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9.第2話「洞窟の戦い」(4/6)


 怪物の触手によってキョウカが倒された。


「キョウカ!!」


 近くにいたイェルコインがキョウカのもとへ近付く。

 ドウジはキョウカとイェルコインを守るように怪物との間に入る。


「キョウカを連れて、遠くへ移動してくれ。」


 ドウジが背を向けた状態でイェルコインに言う。

 怪物への警戒を解いてはいなかった。


「あ、あんた一人で大丈夫か?」


 イェルコインは背を向けているドウジに対して聞く。

 一瞬の沈黙の後にドウジは声を発する。


「今は逃げてくれ。」


 ドウジはただ一言そう述べて、怪物へ立ち向かって行った。


 ドウジは超高速で怪物に近付き、その勢いと共に怪物に対して強烈な蹴りを放つ。

 当然怪物は後方に飛ぶ。

 するとドウジは怪物の触手を掴み、ジャイアントスイングのように振り回そうとする。


 怪物はドウジの力に負けて宙に浮かぶ。

 そしてそのままグルグルと回転させられ、背負い投げのように地面に叩きつけられた。

 怪物は逆さまの状態で地面に激突する。


 しかしドウジはすぐに次の攻撃に移った。

 上空に向かって跳び上がり、怪物に向かって急降下した。

 そして怪物を両脚で勢いよく踏み潰す。

 怪物は身動きが取れず、痛みによって足をバタバタと動かすだけだった。



「・・・。」


 ドウジは怪物を眺めている。

 散々ドウジの攻撃を受け続けているハズなのに、気絶すらしないからだ。


 だが、ドウジはそれでも攻撃を続ける。

 怪物の触手を掴み、背負い投げのように怪物を叩きつける。

 そして反対側の地面に再び叩きつける。

 続いてまた反対側に叩きつける。

 それを繰り返した。


 数十回も地面に叩きつけた後に、怪物の触手を掴みながら上空に跳ぶ。

 ドウジに連れられて怪物も宙に浮かぶ。

 そして地面に投げ飛ばし、勢いよく地面に叩きつけた。


 ドウジは着地と同時に怪物を確認する。

 すると逆さになった怪物が足だけを激しく動かしていた。



「・・・!」


 ドウジは黙って汗をかいている。

 ナルキの時もそうだが、ドウジは久しぶりの強敵相手に若干(あせ)っていた。

 だがすぐに平常心を取り戻し、再び攻撃に移る。


 今度は怪物に対して殴る蹴るという攻撃を仕掛けた。

 怪物は攻撃を受けるたびに短距離を飛んでいく。

 しかしそれでも気絶すらせず痛がっているだけだった。



 一見ドウジが圧倒しているように見えるが、怪物も相当なタフさを持っており、まさに「怪物」という呼び名に相応しい化け物ぶりだった。


「ドウジ!」


 ふと後ろから声がして、ドウジは攻撃をやめた。

 声の主はイェルコインだった。

 ドウジは、怪物から距離を離すようにイェルコインのところまで跳んで行った。


「苦戦してるようだな。」

「恥ずかしながら、その通りだ。」


 ドウジは腕を回しながらイェルコインと話す。

 怪物の方を見ると、先程までボコボコにされていたのに余裕で立ち上がっていた。


「正直に言うと、凄く怖いんだ。 だけどキョウカがあの様子じゃ、アタシが頑張るしかないだろぉ?」


 イェルコインは杖を持ち上げて、ドウジより前へ出た。

 そして怪物に向かって杖を向けた。


「戦いたくないのに戦ってやるんだ、ありがたく思えよ。」


 イェルコインは怪物の方を見ながらドウジに言い放った。

 偉そうな言い方だが、ドウジには頼もしく聞こえていた。

 そしてドウジは鼻で笑うと、イェルコインの隣に立って怪物を(にら)む。


「怪物をアタシの方に投げつけろ。」


 イェルコインはただそう一言だけ述べた。

 ドウジは言葉の意味は分からなかったが、彼女を信じてなにも聞かなかった。



 ドウジは高速で怪物に接近する。

 怪物も黙ってやられるわけにはいかないのか、勢いよく触手をドウジに放つ。

 ドウジは触手の攻撃を回避し、再び接近する。

 すると怪物の方も接近してきた。


