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23.第4話「漆黒の巨人」(1/13)


 ドウジたちが「魔獣」と戦っていた一方、同じ山の中だが別の場所で行動をしている者たちもいる。

 数名の戦士たちが逃げ去った原因を探すために行動していた、眼帯の男、聖職者、女剣士の三人だ。

 三人は不本意ながら共に行動し、山の中を探索していた。


 三人は話したりなどはせず無言で山を登っていたが、流石に数十分も沈黙が続くと空気が悪くなってくる。

 そこでついに眼帯の男が二人に話し始めた。


「あー、あのさ。」


 眼帯の男は前を向いて山を登りながら、背中で後ろにいる二人に声をかけた。


 その第一声を二人は聞き逃さなかった。

 二人は無言で眼帯の男を見る。

 当然眼帯の男には見えていない。


 眼帯の男は少しだけ間を置いて再び喋り出す。


「お、俺の名は"グレゴリアス・ディスカリバー"と言うんだ。」


 そう言った。

 そして再び静かになる。


 約十秒後、今度は女剣士が口を開く。


「で、なに? 私たちにも名を名乗れとでも?」


 女剣士は若干不機嫌そうに言う。

 "グレゴリアス"と名乗った眼帯の男は人知れず「やはりこうなったか。」と言いそうな顔をした。


 しばらく再び沈黙が続いたが、意外なところから声が聞こえてきた。


「俺様は"ボーグワン・ゼブラハート"だ。」


 なんと筋肉質な聖職者が名乗り上げたのだ。


 それを聞いてグレゴリアスはもちろん、女剣士も思わず歩みを止めて、前髪のせいで片方しか見えない目を見開いて"ボーグワン"と名乗った聖職者を見た。

 グレゴリアスは思わず後ろを向いて、女剣士はボーグワンの髪の毛が無い後頭部を眺める。


「ど、どうした・・・?」


 ボーグワンは二人が足を止めたので、便乗するカタチで歩みを止めた。


「い、いや、まさか本当に名乗ってくれるとは思ってなかったから・・・。」


 グレゴリアスは頭をかきながら言う。

 それを見て「フンッ」と鼻で笑うボーグワン。


「俺の田舎では「名乗り返すのは礼儀」だと教わったからな。」


 ボーグワンは人差し指を上に向けながら言う。

 そして後ろを歩いていた女剣士の方を向いた。

 それを見て女剣士は若干目を丸くする。


 グレゴリアスとボーグワンは女剣士を見る。

 言葉にしなくても、二人の視線から「あんたも名乗れ」という台詞が聞こえてくる。


 だが、女剣士は見開いていた目を再び半分だけ閉じる。


「私は名乗らないから。」


 そう一言伝えて、二人を追い越すように再び歩み始めた。


 その姿を見て二人は互いに顔を見合わせる。

 そして「やれやれ、仕方ないな」という表情を同時に見せて、彼らも再び歩き出した。




 しばらく山を登っていた三人だったが、やがて「ある場所」に着いた。

 そこは地面が平らになっている場所で、登山なら十分に休める場所だろう。


 だが、彼らにはそれよりも気になる場所があった。

 それは近くにあった大きな洞穴(ほらあな)だった。


「この中にいるかもな。」


 グレゴリアスが軽口を叩く。

 しかしそれを気にせず女剣士はすぐに入ろうとした。


 だが、グレゴリアスはそれを止めた。


「なに?」


 明らかに怒ってそうな口調の女剣士。

 グレゴリアスは少しビビったが、すぐに伝えたいことを言う。


「中は真っ暗で危険だ。 それに中にいたとしても色々準備は必要だろ?」


 グレゴリアスは先程までとは違って冷静に伝えた。

 しかし女剣士はグレゴリアスの手を振り払い、洞穴の中に入ろうとする。


 だが、今度は別のカタチで止められた。



 木々の間から別の人物が現れた。

 それは前に別の場所で洞窟を見つけていた "ゴブリン男" だった。


「な、アンタは・・・。」


 ゴブリン男に驚く三人。

