045 知織と紅羽の成長
昨日は投稿できなくて申し訳ありません…m(__)m
探索期間も折り返し地点にきて知織と紅羽は18階層へと挑戦をした。この階層まで来るとさすがに1階層で戦った石や土塊のゴーレムと比べて防御力や攻撃力、体力などは強くなっていることが明らかだった。
知織たちは15階層までは最初と同じように植物魔法で拘束をして紅羽が倒す、というパターンで戦ってきたが、16階層からは蔦で拘束をしてもすぐに拘束を解かれてしまっているので、違うパターンで戦っていた。
彼らを蔦で縛り上げて拘束をするのが難しいのであれば、今度は地中から串刺しにして足止めをしようとしたのだ。最初はうまくダンジョンの土に作用させることができずに苦戦をしたのだが、だんだんと慣れてきたおかげで新しい魔法を開発することができた。
それが『スパイラル・ストーンハープーン』である。ただの槍では貫通させることができないことも多かった。そこで、貫通力を高めるために魔法に開店を加えるようにした。また、ただの槍ではなく銛にすることで、抜けにくくもしたのだ。
今はもっぱら足止めの拘束用の魔法として使っているが、狩猟で使えば大抵の獲物はこの魔法で仕留めきれそうである。
また、紅羽も棒術の技術と闘気の操作が上達しており、まだ距離は短いが突きを飛ばせるようにもなっていた。そのため、至近距離からの突きもより洗練された技となっている。
現在は薙ぎ払い等の他の動作にも磨きをかけているところである。
「スパイラル・ストーンハープーン!」
「烈破!」
「ゴアアァァ…」
18階層に入っても洗練されていった2人の息の合ったコンビ―ネーションと進化した技のおかげでそこまで苦戦することなく進むことができた。道中での敵が今では前よりも多くなっているパターンもあるので、その時はうまく分断して叩くことで事なきを得た。
「ここまで来ると敵も少しずつ強くなってるし数も増えてきたね」
「そのようだな。だが、先程みたいに分断してしまえば1対2や2対2に持ち込める」
「まぁね。そうなれば私でもどうにかできるね。それで、知識はさっきから何しているの?」
現在彼らは19階層に降りる手前のところで休憩しているところである。先程は5体の石のゴーレムに襲われて、思わぬ苦戦を強いられたのだ。知織が土魔法で壁をくみ上げることでゴーレムたちの索敵範囲を限定し、そのまま1体1体釣りだして各個撃破したのだ。
「ちょっと実験だな。さっきの戦闘の戦利品で完璧な形のコアを得ることができた。これを何か使えないかと考えていてな」
「何かって?」
「さぁな。魔導具作りの知識はあるが、やったことがなければ、やることもできない。しかし、作りたい道具はある」
「そうなの? 最初に何を作るの?」
「最初に作ろうと思うのはケータイだな」
「ケータイ? ケータイってあのケータイでいいの?」
「ああ」
知織は紅羽の質問に頷くと、自身が考えている構想を伝えた。
今の彼らの遠距離の連絡手段はアーセナルドが呼び出したメッセージバードによる手紙だけだ。それ以前は使いを送り手紙を運搬していたのでそれよりは便利になったが、どうしても時間がかかっている。
また、これに関してはできるかどうかわからないが、この世界を基点として他の承継者たちの世界とも連絡が取れないかということを考えているのだ。
これは、今回の召喚に関しては神たちから色々な調整をしてもらうこととなったが今後もそれを続けていっていいのか、と知織は考えているからだ。
承継者たちで連絡を取り合って召喚可能な日を決め、それを神にお願いして召喚してもらうことにするのが本来の形であるべきと思っているので、できれば実現させたいことだった。
「…なるほどね。でも、今回の召喚の間でそれはできそうなの?」
「どうだろうな。承継したユニークスキルを使うためには魔法から魔導へ技術を昇華させねばならない。それができれば一気に話は進むはずだ」
「う~ん、魔法関係については私が引き継いだ知識じゃどうにもできないな~」
紅羽は自分ではその点については助けにならないと言い、知識が弄っているゴーレムのコアを眺めていた。
「さて、いつまでもこうしているわけにもいかないし、そろそろ進むか。俺たちも明日には20階層のボスに挑みたいしな」
「OK!」
知織と紅羽は休憩を終えると、そのまま19階層へと進んだ。19階層は18階層とそこまで変わらないので事前にもらった地図通りに進み、20階層まで進んだ。
「地図があるのはこの階層までか…」
「そうみたいだね。この階層のボスが倒せていないからその先に進めていないわけだし。それで、事前にわかっているボスの情報は?」
「ボスの名前は暫定的に大地のゴーレムと呼んでいる」
知織はそのように言うとボスの特徴を説明し始めた。
仮称大地のゴーレム。全長5ⅿを超える巨体で、魔法がほとんど効いていないと思われる。広範囲に土魔法を行使してきたり、配下のゴーレムを呼び出してきたりするため本体に攻撃をするタイミングがなかなか来ない。仮に攻撃ができたとしても魔法の効果が実感できないほど意に介しておらず、そのまま撤退をしてしまった。
その後物理攻撃が得意なメグミの父親などの精鋭を連れて行ったが、近づくことすらできずあえなく撤退。その後も何度か挑戦をしているようだが、それでも何もヒントもつかめないまま終わったらしい。
以上のことから今わかっていることは、土魔法を使うということと、配下のゴーレムを呼び出す巨体であるということだけらしい。
「………思ったよりヤバイ相手?」
「多分そうだろうな。俺たちよりも手練れであるはずのエルフたちが手も足も出ていないんだ。行き当たりばったりだけではきついだろうな」
「そっか…。それなら今のうちに何か作戦とか考えておく?」
「そうだな。だが、取れる手も多くはないからやることは今と大して変わらないはずだ。俺が後方から攪乱して紅羽が近接で倒す、それがベストなはずだ」
「じゃあ、それでいこっか」
そのようにざっくりとした作戦を決めて彼らは20階層を探索していった。20階層にはいくつか罠もあり、回避をできそうになければ魔法を罠に当てること無理矢理罠を突破していった。
出てくるゴーレムも今までのゴーレムとはそこまで差がないように思え、難なく倒して突き進んだ。そして、彼らは今記されている地図の最奥部分まで到着した。
「いかにもボス部屋って感じだね」
紅羽はそのように呟いた。
彼らの目の前にあるのは材質不明な巨大な扉だった。こちらから内部の様子を見ることはできないが、撤退をしてきたという話があることからゲームの使用によくある『ボス部屋から出ることはできない』、という展開はなく、中からも開けることはできるはずだ。
「確かにいかにもという雰囲気だな」
「どうする、突入する?」
「いや、ここなら魔物が出現しないようだ。ヴェルデたちからの情報を聞いてからでもいいかもしれない。もしかしたら共通する何か仕掛けがボス部屋にあるかもしれない」
「了解。それならここで夕飯とかの用意をするね」
紅羽は荷物から携帯食料や寝袋などを取り出し、キャンプの用意を始めた。知織もそれを見習いこの場で休む準備を手伝った。念のため、この辺りに魔物の気配が本当にないか確かめてから彼らは他の承継者たちからの情報を待った。
それから、彼らが食事をしたり、訓練をしたりして、時間を潰していると定時となったのでメッセージバードが飛んできた。
そして、今回届けられたメッセージには1つだけ他のメッセージとは異なって血が塗りたくられていて、いかにも何かあったと知らせるものがあった。
知織と紅羽はそのメッセージの緊急性を察知し、慌てて確認するとそれはヴェルデからの連絡だった。




