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12.第3話「異種族の戦士たち」(1/11)


 次の日になり、村を出発するドウジたち。

 村長からそこそこのお礼の金をもらい、旅に出ようとしていた。

 村人たちは旅立つドウジたちに手を振ってお見送りをしていた。

 それに対してドウジたちも村人たちに手を振る。


 やや遠くまで移動した後に、前方を向く。

 再び旅の始まりだ。



「それにしても、あの村の露天風呂は綺麗でしたね。」


 キョウカが急に話しかけてきた。

 昨日の夜、キョウカはしっかりイェルコインを連れて風呂に入ったのだ。

 その後、ドウジもしっかりと入った。


「ボクも見ておけばよかったな。」


 幽霊であるガイには入浴は必要ないため、彼のみ入っていなかった。


「そういえば、昨日の夜なにをしていたんだ?」


 ドウジがガイに聞く。

 するとガイは「え!?」という声を上げた。


「起きてたの!?」

「就寝時でも頻度に起きるのがクセでな。」


 ドウジは夜中、寝て起きてを繰り返していた。

 その時になにかをしていたガイを発見したようだ。


「なにをしていたんだ?」


 イェルコインがガイに聞く。

 すると次の瞬間、後ろから無数の甲冑が一斉に飛んできた。


「洞窟が封鎖するから、甲冑を全部回収してきたんだよ。」


 いきなりのことで三人とも驚いていた。


「こんなに沢山の甲冑、どこに置いておくの・・・?」

「とりあえず、町などに着いたら近くの森などに隠しておくつもり。」


 キョウカの疑問に答えるガイ。

 イェルコインは乾いた笑い声を上げた。




 しばらく道を歩いていると、前方に三体の人影が見えた。

 その内の二体は戦っているようだ。


「行ってみましょう!」


 キョウカは真っ先にそう言った。

 その言葉を聞いた後に四人は足を早めた。


 そして近くまで来ると、人影の正体がハッキリと分かった。

 一人は褐色肌で斧を持った筋肉質の女戦士。

 もう一人はボロボロの服を着た男。

 残りは旅人風の女性だった。


「はぁー!!」


 女戦士は男の顔面を蹴飛ばした。

 男はそれによって頭をグラングランさせた後に、地面に倒れた。


「今よ、早く逃げな!」

「あ、ありがとうございます!」


 旅人風の女性は女戦士にお礼を言うと、そのまま遠くへ逃げて行った。


 女戦士は持っている斧を地面に突き刺した。

 そして地面に倒れている男の胸ぐらを掴んで持ち上げた。

 女戦士はかなりの力持ちのようだ。


「あんた、今後こういうことはやめるんだぞ!」

「は、はいぃー!!」


 男は怯えた声で叫ぶ。

 その言葉を聞くと女戦士は胸ぐらから手を離して、男を地面に落とす。

 男は尻から地面に落ちて、痛がる。

 そんな姿を見て女戦士は鼻で笑い、ドウジたちとは逆の方向に去ろうとする。


 その時だった。

 女戦士が男に背を向けた瞬間、男は隠し持っていたナイフで女戦士の背中を刺そうとした。


「・・・!」


 いち早く気付いたのはドウジだった。

 ドウジは男が女戦士にナイフを刺そうとする前に、後ろから男に急接近して後頭部をぶん殴った。

 もちろん手加減をして。

 すると男はその衝撃によって女戦士を通り過ぎるように飛んでいった。

 そして近くの草むらに落ちた。


 女戦士が異変に気付くと後ろを見る。

 そこには拳を前に突き出したドウジと、それを眺めているキョウカたち三人がいた。


「あ、あなた達は・・・?」






 ドウジたちは女戦士に説明をした後に、彼女と行動を共にしていた。

 歩く方向が一緒だからだ。


「さっきはありがとうね。 おかげで助かったわ。」


 女戦士は笑顔を見せながらお礼を言った。

 女戦士はよく見ると耳が(とが)っている。

 褐色肌と合わさり、どうやら彼女は「ダークエルフ」のようだ。


「あの男性は誰だったのですか?」


 キョウカが聞く。

 「男性」とは、先程のボロボロの服を着た男のことだ。

 ドウジが殴り飛ばした後、そのまま放置してきた。


盗人(ぬすっと)よ。 あの女性の荷物を奪おうとしてたのよ。」

「それを助けた、というわけですか。」


 キョウカの解答に「そゆこと。」と軽く答える女戦士。

