33.第4話「漆黒の巨人」(11/13)
祝杯が始まって数時間後・・・。
シグ、グレゴリアス、ボーグワン、シャルガナ、そして町民たちは酔い潰れて酒場で眠ってしまっていた。
イェルコインも眠くなり始めており、キョウカはイェルコインを連れて宿に戻ることにした。
「ではドウジさん、お先に失礼します。」
外で祝杯をあげていたドウジたちに気付き、キョウカは四人に対してお辞儀をした。
そして宿がある方へイェルコイン連れて歩いて行った。
「彼女、しっかりしてるよなぁ〜。」
ザイルダイトがキョウカ見ながら語る。
すると今度はドウジの方を見た。
「きっとライバルは多いぞ。 早いうちに行動を起こさないと手遅れになるぜ。」
ドウジにそう言い放った。
するとドウジは不思議そうな表情でザイルダイトを見る。
「なんのことだ?」
ドウジには全く伝わっていなかった。
ザイルダイトも呆れて肩をすくめるだけだった。
「俺はそろそろ行く。」
ゴブリン男は立ち上がる。
そして後ろを向く。
ドウジはなにか言いたそうにするが、その前にゴブリン男が喋った。
「安心しろ。 明日入口にいる。」
そう言って歩き出そうとするが、再び歩みを止める。
そして顔を横にして、目だけを同時の方へ向けた。
「俺は、"ギルダー・グラント"。 覚えとけ。」
背を向けながら名を名乗ると、ゴブリン男・ギルダーは歩き始めた。
そして曲がり角を曲がって姿を消した。
「ギルダーかぁ〜。」
フブキはギルダーの名を知ったことで、不気味な満面の笑みを浮かべる。
しかしすぐに「あっ」と言ってドウジたちの方を見る。
「私も、そろそろ行くねぇ〜。」
フブキも立ち上がる。
すると彼女は深くお辞儀をし出した。
「今日は、ありがとうございましたぁ〜。」
そして顔を上げると不気味な笑顔を見せて、そのまま後ろを向いて走って去って行った。
彼女はギルダーと同じ方向へ向かっていった。
残ったのはドウジとザイルダイトだけだった。
「あの子も可愛いな。 子供か動物的な意味でだけど。」
ザイルダイトは一人でそんなことを呟く。
すると、ドウジはザイルダイトの方を向いた。
「聞きたいことがあるんだが、あの時あんたの腕から出ていた輝きは何だったんだ?」
突然の質問だった。
というより、ドウジにとってはずっと聞きたかったことだろう。
するとザイルダイトは上に人差し指を向けながら話し始めた。
「あー、あれ? 『気』だよ『気』。」
「『気』?」
ザイルダイトはあの光輝くモノを「気」だと言った。
するとザイルダイトは自分の腕を掲げると、次の瞬間腕が光輝き始めた。
「おお!?」
目の前で光るザイルダイトの腕に興味津々のドウジだった。
しかしザイルダイトは腕を元に戻すと、その手でドウジを指した。
「言っておくけど、強さを求める人間には不必要な技だからな。」
ザイルダイトがそう言うと、ドウジは「え?」と言葉を漏らした。
するとザイルダイトは再び話し始めた。
「この力は、言ってしまえば"人間最強最大の切り札"である『根性』に近いモノだ。」
「根性」。
生物なら誰にでも持っている覚悟。
「この力はその生物の奥底に秘めている力を引き出し、それを戦う力に変える能力だ。 一見聞こえは良いように聞こえるが、別の言い方で言ってしまえば自分の限界を敵に見せてしまう力なのさ。」
話しながらザイルダイトは手で握り拳を作る。
「つまり、あの『巨人』の頭をぶっ叩いたのが"俺という生物の限界"ということだ。」
その言葉を聞いて、ドウジが青ざめる。
そんな彼を見てザイルダイトは笑う。
「察しが良くて安心したよ。 あんたが思った通り、この技ばかりを使っていたら間違いなく相手に程度を知られ、最悪の場合は悲惨な目に遭うだろうね。」
ザイルダイトは呑気に語る。
自分が今、恐ろしい話をしていることを分かっているだろうに。
「だから、あの時あんたはあまり戦おうとはしなかったということか?」
「そういうこと。」
ドウジの言葉に即答するザイルダイト。
しかしすぐに付け加えるように話す。
「あー、一応言っておくと、あの回避術は自分で身につけたモノだから『気』は関係ないぞ。」
するとザイルダイトは自分の腕に視線を向けた。
「というより、この力を手に入れたからああいう戦闘術を身に付けたと言った方が正解かもね。」
そう言うと、ザイルダイトは地面に置いてある空になった料理の皿を重ね始めた。
そしてその上に四つの空のグラスを乗せた。
「『気』の力はあくまで"護身術"さ。 強さを求めるなら不要な力だよ。」
ザイルダイトはそう言って食器とグラスを持ったまま立ち上がり、酒場の中に入って行った。
そしてその場に残ったのはドウジだけとなった。
ドウジは自身の腕を改めて見た。
筋肉質でガッシリとした腕だった。
(俺の限界・・・。)
ドウジは「気」を使った時の自身の力に興味があった。
