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18.第3話「異種族の戦士たち」(7/11)


 ドウジたちが山登りをしている同時刻。

 山に着く前にドウジたちに絡んできた"眼帯の男"も当然山を登っている。

 魔獣の場所は全く分かっておらず、ただあちこちを歩き回っているだけだった。


 進んでも進んでも木々が見えるだけだった。

 魔獣はおろか他の戦士たちの姿も見えない。


 しかし、歩みを止めようとは一切思ってなかった。



 それからしばらく山を登っていると、ついに一人の戦士と出会った。


「なんだ、他のヤツか。」


 戦士は結構ガッシリとした体型の男で、片手に杖のようなモノを持っていた。

 服装から見て"聖職者"のようだ。

 筋肉質な聖職者のようだ。


「魔獣は見つかってないようだな。」

「そっちこそ。」


 二人は腕を組んで「うーん・・・」という声を上げた。

 どうやら二人は少し似ているようだ。


 男二人が同じポーズをとっていると、また別のところから戦士が現れた。


「・・・なにしてるの?」


 声のした方を同時に向く二人の男。

 彼らが目にしたのは剣を持った女性だった。

 おそらく"女剣士"のようだ。


「「そっちも魔獣が見つからないのか?」」


 男二人が同じポーズをとってハモりながら女剣士に聞く。

 目の前の光景にやや驚いて目を丸くする女剣士。

 やがて女剣士は剣を(さや)に収めた。


「貴方たちには教えないわ。」


 顔をそらしながらそう言い、他の場所へ移動しようとする。

 男たちは反射的に引き止めようと近付き始めた。



 その時だった。

 急に山の奥から人の声が聞こえてきた。

 やがて沢山の物音がコチラへ近付いて来ているのを三人は感じとった。


 三人は先程までとは違って真剣な顔つきになって警戒し始める。

 眼帯の男は剣を構え、筋肉質な聖職者は杖を持ち直し、女剣士は剣を抜く。

 そして三人とも山の奥を(にら)む。



 しばらくして音の正体が現れた。

 それは大勢の戦士たちだった。

 音の正体は戦士たちの叫び声と足音だったのだ。


 戦士たちはボロボロになっており、全員一目散に山を下っていた。

 まるで「ナニカから逃げている」かのように。


 女剣士は一人の戦士に話しかけようとするが、戦士は女剣士を無視して山を下って行ってしまった。


 どんどん叫び声や足音が遠ざかっていくのを三人はただ見送るだけだった。


「一体、なにが起こっているの・・・。」


 そう言う女剣士と同じく、男二人も不思議そうに眺める。

 戦士たちが通って行った道を。


「分からねえが、確かめるには行くしかねえ。」


 眼帯の男はそう言うと、戦士たちが来た方向を登り始めた。

 そして他二人も不本意ながら眼帯の男の後を着いて行くように登り始めたのだった。






 同時刻。

 別の場所では別の男が山を登っている。

 あの時のゴブリンの男だ。


 ゴブリン男は、遠くの方で聞こえた先程の戦士たちの叫びを聞き逃してはいなかった。

 山を登る足を止めて、声がした方を眺めている。

 そして声が聞こえなくなると再び登り始めた。

 多少方向を変えて。


 するとゴブリン男はあるモノを見つけた。

 それは大きな洞窟だった。


 ゴブリン男はしばらく洞窟を眺め、そして中に入ろうと歩き始める。

 目線の先で真っ暗な世界が広がり始めた。


 その時だった。


「おっと、中に入っちゃう?」


 ゴブリン男の後ろから誰かが声をかけてきた。

 なぜか背中に寒気を感じていた。

 男は勢いよく振り返ると同時に、手に持っていた盾から剣を抜き出して構えた。

 そして目の前の人影を睨む。