 怪物はドウジに接近しながら、触手をドウジに向かって放つ。

 若干予測してなかったのか、今度の攻撃はドウジに命中した。

 しかし咄嗟(とっさ)にガードをしたので、大したダメージにはならなかった。


 ドウジはすぐに次の行動に移った。

 再び怪物の触手を掴んで、振り回した。

 怪物はドウジの怪力によって宙をグルグルと舞っていた。

 そしてイェルコインの言葉通り、ドウジはイェルコインの方に向かって怪物を投げ飛ばした。

 怪物は勢いよく飛ばされて、イェルコインに急接近する。

 このままではイェルコインは大怪我を負ってしまうだろう。


 しかしイェルコインの目の前で怪物は「ナニカ」にぶつかった。

 前にドウジも見た、イェルコインの透明な壁だ。

 しかも今度はおそらくドーム状である。


 透明な壁にぶつかった怪物は、弾き飛ばされた。

 勢いだけではなく、どうやら壁自体も怪物を弾き飛ばしたようだ。

 怪物はかなり上空を飛んでいた。

 そしてそれを見たドウジは「チャンス」だと思い、怪物がいる上空へ飛んでいった。

 今更すぎるが、ドウジは完全に人の力を凌駕(りょうが)している。


 数秒後に怪物が飛んで来るであろう上空に跳んだドウジ。

 そのまま怪物より高い位置まで飛んでいった。

 そして真下に怪物が来たと同時に、歯を食いしばりながら急降下した。

 怪物はドウジに踏まれ、そのままドウジと共に地面に向かって落下して行った。


 地面に激突したと同時に、凄い音が鳴り響く。

 怪物もさすがに今度は四本の足で着地はできず、体部分と地面が触れ合っていた。

 上に乗っていたドウジは無事で、怪物が地面に激突した2秒後にバク宙をしながら降りた。

 そして距離を離す。


 怪物は四本の足を倒しながら地面に伏せているような格好になっていた。

 触手も倒れているような状態で、動かない。


 ドウジのもとにイェルコインが来た。


「ついにやったか。」


 イェルコインはホッとしたような声でそう言う。

 力が抜けて地面に座った。

 そんなイェルコインを黙ってドウジは見る。



 だが、ドウジは不穏な音を耳にする。

 悪い予感がしたので、地面に座っているイェルコインを抱えた。


「えっ!?」


 イェルコインは当然驚き、抱えられた状態でドウジを見る。

 しかしドウジはイェルコインを抱えると怪物がいる方向とは反対の方向に走り出した。


 ドウジの走りは、ドウジにしてはあまり速くなかった。

 おそらくイェルコインを抱えているからだろう。

 高速で移動すると、イェルコインが酷いことになるからだ。


 すると、イェルコインも不穏な音を耳にする。

 それは地面になにかが当たる小さな音だった。

 しかもそれは4回も続いた。


「・・・まさか、コレって。」

「ああ、そうだ。」


 二人は察した。

 自分たちの背後で起こっていることを。



 ドウジたちの後ろでは、なんと先程まで地面に激突した怪物が立ち上がっていたのだ。

 ドウジたちの攻撃を受けてもまだ倒れていなかったのだ。


「嘘でしょ!? どんだけ頑丈なのよ!!」


 イェルコインは抱えられた状態で怪物に文句を言う。

 イェルコインは犬の耳を持っているので、音で分かるのだろう。


 十分な距離を取ったところで、イェルコインを降ろして再び怪物を見る。

 やはり怪物は立ち上がっており、こちらへ向かってきている。

 ドウジ、そしてイェルコインは怪物を警戒する。



 その時だった。

 上空から怪物目掛けて剣が飛んできた。

 剣は怪物の触手を斬り裂き、地面に刺さった。

 怪物の触手は切断されて、取れた触手が地面に落ちる。


「あの剣は・・・。」


 ドウジはすぐに目の前に飛んできた剣が何なのかを理解した。

 剣が飛んできた方向を見る。

 すると兜と籠手(こて)が飛んで来ていた。


 そう、幽霊甲冑だ。


「えっ!?」


 イェルコインはとても驚いている様子だった。

 なぜなら、イェルコインだけは甲冑の正体を知らないからだ。


