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27.第4話「漆黒の巨人」(5/13)


 木々の中からザイルダイト、イェルコイン、シグ、ガイの順番で現れた。

 「巨人」が潜む洞穴の前で待機していたグレゴリアスたちのもとに。


「あんたたちは・・・。」


 グレゴリアスは山に着く前に彼らに話しかけていたので、その姿に見覚えがあった。

 そして雪女も。


 ただしゴブリン男やボーグワン、シャルガナは覚えていなかった。


「あんたはあの時の・・・。」


 イェルコインもグレゴリアスに気付いた。

 ザイルダイト以外の二人も同様に。



 2チームが合流したところで、黒い骸骨は洞穴の入り口の隣に立つ。

 そして皆を見渡しながら喋り始めた。


「『役者』は揃った。 『劇』を始めるとしよう。」


 黒い骸骨はマスクの奥の赤い瞳を光らせ、半笑いで言い放つ。

 当然その場にいる全員が黒い骸骨の方を見る。


「そもそもあんたは一体何なの!?」


 ついにイェルコインが黒い骸骨に詰め寄った。

 しかし黒い骸骨は長身のため、小柄なイェルコインは見上げるような感じになってしまった。


「このゴタゴタを解決したいだけだ。」


 黒い骸骨はそう一言述べると、(ふところ)から葉巻(はまき)を取り出す。

 葉巻をマスクの口元に押し込み、中にあるであろう口で(くわ)えた。

 そしていつの間にか手に持っていたライターで火をつける。


「この中にいるモノは、俺様にとっても『倒すべき敵』であることは確かだ。」


 咥えていた葉巻を手に持ち、喋るために口から離す。

 黒い骸骨が喋ると同時に、口元から煙が(あふ)れ出る。




 黒い骸骨の言葉に周りはざわつく。

 しかし黒い骸骨は葉巻をふかすだけでそれ以上はなにも言わず、ただマスクの奥から赤い瞳を光らせるだけだった。


 すると、今まで黙っていたグレゴリアスが喋り出した。


「と、とにかく・・・、あの『怪物』を倒せばいいんだな!」


 グレゴリアスは片方しかない目で黒い骸骨を見る。

 すると、黒い骸骨は「フッ・・・。」と鼻で笑う。

 そして親指と人差し指を立ててグレゴリアスを指した。


 言葉で返事は来なかったが、どうやら「その通り」だと言っているようだ。


 グレゴリアスは後ろを向く。

 するとシャルガナと回復したボーグワンが(うなず)いた。

 それを見て、グレゴリアスも頷く。



 すると、今まで地面に倒れていたゴブリン男が立ち上がっていた。

 ゴブリン男の身体はボロボロのままだが、彼は先程までとは違って難なく立ち上がり、歩き出した。

 どうやら少し回復したようだ。


 ゴブリン男は特になにも言わず、洞穴の中に入ろうと歩む。

 そして再び洞穴に入って行った。


「あ、ちょっと!!」


 当然雪女がそれを止めようと、ゴブリン男を追いかけて洞穴の中へ。



 黒い骸骨は特に止めようとする素振りはせず、葉巻をふかしているだけだった。


「お、俺たちも行くぞ!」


 グレゴリアスはそう言って、ゴブリン男たちを追いかけるように洞穴の中へ()けていった。

 それを見てシャルガナとボーグワンも洞穴の中へ。




 黒い骸骨以外で残っているのはイェルコインとガイとシグ、そしてザイルダイトだけだった。


 黒い骸骨は、光っている赤い瞳でイェルコインたちを見ている。

 まるで「お前らはどうする?」と聞いているようだった。

 というか、おそらくそう思っているのだろう。



 すると、ザイルダイトが歩き出した。


「まあ、まずはその『怪物』とやらに会ってみようか。」


 ズボンのポケットに手を突っ込み、やや猫背の状態で歩く。

 洞穴の中に入る際に風を受けて、包帯の先や服の装飾品がなびく。


 やがてザイルダイトは暗闇の中に消えた。




