32.第4話「漆黒の巨人」(10/13)
山での戦いを終え、下山したドウジたち。
まずは当然ながら「デマスナ」の町長へ報告する。
「ありがとうございます。 これでこの町も平和になります。」
町長はそう言って深く頭を下げた。
周りにいる町の人々も勇敢な戦士たちに感謝の言葉を贈る。
町の人々に「魔獣」と「巨人」のことを話した。
「魔獣」が共に戦ってくれたこともだ。
しかし、なぜ「魔獣」が共に戦ってくれたのかは分かっていない。
だが、それによって「魔獣」が人を襲った理由は大体分かった。
「魔獣」は「巨人」の存在を知っていたから山から人を追い出していたのだろう。
つまり、ドウジたちと旅に出る前のガイのようなことをしていたのだろう。
これにて一件落着。
その夜、町長と町民たちはお礼のパーティーを酒場で開いたのだった。
町長の名前(パーティ・パーティー)のように。
シグとグレゴリアスとボーグワンは仲良く酒を飲みまくっている。
三人とも顔を赤くしていた。
一方でキョウカとイェルコインとシャルガナは、料理を食べながら話をしている。
ガイは幽霊なので飲食はできないが、楽しそうに話していた。
町民たちも楽しそうにしている。
ドウジは夜風に当たろうと、一度酒場の外に出た。
すると、話し声のようなモノが聞こえてきた。
「ねえ、待ってってばぁ!!」
女性の声だった。
気になってドウジは声の方へと近付く。
すると、そこにいたのはゴブリン男と雪女だった。
雪女が袖に隠れた手でゴブリン男の腕を掴んでいた。
見たところ「どこかへ行こうとするゴブリン男を止めようとする雪女」という感じだった。
「どうした?」
ドウジが二人に近付く。
そしてドウジの存在に気付いた雪女が状況を説明する。
「彼がもう町を出ていくってぇ・・・!」
雪女の口角は上がっているが、目は悲しそうだった。
ゴブリン男は雪女とドウジを交互に見る。
「俺はゴブリンだ。 馴れ合いは好かん。」
そう一言だけ言い放つ。
しかし雪女は離そうとはしない。
ドウジは揉めている二人を見て悩むが、数秒間だけ考えた末にあることを思いついた。
すると、ドウジはゴブリン男を両手で持ち上げた。
「なっ、お前!!?」
当然慌てるゴブリン男。
しかしドウジはなにも言わず移動し始めた。
雪女も不思議に思いながら、ドウジについていく。
ドウジは酒場の前でゴブリン男を降ろした。
そして彼に言う。
「少しここで待っててくれ。」
一言そう言ってドウジは酒場の中へ入っていった。
ゴブリン男はなにがなんだか分からず、その場で尻餅をついた。
すると雪女も、ゴブリン男の隣に ちょこん と座った。
ゴブリン男は寄りかかってきた雪女を引き離す。
そんなことをしていると、酒場の中からドウジが出てきた。
三つのグラスと二つの酒瓶を持って。
すると、ゴブリン男と雪女の前にそれぞれグラスを置き、二人の目の前で胡座をかいて座った。
「なんのマネだ?」
ゴブリン男が瞳が赤い黒白目でドウジを睨む。
しかしドウジは無表情のまま答える。
「ここなら、人はいないだろ?」
そう言って持っていた酒瓶を使って、ゴブリン男の前に置いたグラスに酒を入れる。
続いて雪女のグラスにも。
そして最後に自分の分のグラスに酒を入れた。
「一緒に祝おうぜ。 勇敢な戦士。」
ドウジは自分のグラスをゴブリン男の顔の高さまで持ち上げながら言う。
ゴブリン男はドウジの顔を見上げる。
無表情な男の顔は、どこか優しさを感じた。
目を逸らすために雪女の方を見ると、雪女も不気味な笑顔を見せていた。
