36.第5話「悪の基地」(1/7)
「デマスナ」の町を出て、別の町へ向かおうとするドウジたち。
現在ドウジを含めて合計8人。
十分多いようだが、念には念を入れて新たな仲間を探すドウジたちだった。
それぞれが歩きながら改めて自己紹介をした。
ギルダーと気分が悪いシグはあまり喋らなかったが。
ドウジは二日酔いのシグを背負って歩いている。
それ以外は普通に歩いている。
「へへっ、役得ってヤツだな。」
ドウジを見てザイルダイトが笑いながら言う。
ただしドウジには伝わっていなかった。
「あんたと違ってドウジにそんな下心なんかないわよ。」
イェルコインが半目でザイルダイトを見ながら喋る。
するとザイルダイトはニヤニヤするだけだった。
ドウジはいつもと変わらず無表情であり、一見特に問題はなさそうだったが、内心は背中のシグのナイスバディを結構意識してしまっていた。
ドウジに下心は無い。
しかし彼も「男」なので、場合によっては異性を本能的に意識はしてしまう時もあった。
今のように。
するとイェルコインは「ナニカ」を思い出したかのように話し続ける。
「そうだ、あんた一体どういうことよ! 『アタシがあんたに惚れてる』って・・・!!」
イェルコインは怒っていた。
昨日の夜にザイルダイトがドウジたち三人に話していたことだ。
「あれ、なんで知っているんだ?」
ザイルダイトはドウジとギルダーとフブキを順番に見る。
・・・すると、フブキが顔を逸らすのが見えた。
「フブキちゃん?」
「・・・ごめんなさい。」
フブキは素直に謝る。
本当にフブキがチクったようだ。
「『口は災いの元』だな。」
ザイルダイトは呑気に空を見上げた。
そして大きく「ハハハハハ!」と笑う。
「ぬわぁにが『ハハハ』だ、このヤロー!!」
しかしイェルコインが逃さない。
彼女は持っている杖でザイルダイトを叩いた。
後ろから背中を叩かれたザイルダイトは飛び上がる。
ザイルダイトは笑いながら走り出し、そんな彼をイェルコインは追いかける。
ただしザイルダイトは明らかに本気で走っていなかった。
一足先に走る二人をその他のほぼ全員が後ろから眺めている。
「次はどこへ向かうんだ?」
ドウジが聞く。
次の目的地を知らないからだ。
しかし数秒経っても誰からも返事が返ってこなかった。
「えっと、これは道に沿って歩いているだけですね・・・。」
キョウカが状況を見て説明をする。
周りの仲間も特に決めていなさそうだった。
「いいんじゃない? このまま次の町に着くまでテキトーに歩いていればぁ。」
フブキが不気味な笑顔を見せながら言う。
体を揺らし、自身の腕より長い服の袖をブラブラさせながら歩いている。
フブキの発言に異を唱える者はいなかった。
全員が無計画だったようだ。
特に大した話はせずに歩き続ける一行だった。
追いかけっこをして一足先に進んでいたイェルコインとザイルダイトは、少し斜面になっている道を上っていた。
そして斜面を上り切ると、遠くに見えるモノをザイルダイトが発見する。
立ち止まったザイルダイトを後ろから走ってきたイェルコインが杖で叩く。
ザイルダイトは思わず「ブエッ!」という声を上げるが、もう一度叩かれそうになった時に咄嗟に杖をキャッチした。
「ちょっと待って。 アレ見て、アレ。」
ザイルダイトは遠くを指す。
これから進んでいくであろう方向をだ。
イェルコインは「え゛ぇ゛?」とやや不機嫌気味に言いながら、ザイルダイトが指す方向を見る。
すると遠くの方に「村」があることをイェルコインも確認した。
「アレが次の目的地ってワケだな。」
ザイルダイトはそう言いながら、力を弱めたイェルコインから杖を奪う。
そしてクルクルと3、4回くらい回すとそのままイェルコインに返した。
その際にイェルコインは受け取ったと同時にザイルダイトから離すように杖を抱きしめた。
やがて後ろからドウジたちも追いついた。
ザイルダイトが再び村を指して、ドウジたちも村を確認するのだった。
村へ向かうために再び歩き出すドウジたちだったが、ふと「ナニカ」異変を感じ取った。
「なぁキョウカ。 村の周辺にいる奴らに見覚えはないか?」
ドウジがキョウカを試すように聞く。
ドウジの言葉が気になってキョウカは村の方をよく見る。
すると、キョウカにも見覚えがある人物たちであった。
「げっ、アレってまさか・・・!?」
そしてイェルコインもだった。
村の近くを「バイクのようなモノ」で走り回る集団。
そう、ドウジがナルキとの戦いに敗れた後に運ばれた町にやってきたチンピラたちだった。
「また、奴らと戦うハメになるようだな。」
ドウジがそう言うと、他の皆はドウジを見る。
そしてすぐに村の方に顔を向けた。
今の一瞬でほぼ全員が覚悟を決めたようだ。
キョウカとイェルコインは立ち向かう気でいた。
そしてその他の仲間は過去にドウジたちが戦った「敵」であることを理解し、彼らも戦うことを心に決める。
二日酔いのシグを除いて。
「ご、ごめん・・・。」
ドウジに背負われているシグが謝る。
