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ハードモード異世界


「ギルドはこっちだ。俺についてこい」


 このおっさんについて行ったら、恐らく『呪い』が発動するだろう。そうすれば僕は死んでしまう。

しかし、他に選択肢はあるだろうか。身分証明ギルドカードが無かったら、僕はこの世界で生きていけないような気がする。

それに、僕を転生させた『神』は「ちょっとした制限をかける」としか言っていない。だからきっとこの程度なら大丈夫だろう。


 僕は立ち上がり、おそるおそる足を踏み出した。



 その瞬間、息ができなくなった。


「いっ……!?」


地面に膝をついて咳き込む。


「ゲホッ、ゴフッゴホッ、オ˝エ˝ッ」


頭痛もする。汗もやばい。『呪い』が発動したのだろう。だが、即死ではなかっただけマシだ。

それとも、ご都合主義の度合いによって苦しみが変わるのだろうか。


「だ、大丈夫か!?」


 おっさんが僕を見て慌てている。何の前触れもなく急に具合が悪くなったのだ。当然の反応だろう。


「ゴホッゴホッ、ゴッ、ゲホッ」


空気を吸おうとするほど苦しくなってくる。ヤバイ、マジで死ぬかも。


「い、急いで誰かを呼んでくる! 頑張れ、持ちこたえろ!」


 おっさんが少し離れる。少しだけ『呪い』の効果が弱まった。


「ゴフッ、大丈夫、です、エ˝ッ」


 何とか呼吸を整えて、言葉を絞り出す。


「どう見ても大丈夫そうには見えないが……」


おっさんが心配そうに僕を見ている。無理もない。


「少し……離れて下さい、ゲホッ……その……ギルドって、どんな建物ですか?」

「あぁ、ギルドは赤いレンガで出来た、立派な二階建ての建物だ。看板もあるからすぐ分かるだろう」


 ギルドはなかなか目立つ建物のようだ。


「なら、自分でも行けます……、ゴホッ」

「お前、本当に大丈夫か? くれぐれも無理はすんなよ」


 街の人にギルドまでの道を案内してもらうのは「ご都合主義」だ。『呪い』が発動してしまう。

しかし、自分で歩いて行って、散々迷ってようやく着くのは多分セーフだろう。


「はい、ありがとう、ございます」


お礼を言っておく。このおっさんは良い人なのだ。僕は『呪い』で死にかけたけど、全部『呪い』のせいであって、おっさんは何も悪くない。悪いのは『呪い』をかけた『神』だ。

あの程度のご都合主義で僕を殺しかけるのは、『神』は心が狭いと思う。


 僕はおっさんと別れ、ふらつく足取りで通りを歩いていく。


 歩いていると、ところどころ道案内の看板が立っていたが、無視して適当に進む。


 ギルドに着いたら、まずは冒険者になろう。

そして、きっとこの『呪い』を解く方法を見つけよう。

元の世界に戻ったら、友人と一緒にゲームをしよう。

この世界に来て一日もたっていないけど、今までの日々が懐かしく思えてくる。


いつかこの『呪い』を解いて、絶対に元の世界に帰るんだ。


 そんなことを考えながら、僕はふらふらと進んでいく。



 すれ違った人が、僕の顔色や足取りを見て、僕を避けていった。


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