34.第4話「漆黒の巨人」(12/13)
昼間にギルダーと黒い骸骨が戦った山の中にある平地。
夜中にその場所にやってきたドウジたち。
そんなドウジたちの前に、謎の人物が洞穴の中から箱を引きずりながら現れたのだ。
ドウジたちは謎の人物を捕まえるために接近するのだった。
「そこのローブマン、もしくはローブウーマン、止まれぇ!」
ザイルダイトが回りくどい言い回しで謎の人物を引き留めた。
しかし謎の人物は止まろうとはせず、箱を引きずりながら逃げようとする。
「おう、分かってるよ。 止まれと言われて止まる奴がいないことくらいな!」
またしても変なことを言いながら接近するザイルダイト。
しかしザイルダイトは凄い速さで謎の人物に接近した。
「気」を使った感じがしないので、素で身体能力が高いのだろう。
謎の人物に近付いたザイルダイトは手始めに飛び蹴りを放った。
これによって謎の人物は箱から手を離してほんの少しの距離を飛んでいった。
そして謎の人物捕まえると、さっさとローブのフードを外した。
すると、その人物こそがあの「デマスナ」の町長"パーティ・パーティー"だった。
「一体ここでなにをしているんだ?」
ドウジがさっそく聞く。
しかし町長は全く話そうとはしない。
「正直に話したほうがいいぞ。 おたく今すっげえ怪しいから。」
取り押さえているザイルダイトが町長に言う。
だがやはり町長はなにも言わない。
すると、町長が持ち出そうとした箱をフブキが触り始める。
「これってぇ、たしかあの黒い骸骨が『触るな』とか言ってたモノだよねぇ。」
フブキが箱の上部分を袖越しの手でバンバン叩いた。
「そ、それに触るなぁ!!」
ようやく町長が喋った言葉がそれだった。
どうやら町長にとって大切なモノのようだ。
「あの骸骨も言ってたけど、これって一体ぃ・・・。」
フブキが箱のあちこちを見渡すが、特になにも見つからない。
当然箱には鍵がかかっており、開けられない。
「そうだ、それに触るな。」
すると、遠くの方から声が聞こえてきた。
全員がそちらを振り向くと、遠くの方から噂の黒い骸骨が現れたのだった。
「貴様ら、そこをどけぇ!」
黒い骸骨は左腕を前に出す。
すると手元から黒紫色の靄が現れ、その靄が消えると黒い骸骨の手には二つの銃口がある小型のショットガンのような銃が現れた。
そしてその銃をぶっ放す。
凄い音と共にドウジたちの目の前の地面に命中する。
まずビビったフブキが急いで離れ、危険を察知したドウジとギルダーも離れる。
残ったのは町長を取り押さえているザイルダイトだけだった。
黒い骸骨の右手にも靄が現れ、消えたと同時に手には黒い剣を握っていた。
右手に剣、左手に銃を持つ黒い骸骨が町長とザイルダイトに近付く。
「そいつから離れろ。 拒否するなら血を見るぞ。」
どことなく声に怒りがこもっている。
赤く光る目が激しく揺れているようだった。
「一つだけ条件がある。 ワケを聞かせてくれ。」
ザイルダイトはこの状況でも冷静に話しかけた。
すると黒い骸骨は銃口を町長に向ける。
町長はもちろん、流石のザイルダイトも若干焦っていた。
しかし黒い骸骨は答えた。
「好きなだけ聞かせてやる。 そいつにも語らなければならないからな!」
もはや見た目だけではなく声までもが恐ろしくなっていた。
まさに「悪魔」か「死神」のように。
「・・・オーケー、商談成立。」
ザイルダイトは凄い早口で言い終え、町長を黒い骸骨突き出した。
そしてそそくさドウジたちのところへ逃げて行った。
黒い骸骨に捕まった町長は手始めに顔を蹴り飛ばされた。
そして銃を地面に落としたことで手ぶらになった左手で顔を掴まれると、近くに置いてある「箱」の側面に後頭部を叩きつけた。
町長は既に鼻から血が出たりしている。