しかし同時にそれを見た時の恐怖もあった。
ドウジにとって、今の会話は忘れられない話になるだろう。
ザイルダイトが酒場の中から出てきた。
「そろそろあんたも宿に帰ったらどうだ? それとも酒場で寝るか?」
ザイルダイトがドウジを揶揄う。
ドウジも立ち上がって行動を起こそうとする。
しかしその時だった。
「ドウジー!」
なんと兜だけのガイが夜の町中から飛んできたのだった。
「おいおい、町民が見たら心臓止まっちまうかもよ。」
相変わらずジョークを言うザイルダイト。
それを気にせずドウジがガイのもとに近付く。
「どうした?」
「実は、ちょっとおかしな事があって・・・。」
ガイは慌てた様子だった。
(あんたの格好もおかしいと思うが・・・。)
内心そういうことをザイルダイトは思っていた。
ガイに連れられてドウジとついでにザイルダイトも移動を開始した。
ガイは兜の状態で宙を浮き、「デマスナ」を出るのだった。
「町の外に来ちゃったけど?」
ザイルダイトが走りながらガイに聞く。
ガイは案内をしながら話し始める。
「目的地は昼間のあの山だよ。 そこになぜかあの"町長"が入って行ったんだ!」
「町長って、あの『デマスナ』の町長!?」
予想外のことだった。
「魔獣」や「巨人」がいなくなって一件落着かと思いきや、また新たな事件の匂いが漂ってきたのだった。
ドウジとザイルダイトはガイに連れられて、昼間に登った山へ向かって行った。
山の麓あたりに着いて、一旦立ち止まる三人。
「しかし、どうしてそんなのを見つけたんだ?」
ザイルダイトは単純な疑問を聞いた。
「ボクは幽霊だから寝る必要がないんだよ。 だからいつも夜の散歩をするんだけど、今日も散歩をしてたら偶然町長が夜中に町の外に行くのが見えたんだよ。」
ガイは幽霊。
既に死んでおり、眠る必要性がない。
ドウジは初めて聞いた事実に驚いていた。
「で、着いて行ったら山に入ったと。」
「そういうわけ。」
ガイたちが山の前で立ち止まっていると、後ろから誰かがやってきた。
「お前たち、ここでなにをしているんだ?」
突然話しかけられたことに驚き勢いよく後ろを振り向く二人。
するとそこにいたのはギルダーとフブキだった。
「さっきぶり!」
フブキが長い袖に隠れた腕を振り上げて、呑気にそう挨拶をした。
「あんたらこそここでなにを・・・?」
「お前たちが走って町の外に出ていくのが見えたんだ。」
ギルダーは答える。
まだ二人は外にいたようだ。
「実は・・・。」
簡単に事情を話して、二人も連れて山に登り始めるドウジたちだった・・・。
夜の山は昼の頃に比べて不気味だった。
「なにか出そうで怖いなぁ〜・・・。」
フブキが呑気に怖がっていた。
「お前の顔ほどじゃないだろ。」
「なにそれ、ひっど〜い!」
ギルダーとフブキは漫才のような会話をしていた。
いつの間にか仲良くなっている感じがした。
「しかしまぁ・・・、こんな険しい道のりをあの町長が登ったとはとても思えないんだが・・・。」
ザイルダイトはやや足元に気をつけながら喋って登る。
「でも、確かに見たんだよ・・・!」
ガイは宙を飛びながら訴える。
「大丈夫だ、俺は信じている。」
ドウジは軽々と山を登っている。
体が大きいからだ。
しばらく山を登り続けた。
しかし町長の姿は見つからず、ただただ疲れが疲れるだけだった。
そこでガイが一度山の中を飛び回ることにした。
というわけで、ドウジたちは一旦都合のいい平地を見つけてそこで休むことにした。
「ふぅぁ〜、疲れたぁ・・・。」
ザイルダイトが大の字で横になっていた。
フブキもうつ伏せになって倒れている。
ドウジはその場で座っている。
しかしギルダーだけが立ったまま辺りを見渡していた。
「あんたも少し休んだらどうだ?」
ドウジはギルダーに喋りかける。
しかしギルダーの返答は意外な言葉だった。
「いや、実はこの場所に見覚えがあるんだ。」
ギルダーが周りを見ていた理由は警戒していたのではなく、別の理由だった。
その言葉を聞いてフブキもうつ伏せの状態で辺りを見た。
「ああ、ギルダーが骸骨と戦ってたところだね。」
フブキは終始観戦をしていたため、ギルダー以上に周りの風景に見覚えがあった。
そしてその言葉を聞いてギルダーは納得した。
「確か、あそこの洞穴に変な箱が・・・。」
ギルダーは遠くに見える洞穴を指した。
すると、その洞穴から「ナニカ」が出てきた。
ローブを着た何者かが、その「変な箱」を引きずりながら出てきたのだ。
その人物を目にとらえたギルダーは剣の握りに手を当て、ドウジも立ち上がる。
そんな二人を見て不思議に思ったザイルダイトとフブキは二人が見ている方角を見る。
するとザイルダイトとフブキも謎の人物の姿を目撃し、急いで立ち上がった。
そして逃さぬように四人はその謎の人物に接近するのだった。