 片方の籠手は剣を握っており、そちらの籠手を怪物に向けて飛ばす。

 怪物の四本ある足の内の一つを斬り裂いた。

 斬られた足は深い傷ができる。

 足を一本怪我したことにより、怪物はバランスを崩して地面にコケる。


「後ろに鎧がある。 それに乗って今の内に脱出してくれ!」


 甲冑は登場して早々、ドウジたちに対して言い放つ。

 それに対しての返事を待たずに甲冑は怪物に立ち向かって行った。


 ドウジは後ろを見る。

 すると、確かにそこには鎧が浮いている。

 そして斜め上を見ると、甲冑の靴が半分魔法陣から出ていた。

 どうやら靴で魔法陣を起動させ続けているようだ。


 甲冑に対して聞きたいことがあるが、とりあえず今の状況を把握したドウジはすぐに行動に移った。

 なにが起きているか全く理解できていないイェルコインを抱えて鎧の近くまで移動する。

 イェルコインを地面に下ろすと、ドウジはイェルコインに「待ってろ。」と一言述べて、気絶してるキョウカのもとへ走り出した。


 一方、甲冑の兜や籠手が怪物の周りを飛び回っている。

 そして(すき)を見つけると、()かさず剣で攻撃する。

 先程投げた剣もちゃっかり回収していた。


 怪物の触手はなぜか復活しており、兜や籠手を狙って()ぎ払う。

 しかし兜や籠手は暴れる触手をなんとか避けていた。



 ドウジの方は気絶しているキョウカを抱えてイェルコインのもとへ連れてきた。

 丁重(ていちょう)にキョウカの身体を鎧に乗せる。

 そしてドウジは隣で立っていたイェルコインの脇下(わきした)を持って持ち上げる。


「おうっ!?」


 突然、イェルコインは驚く。

 しかしドウジは気にせず、宙に浮く鎧の上に乗せる。


「上げてくれ!」

「えっ!?」


 ドウジは甲冑の兜がある方に大きく声を上げて、その言葉を聞いたイェルコインは思わず驚きの声を上げる。

 ドウジが乗ってなかったからだ。


 次の瞬間、鎧が魔法陣を目指してゆっくりと上昇し始めた。

 鎧の上に乗せられた二人もそのまま上に移動してる。

 途中でイェルコインが、落ちないようにキョウカの腕を握っていた。

 やがて二人は鎧と共に魔法陣の中に入って行った。


 ドウジは二人が無事に脱出したことを確認すると、甲冑の兜が浮いている方向を見る。

 甲冑はまだ怪物と戦っている。

 その光景を見て、ドウジは考えることもせずに真っ直ぐと怪物の元へ向かった。




 ドウジは勢いよく怪物を蹴り飛ばす。

 短距離だが、怪物を吹っ飛んだ。


「な、あんた・・・!?」


 兜がドウジの近くへ移動して、驚愕している声を出す。

 兜の中から黄色く光った目のようなモノが見える。


「助かった。 ここから出て、ゆっくりと話がしたい。」


 ドウジは怪物を警戒しながら、甲冑にそう言う。

 甲冑は三秒くらい悩んだ末、「分かった。」と答える。


 ドウジと甲冑は怪物の攻撃を防ぎながら、魔法陣を目指す・・・!







【登場キャラクター】

●「黄金龍討伐メンバー」

天津道志アマヅ ドウジ

挿絵(By みてみん)

主人公(異世界転移者)。

身長約3メートルで筋骨隆々の男。

キョウカたちを守るために戦う。


・キョウカ・アキノ

挿絵(By みてみん)

メインヒロイン。

人間の魔法使い。

触手の攻撃を受けて気絶する。


・イェルコイン・アレクサンドラ

挿絵(By みてみん)

獣耳族(ビーシアン)と呼ばれる種族の聖魔導師。

犬の耳が生えている。

キョウカの親友で、愛称は「イェル」。

キョウカが倒れてしまったので、勇気を出して怪物に立ち向かう。



●その他

・甲冑の幽霊

挿絵(By みてみん)

甲冑に憑依している幽霊。

兜や鎧などの部位をそれぞれで浮かばせて、動かすことができる。

触手の怪物を恐れていたが、勇気を出してドウジたちを救出しに来た。



【怪物】

・触手の怪物

四足歩行の禍々しい怪物。

触手で攻撃をする。


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