表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/118

013 雲のゴーレム(砂)との決着

「青魔導・水弾」


「風纏い・一刀飛斬!」


「水魔法・メイルストローム!」



 土黄色の雲のゴーレムが動き出す前に三者三様に大技を放った。知織からは水の銃弾が放たれ、メグミは迂闊に近づくわけにはいかないと警戒をして遠距離から風属性を纏わせた刀から斬撃を飛ばし、クリスティアはここ最近多用している水魔法の大技を放った。



 すると、土黄色のゴーレムはメグミの斬撃には効いた様子を見せなかったが、知織とクリスティアの水の攻撃は効果があったようで風の勢いが弱くなり、怒ったように砂の弾を雨のように降らせてきた。



 砂の弾であるため知織が銃弾で砂を狙い打ち続けると、湿ってしまい勢いを無くしてそのまま制御下を離れて消滅していった。



「水が弱点のようだ!」


 知織はそう言うと、今放っている銃弾を素早く生成して大きなゴーレムの表面のあちこちに打ち込み続けた。



 メグミは風属性の付与から水属性の付与に切り替えて接近して砂の弾の雨を躱しながら斬りかかった。そして、その時に判明したのは砂の弾を一発でも喰らうとその部分から水分を無くして乾燥してしまうということだった。


 メグミは接近する以上攻撃を躱し続けねばならないのだが、雨のように降り注ぐ弾をすべて躱しきることはできずいくつか喰らってしまったことで判明したのだ。


 しかし、幸いだったのは水分自体を彼女自身が生成することができるので直ぐに水を吸収して干からびる前に潤わせることができた。


「シオリ殿!」


 メグミは攻撃を喰らってしまった際にその繰り出され続けている攻撃の性質について自身が体験したことで判明したことを大声で伝えようとした。


「どうした?」


「砂の攻撃はただ乾燥させるだけではないでござる!」


「どういうことだ」


「あの攻撃を喰らい乾燥してしまうとその部分に魔力を集めるのが難しくなって魔法がうまく使えなくなるでござる!」



 メグミが言うには、どうやら砂の攻撃による感想は魔法の発動を妨害する効果があるようだった。そのことから知織は近づいて攻撃を放つことも困難になるのではないかと思い、そのことをメグミに告げようとしたが間に合わなかった。



「こ、これは!?」


「奴の砂には魔法の発動を妨害する効果があるようだ! 当たらないようにするだけではなく、近づきすぎてもだめだ! それに可能性の話だが、時間をかけすぎてしまうといずれ奴の砂が堆積して魔法が発動できなくなる。その前に倒すぞ」



 知織は自身が想定しうる最悪の状況を予見して告げると、クリスティアとメグミはそうなってしまうと手も足も出なくなることは明白だったので短期決戦を仕掛けることにした。



「それはまずいでござる! 水纏い・一刀飛斬!」


「ふぅぅ~…、魔力がもつかわからないのですが、…メイルストローム!」



 クリスティアは距離を保ったまま巨大な水の奔流を放ち、メグミは斬撃を飛ばし続けた。



 そして、知織もクリスティアのメイルストロームからインスピレーションを受けた青魔導を発動させた。



「青魔導・激竜槍!」


 知織から放たれた奔流は槍のような形状で放たれたが次第に先端は竜の顔を模した形となり、土黄色の雲のゴーレムに喰らい付いた。



 3人の大技によって土黄色の雲のゴーレムは、最初に攻撃を放った時よりも大きな反応を示した。


 ゴーレムの体の土黄色は砂の竜巻で覆われてできていたようで、表面は全て濡れてしまったその結果、鎧のような役割をしていた砂が無くなり、ただの大きな雲のゴーレムになり果てた。



 そのことに怒り狂ったゴーレムは周囲の砂を操り、砂の弾の雨を降らせるだけではなく、その巨大な腕で大地を何度も殴りつけ大きな砂の波を作り出し、知織たちを生き埋めにしようとしてきた。



「まずい、回避だ!」


 知織は回避をするように2人に進言したが、ゴーレムの創り出した砂の波はとても大きく、砂の竜巻に囲まれた状態では逃げ出すこともできず、ジャンプで躱せる高さでもなかった。



