魔石は意外と高く売れる!
前に並んでいた人が手続きを終わらせ、職員のお姉さんが「次の方どうぞ」と言ってくれるまで、僕はずっと赤髪の冒険者さんに絡まれていた。
僕は適当に「へえ」とか「そうなんですね」だとか相槌を打っていたけれど、テンション差がありすぎて、正直声を効くだけで疲れてしまった。
……今日は疲れる事しか無い気がする。多分パン屋まで歩いていけない。
「受けたクエストは薬草採取ですね。では紙袋をお出しください」
言われるままに紙袋を渡した。確か報酬は700ゴールドだったか。
「それでは中身確認いたしますね……えっと、すみませんこれは一体……?」
職員さんが僕に問いかける。その手には、巨大スライムの魔石が握られていた。
でも大丈夫。予定通り、森で拾った事にしておけば……
「えっ、新米お前それ、魔石!? 何の魔石だ? てかお前が倒したのかよ?」
びっくりするぐらい大きな声で赤髪の冒険者さんがまくし立てた。いや、なんでまだ居るんだ。
それより、冒険者さんからしてみれば、僕は二日前に登録したばかりの新米だ。そんな僕がいきなりこんな巨大な魔石を持ってきたのを見たら、絶対に色々と聞いてくるだろう。
「あっえっと、森の中を歩いてたら、なんか道の真ん中に落ちてて、ました。僕が倒した訳じゃないです。あの職員さん、これどうなるんでしょう」
「ということは……遺失物という事でよろしいでしょうか?」
「はい、そうですね」
「でしたら、10日経っても落とし主が現れなかった場合、通常の半分の金額で拾い主から買い取る事になっていますので、こちらの書類にサインをお願いします」
小さめの紙を取り出す職員さん。なるほど、そういうシステムなのか。
「なあちょっとお姉さん、この魔石って普通に売ったら何ゴールドくらいだ?」
横から赤髪の冒険者さんが問いかける。
「私は正確な鑑定はできないのですが……この大きさだと、低くて6000ゴールドぐらいですかね?」
「うおっマジかよ! おい聞いたか? 6000ゴールドだってよ!」
職員さんの言葉を聞いた途端、急に赤髪の冒険者さんが興奮しはじめた。
僕が微妙な反応しか返せないでいると、冒険者さんが僕の肩をグラグラとゆする。
「それだけのお金があれば、クエストに行かなくても数日は美味いもんが沢山食えるし、なんなら王都に遊びに行けるぞ! お前が倒して手に入れた事にしようぜ」
6000ゴールドはけっこうな大金らしい、と思ったらまさかの衝撃発言。
「あの、それ大丈夫なんです?」
「だって、道の真ん中に堂々と落ちてたんなら、それはもう『ご自由にどうぞ』ってことだろ」
「ぇえ……」
職員のお姉さんの方を見る。が、僕たちの会話は聞こえているはずなのに、職員さんはただ微笑んでいるだけだった。つまりはそういう事なのだろう。
「このまま魔石を売って大金を手に入れるか──面倒くさい手続きをしてチャンスを半分も無駄にするか──決まってるだろ? 俺と一緒にメシ行こうぜ……」
確かに、ここで大金を選べば、美味しいものも食べられると思うし、そもそも僕は宿に泊まるお金を作るために魔石を売りに来たのだ。
少しの間、選択肢について考え……いや、答えはすでに決まっていた。
「職員さん、さっきの書類、お願いします。サインします」
雰囲気ぶち壊しですがごめんなさい。突然ですが、皆様にお知らせがあります。
この度、本作品を次の話で打ち切りにする事にいたしました。
理由としましては、ひとことで言ってしまえばネタ切れです。
元々この作品は、僕が文章力を上げたくて、なにか一発ネタで、出来る所まで物語を書いてみたいという事で書き始めた作品でした。
連載をしていくうちにブックマークやポイント、感想などもついて、その度に「楽しんでくれてる人がいるから、まだまだ頑張ろう」という気持ちになりました。読者の皆様には感謝してもしきれません。
しかし、巨大スライムとの戦いの辺りで、主人公に都合の良い展開無しで物語を作るのがそろそろキツくなってきました。
そしてかなり悩んだ結果、いただいた感想の事もあって本当に迷ったのですが、このまま連載を続けて中途半端な所でエタらせるよりは、一区切りついたところで打ち切った方がいいと考え、誠に勝手ながらそうする事にいたしました。
せっかく応援してくださったのに期待を裏切るようで、とても申し訳ないです。
ですが、あと一話分だけ残っているので、投稿がいつになるかは分かりませんが、最後の最後まで読んで頂けたらなと思います。
長文失礼いたしました。