 思わず女剣士は足を止めてしまった。


 だが、ゴブリン男はなにも喋ろうとはしなかった。

 後ろからついてきていた雪女と違って。


「ふぅ・・・、抜けたぁ〜・・・。」


 雪女は若干疲れていた。

 膝に手を当てて中腰になり、腕より長い袖をブラブラさせている。

 やがて息を整えると顔を上げる。

 そして三人の姿に気付いた。


「おぉ、人がいた!」


 一気に元気になった雪女はいつもの不気味な笑顔に戻り、腕より長い袖を勢いよく パサパサ と音を立てながら揺らす。

 そして三人に近付く。


 だが、彼女の不気味な笑顔は常人には怖く見えるため、若干引き気味な三人だった。


「ここの洞窟は入ったの?」


 すぐ近くの洞穴に腕を向けながら聞く雪女。

 三人は数秒間だけ止まっていたが、やがてグレゴリアスが答える。


「い、いや、これから調べようとしてたところだが・・・。」


 若干表情を固くさせていたが、とりあえず喋ることができたグレゴリアス。

 そして、その言葉を聞いた雪女が「ふ〜ん・・・。」と言う。


 すると、話している雪女と他三人を放っておいて、ゴブリン男は洞穴に入ろうとしていた。


「待ちなさい!」


 当然それを止める女剣士。

 いつの間にか抜刀(ばっとう)しており、剣をゴブリン男へ向ける。

 ゴブリン男は赤い瞳で女剣士を睨む。

 その鋭い瞳にやや恐怖を抱く女剣士だが、威圧感に負けずに言いたいことを伝える。


「手柄は渡さないわ。」


 女剣士は後から来たゴブリン男に手柄を横取りされると思い、敵意を向けていたのだ。

 しかしゴブリン男は特になにも言わず、洞窟の中に入って行った。


「あ、待て!」


 女剣士も慌ててゴブリン男を追って洞窟の中へと入って行った。


「おい、だから危険だって!」


 グレゴリアスも女剣士を止めようと、彼女を追って洞窟の中へ。

 外に残されたのはボーグワンと雪女だけだった。


「あー・・・、アタシたちはここで待っておく?」

「キミは何のために参加したんだよ・・・。」


 ボーグワンのツッコミを聞いて「えへへ・・・。」と笑う雪女。

 彼女も"魔獣討伐"に参加しているので、ここでついて行くのが普通であろう。



 少し遅れてボーグワンと雪女も共に洞窟へと入って行く。

 その際にボーグワンは前方の斜め上に向けて杖をかざし、呪文を唱え始めた。


「優しき光よ、我らを照らせ。」


 次の瞬間、空中に光の玉が浮かぶ。

 キョウカが使った魔法と同じだ。

 それによって洞窟の中は光で照らされた。


「おお、ありがたい!」


 雪女は砕けた感謝の言葉をボーグワンに贈った。




 洞窟の中へ入ったゴブリン男は魔法で剣の刃に炎を(まと)わせて、暗い洞窟の中を進む。

 炎によって少しだけだが洞窟の中が見えるのだ。


 女剣士もゴブリン男の先を越そうと急ぎ足で前に進む。

 しかしそんな彼女の左腕をグレゴリアスが右手で掴んで止めた。


「放せ!」


 女剣士は掴まれた腕を放そうと暴れる。

 だがグレゴリアスは放さない。


「なにも見えないのに早歩きで進むのは危険すぎる。 大人しく彼について行くしかない。」


 グレゴリアスは冷静に説得する。

 しかし当然女剣士は言うことを聞かない。


「貴方は私の仲間にでもなったつもり? いい加減放さないと斬るわよ!」


 女剣士はグレゴリアスの方を向くと、剣を彼に向けた。

 グレゴリアスは片方しかない目を女剣士の剣に向ける。

 だが、すぐに視線を女剣士に戻した。


「『死にに急ぐな』と言っているだけだ。」


 グレゴリアスは先程までの雰囲気とは違い、とても真面目な声のトーンで女剣士に言う。

 女剣士は体を激しく動かすが、グレゴリアスの手は離れなかった。



 そうしていると、後ろから光の玉を連れたボーグワンと雪女が追いついてきた。


「なにしてんだ、キミら。」


