赤髪の冒険者さん
「その様子だと、薬草採取を受けてきたみたいだな! そのー、ゴブリンとかは大丈夫だったか?」
笑顔で話しかける赤髪の冒険者さん。僕の事を心配してくれている。やっぱり悪い人ではないのだろう。
だが、こんな風に少し目が合っただけで絡んでくる感じの人はなんか苦手だ。それに、昨日はこの人のせいで呪いが発動したのもある。
とりあえずパパッと会話を終わらせてサヨナラしよう。
「あー、はい。特に何も。なかったです」
「ならよかったぜ」
受付の列も少しずつ短くなっていく。早く会話を終わらせたいのでもう並んでしまおうかな。魔石については、森の中で拾った事にしておこう。
「じゃあ僕はこれ換金してくるので……ではまた……」
そう言ってそそくさと列に加わる。そういえばお腹空いてきたな。昨日割引をしていたあのパン屋に行きたい。
「おい新米! いいか? 駆け出し冒険者が絶対に覚えておくことが一つ。もしお前が強い魔物に出会った時はな、全速力で逃げるんだ。……まぁお前は水魔法使えるしポイズンホーネットぐらいはいけるかもだが」
うわぁ。めっちゃ話しかけてくるやん。
「でもお前は発作とかあるし、戦いも慣れてないだろ? 一番大事なのは自分の命だ。だからしばらくは森の浅いところでスライム狩りとか薬草採取をする事をお勧めするぜ。最近はスライムも多いしな」
しかも声が大きい。できれば人前で「発作」とか言わないで欲しい。
僕の前に並んでいる魔法使いさんがジト目でチラチラ見てくる。
「あの、できればもうちょっと小さな声でお願いします……」
「おおう、わかった」
赤髪の冒険者さんも気まずくなったのか、少し視線を逸らして頭を掻く。
だがその数秒後、冒険者さんは唐突に僕と肩を組んで、ニヤニヤしながら耳元でこんなことを囁いた。
「おいそういえばよぉ、さっきオレが森でクエストしてたら、風に乗ってヒール草の匂いがしたんだ。しかも、めっちゃくちゃ濃い匂いのな」
僕は思わず息をのむ。心当たりがありすぎる。
でも確かに強い匂いだったから、僕以外の人が気付いたとしても何もおかしくない。
赤髪の冒険者さんはそのまま続ける。
「具体的にどこかは分からねぇが、ありゃあ、かなりデカい群生があるはずだぜ。後で新米も一緒に探しに行かねぇか?」
「ぁー、遠慮しときます」
「いやなんでだよ!」
薬草の群生を見つけたら呪いが発動するからです、とはさすがに言えない。適当に誤魔化しておこう。
「あのほら、これから昼ご飯食べに行かなきゃですし……もうヒール草は採りたくないですすみません」
巨大スライムとの戦闘からの薬草採取のコンボでかなり疲れてしまった。もう薬草採取はしたくない、という気持ちもあながち嘘ではない。
「そうか……まぁ慣れてきたらだんだん探すのも楽になるさ!」
そう言うと赤髪の冒険者さんはパンパンと僕の肩を叩く。元気づけているつもりだと思うんだけど結構痛い。
「あとお前、昼メシまだなら二人で食いに行こうぜ! いい食堂知ってんだ」
「ごめんなさい……お金無いんです」
「なんだよオメー」
やっぱりこう……グイグイ来る感じの人は苦手だ。
僕がコミュ障なのは、異世界に行っても変わらないらしい……
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