だが、彼女の顔も同様に優しさを感じさせる。
ゴブリン男は自身のグラスをしばらく見つめると、やがてグラスを持ち、自身の顔の高さまで持ち上げる。
そしてドウジの顔を見た。
「チッ、祝えばいいんだろ・・・。」
諦めたようにそう言って、ドウジのグラスに向かって自分のグラスをぶつけた。
良い音が鳴った後に、二人は酒をグラスを運んだ。
ゴブリン男は口を隠していた布をずらして、口を露わにする。
その光景を見て、雪女は不気味な笑顔で微笑んだ。
夜中の暗い町に月の光と酒場の明かりが道を照らす。
涼しい風が町中を吹く。
酒場の中とは違って盛り上がってはいなかったが、良い雰囲気を出している三人だった。
すると、そこに一人の男がやってきた。
「おう、俺も混ぜてくれ。」
ザイルダイトだった。
彼は一部始終を見ていたようで、空のグラスを持ってきていた。
「隣、失礼するよぉー。」
そう言ってザイルダイトはドウジの隣に座った。
そしてゴブリン男の方を見た。
「何の用だ?」
ゴブリン男が瞳の赤い黒白目でザイルダイトを睨む。
だがザイルダイトは笑いながら喋る。
「そう警戒しなさんな。 俺はゴブリン差別なんかしねえからさ。」
自身のグラスに酒を入れながら喋るザイルダイト。
そして入れた酒を早速飲む。
「あぁ〜」という染みている感じの声を出した後に、再び喋り出す。
「あー、えっと・・・、キミ名前なんて言うの?」
ザイルダイトは雪女を指して言う。
すると雪女は不気味な笑顔で答えた。
「私ぃ? "フブキ・ミナミ"だけど。」
雪女はそう答えた。
彼女の名前は"フブキ・ミナミ"というらしい。
「酒飲んでないみたいだけど、もしかしてフブキちゃん酒飲めない?」
ザイルダイトが酒瓶を持ちながら聞く。
「私、未成年〜。」
するとフブキは長い袖に隠れた両腕を上げながら答えた。
その答えにザイルダイトはケラケラと笑う。
「オーケー、分かった。 オレンジでいいかな?」
ザイルダイトは立ち上がってフブキに聞く。
どうやら酒場から取ってきてくれるようだ。
フブキは「いいよぉ〜。」と答える。
それを聞いてザイルダイトはさっさと酒場の中に入っていった。
一旦ザイルダイトがいなくなり、再び静かになる。
すると、ドウジがゴブリン男を見る。
「どうして『魔獣討伐』に参加したんだ?」
ドウジはゴブリン男に聞いた。
彼はずっと疑問に思っていた。
嫌われ者のゴブリンが、人前に出てきてまで「魔獣討伐」に参加したのはどうしてなのかを。
しかしやはりゴブリン男は答えようとはしなかった。
黙々と酒を飲んでいる。
ドウジも特に問い詰めようとはせず、酒を飲む。
だが、やがてゴブリン男は喋った。
「『見本』になるためさ。」
そう一言だけ言った。
当然ドウジは「『見本』?」と聞く。
するとゴブリン男は話を続けてくれた。
「俺が『ゴブリンの英雄』になる。 そして、この先生まれてくるであろうゴブリンたちの見本となり、『ゴブリン』という種族の印象を変えてやるのさ。」
ゴブリン男はそう言うと再び酒を飲む。
意外にも話をしてくれたので、若干驚いていたドウジとフブキ。
すると再びゴブリン男は口を開く。
「俺は教えた。 今度はお前の理由を聞かせろ。」
ゴブリン男はドウジの顔を見ている。
再び意外なことを言ってきたため、やや驚くドウジ。
すると、グラスを地面に置いて話し始める。
「『黄金龍ナルキ』という龍を倒すために、仲間を集めていた。」
「・・・あの金色の龍か。」
ゴブリン男も知っているようだ。
隣にいるフブキも名前に反応しているため、彼女も知っているらしい。