 ボーグワンが今にも争いそうな二人を見て一言。

 二人はそちらへ顔を向けた。


 すると、それをチャンスだと思った女剣士がグレゴリアスの腹部に蹴りを入れた。


「ぐっ!?」


 グレゴリアスは思わず地面に膝をつく。

 その際に女剣士の腕から手を離してしまった。


 その瞬間、女剣士は既に先へ進んで行ったゴブリン男を追うために足早に洞窟の中を進んで行った。


 グレゴリアスは痛みに耐えながら立ち上がる。

 すると、ボーグワンの近くを飛んでいる光の玉に目をつけた。


「悪い、コレ借りるぜ!」


 そう言うとグレゴリアスは光の玉を両手で掴む。

 そして光の玉を持ったまま女剣士を追いかけて行った。



 ボーグワンは追いかけて行くグレゴリアスの姿を ポカーン と口を開けて見ていた。


「その玉、結構熱いんだが・・・。」


 しかしグレゴリアスは平気そうに運んで行っていた。

 そしてやがてボーグワンと雪女は暗闇に飲まれていった。


「あ〜らら、真っ暗。」


 暗闇の中、雪女はヘラヘラ笑っている。


「しゃあない、もう一つ出すか・・・。」


 ボーグワンは溜息(ためいき)を吐くと、再び光の玉を出すために呪文を唱え始めた。






 ゴブリン男は歩みを止めていた。

 自身の耳で「ナニカ」を感じ取ったからだ。


 後ろから女剣士も追いついてきた。

 彼女はゴブリン男が立ち止まっていることを確認する。

 さすがに不審(ふしん)に思い、彼女も歩みを止めた。

 すると、彼女も「ナニカ」を感じ取る。


 次に現れたのは光の玉を持ちながら女剣士を追いかけてきたグレゴリアスだった。

 彼は立ち止まる二人を見て不思議に思い、彼女たちの近くで足を止める。


「どうした?」


 グレゴリアスは二人に聞く。

 しかし、直後に理由を察した。

 なぜなら今の「どうした?」という言葉が遠くまで響いたからだ。


 どうやら、広い空間に出たようだ。



 後ろから少し遅れて新たに光の玉を生み出したボーグワンと雪女もやってきた。


「三人共、どうしてこんなところで立ち止まっているんだ?」


 ボーグワンが三人に問う。

 すると、ボーグワンのその言葉も響き渡る。


「おお、凄く響く!」


 雪女はわざと大声でそう言い放った。

 洞窟の中に凄く響き渡る。


 ボーグワンは光の玉を前方の斜め上にゆっくりと移動させた。

 壁にはぶつからず、そのまま浮遊し続ける。

 本当に広いようだ。


 だが、しばらく飛ばし続けていると前方に大きな「ナニカ」があることが分かった。

 しかし大きくて「それ」が何なのかは分からない。


 ボーグワンは一つでは分かりにくいため、新しく三つ目の光の玉も呪文を唱えて作り出す。

 だがまずは既に近付かせている二つ目の光の玉をさらに大きな「ナニカ」に近付けた。


 だが次の瞬間、その光の玉は突然消えた。

 光の玉が消えた瞬間、その場所が一瞬にして真っ暗になる。


「!? 「ナニカ」がいる!」


 ボーグワンは光の玉が消えた瞬間、そのようなことを言った。

 どうやら光の玉は"消えた"のではなく、"壊された"ようだ。


 他四人がボーグワンの方を一瞬だけ向いて、すぐに前方の暗闇に顔を向けた。



 「ナニカ」がそこにいる。

 五人は感じ取っていた。


 すると、女剣士が剣を抜きながら前へ進み出した。


「お、おい・・・!」


 グレゴリアスが止めようと彼女の元へ近付こうとする。


 その時だった。


 暗闇の中から「触手」のような黒いモノが現れ、女剣士の剣を持っている方の腕に巻き付いた。


「!!?」


 女剣士は驚いたあまり剣を床に落としてしまった。

 剣が床に落ちた際の金属音が暗闇の空間に響き渡る・・・。






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