「おっとっと、そう警戒しないでよ。 アタシアタシ。」


 ゴブリン男に声をかけたのは、前に話しかけてきた白服の雪女だった。

 相変わらずギョロッとした目で見てきて、ギザギザした歯を見せるようにニヤけている。

 そして(そで)が長い腕をブラブラさせている。


 目の前にいる人物があの時の雪女だと気付くとゴブリン男は(きびす)を返して改めて洞窟に入ろうとする。

 それを見て雪女は慌ててゴブリン男の体を掴む。

 長い袖越しの手で。


「まあ待ってよ。 ちょっとした提案があるんだけど。」


 ゴブリン男の体を掴んでいる雪女は引きずられながら話す。

 しかしゴブリン男はなにも言わず、ただ前に進むだけだった。


 やがて洞窟の入り口付近につくとゴブリン男は足を止めて持っていた剣を(かか)げた。

 次の瞬間、剣の刃が燃え始めた。

 どうやらゴブリン男は魔法が使えるらしく、刃に炎を(まと)わせたようだ。


 炎によって照らされて、真っ暗な洞窟の中が若干見えるようになった。


「わお。」


 雪女はそれを見て一言そう述べた。


「いい加減、はなせ。」


 ゴブリン男は雪女を睨みながらそう言う。

 白目が黒く、黒目が赤いその瞳で。


 雪女はその言葉を聞くと笑みを浮かべた。

 そして今度は後ろから抱きしめるように腕をゴブリン男の体に回した。


「アタシも連れて行くといい!」

「・・・なんだと?」


 雪女はギザギザした歯を見せながら喋る。

 その言葉を聞いてもゴブリン男は表情を変えない。

 だが、口は開いた。


「なにを考えてやがる。」


 ゴブリン男は雪女をさらに睨む。

 しかし雪女はヘラヘラ笑っている。


「キミが気に入っただけだよ。」


 雪女はニヤけながら喋る。

 その態度だと本当か嘘かは分からない。


 ゴブリン男はしばらく黙って雪女を睨み続け、やがて口を開いた。


「はなせ。」


 そう一言述べた。

 すると雪女はニヤニヤした表情を変えずに首を(かし)げた。


「だから、キミが気に入っただけだよ?」


 雪女は再びそう言う。


 ゴブリン男は雪女を睨みながら、一体なにを言っているかを理解しようとする。

 そして理解した。


「違う。 「話せ」じゃなく"放せ"だ。 体に巻き付いているこの腕を放せ!」


 ゴブリン男は若干怒りながら言った。

 すると雪女は表情は変えずに「ああ〜!」という声を上げた。

 そしてゴブリン男の命令通り腕を放した。


 雪女が腕を放した瞬間、ゴブリン男は雪女を無視して先に進んだ。

 それを見て雪女は慌てて後を追う。


「ついてくるな。」


 ゴブリン男は雪女を見ずに冷淡(れいたん)にそう一言述べる。

 しかし雪女は笑うだけで聞く耳を持たなかった。


 構うだけ無駄と理解したのか、ゴブリン男はそれ以上はなにも言わずただ前に進むだけだった。



 暗い洞窟の中を進む二人。

 ゴブリン男は前方を警戒しながら進む。

 一方雪女は全く緊張感はなく、腕をブラブラさせながら歩いていた。


「ゴブリンって、暗闇の中でも見えるって聞いたけど?」


 雪女はゴブリン男に質問する。

 しかし相変わらずゴブリン男は喋ろうとはしない。

 雪女はゴブリン男が答えを言ってくれないことを理解し、次の質問をしようとする。


「普通のゴブリンって小柄らしいから、キミって「ホブゴブリン」でしょ?」


 雪女は腕をブラブラさせながら聞く。

 しかしゴブリン男はやはり答えようとはしない。


「アタシと話す気は無さそうねぇ〜・・・。」


 雪女は若干残念そうな台詞を吐くが、相変わらずニヤけ顔を見せている。

 そしてゴブリン男も構わずに歩み続けている。



 やがて洞窟の奥に着いた。

