばれる人物は彼女がいない間に「ナニカ」を起こしたのだろう。
その「ナニカ」が分かればどうにかできるかもしれない。
そう考える戦士たちだった。
現状の手掛かりは気絶しているエイジのみだろう。
しかし彼はまだ目覚めない。
その時だった。
「報告。 チンピラたちが目を覚まし始めた!」
ガイが突然そう言い放った。
実はガイはチンピラたちの近くにもう一体の甲冑を物陰に置いていたのだ。
ガイは甲冑から甲冑へ意識を移動させることができる能力を持っているのだ。
これによってガイは遠くからすぐに連絡ができるのだ。
ただしあくまで幽体が直接移動しているため、遠くに行けば行くほど連絡は遅れてしまうが。
「よし、俺が行く。 他はここで待っててくれ。」
ドウジはそう言うとすぐに家を飛び出し、外へ出て村の入り口に向かった。
そしてチンピラが集まっているところへやってきた。
ただし物陰に隠れて見ている。
半数近くのチンピラたちが目を覚まし、立ち上がる。
チンピラたちは各々が好き勝手に文句を言っていた。
近くに置いてあったバイクを見つけ、動きそうなバイクを選んでいる。
やがて動いたバイクに乗ったチンピラは一目散にどこかへ移動し始めた。
次々に動くバイクに乗ったチンピラが同じ方向に向かって走り出す。
走り去っていくチンピラが向かう場所は一つだけ。
それは本拠地だ。
ドウジの後ろには、いつの間にかガイとギルダーとフブキがいた。
そしてバイクに乗ったチンピラがある程度の距離まで移動すると急にガイが飛んでいき、後を追うかのようにドウジたちも追いかけ始めた。
チンピラたちに見つからないように。
ここからはそれぞれで動くことになる。
まず、ドウジたちはチンピラたちの目的を探るために本拠地へと向かう。
そして念のため残った戦士たちは村の守りをする。
ちなみにガイは連絡用のために、村に甲冑を一つ置いておくことにした。
ガイはチンピラを見失わないように追いかける。
そして見つからないようにこっそりとついていく。
ドウジも凄い速さで追いかける。
ただギルダーとフブキはそんなに速く走れないため、ガイの籠手に掴まれて飛ばされていた。
当然そんな状況だから誰一人話そうとはしなかった。
時間はかからなかった。
なぜなら、チンピラたちの本拠地は結構近くにあったからだ。
チンピラたちは変な形をした建物の中へと入って行く。
ガイも見失わないようについて行くのだった。
ここでドウジは「あること」を脳裏に浮かべていた。
それはチンピラたちが、村の近くにある建物に入ったからだ。
先程のアーリルの話によると「村の近くの建物にマルクスという人物が住んでおり、村を邪魔に思っていた。」と言っていた。
もしかしたらこの建物こそがマルクスの建物なのではないかと思っていた。
つまり、チンピラたちに村を襲わせた張本人は・・・。
ドウジは一つ確信したことがあった。
マルクスという人物がどういう人物かはこの際置いといて、チンピラたちを使役するような奴を相手に話し合いで解決はできないだろうと理解していた。
つまり、今度も結構厄介な出来事になるだろうということだ。
建物の中に入ると、まるで地下駐車場のような場所に来た。
周りを気にせず進んでいくと、急にガイが立ち止まった。
「マズいぞ・・・。」
ドウジも足を止める。
そしてガイが止まったことで籠手に掴まっていたギルダーとフブキも同じく止まる。
そしてドウジたちの近くまで歩いて近付いてきた。
「なるほどな。」
ドウジはガイの困りごとを理解した。
おそらく後ろにいる二人もだろう。
なぜなら、目の前に大きな二つの入り口があるからだ。
先が途中で曲がっているため、奥が全く見えない。
入るまで分かりそうになかった。
「・・・二手に分かれる、ってこと?」
フブキが呑気に聞いてくる。
そしてその言葉に釣られるようにドウジたち四人は円になるように集まり、それぞれの顔を見る。
「さて、ここからどうしようか。」
ガイが他三人を見て言う。
と言っても、選択肢は一つだけであろう。




