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006 知織による料理革命 (第2段階)

そして翌朝、知織は睡眠時間を十分に確保できたわけではなかったが、いつも通りの時刻に起きて訓練場に向かおうとしたところ、メグミに声をかけられたことで訓練時間を短縮することになった。



「おはようでござる」


「おはよう、朝早くから何の用だ?」


「母上からの伝言でござる。午前8時頃に食料保管庫に来てほしいとのことでござる」


「…了解した。その時に何か持って来いということは言っていたか?」


「? 特にそう言うことは聞いてないでござるが、何かあるのでござるか?」


「いや、いい。とりあえず、軽く汗を流してから向かうとしよう」



 知織はメグミにそう伝えると、訓練場で軽く魔力の循環や魔力を少量で運用する訓練をしてから部屋に戻り、いくつかの食器と、調理器具をリュックに詰め込んでから食料保管庫へと移動をした。




「あ、おはようなのです」


「おはようございます、シオリ様」



「おはよう。それで、ここに来るように言われたのですが、料理についてですか?」



 食料保管庫へ行くとクリスティアとメグミ、それにユカリが何かを話しながら待っていた。


「ええ、そうです。なんでもシオリ様はそろそろダンジョン攻略へと挑むとのことでしょう? そうであるならばその前に料理についてある程度教わろうと思いまして」


「そういうことですか」



 知織はそう言うと、先程リュックに詰め込んだ調理器具や食器を取り出して保管庫に並べた。



「ここには機能作った調理器具がある程度あります。他にも魔導具工房に保管してあるものもありますので後で取り出しますが、まずはこれらを使うための部屋を用意していただきたいです」



 知織は地球にある厨房のような施設について説明を始めた。ユカリはメモを取りながら知織の言う厨房の構想を練り始めた。そして、1時間ほどじっくりと時間をかけて説明をすると彼女もイメージがわいたようで知織たちが戻ってくるまでに厨房や食事をするための広間を用意すると約束をしてくれた。


 知織は女王付きの侍女という権限でそこまでの力を持つのだろうかと疑問に思わなくもなかったが、そこは気にしてはならないところだろうとこの後に待ち受ける国王の苦労を察して心の中で先に労っておいた。



「シオリ様の言う厨房なるものについては承知いたしました。続いては料理についてご享受していただきたいと思います」


 ユカリからは静かな圧を感じるような気がしたが、知織は彼女とメグミに昨夜用意した本を利用して料理を教え始めた。料理本はもちろん日本語で書かれていたので翻訳をしたものを用意してコピーしてある。



「それでは2人ともこれをまずは読んでください。それと、クリスは本当に料理を教わらなくていいんだな?」



 知織はユカリとメグミに本を渡してからまな板や包丁、鉄板、フライパンなどを用意しながらクリスティアに声をかけた。



「はいなのです。私は食べる専門でいいのです」


 彼女はあっけらかんとそう言い切った。



「そうか」


 知織はそれ以上クリスに何も言ことはせず、静かに料理を始めた。





「できたぞ」


 知織はまだかまだかと待っていたクリスに朝食として昨日とは違う味付けをした温野菜のスープと目玉焼きを出した。


「メインとなるものがないがこれで足りるか?」



 知織としては米、若しくはパンを用意したいところだったが米はまだ手に入りそうでもなく、パンを作るにしてもドライイーストは持っていないし、生地を寝かせる時間がないということで諦めたのだ。



「大丈夫なのです!」



 クリスは知織の出したものを美味しそうに食べて満足してくれた。また、ユカリとメグミも包丁の扱い方を練習しながら知織の出したスープと野菜炒めを食べ終えた。



「今日は料理講習で終えてしまいそうだが、明日にはダンジョン攻略に行かせてもらいます」


「…それは仕方のないことですね。それではここについてですが…」



 ユカリもダンジョン攻略をしなければならないことは理解をしているので渋々ながらも納得を示してくれて今のうちに盗める技術を盗もうとわからないところを知織に質問を続けた。



 そして、午後6時ごろまで知織が夕飯を作るまで料理をつきっきりで教えたことで2人はそれなりの技術まで扱えるようになった。


食材の切り方については地球でも各国の料理によって異なったりするので知織は使えそうな本を取り出しては翻訳しコピーするという作業に追われながら彼の知る限り教えた。


食材の焼き方や火入れの仕方なども様々で彼は本で読んだこと以上のことは知らないので後はじっくりと時間をかけて習得してくれと伝えた。



「本日は1日お時間をいただきありがとうございました」


「ありがとうでござる」


「いや、大丈夫だ。しかし、かなりの食材を使ってしまったが大丈夫か?」


「はい、それについては考えがありますので大丈夫ですよ」


「そうか、それならよかった。食材を無駄にすることだけはしてはならないからな」


「確かにそうですね。ダンジョンでとれると言っても限りは有りますし、料理が普及していけば他の方々も消費する量が増えるはずです。何か対策も考えないといけないですね」



 ユカリはそう言うと何か対策を考え始めたようで黙り込んでしまった。メグミはそんな母親を放っておいて知織に話しかけてきた。



「シオリ殿、今日は本当に助かったでござる」


「いずれはやらねばならないことだったから気にしなくて大丈夫だ」


「それでも感謝するでござる。料理はとても奥深いでござるし、終わりがなかなか見えないでござる」


「そうだろうな。俺も料理をしていて感じていることだ。レシピがある以上作られた料理というゴールはあっても、味の世界はとてつもなく広く、真の意味でゴールはないんだとな。完璧な味付けだと思っても、自分の知らない素材と1つ会う度にその料理は新しいものへと進化をさせることができる可能性がある。料理に終わりはないんだろうな」


「……なるほど、確かにそうでござるな」



 メグミはしみじみと知織の言ったことを噛みしめていた。そして、ユカリは何か考えがまとまったのか口を開いた。


「少々考え事をしておりました。考えもまとまりましたのでこれで失礼いたします」


「わかりました、お疲れ様です」



 知織がそう告げると彼女は軽く会釈をしてから部屋を出て行った。メグミはこれまで待たせてしまっていたクリスティアと何かを話しながら知織に礼を言って出て行った。



(さて、想定外のことで時間を取られてしまったが、明日からはダンジョン攻略を始めるとするか)


 知織も食料保存庫から出て自室へと向かった。その際に知織は研究室に寄ってから魔石だけ拝借してから部屋に戻った。



(さて、もしもの時のことを考えて作れるだけの道具を作っておくか)



 知織は部屋に戻るとすぐに魔導具工房に籠って魔道具の作成に時間を割いた。



 そして、翌朝、寝不足の状態ではあったものの知織はクリスティアとメグミを伴ってダンジョンへと向かった。


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