 ・・・しかし、そこは行き止まりだった。


 ゴブリン男は炎を纏わせた剣で辺りを照らすが、なにも見つからない。

 どうやら「ハズレ」だったらしい。


「なぁ〜んだ、なにもないのかぁ〜。」


 雪女はその場でピョンピョンと二回ほど跳ねると、体を回しながら腕をブラブラさせる。

 一方ゴブリン男は思わず舌打ちをした後、地面を蹴飛ばした。

 その際に少し砂埃(すなぼこり)が舞った。



 ゴブリン男は明らかに不機嫌になり、さっさと来た道を戻ろうとしていた。

 その時だった。


「ねぇねぇ、ここにナニカあるよ?」


 雪女の声がゴブリン男の背中に当たる。


 すると先程から雪女を無視し続けていたゴブリン男が珍しく雪女の方を向き、彼女に近付いた。

 雪女は腕より長い袖を地面に垂らしていた。

 ゴブリン男はそれが「地面を指している」のだと理解し、炎を纏わせた剣を地面に近付けた。


 雪女が地面に垂らしている袖を退()けると、そこには明らかにナニカが埋まっているような地面があった。


 ゴブリン男が邪魔な砂を退けると、どんどん姿を現し始めた。

 そしてそれは、パッと見たところ「箱」が埋まっているようだった。


「宝箱かなぁ〜?」


 雪女は呑気(のんき)にそんなことを(つぶや)く。

 しかしゴブリン男は相変わらず答えようとはせず、ただ地面にある「ナニカ」を眺めている。


 そしてゴブリン男は再び地面にある「ナニカ」に手を伸ばそうとした。



 その時だった。


「それに触れるな!」


 帰り道の方から大声が聞こえてきた。

 当然ゴブリン男と雪女は声のした方を向く。


 するとそこには、ある人物が立っていた。

 腰に下げられているカンテラによってその人物の姿がよく見える。

 トゲトゲした甲冑を身に纏まとい、死神を連想させる黒い骸骨のマスクを被っている。

 魔獣討伐に参加していたあの謎の人物だった。


 突然現れた謎の人物に対し、すぐさま警戒をし出すゴブリン男。

 炎を纏わせた剣の先を黒い骸骨に向ける。


「なんだ、キサマは・・・。」


 白目が黒く、黒目が赤い不気味な瞳で黒い骸骨を睨むゴブリン男。

 しかし黒い骸骨もマスクの奥で光らせる赤い瞳をゴブリン男に向けている。

 雪女はなにが起こっているか分からず、珍しく困惑した表情を見せてゴブリン男と黒い骸骨を交互に見ていた。


「大人しくこの場所から去れ。」


 黒い骸骨は不気味な声を響かせながら二人に警告する。

 しかし当然意味が分からないでいるゴブリン男は動こうとはしない。

 全くビビっておらず、黒い骸骨を睨み続けている。


「もう一度言う、去れ! 警告を無視するなら・・・。」


 黒い骸骨はそう言い終えると、手を前に出した。

 すると前に出した手に黒紫色の(もや)のようなモノが現れたかと思うと、その靄は少しだけ大きくなるとすぐに消え、黒い骸骨の手には大きくて黒い拳銃が握られていた。

 そして銃口はゴブリン男に向けられていた。


「えっ!?」


 雪女は突然のことに驚いた。

 しかしゴブリン男はなにも喋らず、少しだけ汗をかいている状態で黒い骸骨を睨んでいる。


「チィッ!」


 ゴブリン男は目の前にいる黒い骸骨が「危険」だと感じ取り、右手に炎を纏った剣、左手に盾を持った状態で黒い骸骨に立ち向かいにいく。

 次の瞬間、先程までゴブリン男が立っていた場所目掛けて弾丸が発射された。

 当然凄い音が洞窟内に響き渡った。


「ひぃ!?」


 驚いた雪女は思わず尻餅をついた。

 そしてゴブリン男は黒い骸骨に急接近する。



 雪女の声と共に、ゴブリン男と黒い骸骨の戦いが始まってしまった。






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