35.第4話「漆黒の巨人」(13/13)
次の日、ドウジたちは昨日の夜の出来事を語った。
特に「町長が盗人だった」ということを重要に。
さて、どうなるかは予想通り。
町長がいなくなった今、どうするべきかで町民たちが揉めているのだ。
一方で宿に戻ったドウジはキョウカと共に窓の外の光景を眺めていた。
「昨日の夜に、まさかそんなことが・・・。」
昨日の夜のキョウカは、イェルコインを連れて先に宿で休んでいた。
言われた仕事は終わったし、仕方ないことだ。
「山の次は町に問題が出るとは・・・。」
さすがのドウジも呆れている。
そんな中、パジャマ姿のイェルコインが部屋の中から出て来た。
ピンク色の可愛らしい服装で、髪ボサボサだった。
「なにが起きてるのぉ〜・・・?」
眠い目を擦っている。
あまりの騒がしさに起きてしまったようだ。
「戻ったぞ。」
ガイの兜が飛んで来た。
外の様子を見て来てもらって来たのだ。
「どうでした?」
「ダメだ。 ここの町民たち立候補者が全く出ず、押し付けてばかりだ・・・。」
ガイの情報によると、新たな町長をやろうとする人間が一人も現れないようだ。
皆が皆、責任を持ちたくない人のようらしい。
「でも、町長がいないとこの町は・・・。」
「それ以上は町民には言わないようにね。 じゃないと『じゃあお前が町長やれ』的なことを言われると思う。」
ガイはキョウカに忠告する。
指導者が突然居なくなった町というモノを初めて見た四人だった。
「ふわぁ〜・・・。」
「あー、イェル。 あっちで着替えよう。」
とりあえずキョウカはイェルコインの着替えを手伝うことにした。
ドウジとガイは窓の外を見る。
「まあ、ボクたちには関係ないことさ。 この町が潰れたとしてもね。」
「まあ、その通りだが・・・。」
こうは言っているが、二人としてはなにか力になりたいと思ってはいる。
あくまで「思っているだけ」だが・・・。
町中が騒がしい中、ドウジたちは宿を後にした。
そして目指すは町の入口だった。
しかしそう簡単にはいかなかった。
「なあ、あんたら!」
町民が話しかけて来た。
ドウジたちは目を合わさずに通り過ぎようとする。
まるで客引きをスルーするかのように。
その後も何度も呼ばれたが、全てスルーするのだった。
何回かキョウカやイェルコインが連れて行かれそうになったが、全てなんとかなった。
「想像以上にヤバいな・・・。」
「そ、そうですね・・・。」
ドウジたちはある意味強敵と戦っているような気分だった。
キョウカはまるで子連れのお母さんのようにイェルコインの手をしっかり握って移動している。
ガイも先に飛んで置いていくわけにもいかないので、歩いて三人について行く。
そうしてついに入口まであと少しの場所まで来た。
しかし背の高いドウジは嫌なモノを先に見てしまった。
「おいおい、マジかよ。」
その言葉を聞いて他の三人も嫌な予想を立ててしまった。
そしてそれは的中してしまうのだった。
入口までやって来た四人を出迎えるフブキ。
「あっ、来た来たぁ!」
フブキは元気よく挨拶する。
その後ろではシグが壁に寄りかかって座っている。
どうやら昨日の飲酒で気分が悪いようだ。
そして入口付近ではザイルダイトとギルダーが町民相手に揉めていた。
よく見ると、町民の後ろにはバリケードのようなモノが作られていた。
「これからよろしくお願いします。」
「はいはい、よろしくぅー!!」
キョウカはこれから一緒に行動する仲間に挨拶をした。
今回仲間になったのは、計四人。
ダークエルフの女戦士"シグ・マーチャント"。
ホブゴブリンの魔法剣士"ギルダー・グラント"。
獣尾族の風来坊"ザイルダイト・ヴァンスレイヴ"。
雪女の女騎士"フブキ・ミナミ"。
全員が強力な戦士だった。
「シグさんも、これからよろしくお願いしますね。」
「あ・・・、うん・・・、よろしくぅ・・・。」
シグにも挨拶するキョウカ。
だがシグは気分が悪そうだった。
「ところで、なにがあったんだ?」
ドウジがフブキに確認する。
フブキは首を真上に向けて、後ろに倒れそうになる。
それをドウジが支え、ついでにしゃがんで目線を合わせた。
「町の人が町の問題を解決するまで通してくれないんだってぇ〜・・・。」
フブキが体を揺らして腕より長い袖をブラブラさせながら話した。
そしてその話を聞いたドウジは、また呆れたような顔をした。
ドウジとガイは入口付近へ移動する。
ザイルダイトとギルダーに加勢するようだ。
「だから問題を解決したら通しますって!」
「俺らにはそんなの関係ないっしょ!」
「そこをなんとか、お願いしますって!」
「知らねえよ。 お前らの町長のせいだろうが。」
なんとも嫌な争いである。
ドウジは嫌な顔をせず、いつも通り無表情になった。
「俺らにはもっと大切な使命があるんだ。 通してくれ!」
「僕らにとってはこっちの方が重大なことなんですよ!」
ドウジは体を使う戦い以外のことはそこまで得意ではない。
口だけは達者な奴らを元の世界でも沢山見てきた。
そういう奴らは身の丈に合わないことをしていたため、いずれも自滅していった。
しかしこの町の町民はどちらも半端であり、まさに面倒な相手なのだ。
「もういい、バリケードを破壊しろ。」
痺れを切らしたギルダーが盾に刺してある剣を抜いた。
しかしそれをドウジが止めた。
「バリケードを作るということは、それだけ追い詰めているという証拠だ。 ここでなんとかしないと、この町は"破滅"する。」
