7、恋人たち
「殺せ!あの女!探し出して今すぐ殺せ!」
「魔女め!優しくしてやったらつけあがりやがって!」
「神の供物を台無しにした‼︎」
「あいつもろとも殺してしまえ!」
いやだ
いやだ。
私はあの人と一緒に生きていきたいだけなの。
あの人は供物じゃない!人間よ!あなたたちの好きにはさせない‼︎
「行こう。逃げよう。ここにいるとあなたはダメになる」
あの人の手を取り、魔女は走った。
こわい。これから、どうなるの?
あの人の気持ちも聞いていない。
これは、私のエゴかもしれない。
「……ハッ」
起きたら汗だくだった。
何か夢を見ていたようだが、すごく怖かった記憶はある。
「あにき、大丈夫……?」
アントンがカップに温めたミルクを注いで持ってきてくれた。
カップに口を近づけ、ふぅふぅと息を吹いて冷ましながら一口ズズ……と音を立てて口に含んだ後熱さで顔をしかめる。
「なんか、あにきって感じじゃないからさ,名前、決めようよ」
「名前?」
「あー、ほら、出会った当初から名前知らなかったからさ、とりあえずあにきって呼んでたけど、なんかちがうじゃんか、その。」
「うん……」
「あにき、名前、思い出せる?」
「ソエル」
「ソエル、ソエルね。わかった。今度からそう呼ぶ」
アントンはキッチンからりんごを持ってきて、包丁で二つに切り二人で分け合って食べた。
甘くて、蜜が滴り落ちる。それをアントンはズズっと吸った。
「ふふ」
なんだかいけないことをしている気持ちになる。
「落ち着いた?」
「じゃあ、また寝ようね。ここにはソエルをいじめる奴は誰もいないよ」
ソエルはミルクをゆっくり味わって飲み、それが終わると体をを猫のように丸め、床につく。
やがて、スゥスゥと寝息を立て始めた。
「全部、わかってたよ」