ギルド
もうすでに日は暮れ、空は暗くなりかけていた。
ギルドに入るとご都合主義が起こるような気がして、僕はずっとギルドの周りをうろうろしていた。しかし、かなり足も疲れたし、また見回りの兵士に声をかけられるのも嫌だ。
僕は覚悟を決めて、ギルドの扉を押した。
扉を開けると、扉についていた鈴がカランコロンと鳴った。
ギルドの床や柱の木材は年季が入っていて、何というか、古い図書館みたいな雰囲気だった。
建物の中にはそこそこ人がいて、それぞれ何か話し合ったりしている。
二階から酔っ払った冒険者が降りてくる。どうやら上の階に酒場があるらしい。
正面には窓口が三つあって、真ん中が「クエスト受注」、右が「報酬受け渡し」、そして左が「その他受付」と書いてある。多分、ギルドカードの作成は左の窓口だろう。
左の窓口のギルド職員は若い男の人だったので少し安心した。女性の職員だったらまともに話せる気がしない。
僕は「その他受付」の職員に話しかけた。
「あのーすみません」
「はい、何でしょうか?」
「そのー、ギルドカードを作りに来たんですが……」
頑張れ自分。頑張れ自分。
「カードの再発行は手数料250ゴールドかかりますがよろしいでしょうか」
「えっ」
外はもう暗い。こんな時間にギルドカードを作りに来たので、紛失したと思われたようだ。
「あっ、えっと、再発行じゃないです。これが初めてデス」
「……大変失礼いたしました。初回発行は無料になります」
ギルドカードをなくしたら、再発行にはお金が必要なようだ。
僕はこの世界のお金を持っていないので、どこかで落としたりしたら僕はもう本当に生きていけない。
それにしても、ずっと歩いていたので足が疲れてやばい。
今日一日がすごく長く感じられる。そろそろ寝たい。
「それでは、今用紙を持ってきますので、少々お待ちください」
職員のお兄さんが、奥の部屋に用紙を取りに行く。
その時、職員のお兄さんがあくびを噛み殺したのが見えた。
「えっと、職員さん」
僕は職員のお兄さんを呼び止める。
「はい、どうかされました?」
「……その、明日にしてもいいですか? ギルドの登録」
「あっはい。大丈夫です」
新規登録だから恐らく時間がかかるだろう。こういうのは日を改めてやった方が良いかもしれない。
「それじゃあ明日登録します」
「わかりました。それではまた明日こちらにいらして下さい」
ギルドの登録は明日やることにした。今日はもう寝よう。
と思ったが、ギルドを出たところで、泊まる場所が無い事に今さら気づいた。
お金が無いので宿には泊まれない。だからといって、路地裏で寝るのも嫌だ。
辺りを見回すと、ギルドの建物の隣に馬小屋があった。
馬小屋の入り口には「ご自由にご利用下さい」と書かれた札がある。
今日はここで寝よう。と思ったがやめた。だってこれご都合主義じゃん。
馬小屋を利用するのにお金は必要ないらしいが、ちょっと都合がよすぎる。ここで寝ると死ぬ可能性があるな。
僕は諦めてギルドの建物の裏にまわり、そこで寝ることにした。
お金の単位とか価値は今のところ適当です。あとで変えるかも。