 残ったイェルコインたちは互いに顔を見合わせる。


「どうするか?」

「そりゃ、行くでしょ。」


 イェルコインは自信満々に言い放った。


 前にもあったが、イェルコインは近くにキョウカがいないと調子に乗るのだ。

 「自分からは戦えない」というのにだ。



 イェルコインの言葉を聞いて他の二人もとりあえず賛同した。

 そして三人も洞穴に入ろうとする。


「キョウカたちは大丈夫かな・・・。」


 シグは呟く。

 倒れたドウジのもとに置いてきたキョウカの心配をしていた。






 イェルコインたちが洞穴の中を進む中、既に先に入っていたゴブリン男は「巨人」と戦っていた。

 剣に炎を(まと)わせて、「巨人」が放つ大量の触手に立ち向かう。

 先程のダメージが身体に残っているにも関わらずゴブリン男は軽やかに避けたり、触手を斬ったりしながら「巨人」の本体に近付く。

 しかしやはり「巨人」には中々近付けない。



 辺りには既にボーグワンが多数の光の玉を作って浮かべている。

 洞穴の暗闇は光によって照らされ、よく見えるようになっている。


 そんなボーグワンを触手から守るグレゴリアスとシャルガナ。

 彼らも「巨人」に向かって行きたいと思っているが、ボーグワンが倒されたら不利になるため「守り」に(てっ)している。



 そして雪女は再び氷の装備を見に纏い、グレゴリアスたちをサポートする。

 彼女もゴブリン男を助けようと思っているが、彼の場所に行けずにいた。




 そこへようやくイェルコインたちが到着した。


「おお、来たか。」


 彼女たちを待っていたかのように出迎えるザイルダイト。

 彼は距離を離して「巨人」を眺めていた。



 イェルコインたちは初めてその「巨人」を見る。

 大きさ、そして禍々(まがまが)しさをすぐに感じ取る。


「なんなんだ、こいつ・・・。」


 イェルコインは思わずそう呟いた。

 すると「巨人」がイェルコインたちに気付いたのか、彼女たちの方に触手を伸ばしてきた。


 当然それに気付く四人。


 すぐに動いたのはシグだった。

 彼女は武器であるオノを手に持ち、向かってきた触手に思いっきり振り下ろし、切断する。


「とにかく、『ヤツ』を倒さなければならないようだね。」


 シグはそう一言述べて、再び向かってきた次の触手を斬り落とす。


 数本の触手がそれぞれの戦士たちに襲い掛かる。

 特に最前線で戦っているゴブリン男に集中していた。

 ゴブリン男は次々に触手を斬り落とす。

 しかし一本斬り落としたら別の一本が接近してくる状況にあった。


 当然本体には近付けずにいた。

 もし本体が動けたのなら、確実に今より苦戦していたであろう。



「なんというか・・・、バラバラに戦いすぎてるな。」


 傍観(ぼうかん)していたザイルダイトが言う。

 腕を組んで突っ立っている。


「あんたも戦いなよ。」


 魔法で見えない壁を作り出してザイルダイトを守っているイェルコインが言う。

 彼女も彼女でやるべきことをやっていた。


 最前線で戦うゴブリン男。

 光の玉を作り出して辺りを照らすボーグワン。

 ボーグワンを守るグレゴリアスとシャルガナ、そして雪女。

 触手を斬りながら一歩一歩近付こうとするシグ。

 そしてザイルダイトを守るイェルコイン。


 なにもしていないのはザイルダイトだけだった。


「戦いたいのは山々だが、ヤツの弱点などを調べるのが先だと思ってね。 なにかしら反応があればいいのだが、誰も近付けてないんで動けないんだよね。」


 ザイルダイトは呑気にそう言う。

 イェルコインは無言でザイルダイトを(にら)む。


「勘違いしないでくれ。 戦う気はあるんだ。」


 ザイルダイトは不機嫌そうなイェルコインに言う。


「そういえば、少し聞きたいんだが。」