しかし彼女を咎める者は誰一人もいなかった。
そしてドウジたちは「敵」が待っている村へと歩み出した。
緩い坂道を下り、村の近くまでやってきたドウジたち。
当然それに気付かないチンピラたちではなかった。
「おいおいおいおいおい、そこで止まりな!」
チンピラの言うことを素直に聞いて足を止めるドウジたち。
するとチンピラがバイクに跨った状態で足を使って近付いてきた。
「この村は立ち入り禁止だ。 どうしても入りたいなら入場料を貰うぜ!」
チンピラが歯並びの悪い歯を見せながらニヤニヤ笑う。
それを見て、特に女性陣が微妙な表情をする。
「どうせ高い上に入っても酷い目に遭うだけだろ?」
ザイルダイトが早速文句を言った。
すると煽りに弱いのか、チンピラは明らかに怒り出した。
「あん? 黙って聞いていればなに勝手なこと言ってやがんだ!?」
「黙ってないだろ。」
完全に喧嘩腰になっている二人。
するともう一人のチンピラも近寄ってきた。
「お、おい、アイツは・・・!?」
もう一人のチンピラはドウジを指していた。
怒るチンピラがそれに釣られるようにドウジを見ると、もう一人と同じような表情をする。
「げっ、頭をぶっ飛ばした筋肉男!!?」
どうやら「あの時」のことを覚えていたようだ。
それを合図にドウジは背負っていたシグを優しく地面に降ろした。
そしてチンピラたちの前に出てきた。
「こ、この野郎!!」
すぐにチンピラたちはバイクを発進させ、ドウジに向かって突撃した。
しかしドウジは二台のバイクをそれぞれ片手で掴んで止めて見せた。
そして二台とも持ち上げたかと思うと、そのまま勢いよく地面に叩きつけた。
バイクは全壊はしなかったが、修理が必要なくらいボロボロになった。
乗っていたチンピラも勢いによって宙を飛んでいき、それぞれ遠くの方に飛ばされていた。
「終わった。 さあ、入るぞ。」
ドウジは一言そう述べる。
その言葉を聞いて仲間たちは次々に村へ入っていく。
ドウジは地面に降ろしていたシグを再び背負い、そのまま村へ入っていった。
村の中はさらに酷い有様だった。
あらゆる場所にチンピラがおり、まさに「無秩序の象徴」のような場所と化していた。
「ひでえな、こりゃ。」
ザイルダイトが代弁してくれた。
他の仲間たちも険しい顔をしており、完全に彼らに対して敵対心を抱いている。
ふと、遠くの方で縛られている住民らしき女性がいた。
チンピラたちに暴力を振るわれているようだった。
「俺はいつでもいいが、お前らはどうだ?」
ドウジが仲間たちに聞く。
すると仲間たちは静かに頷いた。
村の前にいたチンピラを見た時から、彼らは戦う気満々だった。
なので、いつでも戦える状況にあった。
ドウジは近くにある家の側の地面にシグを降ろす。
そして既に準備をしていたガイ、ギルダー、ザイルダイト、フブキと並ぶ。
後ろではキョウカとイェルコインが立っている。
数人のチンピラたちがドウジたちの存在に気付き、接近してきていた。
「さてと、行きますか。」
ザイルダイトがそう言った後に、それぞれが好き勝手に動き出した。
ドウジは真っ先に住民の女性がいる場所へすっ飛んでいった。
幸いバイクに乗っていなかったチンピラ二人に対して強い一撃を放ち、一発でノックアウトさせた。
そして近くにいたもう一人のチンピラにも一撃を与え気絶させた。
ガイは剣を使わない分離攻撃をした。
兜、籠手、鎧、靴などがチンピラたちに飛んでいき、数人のチンピラたちをボコボコにする。
集団相手に役立つガイだった。
ギルダーは向かってくるバイク乗りたちのバイクを、炎を纏った剣で斬り裂く。
するとバイクは次々に爆発していき、爆風に吹っ飛ばされたチンピラたちはダウンしていく。
フブキも同様にバイクを氷で作った剣で斬っていく。
彼女はギルダーと違って腕力があまり無いため、一撃では仕留められていなかった。
しかし氷の翼を使った機動力で次々に倒していった。
そしてザイルダイトはバイクから逃げていた。
当然バイクの方が速いためすぐにでも追いつきそうになるが、ギリギリでザイルダイトは避けていた。
そしてザイルダイトを追うことに夢中になっていたチンピラは前方から来ていた別のバイクに気付いておらず、そのまま二台とも正面からぶつかり、衝撃で互いに飛んでいった。
キョウカたちを襲おうとするチンピラたちもいた。
しかしそんな奴らは全員イェルコインの透明な壁の餌食になった。
バイクが壁に衝突したことで逆に吹っ飛ばされていった。
徒歩で来たチンピラはキョウカの魔法の餌食となる。
岩がチンピラ目掛けて飛んでいき、吹っ飛ばされる。
「わ、わたし・・・も・・・。」
「ああ、無理しないでください!」
なんとかオノを使って立ち上がろうとする二日酔いのシグを止めるキョウカだった。
とても戦えそうにない状態のため、仕方ないだろう。
そんな二人をイェルコインは必死に守っていた。
強力な「魔獣」や「巨人」を相手にしてきた彼らは、チンピラ相手に苦戦などはしない。
全滅させるまでそう時間はかからなかった。




