表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/31

突然変異のスライム

 薬草採取中に出会った、血の色をした巨大なスライム。もしこれがゲームだったら、まさに序盤のボスにぴったりな魔物だろう。


 でも、この世界に転生してたった三日しか経っていない僕には早すぎる。魔法もほとんど使えない。言わばレベル一桁台だ。

 やはりここは逃げるのが賢い選択。


「くぷぷ……」


 スライムは僕の事を見定めているようだ。一度攻撃して、ひるんでいる間に逃げるのであれば、今がチャンスだろう。


 周りに浮かせていた『大水球』を、一気にスライムにぶつける。


「はあっ!」


「ごぼっ、じゅわぁぁぁぁぁ!」


 水球が当たった所が音を立てて溶け、スライムが悶えた。


 そしてこの隙に僕は全力ダッシュで今まで来た道を戻る! スライムは液体状の魔物だ。ゴブリンほど足は速くないはず……


 だが、


「ぐあぁっ!」


 数秒ほど森を走ると、突然右脚の痛みが強くなった。『呪い』だ。思わず立ち止まってしまう。


 メリーが今、僕の事を考えているんだ。

他人の思考でも『呪い』が発動するのは本当に勘弁してほしい。


「ぐぷぉ……」


 後ろからスライムの声が聞こえ、振り返る。


「ひっ」


 今まさに、スライムが僕に覆いかぶさろうとしていた。

ヤバいヤバいヤバい、このままだと食われる!


「ぐぷおおおぉぉぉ」


 恐怖で足が動かない。もうダメだ。死を覚悟し、目をつぶる。



 その瞬間、僕の頭の中に映像が浮かんできた。



 元の世界にいた頃の、数々の思い出。

 育ててくれた両親の顔。

 一緒に遊んだ親友。


 平凡な、それでも楽しかった日常。


 そして、雨の中からこちらに突っ込んでくる車。

 僕を異世界に転生させた『神』。


 これが走馬灯というやつなのだろう。そして『神』が話し始める。


『……病院のベッドで、深い眠りについているよ』



 そうだ。僕はここで死ぬわけにはいかない。



『魔王の瘴気の影響で魔物が突然変異したりしてるから、それを倒してほしいんだ』



 思い出した。突然変異の魔物を倒す。これが僕の使命。

そしていつか必ず、元の世界に帰ってみせる!



 前を見る。そこには今にも僕を飲み込もうとするスライムの巨体。だが、時間の流れはとてもゆっくりに感じた。


 脳をフル回転させる。僕がやるしかないんだ。考えろ。どうすればこの状況を打開できるか。



 迫りくるスライム。



 そうだ。水魔法で「壁」を作る事ができれば……!


 両手を前に突き出し、そこから大量の水を出す。

そして強く魔力を込めて、突然変異のスライムと同じくらいの大きさの分厚い壁を形作る!


 よし! 間に合った!



「ぐおおおおおぉぉ」


 突然変異のスライムが、水の壁に触れる。

すると、



「じゅわあああああぁぁぁあああ!」



 すごい音を立てて、壁に触れた部分が溶けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