5皇帝
死神とアントンはどんどん進んでいく。
行く宛はないが、とにかく進んでいけば、出会えるかもしれない。あの人に。アントンだって、何故旅をしているかは謎だが、何が目的があるはずだ。
死神とアントンは山の上にいた。
石の台座に老人が座っている。
「主らはわしに何か用かね?」
「おれは人を探しています。この世界のどこかにいるはずなんです。ただ、おれの名前も、あの人の名前も思い出せないんです」
「ふぅむ。それは困った案件だなあ。どれ、これで見てみるか。」
老人は金の宝珠を死神の目の前に掲げ、じっくり見つめる。
「ほう。ほう。なるほど」
「何か、見えるんですか?」
「それは。言えないな。お主は自分で見つけなければならない。ただ言えるのは、お主はここに来る前、本当に愛した人がいて、その人と一緒にここに来てしまったということだ」
「それは、分かるんです。分かるんですが、どこにいるか知りたいんですよ!」
「意外な場所にいるとだけ言っておこう。」
「ねーねー、おじいちゃん」
アントンは地面に例のバッグを下げたワンドで落書きしている
地面には老人が写実的に描かれている。
コイツにこんな才能があったとは。
「おじいちゃんをかいてみたよ」
老人は台座から下り、落書きをしげしげと眺める。
「ほうほう。よく描けている。褒めて遣わす」
「お前は楽しそうでいいな」
「えへへ。褒められたぁ」
「少し待っていなさい。褒美をやらねば。おーい!」
すぐに召使いがやってきた。
「はい。なんでしょうか、陛下」
「この者たちを法皇のところに連れて行け。きっとあの方なら答えがわかるであろう」
「はっ!仰せのままに」
「いってきまーす!」
「おい、どういうことだ?なんだ?」
風が吹き、土がならされ老人の落書きは消えてしまった。
「わしの地位もこうやって消えてなくなってしまったのだよ。人間だった頃は」