呪いよりは苦しくない
戦闘シーン難しいです……
小スライムの数は多くてニ十匹ぐらいだろうか。どうやら巨大スライムは数で戦うことにしたようだ。
恐らく、僕が小スライムをちまちま倒している間にどんどん分裂して増えていくだろう。かなりめんどくさい。
巨大スライムは大量の小スライムを出したあと、しばらく様子を見る事にしたようだ。よし。ここはできるだけ本体を狙っていく作戦でいこう。
その前に、僕の周りをぐるりと取り囲むように、胸くらいの高さの水の壁を作り出しておく。
スライムは魔法で出された水に触れると溶けてしまうので、少なくとも小スライムはこの中に入ってくることは無いだろう。言うなれば安全地帯だ。
そして水の壁の上から『水刃』を打って巨大スライムを攻撃する。
「ぶしゅぅ、じゅわっ!」
巨大スライムは避けるような動きをしたが、今までの魔法より速い『水刃』を完全にかわす事は出来ずに直撃する。
それによって身体が少し溶けたが、すぐに再生されてしまった。やはり手強い。
だが、巨大スライムは『水刃』を避けられないことが分かった。
今度はこれを何発も連続で打ち込む!
「ぐぷじゅっ、ぶしゅぁ! じょぁっ」
巨大スライムの身体が少しずつ、少しずつ溶けていく。このまま打ち続ければ倒せるかもしれない……!
「おおお、おお、おおお……」
ふと、下の方から呻き声のようなものが聞こえた。
視線を落とす。
「えっ」
「ぐぷぐぷぐぷぐぷぐぷ」
そこにあったのは、僕が今まで無視していた小スライム達が集まって、どんどん合体していく光景。
そして、
「ぷぐぉっ!」
巨大スライムの方から大きな音がした。
次の瞬間、顔にべちゃりと何かがつき、僕の視界は真っ赤に染まった。
「んー! んぐぐ!」
息ができない。
無理に息を吸おうとすると、液体のようなものが鼻や口から入ってくる。
僕の顔を覆っているものを手で取ろうとするが、ヌメヌメして思うように掴めない。
ダメだ、苦しい。息ができない。
ふと、一日目に発動した『呪い』を思い出す。
兵士のおっさんと一緒にギルドに行こうとした時に発動した『呪い』。確か、あの時も息ができなくなった。
だが、今はあの時ほど苦しくはない。
あの苦しさを僕は耐えたんだ。この程度では死なない。死にたくない。
息ができずにパニックになりかけたが、少し落ち着く。
そして手から水を出し、顔面を覆うヌメヌメにかけて溶かした。
僕が合体するスライムに気を取られて攻撃が止まっている隙に、小スライムを飛ばしてきたらしい。
まさか小スライムを飛ばすとは思っていなかった。
息ができるようになって一安心し、前を見る。
「……!」
するとそこには、合体して巨大化した小スライムを取り込み、二倍ぐらいの大きさになった巨大な赤いスライムが、水の壁ごと僕を飲み込もうとしていた。




