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タロット!  作者: 彼岸花
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0番、愚者

0番愚者 (FOOL)


白い空間がだんだんと色を帯びてくる。

宵近い黄色の空にギラギラと輝く白い太陽。遠くの方には剣のように尖った山脈。緑の草が所々に生い茂り、その間には名前がわからない白くて小さな花が咲いている。

死神は今の気持ちとは反する鮮やかすぎる景色に胸焼けがした。

色彩に暴力を受けている気がするのは何故だろう?

「ヘーイ兄さん、どうしたんだい?暗いよ暗いよーもー!そんな死神みたいな顔しちゃってさあ。あ。君死神だっけ?新入りの。HAHAHA!!」

そう言って謎の男は死神の背中をバシバシと強く叩く。

なんだ?この、元気のゴリ押し野郎は。

緑の金貨柄の服に細身のパンツ、オークの杖の先にはコレ何が入るの?というくらい小さなカバン。

何がしたいのかわからない、明らかに怪しい奴。

「なんだよぅ!もっと楽しくいこうぜーHAHA〜♪」

「ほっといてくれ……」

「そんなこと言うなよぉ〜。あんたの人生あんたが楽しまなきゃつまんねーじゃんかあ。死神だからって葬式みたいな顔してちゃ本当につまんなくなるぜー!!お?俺、ちょっと上手いこと言った?HAHA〜♪」

うるせぇ。

無視してこのハイテンションな不審者から遠ざかろうとするが、しつこくコイツはついてくる。

どこからともなく現れた白い犬が高い声で吠えている。

「おお!ペスも元気出せーって言ってるぞー」

不審者はペスと呼ばれた白い犬の顎下を乱暴にワシワシと両手で強めに撫でる。

「おれ、アントンってんだよ。死神、あんたが人間だった時の名前は?」

「誰が、お前に教えるか」

「これから長い旅になるんだし、お互いの名前を知らなきゃ朋友になれないじゃないかー!」

「朋友?」

「運命共同体だよー。もう、あんたとおれは縁ができた。もう、あんたを笑わすまでおれは離れないぞ」

「迷惑だ失せろ」

「やーだね!おれは自由人だ。誰の言うことも聞かねぇよ。俺がこうするまでずっとついていく」

「うるさい、どっかいけよ!」

「あー、死神の兄貴?」

「なんっ……わぁあああー!」

死神は足を踏み外して崖から落ちた。

「そっちは崖だ!!って言いたかったのに」

謎の男はオークの杖からカバンを外し、それの蓋を開ける。手のひらサイズの透明な砂時計を出して流れている砂を逆さにする。

落ちたと思った死神が上ってきた。また崖から落ちる寸前になっている。

「うるさ……」

「そっちは崖だよ。落ちるぞ」

「ああ、ありがとう?あれ?なんか今、崖から落ちた気が」

「いや、さっき落ちてたよ」

「どういうことだ?」

謎の男は死神の目の前に砂時計を突き出した。

「じゃじゃーん!この砂時計、ちょっと前まで時間が戻せるんだよぉ〜ん」

「じゃあ、それ、俺にくれよ。なんか使えそうだ」

「ダメダメダメェ〜!これはおれにしか使えないの!他にもおれにしか使えない秘密道具がこのカバンの中にいっぱい詰まってんだよ。おれ、便利な奴だよ〜旅のお供にどう?」

「おれはまだ旅に出るとは言ってない」

謎の男はカバンから小さく透明の玉を取り出しそれ越しに死神を見る。

「ふむふむ。結構いい女だねー。あんたの探しもん。で名前は……アン・リリー。ほうほう。意味は拒む、純潔……この女厄介だなあ」

死神は、謎の男が持っている玉を奪おうとする。

「それはなんだ?貸せ!!あの人のいる場所が見えるのか?」

顔だけでも見たい。彼女は無事なのか?

「まーまー。落ち着けよ。よいしょっと」

カバンを2回パンパンと叩くと、カバンは人が入れる大きさまで膨らんだ。

「まあ、呑みながら話を聞くよ」

巨大なカバンのボタンを開き中に招き入れる。

このカバンはどんな構造なのかわからないが、中は快適な空間になっていた。

中央にはランタンが煌々と燃え,その周りにはクッションや椅子、ベッドが無造作にかつ、ほっとする配置なっている。奥には本棚が有り、その横には炊事場まで内蔵されている。

「何だ?このカバンは?わけがわからない」

「アントンの秘密道具だよぉ。このカバン、謎が多すぎておれもたまに使い方がわからなくなるHAHAHA!!」

「持ち主が使い方がわからないってどういうことだよ」

「まー、堅いことは気にすんなぁーHAHAHA!!」

ところでさあ。と謎の男は真剣に聞いた。

「おれ、オモロい?」

「は?」

バカじゃないのか?この男。もう、関わりたくない。

「まあ、そう言うなよ朋友!!飲もうぜ!!」

「まだ、お前を認めたわけじゃない。」

「もうすぐ日が暮れるぞー。ここ、夜は冷えるぞー。寒空の下、ローブ一枚で過ごすのかー。カワイソー。おれはここで肉の粥をすすりながら兄さんが凍えてるのを見物するかあ。HAHAHA!!」

「うるさい!」

3時間後。

「肉の粥美味いな!もっとよこせ!」

死神はガツガツと食事をしている。

「ほら言わんこっちゃない」

「はあ。食った食った。ごちそうさん」

死神はナチュラルにベッドへ横になる。

「おれのベッド!!なんだこいつ!」

「寝顔、意外と悪くねぇな。骸骨だけど」

そうして、1日目の夜はふけた。







象意

自由、解放、警告

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