銃を拾った黒い骸骨は、次に「箱」ついている錠前を持っている銃をぶっ放して外した。
そして勢いよく箱を開けた。
近くにいたドウジたちも一緒に箱の中身を覗く。
すると箱の中には金銀財宝がたんまりと入っていた。
それを見て目を輝かせるザイルダイトやフブキ。
しかし黒い骸骨は地面に剣を突き刺すと、「ナニカ」を探すように箱の中の宝物たちを右腕で漁っていた。
黒い骸骨が箱の中身を漁っていると、その隙に町長が逃げ出そうとする。
しかし黒い骸骨はそれを見逃さず、左手に持っていた銃をぶっ放した。
「次はないぞ・・・。」
その一言だけを言った。
しかし周りからはその一言がとてつもなく怖く感じた。
やがて黒い骸骨は「ナニカ」を掴んだ。
それは「金色に輝くダイヤ状の置物」で、豪華な装飾が施されていた。
素人の目から見ても、それがかなり高価なモノであることは分かる。
「ついに、見つけた・・・。」
黒い骸骨は呟く。
その呟き声はとても優しい感じがした。
しかし黒い骸骨は一度その置物を箱の中にある財宝の一番上に置くと、今度は地面に突き刺していた剣を右手で引き抜く。
そして町長のもとへ近付く。
まず町長の顔を蹴り飛ばす。
そして地面に倒れた町長の胸を足で踏み潰した。
黒い骸骨はその状態で右手の剣を肩に乗せ、ヤンキー座り体勢になった。
「ついに見つけたぞ。 人間の皮を被った悪魔!」
黒い骸骨は笑いながらそう言う。
その笑いはとても怖く感じるモノだった。
「おい、俺様が分かるか?」
黒い骸骨は赤い瞳を輝かせながら問う。
しかし町長は必死に首を横に振った。
「ああ、そうだろうな。 じゃあ、これならどうだ?」
黒い骸骨はそう言うと、手に持っていた剣と銃をその場に捨て、それによって空いた手を使って自身の骸骨の兜を両手で掴む。
次の瞬間、ゆっくりと兜が脱がされていった。
素顔を見ようとドウジたちも見える位置に移動した。
月の光に照らされて、その素顔が露わになった。
まず目に入ったのは短い金色の髪。
さらに金色の髭を生やして、どこか不健康そうな顔色。
そして目は綺麗な青い瞳をしていた。
しかし片方の目はまるでギルダーのように瞳の赤い黒白目だった。
骸骨のマスクの下で光らせていたのはこの赤い瞳だったようだ。
ほとんどの人は誰か分かっていなかった。
だが、ザイルダイトだけは見覚えがあった。
「もしや、"エクシリウス・フォルブレア"か・・・?」
ザイルダイトがその名を口にした途端、骸骨マスクを取った黒い骸骨は邪悪な笑みを見せた。
そしてその名を聞いた町長の顔色が一気に悪くなった。
「エクシリウス・・・?」
「『フォルブレア家』は何十年か前に没落した貴族で、その家の次男の名前が"エクシリウス・フォルブレア"。」
ザイルダイトは信じられないモノを見るように黒い骸骨を見る。
「だが、没落後に全員野垂れ死んだと聞いたぜ・・・。」
ザイルダイトの言葉を聞いて、全員も不思議なモノを見るかのような顔をする。
すると黒い骸骨は笑いながら町長に言い放つ。
「ソイツの言った通りだ。 俺様はお前のせいでなにもかも失ったフォルブレア家のハナタレ坊主だ!」
黒い骸骨の勢いは凄く、唾が町長にかかる。
しかし黒い骸骨は暗い顔付きになった後に、再び骸骨のマスクを被った。
そして話を続ける。
「だが、今となってはその名を捨てた。 今の俺様は『デスライダー』という呪われた名を貰っている。」
デスライダーと名乗る黒い骸骨は、どこからか取り出した葉巻を咥える。
そしてどこからか取り出したライターを使って葉巻に火をつけ、葉巻をふかし始めた。
「俺様は貴様に復讐するために『地獄』へ堕ちた。 全てこの時のためになぁ!」
手に持った葉巻を町長の顔面近付ける。
葉巻の吸い殻が顔に落ちて熱がる町長。