 すると、ドウジがキョウカの方を向く。


「この世界には警察や憲兵などはいないのか?」


 キョウカに向けて小声で聞くドウジ。

 するとキョウカも小声で答える。


「昔はいたそうです。 ですが犯罪者も強者ばかりの世界となってしまったので、大人しく閉じ込めておける場所が無くなってしまったのです。」


 キョウカは視線を前に向き直して話を続ける。


「ですから、一般の村民や町民たちは自分自身が強くなるか、強い用心棒などを雇わなければ満足に暮らせないのです。」


 話し終えるとキョウカは再びドウジの方を向いた。


「先程の村は前者か、もしくは運が良いだけかもしれません。」


 キョウカの言葉を聞いて、ドウジは納得した。

 そしてドウジは、自分が今いる世界を改めて理解したのだった。




 少しの()をおいて、女戦士は思い出したかのように喋り出した。


「ああ、私の名は「シグ」。 "シグ・マーチャント" って言うの。」


 シグと名乗ったダークエルフの女戦士は、豊満な胸に手を当てながら良い笑顔を見せる。


「私はキョウカ・アキノと申します。 そしてコチラが・・・。」


 キョウカはその後、丁寧に仲間たちもフルネームで紹介する。

 ただ、この世界の名前っぽくドウジのことは "ドウジ・アマヅ" と紹介した。

 ドウジもそれを理解しているようで、特になにも言わなかった。



「シグはどこへ行くつもりだ?」


 いきなりタメ口で話すイェルコイン。

 真っ先にキョウカがイェルコインを「コラ!」と(しか)る。


「良いって良いって。 タメ口で全然オッケーよ。」


 そしてシグがすぐに許した。

 その言葉を発した数秒後、イェルコインの質問に答える。


「実はね、この先の町では腕利きの戦士たちを募集しているのよ。」


 シグはまだなにも見えてない道の先を指しながら喋る。


「用心棒か?」

「いえ、魔獣退治よ。」


 シグは腰に下げていた斧をバトンのように振り回しながら答える。


「多分、私以外にも戦士が集まっていると思うわね。」


 シグのその言葉を聞いて、キョウカは「あっ!」と声を()らす。

 あることを思い付いたようだ。


「もしかしたら、討伐の仲間を見つけられるかもしれません!」


 キョウカは嬉しそうに言う。

 するとシグは今の言葉を聞き逃さなかった。


「討伐?」


 背の高いシグは少し腰を曲げてキョウカの方を見ながら聞く。

 豊満な胸が()れ、胸の谷間を見せつけるようなポーズをしたことでドウジとガイは一瞬(なが)めてしまったが、すぐにシグの顔を見て誤魔化した。

 幸い女性陣には一人も気付かれてはいなかった。


「 黄金龍ナルキ の討伐です。」


 キョウカのその言葉を聞いて考え込むシグ。

 数秒後、「あっ。」という感じの顔を見せる。

 そして言葉を発する。


「あの金ピカの龍か!」


 言葉から察するに、すぐには分からなかったようだ。

 しかしシグも知っていたようだ。


「え、あのデカブツと戦うの!?」


 そして事の大きさもやっと理解したようだ。

 するとシグはドウジたち四人をそれぞれ眺めた。


「・・・大丈夫なのか?」

「いえ、ですからさらに人を集めているのです。」


 シグの問いにキョウカが答える。


「そうか、あの黄金龍を・・・。」


 シグは若干シリアスな表情になって呟く。

 それほど予想外だったのだろう。




 しばらく歩いていたが、まだ町にはつかない。

 だが、近くに休憩施設のような店があった。


「先は長いし、一度あそこで休憩しよう。」


 シグはそう言って、さっさと店の中へ入ってしまった。

 なにか言う前にシグが入ってしまったので、つられるようにドウジたち四人もなにも言わずに店に入ったのだった。



 店内には色々な人々がおり、雰囲気を一言で伝えるなら「酒場」であろう。

 酒を飲んだり料理を食べたりして、騒いでいる。

 まだ朝だと言うのに。


「(朝っぱらから酒を飲むなよ・・・。)」


 イェルコインが小声で呟く。

 周りが騒がしいので、もちろん当人には聞こえていない。


 店の奥へ行き、五人で座れる場所に移動する。

 それぞれが大人しく席についた。


「いらっしゃいませー!」


 ウェイトレスらしき女性がいつの間にか席の近くに立っていた。

 本当にいつの間にか立っていたのである。

