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29.第4話「漆黒の巨人」(7/13)


 イェルコインが耳にした「『ナニカ』が近付いてくる音」。

 その音の正体は、先程まで戦っていたあのイノシシの姿をした「魔獣」だった。


 凄い速さで「魔獣」は走っており、向かっているのは「巨人」がいる方向だった。

 それを見た「巨人」はさっそく解放された腕を使って「魔獣」を止めようとする。

 大きな右腕でストレートを放ち、「魔獣」の顔面に強く打ち付けた。

 しかし直前で「魔獣」は足を止めて地面に根を張るように立ち、攻撃を受け止めた。


 「巨人」のストレートが「魔獣」にぶち当たったことで、それによる風圧が発生する。

 それだけで、その攻撃が強烈なモノであることは分かるだろう。

 だが「魔獣」は吹っ飛んだりはせず、その場で立って耐えていた。

 それどころか攻撃が終わったのを見て、「巨人」の腕を徐々に押し返していた。


 その凄まじい光景に、その場にいた全員が唖然(あぜん)していた。

 「巨人」は自分のペースが崩されたせいなのか、他の触手が全く動かなくなっていた。



 「魔獣」は「巨人」の腕を押し返し、ついに吹っ飛ばす。

 「巨人」は衝撃でよろめく。

 しかし「魔獣」は容赦なく「巨人」の腹部に思いっきり突撃した。

 しかも体を回転させ、ドリルのように突っ込んでいった。


 「魔獣」の牙が「巨人」の腹部の突き刺さり、そこに回転を加えられる。

 その攻撃は「巨人」に効いており、「巨人」は怪鳥のような鳴き声を上げた。

 回転が止まる前に「魔獣」は後方に飛んで「巨人」から距離を空ける。

 着地と同時に「巨人」を(にら)むように警戒した。




 思わず立ち尽くしてしまった戦士たちが我に返る。


「な、なんで、あの『魔獣』が・・・!?」


 まず、最大の疑問をイェルコインが言葉にして発する。


 「魔獣」はドウジの攻撃で倒されたのをイェルコインたちもしっかりと見ていた。

 しかし事実、目の前で戦っているのはあの時の「魔獣」に間違いないだろう。


 そしてなにより、「なぜ『魔獣』は『巨人』と戦っているのか」という疑問も浮かぶ。



 「魔獣」は再び「巨人」に攻撃する。

 その光景はまるで"怪獣映画"のようだった。


 さすがに大型同士の戦いに割り込むことはできず、先程まで攻撃を続けていたゴブリン男も手出しができないでいた。




 イェルコインはイヌ耳をピクピクさせる。

 「魔獣」が入ってきた穴の方からまた別の「ナニカ」が近付いてきているのをイェルコインは感じ取ったのだ。


 現れたのは、約3メートルの大男。

 筋肉質で片目を布で隠した人物。

 そう、"ドウジ"だ。


「ドウジ!」


 イェルコインは思わず叫んだ。

 それに釣られるように他の皆もドウジの方を見る。


「目を覚ましたのか!」


 ガイが嬉しそうに言う。

 それに答えるようにドウジはガイの方を向いて(うなず)いた。


 「魔獣討伐」の招集(しょうしゅう)のときからドウジの巨体は目立っていた。

 全く関わらなかったボーグワンやシャルガナなども、その姿に覚えがあった。


「一体なにがどうなってるの?」


 イェルコインが「魔獣」を指しながらドウジに聞く。

 するとドウジも「魔獣」の方を向きながら喋り出した。


「俺も分からない。 『魔獣』が急に起き上がり、てっきり俺たちに攻撃してくるかと思ったが、なぜかこの洞穴に向かって走り出したんだ。」


 「巨人」の姿を確認するドウジ。

 初めてその姿を見た彼だったが、特に驚いたりはせず、ただ見るだけだった。




 「魔獣」は「巨人」の巨大な腕を使った攻撃をくらい、吹っ飛ぶ。

 さすがの「魔獣」も圧倒はできないようだ。

 もしくは、先程の戦いでドウジが最後に放った攻撃のダメージによって本気が出せなかったのだろうか?