 するとザイルダイトは突然イェルコインに別の話をしようとする。

 当然イェルコインは無視して魔法による守りに集中する。

 だが、気にせずザイルダイトは話し始めた。


「嬢ちゃんたちの仲間の・・・、あの甲冑くんはどこにいるんだ?」


 ザイルダイトは辺りを見回しながら言う。

 その言葉を聞いてイェルコインは「え?」と言って、耳を傾けた。


 イェルコインは辺りを見回す。

 すると、確かにどこにもガイの姿がなかった。

 重装の甲冑姿を見失うわけない。

 明らかに「この場」にいないのであろう。


「そういえば、さっきのイノシシと戦っているときに分離して攻撃してたよな。」


 ふとザイルダイトがイェルコインに聞くようにやや大きな声で喋る。


 ガイは幽霊(ゴースト)で、甲冑の部位ごとに分離して動くことが可能。

 先程の戦いでも分離して攻撃していた。

 ザイルダイトはそれを見逃さなかった。


 イェルコインは向かってくる触手を壁で受け止める作業に集中していて、とても喋れる余裕がなかった。



 ザイルダイトは「ふむ・・・。」と呟きながら考え事をしていた。

 そして「ナニカ」を(ひらめ)いたのか、頷く仕草を見せる。

 次の瞬間、ザイルダイトはイェルコインが張っている見えない壁の範囲から外れるように走って移動し始めた。

 まるで触手に立ち向かうかのように。


「ちょ、ちょっと!!?」


 当然イェルコインは驚く。

 しかしザイルダイトは足を止めない。

 彼の顔は、不思議と笑みを浮かべていた。


 「巨人」は走ってきているザイルダイトを発見し、多数の触手を伸ばしていく。

 すぐにザイルダイトの近くまで触手が飛んできた。

 だがザイルダイトは、そんな触手を軽やかに避ける。

 その回避力は高く、まるで触手が飛んでくる位置を瞬時に予測しているような動きだった。

 実際、たまに最小限の動きで触手を避けているときもあった。


 すると、イェルコインやグレゴリアスたちを襲っていた触手がターゲットをザイルダイトに変えた。

 どうやら「巨人」は優先順位を変えたようだ。

 次々にザイルダイトに触手が向かっていく。


(こりゃあ、ちとマズいなぁ・・・。)


 ザイルダイトは若干(あせ)っていた。

 そして次の瞬間、地面に伏せていたザイルダイトはついに複数の触手の餌食(えじき)となった。

 黒い触手がザイルダイトの身体に巻き付く。


「あっ!?」


 思わずイェルコインが声を上げた。

 ザイルダイトの身体には次々に触手が巻き付き、今にも引っ張られていきそうな状態になった。


 しかし、ザイルダイトの身体は少しずつしか引っ張られていなかった。

 よく見ると、ザイルダイトは地面に刺さった「ナニカ」を握っており、それで抵抗しているようだった。



 グレゴリアスとシャルガナは急いでザイルダイトの救出に動いた。

 幸い触手は他に集中していたのか、襲撃してこない。

 二人は簡単にザイルダイトのもとへ近付けた。

 だが近付いた途端、ザイルダイトに巻き付いていた触手の何本かが彼らを襲う。

 二人は向かってきた触手の相手をするハメになり、ザイルダイトの救出は若干困難そうだった。


 イェルコインも助けに行きたそうだった。

 だが、自身の力ではなにもできないことを理解しており、指をくわえるしかなかった。



 その時だった。

 洞穴の入口の方から「ナニカ」が高速で飛んできた。

 その「ナニカ」は「巨人」の右目を目掛けてすっ飛んでいった。

 そして「巨人」の右目に思いっきり刺さった。


 今まであまり声を発さなかった「巨人」が、大声で鳴く。

 まるで怪鳥のような鳴き声だった。



 「巨人」の右目に刺さったモノは「剣」だった。

 それは、ガイの剣だった。






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