すると、ドウジは胡座をかいた状態で膝に手を置いて、上半身を少し前に倒すように頭を下げた。
「そこで、一緒に戦ってくれないだろうか・・・!」
ドウジはゴブリン男とフブキに対して頭を下げる。
フブキは「え!?」という反応を見せたが、ゴブリン男は動じなかった。
どうやらドウジが頼み込むことを察していたようだ。
グラスを地面に置くゴブリン男。
そして数秒間黙った後に、口を開く。
「黄金龍を倒せば、評価はされるだろうな。」
ゴブリン男はそう呟いた。
ドウジは思わず頭を上げてゴブリン男を見た。
すると、ゴブリン男は露わにしてる口元をニヤつかせて答えた。
「俺の目標のために、遠慮なく利用させてもらう。」
そう答えた。
つまり「OK」だということだ。
「ありがとう!」
ドウジはゴブリン男の方を見ながら感謝の言葉を言う。
だがゴブリン男は続けて言葉を発する。
「違う、協力じゃなく利用だ。 そこを忘れるなよ。」
ゴブリン男は注意深くそう念を押した。
するとフブキは不気味な笑顔で笑っていた。
「素直じゃないなぁ〜。」
体を左右に揺らしながら言う。
それを聞いてゴブリン男が睨む。
それに対してフブキは思わずそっぽを向いた。
しかしすぐにドウジの方を向いて喋り出す。
「あ、私もオーケーよ。 行く行く。」
フブキは超軽く決断した。
あまりの軽さにドウジは ポカーン としていた。
「あ、ありがとう・・・。」
だが、手伝ってくれることに違いはないのでお礼を素直に言う。
これで一気に二人も仲間になったのだった。
しばらくしてザイルダイトが戻ってきた。
「お待たせ〜。」
ザイルダイトはオレンジジュースが入った瓶を持ってきた。
ドウジの隣の床に座ったと同時にフブキのグラスにオレンジジュースを注ぐ。
さらにザイルダイトは少しだけだが料理も持ってきていた。
すると、ザイルダイトは作業をしながらドウジに話しかけた。
「あー、あのさぁ。 俺もついて行っていいか?」
突然だった。
思わずドウジは「え!?」という声を漏らす。
「全部聞いてやがったな・・・。」
ゴブリン男がザイルダイト睨みながら言う。
するとザイルダイトはゴブリン男を見て自分のグラスを揺らしながら喋る。
「案外噂好きなんでね。」
そう言って自分のグラスで酒を飲む。
ドウジはザイルダイトの頼みを聞いて悩んでいた。
だが、とりあえずザイルダイトに聞いてみることにした。
「俺は別にいいが、イェルコインがなんて言うか・・・。」
ドウジはイェルコインとザイルダイトの相性を問題視していた。
するとザイルダイトはグラスを床に置きながら答える。
「大丈夫。 彼女俺に惚れてるし。」
そう言い放った。
思わずドウジは「え!?」と驚く。
ゴブリン男も「ん?」と眉をひそめ、雪女までも「ふえ?」と頭を傾けていた。
「いわゆる『ツンデレ』という奴だ。 ああいうのは、本当は俺のことが好きで堪らないんだよ。」
ザイルダイトは本気かどうかは分からないが、そう語った。
ふとザイルダイトは三人を見る。
「なにさ、その顔は。」
ザイルダイトは文句を言いたそうな感じで三人を見た。
三人はとりあえずグラスの中のモノを飲んだ。
そしてドウジはザイルダイトと他二人に言う。
「まあ、とりあえず明日の朝に町の入口に来てくれ。」
ドウジは三人に集合場所を教えた。
保留の約一名を除いて、頼もしい仲間が加わったことをドウジは表情には見せてないが、心から喜んだのだった。
それからしばらく、四人だけの祝杯を楽しむのだった。




