21.第3話「異種族の戦士たち」(10/11)
ドウジたちが「魔獣」と戦っている中、別の場所でも戦いを繰り広げている者たちがいた。
"ゴブリン男"と"黒い骸骨"だ。
彼らは先ほどまで洞窟の中で争っていたが、今の戦場は洞窟の外の平地だった。
ゴブリン男は炎を纏わせた剣で黒い骸骨に立ち向かう。
黒い骸骨の方は黒い剣でゴブリン男と戦っている。
お互いかなりの実力者のようで、先ほどから剣と剣がぶつかり合う金属音が鳴り止まない。
ゴブリン男は体を回したり、足を狙ったりなど時々戦法を変えたりしているが、全て黒い骸骨の剣に防がれる。
ただしゴブリン男も黒い骸骨が時々発動する力強い「飛ぶ斬撃」を回避したり、剣で弾いたり、盾で防いだりして対処していた。
その光景はまさに「本当の戦い」と呼ぶべきモノで、隅の方で戦いを見守っている雪女は近付こうとは一切しなかった。
というより、"近付けない"のだろう。
「クッハァ!」
たまに黒い骸骨が謎の言葉を発する。
それには特に深い意味はなく、ただの掛け声のようなモノなのだろう。
黒い骸骨の攻撃をゴブリン男は防ぎ、距離を空ける。
すると次の瞬間、黒い骸骨は空間から黒い靄を発生させ、靄が消えると手には拳銃を持っていた。
そして拳銃をゴブリン男に向けるとすぐに引き金を引き、発砲音が山に鳴り響く。
ゴブリン男は銃弾によって持っていた剣を落としてしまった。
思わず舌打ちをしながらもすぐに剣を拾おうとするが、その前に骸骨が二発目の弾丸を放とうとする。
躊躇なく放たれる弾丸。
それをゴブリン男は持っていた盾で防いだ。
その時にゴブリン男は違和感を感じ取った。
盾に直撃した弾丸が横の方だったことを。
この時、ゴブリン男は二つの考えが浮かんだ。
銃弾が盾のかなり横に直撃したのは「銃の使い方が下手」なのか、それとも「あえて外している」のか。
ゴブリン男は一瞬だが動かないでいた。
すると、一瞬だけ動かなかったゴブリン男の様子を不思議に思った黒い骸骨も思わず撃つ手を止めていた。
ゴブリン男は剣を拾うと、盾を構えながら立ち上がった。
そして剣先を黒い骸骨に向けると、目の前の骸骨に向かって喋りかけた。
「お前はなにがしたい?」
ゴブリン男の突然の言葉を受け、黒い骸骨はゴブリン男に向けていた銃口を地面に向けた。
そして無言のまま互いに見合っている。
白目が黒く、黒目が赤いゴブリン男の瞳と、マスクの目元の奥で赤く光る黒い骸骨の瞳が、互いの目に映っている。
「射撃が下手なわけじゃねえよな?」
ゴブリン男のその言葉を聞くと、黒い骸骨は「ンッフッフッフッフッ」と不気味に笑う。
そして手に持っていた銃が黒い靄で包まれ、靄が晴れるとその手に銃は無かった。
もう片方の手に握っていた黒い剣を地面に突き刺し、柄に両手を重ねて置く。
「答えろ。 あの、地面に埋まった「箱」はなんだ?」
ゴブリン男は黒い骸骨に対して力強く聞く。
先ほど洞窟内で発見した「箱」に関して。
しばらくの沈黙の末、黒い骸骨も言葉を発する。
「いずれ分かるさ。 この山にいる「邪悪なるモノ」を排除した後にな。」
そう一言述べた。
「それはどういう・・・。」
ゴブリン男がさらに問い詰めようとするが、次の瞬間森の奥から「ナニカ」が近づいてくる「音」が聞こえてきた。
それは「バイクのコール」だった。
「音」が徐々に近づいてきて、やがて三人がいる"この場所"に一台の「黒いバイク」が現れた。
そのバイクにはライダーが乗っていない。
だが、動いていたのだ。
「一つだけ忠告してやる。」
黒い骸骨は剣を仕舞うと、バイクに近づく。
その際にゴブリン男へ喋りかけた。
バイクの音で聞こえづらかったが、ゴブリン男の耳には入っていた。
「この山にいるのは「魔獣」だけじゃない。」
黒い骸骨はバイクにまたがると、再びゴブリン男に言葉を送った。
そして言い終えるとバイクをターンさせて木々の間を通り、走り去っていった。
段々と「音」が離れて行き、やがて二人の耳から消えていった。
黒い骸骨がいなくなったことを確認し、隅の茂みから見ていた雪女が出てきてゴブリン男に近づく。
「なんだったんだ?」
さすがに雪女も、普段のニヤけ顔をやめるほどに戸惑っていた。
しかしゴブリン男は気にせずに剣を盾に仕舞って、その盾を片手に持つ。
そして木々の中に入ろうと歩き始める。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
それを雪女が止めようとする。
雪女が袖に隠れた手でゴブリン男の肩を掴もうとする。
するとゴブリン男はその手を払った。
「洞窟の「箱」は確認しなくていいの?」
雪女は気にせずに聞きたいことを言った。
するとゴブリン男は一度ため息を吐いて喋り出す。
「言ってただろ。 「箱に触るな」と。」