 その証拠に、ドウジが気配を感じていなかった。


「あ、えーと・・・。」


 シグが仕切(しき)って、それぞれの注文を聞く。

 ドウジたちは席にあったメニュー表からテキトーに選び、注文をする。

 注文を聞いたウェイトレスはそのままキッチンの方へ行く。


 とりあえず落ち着いたので、さっそくキョウカが口を開く。


「あの、大丈夫なのですか?」


 キョウカは聞いた。

 シグの目的である「魔物退治」に関してだ。


「明日の朝からだから全然大丈夫よ。」


 そしてシグは軽く答えた。

 その言葉から察するに、明日までには町に着くようだ。



 ふと、シグが向かいに座っているドウジを見る。


「それにしても、あなた大きいね。」


 席に座っても巨体が目立つドウジを見て一言。

 実際、隣に座っているキョウカがかなり小さい。


「2、いや3メートルくらい?」

「さあな。 最後に測ったのはかなり昔だ。」


 ドウジの言葉にシグは「ふーん。」と言葉を()らす。



 そんなことを話していると、急に店内がやや静かになり始めた。


 原因はすぐに分かった。

 別の席でなにやら揉め事が起きていたのだ。


「おい、お前ゴブリンだろ!」


 戦士風の髭面の男が(すみ)の方で座っていた人物に絡んでいた。

 その人物は帽子を深く被って、顔もバンダナで隠している。

 しかし体色が緑色なのと、大きく尖った耳でバレバレであった。


「なら、なんだ?」


 ゴブリンらしき男は冷静に言い返す。

 白目の部分が黒く、黒目の部分が赤い(ひとみ)で髭面の男を(にら)む。

 その瞳を見て髭面の男はやや(ひる)むが、負けじと言葉を続ける。


「ゴブリンが人間の店に何のようだ?」

「・・・食事だ。」


 ゴブリンと髭面の男は睨み合っている。

 すると、キッチンの方から店の人が出てきて髭面の男に近付く。


「あの、申し訳ございませんが、他のお客様のご迷惑になられてしまうにで・・・。」


 店員は髭面の男を(なだ)めようとする。

 だが、髭面の男は今度は店員の方を向いて話し始めた。


「アンタらもアンタらだ。 薄汚いゴブリンなんかを店に入れて!」


 髭面の男はハッキリとそう言った。

 その言葉が店内に響き、完全に空気が悪くなった。

 さすがに髭面の男も察したようで、舌打ちを一回した後に、近くにいる店員に代金を渡す。

 そしてそのまま店を出て行った。


 空気は悪くなったままだが、店員はそのままキッチンの方へ帰ってしまった。


「酷いもんだ。」


 イェルコインがテーブルに(ひじ)をついた状態で呟いた。







【登場キャラクター】

●「黄金龍討伐メンバー」

・ドウジ・アマヅ

挿絵(By みてみん)

主人公(異世界転移者)。

身長約3メートルで筋骨隆々の男。

女性の揺れた胸を思わず見てしまうほどには、普通の感性を持っている。


・キョウカ・アキノ

挿絵(By みてみん)

メインヒロイン。

人間の魔法使い。


・イェルコイン・アレクサンドラ

挿絵(By みてみん)

獣耳族(ビーシアン)と呼ばれる種族の聖魔導師。

犬の耳が生えている。

キョウカの親友で、愛称は「イェル」。


・ガイ

挿絵(By みてみん)

甲冑に憑依している幽霊。

兜や鎧などの部位をそれぞれで浮かばせて、動かすことができる。

また、数体の甲冑を同時に動かせられる。

死してなお、女性の揺れた胸を思わず見てしまう感覚を持っている。



●同行者

・シグ・マーチャント

挿絵(By みてみん)

ダークエルフの女戦士。

とある町で行われる「魔獣退治」に参加しようとしている。



●その他

・ゴブリン男

挿絵(By みてみん)

ホブゴブリン。

帽子やバンダナなどで顔を隠している。


・旅人風の女性

ゼラスに荷物を奪われそうになったところをシグに助けられた。


・ウェイトレス

休憩施設で働く女性。


・髭面の男

休憩施設にいたオヤジ。

ゴブリン差別をしている。



●悪人

・ゼラス・ヴァイスト

挿絵(By みてみん)

ボロボロの服を着た盗人の男。

折檻したシグに復讐しようとするが、ドウジにぶっ飛ばされる。


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