「避けられないでござる! シオリ殿、あの波を打ち消す方法はござらんか!?」


 メグミは回避が間に合わないと判断するや否や、知織に次善の策はないのかと大声で問いかけた。



「くっ…!」


 知織は波を打ち消せるだけの技が何かないのかと考えたときに思いついたのは重力魔法のミニブラックホールだが、今失敗すると逃げ場がない以上自分たちも巻き込まれてしまうことは確かだったが、やらねばどちらにせよ危ないということだったので知織は、



「賭けに出る! 俺の後ろに下がっていてくれ」



 そう2人に声をかけると、ミニブラックホールの生成を開始した。



「(イメージはあの砂の波だけを吸い尽くすことだ…。そして、爆発は俺たちを巻き込まずにあいつにだけ被害が出るように…)ミニブラックホール…!」



 知織はイメージを明確にするためにぶつぶつと小声でつぶやきながら極小のブラックホールを生成した。



 そして、彼はそれを射出すると、極小のブラックホールは周囲の砂をどんどんと吸い込み砂の波は次第に収束していった。


 ゴーレムはその状況をただ見守ってくれているということはなく、その極小の球を破壊せんと殴り掛かったのだが、腕が黒い球に吸い込まれてしまったことから腕だけを引きちぎってその体を大きく仰け反らせていた。



「どうやらあいつは、破壊しようとしたみたいだが、無駄だったようだな」



 知織は自らが生成したミニブラックホールから意識を離さずにそう呟くと、そろそろ頃合いだと判断をして、



「弾けろ!」


 ミニブラックホールの爆発を引き起こさせた。


 すると、真っ白い光に包まれて大きな爆発が起こり、激しい砂ぼこりが舞った。クリスティアとメグミは爆発が起こることはわかっていたので既に手で顔を覆っていたので砂が目に入るということはなかったが、知織は爆発を引き起こすために最後までミニブラックホールの制御をしていたため、その光を見てしまい、砂も目に入るという不運に見舞われた。



「やったのか…?」



 知織は目に入った砂を手で擦りながらそう呟くと律義にクリスティアがどうなったのか教えてくれた。


「どうやらあの爆発に巻き込まれてゴーレムは動きを止めたようなのです」


「ですが、時間が経てば修復してしまう可能性もあるでござる」



 メグミは周囲の砂を纏って自己修復しようとしているゴーレムを見ながらそう指摘をした。


「それなら、あいつのコアを見つけてとどめを刺してくれ。今はあの爆発のせいでまだよく見えていないんだ。視力は次期に戻るが、その前に奴に修復されきられたら今度こそこちらが命を落としかねない」



 知織の言葉に2人は頷くと動きを停止したゴーレムに近づきコアがどこにあるのか捜索をした。


「あったのでござる!」


「こっちにもあったのです!」



 2人が巨大なゴーレムの体の内部を調べているとほぼ同時に2か所でコアの発見が伝えられた。2人は互いに驚きを示したが、とりあえずコアを2人とも取り出して知織の下へと持ってきた。


 すると2つのコアを取り除かれたゴーレムの体はサラサラと砂のように崩れて消え去った。



「倒しきったのでござるか…?」


「ゴーレムの姿が消失したのならそうだろう」



 知織は少しずつ回復しつつある目を手で覆ったままそう答えた。


 そして、メグミは本当に消滅したのかどうか近づいてゴーレムのいた辺りを隈なく調べた。


「ふむ…、これは…」



 そして調べ終えたメグミは砕けたゴーレムコアを持って知織たちの下へと戻ってきた。



「ゴーレムのいた地点を調べたら壊れたコアもあったのでござる」


「なるほど…」



 知織はコアが3つあったことから巨大なゴーレムがこの階層でのボス3体分の能力を持っていたということが分かった。そのため、本来なら3回ゴーレムを倒さなくてはならなかったところを知織の生成したミニブラックホールによって両腕をもがれていたこと、その前に放たれた大技の連発によって鎧を剥がされていたこと、それらがすべてうまく重なった結果ゴーレムの体力を削りきることができたのだろう。



 そのような考えを彼女たちに伝えると、彼女たちも運よく倒せたことに安堵した。そして、3人は階層ごとに大きな休憩を挟むことに焦りを感じなくはないが、ダメージを負った体を癒し、失った魔力を回復させるために休むことにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