 どちらにせよ、吹っ飛ばされた「魔獣」はすぐに立ち上がり、そして一直線に「巨人」に突っ込んでいった。

 「巨人」も負けじと巨大な両腕で反撃する。


「もしかしてあの『魔獣』・・・、実はとんでもなく強いんじゃないの・・・?」


 ガイはあまりの迫力に思わずそう言った。


 「強い」と言っても、やや苦戦する程度くらいだと思っていた。

 しかし今目の前で起こっていることから察するに、おそらくここにいる戦士たちより「格上」の存在なのだろう・・・。


 この場にいる何人かがそう思った。



 すると、ドウジが来た穴からまた誰かが現れた。

 倒れたドウジを()るために残った"キョウカ"だった。


「キョウカ!」


 真っ先に気付いたのは、彼女の親友であるイェルコインだった。


「お、お待たせしました!」


 キョウカは洞穴にいた皆にお辞儀をする。

 そしてほぼ初対面である人物たちの存在にも気付いた。


「あ、えっと、初めまして、キョウカ・アキノと申します!」


 グレゴリアスたちに向かって再びお辞儀をして挨拶するキョウカ。

 それを見たグレゴリアスたちもやや慌てて挨拶を返す。

 ボーグワンも光の玉に集中しながら挨拶を返した。




 「巨人」との死闘を繰り広げている「魔獣」は隙を見て、自身の大きな牙で「巨人」を貫こうとする。

 だが「巨人」は「魔獣」に強烈なストレートを放って、「魔獣」の攻撃を止めた。


 何度も殴り飛ばされても「魔獣」は決して倒れず、「巨人」に向かっていく。

 「魔獣」の動きは予想以上に速く、「巨人」はそれより一歩遅れてしまっていた。


 次々に攻撃をくらう「巨人」。

 だが「巨人」もかなりタフなのか、強烈な攻撃をくらっても怪鳥のような声で叫ぶだけで力尽(ちからつ)きはしない。

 (ひる)むことはあっても、気絶すらしないのである。


 「巨人」が散々使っていた触手は本体がダメージを受けているためか全く動こうとはせず、まるで陸に上げられた海藻(かいそう)のようにぐったりしている。

 先程まで苦戦させられていた触手が全く役に立っていなかった。




 二体の巨大生物の戦いを見せられ、一部の戦士かは戦意を喪失(そうしつ)してしまっていた。


「まるでレベルが違う・・・。」


 グレゴリアスは(ひたい)に汗をかきながら、ただそう言うだけだった。

 シャルガナも「自身の無力さ」への苛立ちから、持っていた剣の握り部分をさらに強く握り、歯を食いしばる。


 イェルコイン、ガイ、シグも彼らのような考えを持ちそうになってしまう。

 雪女は、特にネガティブな感情を持っていなさそうで、ただただ無表情で見ていた。


 そしてザイルダイトは、なぜか興味津々に観ていた。



 ・・・だが、そんな中で武器をとり、再び戦いを始めようとする男がいた。

 あのゴブリン男だ。


 彼は最後まで「巨人」と戦っていたためか、全く戦意を無くさなかった。

 むしろ、前より強く感じた。


 彼は持っていた盾から剣を引き抜く。

 そして剣の刃に炎を(まと)わせた。



 そしてもう一人。

 ドウジも共に戦う気満々だった。


 「頂点」を目指す男がこの程度で根を上げるわけがない。

 手の骨を鳴らして今にも飛び出していきそうな感じだった。




 するととてもタイミングがいいことに、「魔獣」がついに「巨人」の攻撃に耐えきれなかったのか、地面に倒れるように吹っ飛ばされた。

 「魔獣」は地面に体の側面をくっつけるように倒れている。


 それが攻撃への決定的な合図だった。



 先に飛び出したのはゴブリン男の方だった。

 彼は刃に炎を纏わせた剣を握りながら走り出す。


 そして少し遅れて思いっきり跳んでいくドウジ。

 彼の跳躍力(ちょうやくりょく)とその速さによって先に飛び出したゴブリン男を一気に追い抜く。


 次の瞬間、「巨人」はまるで大砲の弾にでも当たったかのような衝撃を受けた。

 実際には凄い速さで近付いたドウジが、胸に一発強力なパンチ放っただけだが。


 ダメージは受けているようで、「巨人」は怪鳥のような叫び声を上げる。



 ゴブリン男も負けじと「巨人」へ攻撃する。

 剣に炎を纏わせると、なにもない空中を斬った。

 次の瞬間、炎を纏ったビームのような斬撃が「巨人」目掛けて飛んでいく。


 炎の斬撃は「巨人」の顔面に命中する。

 胴体より頭の方がダメージが入りやすいと判断したのだろう。

 実際「巨人」は炎の斬撃を顔面のくらって怪鳥のような鳴き声を上げている。

 これはダメージを受けている証拠だろう。



 「巨人」の胴体をドウジが弾丸のように突撃して、近付くと思いっきり握り拳を使ってぶん殴る。

 ゴブリン男は「巨人」の顔面ばかりを斬りまくる。


 両者とも凄い勢いで攻撃を続ける。

 しかし「巨人」も黙って攻撃をくらうだけではなかった。


 「巨人」は攻撃が止まる(わず)かな(すき)を使って反撃をした。

 巨大な腕がドウジを殴り飛ばした。

 衝撃でドウジが吹っ飛ぶ。


「ドウジさん!」


 キョウカが心配そうに叫ぶ。

 しかしドウジは地面に体を打ちつけたかと思うと、受け身をとった後に着地した。

 強烈な一撃を受けたハズだが、ドウジは平気そうだった。


 実はドウジは殴られる直前に腕で攻撃を防ぎ、あらかじめ後方に跳んでいた。

 それによってダメージを減らしていたのだった。




 勇敢に戦うドウジとゴブリン男を見て、一部の者たちの心に闘志が再び宿る。


 キョウカたちがいる場所の近くまでドウジは飛ばされてきていた。

 すると、そんなドウジの隣に並ぶ戦士がいた。

 ガイとシグだった。


「ドウジ、手を貸すよ。」

「まあ、最初から危険を(おか)す気で参加してたしね。」


 二人はそう言って武器を構える。

 そしてそんな二人を見てドウジも立ち上がり、「巨人」を見上げる。


 次の瞬間、三人はそれぞれ「巨人」目掛けて突撃して行った。


 ドウジは再び弾丸のような凄い速さと跳躍力で跳んでいく。

 シグは走りながら武器であるオノを手に持つ。

 そしてガイは上半身だけで飛んでいったかと思うと、空中で鎧と兜と籠手(こて)に分離し、さらに置いていったと思わせた脛当(すねあ)てや靴も飛ばした。



 まずはドウジが勢いよく「巨人」の胴体に近付き、強烈なパンチを放つ。


 次に分離したガイが兜と鎧を「巨人」の顔面にぶつける。

 そしていつの間にか回収していた剣を籠手を使って握り、再び「巨人」の片目に突き刺した。

 「巨人」の片目から黒い液体が流れ出てくる。


 そして最後はシグが持っているオノを思いっきり「巨人」の胴体に振り下ろした。

 オノの刃は深く体に入り、おそらく人間相手なら貫通していることであろう。


 「巨人」は怪鳥のような叫び声を上げる。

 だいぶダメージを受けているようだ。






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