ゴブリン男は一言そう述べて木々の中に入っていった。
雪女もゴブリン男について行くために木々の中に入る。
語ることはしなかったが、ゴブリン男は新たな目的ができたので早速行動に移ろうとしているのだ。
場面は変わって、別の平地。
ドウジたちがいる場所だ。
「魔獣」との戦いを繰り広げている真っ最中。
「ドウジさん!!」
突然キョウカがドウジの名を叫ぶ。
それもそのハズ。
「魔獣」の片方の牙がドウジの体に刺さったからだ。
しかしドウジは一瞬だけ動きが止めっただけで、すぐに体から牙を抜く。
そして「魔獣」の眉間に強力な蹴りを放つ。
「魔獣」が怯んだことを確認すると、ドウジは後方に跳んで一度距離を離す。
ドウジが着地した場所の近くにはキョウカがいた。
「大丈夫ですか・・・?」
キョウカはドウジの体にできた「小さな穴」のような傷を見て本気で心配する。
「魔獣」の牙の跡はそこまでではないが、意外とくっきりつけられていた。
「平気だ。 それより、「ヤツ」に集中した方がいい。」
ドウジの体には「小さな穴」ができている。
当然「小さな穴」からは血が流れ出ている。
だが、ドウジはあまり苦しそうな感じには見えなかった。
さすがにキョウカはドウジに対して「ナニカ」を言おうとするが、「魔獣」の動きが気になってしまったため、半強制的に戦いに集中しなければならなくなった。
当然キョウカはドウジの体の心配をしている。
戦っているのはドウジとキョウカだけではない。
甲冑の数を三体に増やして戦う"ガイ"。
一撃一撃を重くして必ず「魔獣」の体に傷をつける"シグ"。
そして「魔獣」の攻撃を受け止める"イェルコイン"。
それぞれが自分の力を信じて戦っていた。
「三体でもダメなのかよ。」
三つの甲冑を同時に操って戦っているガイが思わず文句を言った。
合計六本の刃が「魔獣」を斬り裂こうと行動するが、「魔獣」はコレを避けたり、牙で弾いたりしてくる。
ガイは諦めずに攻撃を続ける。
同じく攻撃を仕掛けるドウジやシグも同様に。
イェルコインは「魔獣」を警戒する。
自分からは攻撃できないことを十分に理解しており、自身にできることだけに集中している。
「魔獣」が自分の場所に近づいた際に「透明な壁」を作って防ぐ。
そして壁に激突したことによって「魔獣」にダメージ与える。
それがイェルコインの戦いだ。
だが、知っての通り「魔獣」の攻撃はかなり強力で、イェルコインが受け止めることは不可能に近い。
おそらく先にイェルコインの方が押し負けてしまうだろう。
それを察してか、仲間たちがイェルコインを助けるために「魔獣」を攻撃したりして気をそらす。
その隙にイェルコインは逃げるのだ。
そして落ち着いたら再び「魔獣」の攻撃を待ち、攻撃が来たら「透明な壁」で受け止める。
その繰り返しだ。
一見すると「必要のない役割」のようにも思えるが、強敵相手にはいわゆる"囮役"も必要なのだ。
特に「隙がない」場合は。
イェルコインが遠くで待機していると、近くの木々の中から ガサガサ と音が聞こえてきた。
当然耳がいいイェルコインはその音にいち早く気づき、思わずそちらを向く。
「魔獣」と戦っている最中にも関わらず。
数秒後、木々の間から一人の人物が現れた。
その人物の姿にイェルコインは覚えがあった。
「あ、あんたは・・・!?」
その人物の顔は包帯で覆われており、口や目元部分しか見えない。
そう、あの「包帯男」だ。
包帯男は遠くにいる「魔獣」の存在を確認した後に、近くにいるイェルコインの存在に気づいた。
「あっ、嬢ちゃん!」
そう言ってイェルコインに近づいてきた。
当然イェルコインは「"嬢ちゃん"って言うな!」と怒鳴る。
「無事に送り届けられたようだな。」
「魔獣」を見てそう呟く包帯男。
「送り届けられた・・・?」
イェルコインがすぐに疑問を持つ。
先ほどの「嬢ちゃん発言」のことはとりあえず置いとくことにした。
「なに、あんたらの仲間の仕事をちょっと手伝っただけさ。 それより、前を見た方がいいかもよ?」
包帯男は軽い感じで話す。
今、包帯男は「魔獣」がいる方を向いている。
イェルコインは包帯男が言った「前を見た方がいい」という言葉を思い出して慌てて前(「魔獣」がいる方向)を向く。
すると、「魔獣」がイェルコインに向かって突撃してきていた。
「あっ!?」
イェルコインは急いで「透明な壁」を作ろうと必死に杖を振るが、とても間に合いそうになかった。
しかし近くに立っていた包帯男がイェルコインを抱えると、そのまま「魔獣」が向かってきている方向から横に飛んだ。
「魔獣」はそのまま木々の中に突っ込んでいった。
木々を破壊しながら。
「ヒェ〜、おっかねぇー。」
包帯男は笑いながら言う。
果たして本当に怖がっているのかは、抱えられているイェルコインにも分からない。