ドウジは町民たちの方を向いて語りを続ける。
「『破滅』は感染病みたいなモノだ。 ここで食い止めなければ他の町にもうつされるぞ・・・!」
想像以上の問題の深刻さに考えを改めたドウジが必死に仲間を説得する。
一応ギルダーは「チッ」と舌打ちをしながら剣を収めた。
ガイとザイルダイトも一応理解した。
「だが、どうするんだ。 新たな町の長を見つけなければ奴らは通してはくれんぞ。」
ギルダーはやや冷静にドウジに訴える。
そんなことはドウジにも分かってはいるが、どうすることもできないのだ。
思わず頭を抱えるドウジ。
ある意味「魔獣」や「巨人」以上にドウジを追い詰める町民だった。
思わぬ強敵が現れ、しかも無駄に苦戦するドウジたち。
特にイェルコインとギルダーはイライラしていた。
「大体、この町の人間がちゃんとしてないのが悪いんだろうが!」
「そうだよ、もし私がこの町の住民だったら真っ先に立候補するわよ!」
イライラする二人は怒りの言葉を言い放つ。
早めに解決しないと、イェルコインはともかくギルダーが町民に危害を加えてしまうかもしれない。
ドウジたちは必死に考えていた。
すると、そこに三人の戦士が現れた。
「おっと、どうやらあんたらもお困りのようだな。」
グレゴリアス、ボーグワン、シャルガナの三人だった。
ただボーグワンはシグと同じく二日酔いで気分が悪そうだった。
むしろ昨日同じく酒を飲んでいたハズのグレゴリアスが元気なのが不思議だった。
「町の人がバリケードを作って通せんぼ中だ。 このままだとこの町は間違いなく終わるだろうから、仕方なくなにかしらの手助けをしようと考えているところだ。
ドウジがグレゴリアスたちに説明した。
それを聞いてグレゴリアスは少しだけ考え込む。
するとグレゴリアスはある提案を思いついた。
そして入口を封鎖している町民たちの前まで移動した。
「頼みがある。」
グレゴリアスはそう言うと、ドウジたちの方へ手を向けながら話を続けた。
「この問題は俺たちが解決してやるから、あの人たちを通してくれ。」
グレゴリアスはそう言い放った。
それを聞いてドウジたちや町民たちはもちろん、ボーグワンとシャルガナまで「え!?」と言った。
「本当か!?」
町民たちは嬉しそうにしている。
「ちょ、ちょっと貴方・・・。」
シャルガナはグレゴリアスに「ナニカ」言おうとするが、グレゴリアスは無視してこちらに近付いてくるドウジたちの方を向いた。
「どういうつもりだ?」
ドウジが驚きのあまりグレゴリアスに聞く。
するとニヤッと笑って話し始めた。
「あんたらには、やらなければいけない大事な使命があるんだろ? なら、こんなところで止まっているわけにはいかないよな。」
ドウジとその仲間たちを見渡し、そして言う。
「ここ俺たちに任せて、あんたらは先へ進んでくれ。」
グレゴリアスは笑いながら後ろにある入口に親指を向ける。
まるでサムズアップをしているかのように。
そんな彼を見て、ドウジや一部の仲間たちは頭を下げてお礼を言う。
グレゴリアスの言葉を信じ、町民たちはバリケード崩し始めた。
どんどんバリケードが無くなっていき、ついに入口が開いたのだった。
出発すると同時に、グレゴリアスたちに手を振りながら去るドウジたち。
グレゴリアスは満面の笑みで彼らの出発を見送った。
ボーグワンとシャルガナも手を振って見送る。
「一緒に行けねえし、これくらいはしねえとな。」
グレゴリアスは二人に話すように言う。
その言葉の意味を二人は知っていたので特に反論はなかった。
しばらくして二日酔いのボーグワンの補助をしながら町の中へと戻って行った。
この後、彼らにとっての大きな戦いがあるからだ。
ドウジは一つ気になっていたことがあった。
「どうして彼らはナルキのことを知っていたんだろう?」
思い返してみれば、確かに彼らには言った覚えがなかった。
しかし彼らは知っていた。
するとキョウカが話し出した。
「実は、昨日の夜の祝杯で勧誘をしたのですよ。」
キョウカたちは中で祝杯をあげていた。
外にいたドウジには当然知らないことだった。
「ですが、断られてしまいまして・・・。」
キョウカは苦笑いをしながら喋る。
「『自分たちは実力不足だからやめておく』だってさ。」
イェルコインが付け加えるように話した。
「巨人」との戦いで彼らは戦意喪失していた。
確かにナルキ相手にした場合に戦力になるかと言われれば微妙なところだろう。
ドウジはとりあえず納得した。
「あー、ねえ、彼女辛そうだけどぉ・・・。」
フブキがシグを見ながら皆に言う。
確かにシグは気分が悪そうだった。
「だ、大丈夫・・・、だから・・・。」
どう見ても大丈夫ではなかった。
このまま歩き続けるのも辛いだろう。
すると、ドウジが背中を向けてしゃがむ。
「乗れ。」
そう一言だけ言う。
どうやらおんぶをしてくれるようだ。
シグはやや迷っていた。
「そのまま歩いていても危険だし、乗せてもらいなよ。」
イェルコインがシグに対して言った。
シグは少しだけ悩むと、やがてドウジの背中に手を置く。
「じゃ、じゃあ・・・、お言葉に甘えて・・・。」
そう言って背中に乗る。
その際に彼女の大きな胸がドウジの背中に押しつけられた。
「ぬわぁ!?」
ドウジは思わず変な声を上げた。
「ど、どうしました?」
キョウカがドウジに聞く。
しかし答えられるわけもなく、ドウジは「なんでもない」と答えた。
ドウジは、また苦労することになりそうだった・・・。