それを見て嘲笑うデスライダー。
「さてと、ワケを聞きたかったんだよなぁー?」
デスライダーはザイルダイトの方を見て話す。
ザイルダイトは突然のことに戸惑うが、素直に頷いた。
デスライダーは「クックックッ」と不気味に笑う。
そして語り出した。
「まず、そこの箱の中身は全てコイツの盗品だ。」
デスライダーは町長を葉巻で指しながら言う。
そして当然ながらそれに驚く四人。
「町長が盗人だって!?」
「その通り、コイツは盗んだ金品を利用して『あの町』を支配していたんだ。」
デスライダーが不気味に笑いながら言う。
「し、支配とは、失敬な・・・! 私は、皆に慕われる立派な町長で・・・!」
「んなことは今どうでもいいんだよ!!」
珍しく反論してきた町長の顔面に葉巻を押し当てる。
とんでもない熱さによって悲痛な叫びをあげる町長。
そしてそれを見て嘲笑うデスライダー。
「俺様のいた『フォルブレア家』も被害にあった。 これがどういうことか分かるよな?」
デスライダーは四人に聞いた。
当然四人はそれが「なに」を意味しているかは分かっていた。
しかし四人は黙っているだけだった。
「私は、家宝にしか手を出していない・・・!! その後の没落は、私のせいでは・・・!」
「お前のせいだよ!!」
再び反論する町長に葉巻を当てるデスライダー。
そして再び悲痛な叫びを上げる町長。
「『家宝』はな、ただの宝じゃねえんだよ。 その家の支えとなる『誇り』でもあるんだよ! 金があっても"誇り"がなければ、その時点でその家は終わりなんだよ!!」
デスライダーは葉巻を押し付けながら語る。
その語る声はとてつもない怒りがこもっており、凄い迫力であった。
「そして没落後、俺は家宝を盗んだ犯人を探す旅に出た。 そして力を授かった。 『悪魔の力』をなぁ!!」
デスライダーがその言葉を叫ぶと同時に、木々の中からバイクが現れた。
それはデスライダーが乗る黒いバイクだった。
「タイミングがいいなぁ。」
デスライダーが町長の胸から足を退けると、胸ぐらを掴んで持ち上げた。
そしてバイクの方を見ている。
すると、どこからともなく声が聞こえてきた。
「イマがそのトキだ、とハンダンしただけだ。」
声はどうやらバイクから聞こえるようだ。
黒いバイクが言葉を発している。
先程から不思議なことが起き続けている。
「連れて行け。」
デスライダーは胸ぐらを掴んで持ち上げていた町長をバイクの方に差し出した。
次の瞬間、バイクのボディから無数の触手が生えて町長を縛り上げた。
そしてバイクの後ろに貼り付けられるような状態で捕らわれた。
「マカせな! ハイタツはこの"ラグナストーム"サマのトクイなことのヒトつよ!!」
ラグナストームと名乗るバイクはエンジン音を上げる。
「ど、どうするつもりだぁ!!?」
町長が怯えて聞いてくる。
デスライダーは遠くから葉巻の先で町長を指している。
「人生を十分楽しんだだろ? じゃあ『地獄』に堕ちても悔いはねえよなぁ!!」
デスライダーのその言葉と共に、ラグナストームと名乗ったバイクは発進した。
縛り付けられた町長は「嫌だぁぁぁぁぁー!!!」という叫び声を上げながら、暗い木々の中へ連れ去られた。
エンジン音や叫び声がやがて聞こえなくなり、山の中は静かになった。
デスライダーは葉巻を咥える。
地面に落ちていた剣と銃はいつの間にか無くなっていた。
デスライダーは箱の中から「金色に輝くダイヤ状の置物」を取り出すと、それを抱える。
「あとは貴様らの好きにしていいぞ。」
一言そう告げた後に、デスライダーは闇夜で暗くなった木々の中へと入って行った。
怒涛の展開に、四人は唖然としていた。
「あー、えっとなにがあったの?」
上空からガイが現れた。
一体いつからいたのだろうか・・・?




